(世界中で活動する、医療のプロフェッショナル集団が今週のチャリティー!© Francesco Zizola/NOOR)
今週のチャリティーは、「国境なき医師団」の日本支部、NPO法人国境なき医師団日本(以下、MSF日本)。JAMMINでは2014年の5月にコラボさせて頂いたのに続き、今回は2回目!
国境なき医師団日本が今年で設立25周年を迎えるにあたって、是非一緒に周年を盛り上げましょう!ということとなり、2回目のコラボ実施となりました。
さて、改めてとはなりますが、みなさんはMSFが何をしている団体なのか、ご存知でしょうか?
特徴をざっと列挙すると、
など、素晴らしい活動を展開する、医療援助に特化した国際NGOなんです!
取り組みについて、改めてMSF日本 ファンドレイジング部 パートナーシップ開発チームの松本典子さんに話をお伺いしてきました!
(松本さん © MSF)
NPO法人 国境なき医師団日本
東京に事務所を構え、難民キャンプや紛争地、自然災害被災地など医療が緊急的に求められる地域で、医療活動を展開する非営利法人。
TEXT BY KEIGO TAKAHASHI
──本日はよろしくお願いします。まずは「国境なき医師団」の取り組みについて教えてください。
松本:
「国境なき医師団」は、1971年にフランスで医師とジャーナリストによって設立された国際NGOです。MSF日本は、その日本支部として活動をしています。
「国境なき医師団」の活動の柱には、「緊急医療援助活動」と「証言活動」があります。「医療へのアクセス」がない世界のあらゆる地域で活動していますが、現在の活動は6割がアフリカ、続いてアジア・中東が占めています。
──医療へのアクセスがない、というのがイメージ出来ないのですが、具体的にはどんな状況なのでしょうか?
松本:
例えば、途上国における地方の村。医療のニーズに対して医師がそもそも不足している、医薬品を首都から届けるインフラがない、といったケースなどです。
こうした地域では、熱を出した患者さんがいたとしても、単なる風邪なのかマラリアなのか感染症なのかが分からない、さらには治療も受けられない状況なので、日本であれば治るはずの病気であっても亡くなってしまう方が大勢います。MSFは、そういった医療の需要と供給にギャップがある場所において役割を担っています。
マラリア感染が爆発的に広がったコンゴ民主共和国。村に1ヶ所だけある保健所では対応が追いつかない© Anna Surinyach
──なるほど。個人的なイメージでは、MSFさんは紛争地や難民キャンプなど、緊急度が高い活動をするイメージだったのですが、常日頃から医療がない地域でも活動されているんですね。
松本:
もちろん、紛争や自然災害、ジェノサイド(大規模な虐殺)など人の命にかかわる事態が起これば、48時間以内に現地に赴くのが私たちの基本です。それ以外にも、先ほど述べたように「医療へのアクセス」が無い地域でも常日頃から活動しています。
──MSFの援助は、いつまでに撤退するとか「期限」を決めて現地へ向かっているのですか?
松本:
MSFは誰よりも早く現場へ駆けつけることが多いので、まずはどれだけの医療ニーズがあるのか調査することから始めます。そのため、活動の期限を見極めることは難しいのですが、原則として「半永久的な立場ではない」ということを最初に、現地の人たちへ伝えるようにしています。公衆衛生は、本来その国・地域が担うべきものであると考えているからです。
しかし現実には、政情がいつまでたっても不安定で、中長期的に医療が届くという保証がない国や地域がまだまだたくさんあります。アフリカの南スーダンなど、30年以上に渡ってMSFが活動を継続せざるを得ないケースもありますね。
(リビア沖の地中海を木のボートで漂流する人びとを救援するMSF © Andrew McConnell/Panos Pictures)
──現地で活動されるのは医師、看護師の方だけなのでしょうか?
