【FACTORY#05】皮から革へ。兵庫・姫路での“なめし”

2015.9.18 | CATEGORY : THE FACTORY

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FACTORY:ものづくりの現場を訪ねて歩いた記録

毎日のように目にするモノ。それにも関わらず、なんとなく見過ごしてしまって、魅力的なストーリーがあることに気がつかない。私たちの身の周りには、そういうもので溢れているのではないでしょうか。

わたしたちは今顔が見えるモノづくり、MADE IN JAPANを進めています。モノづくりの現場を見に行くことで、裏側にある職人のこだわりや想いをこのFACTORYでは伝えていきます。

皮革産業発祥の地、兵庫・姫路で続く革づくり

ご紹介したように兵庫・姫路は皮革産業発祥の地として、長く日本の革製品を支えてきた地域。前回は生皮を加工しやすくするための工程をご紹介しました。

【FACTORY#04】皮革産業発祥の地、兵庫・姫路の歴史と“原皮づくり” JAMMIN | Social Wear Brand

そんな革づくりの現場、兵庫・姫路を訪ねたシリーズの第二弾。今回は、皮から革へと進化させるための工程“なめし”です。

皮をなめして革にする

なめしとは何か

そもそも、皆さんは、なめしという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

前回は下処理について見ていきましたが、下処理はなめしのための準備といってもいいほど、なめしは重要な工程です。

なめしは、製品として長く使えるように皮に強度やしなやかさを与えます。

ざっくり言ってしまうと、皮を腐らないように人工的に加工することがなめしでもあります。なめしの方法は大きく3種類あります。使用する薬剤も手順も異なるのはもちろん、革になったときの風合いが大きく異なるのが面白いポイントです。

まず1つ目が、タンニンという植物成分を使う「タンニンなめし」。ヌメ革と言われる革の種類はタンニンでなめした革を指します。皮が持つ自然な風合いをなるべく多く残しながら、使っていくうちに飴色へと変化していきます。

自然の風合いを生かす以上、水染みが出来たり製品としてデリケートな部分があるのがデメリット。また、生産にはてまひまがかかるため、日本国内では少なくなりつつある手法です。

2つ目が、酸性のクロムを使う「クロムなめし」。また素材としては、経年による変色・変化が少なく、薄くて軽いなど魅力が大きいなめし方です。薬剤の費用が安く、なめし時間が短く大量生産が可能という生産側のメリットもあり、日本国内で普及してきた方法です。

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(硫酸の薬品色の青色が入った革、ウェットブルー。水気を含んだ皮はモチっとした独特の触感だった)

そして、最後3つ目が、タンニンとクロムを組み合わせる「コンビネーションなめし」。タンニンでなめしたときの風合いを残しながら、クロムでなめしたときのような素材としての安定性を追い求めた、なんとも欲張りな手法です。

タンニンとクロムの経年変化について – 日本経年変化協会

なめしの方法

なめしの方法は、下処理と同様にドラム槽に皮を入れることで行なわれます。従来は職人の勘と経験に頼っていたなめしは、現在はコンピューター制御の装置を使うことで、品質管理をされていました。

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(コンピューターで管理されるドラム槽。正確なデータをとることで新しい技術に挑戦しやすくなる)

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(なめしに使う薬剤。顔料や染料など)

1年以上試作を繰り返した「脱クロム」という特殊製法

姫路でなめしを行うのが株式会社森本尚製革所。先ほど3つ目に紹介した「コンビネーションなめし」の中でも特殊な方法である、「脱クロム製法」という方法で、JAMMINのアイテムもなめして頂いています。

脱クロム製法とは、一旦クロムでなめした後の革を特別に加工し、機能が残る限界ギリギリまでクロムを取り除きます。その後タンニンでなめすことで、自然の皮の風合いを活かしなめすという特殊技術です。この特殊技術の開発にあたっては、姫路レザー有限会社が中心となって開発を進め、試作を1年以上繰り返したと言います。

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(脱クロムでなめされたJAMMINのだ・け〜す)

なぜ1年が必要だったのか。そもそも、なめしの品質管理は、その日の気温や湿度によって大きく影響を受けます。特殊技術であった脱クロムでなめした革が、春・夏・秋・冬それぞれの気温や湿度でも、安定したクオリティが出せるかを確かめる必要があったのです。

現状に甘んじることなく新しい技術へ挑戦し続ける姫路の職人のこだわりが、脱クロムで作られた革に詰まっています。

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(なめしが終わったばかりの革。独特の艶と質感)

長く続くもの=ずっと同じではない。新しい挑戦がそこにはある

姫路の革は長く続く伝統産業と言えるものです。そもそも、その伝統とは何なのでしょうか。昔ながらの製法で同じクオリティを出しお客様に喜ばれ続ける、それも一つの伝統です。

今でも続く工場では昔ながらの製法に加え、職人達が知恵を絞り、新しい挑戦を日々続けています。同じことの繰り返しではなく、お客様が想像もしていないような素晴らしいものを提供する。それも伝統が長く続いていく重要なポイントなのかもしれません。

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(写真左:森本尚製革所代表の森本氏、写真右:姫路レザー有限会社、経年変化協会 松井氏)

会社情報

会社名:株式会社森本尚製革所
住 所:兵庫県姫路市花田町高木71-21
電 話:079-281-7133

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