【FACTORY#06】妥協なき仕上げへの想い。兵庫・姫路での“革の縫製”

2015.9.18 | CATEGORY : THE FACTORY

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FACTORY:ものづくりの現場を訪ねて歩いた記録

毎日のように目にするモノ。それにも関わらず、なんとなく見過ごしてしまって、魅力的なストーリーがあることに気がつかない。私たちの身の周りには、そういうもので溢れているのではないでしょうか。

わたしたちは今顔が見えるモノづくり、MADE IN JAPANを進めています。モノづくりの現場を見に行くことで、裏側にある職人のこだわりや想いをこのFACTORYでは伝えていきます。

皮革産業発祥の地、兵庫・姫路で続く革づくり

ご紹介したように兵庫。姫路は皮革産業発祥の地として、前回まで革を加工するための下地作り、なめしの工程を見てきました。

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【FACTORY#05】皮から革へ。兵庫・姫路での“なめし” JAMMIN | Social Wear Brand

今回はその最終仕上げの工程、裁断・縫製を一緒に見ていきしょう。

イタリア・ミラノの見本市でも評価を受けたデザイナー

JAMMINのアイテムの縫製を行っているのは、Ken shina Design Laboratory。代表の椎名さんは、もともと美大出身で姫路の工房で修行していました。その後、自身の工房を立ち上げ、イタリア・ミラノで開かれた世界最大規模のかばん見本市「ミペル・バックショー」に市内の製革業者の一員として参加。国際ブランドが集まる部門で見事入賞し、その技術は海外からも高く評価されています。

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(デザイナーの椎名氏)

なめされた革を製品に仕上げる

素材を見極め裁断する

なめされた革は、まずこの2トン以上もある大型の機械「クリッカー」に入れられた金型によって裁断されます。製品の仕上がりを逆算するように作られた金型はオーダーメイド。専門の業者が手作りで1点ずつ製作しています。

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(クリッカーは上部のシルバーと木の台座部分で挟む構造)

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(クリッカーに押される金型。職人が溶接した跡が見える)

皮革の無駄がないように歩留まりを考慮しながら、キズ・汚れを避けてテンポよく裁断していきます。職人の高度な判断がスピーディに求められる工程の一つです。

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(どの部分を裁断するのかは、職人の経験と勘が求められる)

仕上がりが良くなるよう漉く(すく)

クリッカーで裁断された革は、次に縫製や仕上がりの具合にあわせて、厚みを調整するために漉(す)いていきます。

漉きが必要となるひとつの例が、端の折り返し縫製を行う部分。折り返した部分の高さが、通常の部分に擦り合うようにその厚みを調整していきます。

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(姫路の隣、加古川のメーカーが製作した年季が入った革漉機)

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(中央下部の刃がついた部品が回転し革を漉いていく)

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(漉かれた革の一部。左上部分が少しだけ薄くなっているのがわかる)

焼き印を押す

特注の金型を機械に置いてブランドロゴを焼き付けていきます。この際、治具(じぐ)と呼ばれる、型紙のように同じ位置に焼き印をするための道具も使われ、これは椎名さんが手作りで調整しているとのことでした。

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長く使えるよう縫製する

裁断され、漉かれた革はミシンで縫製されていきます。

この工場では、革加工専用のミシンも保有。その他にも、革をミシンが縫い目を送り出すときに、押さえる工具の跡が残らないよう配慮しています。徹底的に仕上がりがキレイになるように、こだわっていることに驚きました。

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(縫製に使われるミシン。基本的な構造は本縫いミシンと大差はない)

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この後、必要な金具を付けて、アイテムはほぼ完成です。

ここまでご紹介してきたように、革のアイテムづくりには様々な職人の手を経て作られています。そんな多くの“てまひま”が皆さんのお手元のアイテムを生み出していること、このコンテンツを通じて少しでも知っていただければこれ以上の喜びはありません。

最後に。そもそも、良い革とは何か

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最後に、そもそもの話を少しだけ考えてみたい思います。そのきっかけは、デザイナーの椎名さんから「いい革って、何かわかりますか?」と聞かれたことでした。最初に思いついたのが、素材が上質であること、縫製がしっかりしていること、長く使えること。

質問した椎名さん曰く「良い革の定義は様々ありますが、製品・商品によって異なるというのが答えです」とのこと。なーんだ、と思われるかもしれませんが、これは本質的な一言であるような気がしてなりません。

というのも、良い革を作るにはアイテムを使う人の気持ちを知らないといけないからです。

アイテムを人生の友として長く持ちたい、オシャレに着飾りたい、経年的な変化を楽しみたい。革という素材や縫製は単にその目的を達成するための手段、ブランドがどんな風にしてお客様に喜んでほしいのか、自分たちどうありたいのか、それを明確にしなくてはいけないよ、そんなメッセージをアイテムと一緒に受け取ることができました。

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(写真右:デザイナーの椎名氏、写真左:姫路レザー有限会社、経年変化協会 松井氏

会社情報

会社名:Ken shina Design Laboratory
住 所:兵庫県姫路市花田町小川1137-1
電 話:090-7629-5408

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