松本:
いや、それだけではないですね。援助内容に応じて職種は様々なのですが、医師や看護師、助産師、薬剤師といった医療系のスタッフをはじめ、活動のインフラを支える物品調達や施設・機材・車両の管理を行うロジスティシャン、建築士、電気技師、水・衛生専門家、そして財務・会計・人事管理を担当するアドミニストレーターなど、非医療系のスタッフもいます。
(大雨によってぬかるんだパプア・ニューギニアの泥道にはまったランドクルーザーを必死に掘り出すロジスティシャン © ARIS MESSINIS/Matternet)
(ワクチン接種キャンペーン用の倉庫用テントを設置する南スーダンのスタッフ © MSF/Olga Victorie)
──そんなにも様々な職種の人が現場にいるんですね!まるで「病院」がそのまま移動しているみたい。
松本:
確かにそうかもしれないですね。2016年度の派遣実績では、医療系スタッフと非医療系のスタッフ(ロジスティシャンやアドミニストレーター)の比率はほぼ半分ずつでした。
そして、とても大切なのが現地で採用されるスタッフたちです。世界中で活動するMSFスタッフのうち約8割は現地採用の地元スタッフで、さまざまな職種において海外からの派遣スタッフとともに大きな役割を果たしています。まさに国境を越えて、さまざまなバックグラウンドをもつ人たちが一つのチームとなって協力し合っているのが、MSFの現場です。
(パプア・ニューギニアで性暴力に関する教育啓発活動を行う現地スタッフ © Yann Libessart/MSF)
(南スーダンのイダ難民キャンプで小児用肺炎球菌ワクチンの接種手続きを行う現地スタッフ © Yann Libessart/MSF)
──そもそもなのですが、「医療へのアクセスがない地域」は医療がない理由がたくさんあるはずで、例えば「普通では行けない・行きづらい場所」も多いと思います。どうやって現地まで行くのですか?
松本:
通常の航空ルートでは行くことのできない地域も多くあります。なので、自分たちで航空機をチャーターしたり、船を借りたり。
例えば、最寄りの空港、といっても単なる草原であることも多いのですが、そこから現地までランドクルーザーで何時間も走ったりもします。距離にして40km程度の道のりでも、舗装されていない道なき道や川を越えていくため、5時間かけていかなければならないこともあります。
──なんと!すごい執念ですね。
松本:
「他の組織では出来ないこと」をやることが、MSFの使命だと思っています。他の国際機関の援助対象から外れてしまったり、政府から見過ごされてしまったり。私たちがやらなければ誰からも医療が届かない方たちがいる、という思いが背景としてあるからここまで出来るんだと思います。
(スーダンとチャドの国境付近で物資を運ぶMSF © William Martin/MSF)
──最初「国境なき医師団」は医師とジャーナリストの方が立ち上げたとお聞きしましたが「現地で起きていることを報道する」ことを意識していらっしゃったのでしょうか?
松本:
はい、冒頭で申し上げましたように、MSFの活動現地で起きていることを広く世界へ伝える「証言活動」も、私たちの大事な活動の一つです。世界中で起きている見過ごすことのできない危機的な状況について、市民一人ひとりが事実を知り、行動を起こすことで、少しでも医療にアクセスできる人が増えることを目指しています。
──それを担うメンバーもチームに属しているのでしょうか?
松本:
証言活動を担うのはすべてのMSFスタッフですが、活動地によっては広報担当を置いたりジャーナリストの取材を受け入れて積極的に情報発信しています。
基本的には、それぞれの活動地におけるプロジェクト・リーダーが現地の状況を定期的にとりまとめ、フランス・オランダ・スペイン・スイス・ベルギーの5ヵ国にあるMSFの拠点に情報を集約します。その後、日本を含む28ヵ国の事務局へ情報が流れ、翻訳され、各国メディアへ発信されています。
日本事務局では、このように日々現地から届く情報の他、日本人派遣スタッフの生の声を少しでも多くの方に届けるべく日夜努めていますので、今回このように記事にしていただけることも大きな力になります!
──今回のチャリティーの使途について教えてください。
松本:
松本:全ての医療活動の基本となる、基礎医療を提供するための資金として使わせて頂きたいと考えています。
MSFの活動において、どのような環境においても基礎医療の提供はとても重要です。日本のように安定した国であればあたりまえのように受けられる診療が受けられない地域が大半だからです。救えるはずの命を救うため、抗生物質やビニールシート、ガーゼなど、どんな場所にも基本的な診療を行うための道具一式を持って行き、1秒でも早く診療を開始できるよう常に体制を整えています。
(タンザニアのニャルグス難民キャンプで行っている経口コレラワクチンキャンペーン © Erwan Rogard/MSF)
20万円の支援があれば、約8000人に対して基礎的な医療・診察を実施することが出来るようになります。国連機関でも政府機関でもない私たちMSFにとって、市民の方一人ひとりからの寄付が活動を支えるほとんどです。今回はJAMMINさんと一緒に、私たちの活動の根幹となる基礎医療を支えてくださる方に一人でも多く出会うことができたら嬉しいです。
(DVや性暴力の被害に遭った家族への心理ケアプログラムを受けるパプア・ニューギニアの母子 © Fiona Morris)
──貴重なお話をありがとうございました!
インタビューを終えて〜編集後記〜
今回のコラボにあたり、大阪で開催されたMSFの活動説明会へ参加してきました。そのイベントの際に、ミャンマーの少数民族「ロヒンギャ」への援助活動の報告を聞いた参加者から、質問が出ました。
「こうした難民が出るのは、医療だけでは救えない部分があるはず。政治的な影響力がある人への働きかけも必要ではないか」と。
MSFの担当者の回答はこうでした。「私たちは医療援助の専門団体であり、政治的には中立であることを信条としている」「現場で起きていることはメディアを通じて発信していく」とのこと。
この回答、当たり障りのない回答に感じるかもしれませんが、私はMSFの信念を感じました。
世界で起きていることを「医療だけ」では守れないかもしれない。けれど、目の前や世界に医療で救える命があるならば、そこへ行く。そして起きていることをしっかりと伝えて行く、という信念を感じたのです。
まるで、『ハチドリのひとしずく』のクリキンディのように──。
私たちJAMMINもブランドとして大切にする『ハチドリのひとしずく』の物語。MSFの勇気を持って現地へ向かう人たちを、一緒に応援していきましょう!
『ハチドリのひとしずく』
森が燃えていました。
森の生き物たちはわれ先にと逃げていきました。
でもクリキンディという名のハチドリだけは森に残っていました。口ばしで水のしずくをいったりきたり
一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます。動物たちがそれを見て
「そんなことしていったい何になるんだ」
といって笑います。クリキンディはこう答えました。「私は、私にできることをしているだけ」
WITHOUT BORDERS「国境を越えて」
『ハチドリのひとしずく』のクリキンディが、山を越え薬箱を運んでいます。
国境なき医師団が行う医療援助活動は、
クリキンディがクチバシに水を入れ、山火事を消そうとしている姿そのもの。
たった「ひとしずく」かもしれないけれど、
世界には助けを必要とする人がいるからそこへ行く。
そんなシンプルで強い信念を持つ、MSFの活動をモチーフにしたデザインに。
Design by DLOP
国境なき医師団のスタッフとして、南スーダンの難民支援活動に関わった薬剤師、看護師の方、パプアニューギニアで仮設病院の建設に携わった建築士の方へのインタビュー記事も公開中!
「危なくない?」「休みの日は何してるの??」など、スタッフの人となりを知っていただけるインタビュー。是非こちらもチェックしてみてくださいね!
危なくないの? 休みはあるの? 難民キャンプや紛争地へ行った「国境なき医師団」の人に話を聞いてみた!