CHARITY FOR

「災害が起きた時、あなたはペットを守れますか?」。家族の一員だからこそ、もしもにそなえて「ペットと防災」を考える〜NPO法人アンビシャス

ステイホーム期間が長くなり、ペットを飼う人が増えたという話をときおり耳にします。家族の一員としてペットを迎え入れ、ともに暮らす飼い主の皆さん、「ペットと被災し、避難しなければならなくなった時」を考えてみたことがあるでしょうか。

地震や豪雨などの災害が起こり、避難しなければならなくなった時。家族の一員であるペットと一緒に避難できるのか、避難のために日頃からどんな準備が必要なのか、知っておく必要があります。

2018年にコラボしたNPO法人「アンビシャス」。セラピードッグを育成し、老人介護福祉施設や障がい者施設、ホスピスや医療少年院などを訪れる活動をしています。飼い主とペットが信頼関係を築き上げる、その育成技術を生かし、近年は「ペットと防災」の普及にも力を入れています。
(前回コラボ時は「セラピードッグ」のご活動を紹介しました!記事はこちらからご覧いただけます

代表の松岡幸子(まつおか・さちこ)さん(64)と、理事の湯浅(ゆあさ)あやのさん(55)に「ペットと防災」の心構えについてお話を聞きました。
見えてきたのは、飼い主とペットが「普段から」「揺るぎない信頼関係を築く」ことの大切さでした。

(京都市内にある事務所にお伺いしてお話を聞きました!左が松岡さん、右が湯浅さん。松岡さんの愛犬の「ケン」「クッキー」「ルゥ」と)

今週のチャリティー

NPO法人アンビシャス

人と動物が共生するやさしい社会を目指し、豊かな心を育み、安全安心なまちづくりに取り組むNPO法人。犬を通じて癒しや笑顔を提供する「ドッグセラピー」、セラピードッグとの触れ合いを通じて子どもたちにいのちの大切さを伝える「いのちの授業」、災害時のペットとの防災まちづくりを考える「ペットと防災」の3つの柱で活動しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2020/11/9

ペットは「モノ」ではなく「パートナー」

(特別養護老人ホーム「そらの木」にて、ドッグセラピーの様子。「利用者さんとの会話に、メンバーも笑顔がこぼれます」(湯浅さん))

──前回のコラボではお世話になりありがとうございました。今回は「ペットと防災」について教えていただけたらと思います。団体としてどのようなご活動をされているのですか。

松岡:
私たちは「セラピードッグ」とともに老人介護施設や障害者施設、ホスピス病院などを訪れてドッグセラピーをしたり、小・中学校、高校、京都医療少年院などを訪れていのちの大切さを教える授業をしたりする傍ら、「ペットと防災」の普及にも力を入れてきました。

ペットと暮らす世帯は増えています。私たちの調査では、町内で暮らす全世帯の約2割ほどがペットと暮らしています。しかし一方で、いまだに「犬畜生」や「(ペットは)吠える」「汚い」「人を噛んだら困る」などと声をかけられることもあります。
また、飼い主さんが「懐かないから」「大声で吠えるから」「引っ越すことになったから」と、都合が悪くなったらまるでモノのようにペットを捨てるということが残念ながら起きています。

(セラピードッグ育成の様子。「待て」「来い」「ハウス」など、セラピードッグだからではなく、普段の生活にも役立つコマンド(指示)をトレーニングする。「トレーニングを通じて犬が飼い主に集中する、飼い主の言葉を聴く耳を育てることを意識しています」(松岡さん))

湯浅:
迎え入れたのなら、たとえどんなことがあってもパートナーとして、飼い主として最期まで責任を持つのは当然のこと。年老いた犬を「もう要らない」と捨てたその足で幼い犬を買いに行くなどという話も聞きますが、もってのほかです。
飼い主として「最期まで責任が持てるのか」ということと向き合うのは当然のこと。後先を考えず、あまりにも簡単にペットを迎え入れてしまう、ということが起きてはいないでしょうか。

(京都医療少年院への動物介在授業は、2020年で6年目を迎えた。「回を重ねるにつけ、子どもたちが素直に犬と向き合うことが増え、笑顔が増えてきました」(松岡さん))

松岡:
動物先進国のヨーロッパでは、たとえば犬を飼うにあたって免許が必要だったり、家の広さ(飼育環境)の面積などの条件があったり税金を支払う必要があったりとハードルが設定されています。しかし日本はこういった規制もなく、飼おうと思えば誰でも飼うことができるのが現実です。

ペットは「モノ」ではなく「パートナー」。本当に最期まで面倒を見ることができるのか、何かあってもその仔のいのちを背負うことができるのか、飼い主さんがしっかり責任を持つ必要があるのではないでしょうか。

──確かに、そうですね。

(犬を通じていのちの大切さを伝える「いのちの授業」。幼稚園にて、犬の心音を聴いているところ。「スピーカーから聞こえてくる力強い音に子どもたちもびっくりしていました」(湯浅さん))

いつ、どんな災害が起きるかわからない。
普段から「ココロ、モノ、ワザ」で備えを

(「ペットと防災」をテーマに、各地で講演やしつけ教室等を行ってきた。こちらは2019年、京都府綾部市で開催された「ペットと防災勉強会・しつけ編」でのひとコマ。飼い主さん以外の人がリードを持ち、人に慣れる練習。飼い主さん以外にも攻撃的にならずに挨拶できるかな?)

松岡:
それは防災においても同じです。いつ何時、どんな災害が起こるかわかりません。その時にペットに対して、果たして「知らなかった」とか「予期していなかった」で済むのでしょうか。ペットが家族の一員であるのだとしたら、常日頃からもしもの時に備えて置く必要があります。

──どんな備えが必要ですか。

湯浅:
「ココロ、モノ、ワザ」の3つの準備が必要だとお伝えしています。
「モノ」については、避難時に必要なもの、最低7日分のフードと水、薬、ゴミ袋、ペットシーツ(猫の場合は猫砂も)、排泄用の処理道具などといった生活用品のほか、飼い主さんの連絡先やかかりつけの動物病院、既往歴やワクチンの接種状況などを書いた情報メモをペット用に一つのバッグにまとめておくと良いでしょう。

(アンビシャスが発行している「ペットと防災カード」。「飼い主さんの連絡先やペットの写真やデータを記入したカードをケージにつけておくと安心です。ペットと自分が一緒にいる写真も付けておくと誰のペットかわかるのでお勧めです」(湯浅さん)。アンビシャスのホームページからダウンロードできます→https://npo-ambitious.com/wp-content/themes/ambitious2020/images/pet_bousaiCard.pdf

──「ココロ」「ワザ」はいかがですか?

湯浅:
災害時にペットとどこに、どういったかたちで避難するのか、日頃から家族で話し合っておきましょう。お住まいの地域の避難所をあらかじめ調べておくとともに、そこが「同行避難」「同伴避難」、どちらが可能なのか知ることも大切です。

ペットと暮らしていない世帯への配慮を忘れずに

──どういうことでしょうか。

湯浅:
ペットと避難するには「同行避難」と「同伴避難」の二つがあります。このことをきちんと飼い主さんが理解しておかないと、トラブルの元になりかねません。

「同”行”避難」は、「家にペットを置いていかないで、一緒に避難しましょう」というものであって、「=避難所でペットと一緒の部屋で過ごせる」というものではありません。
理想はもちろん「同”伴”避難」、「=避難所でもペットと一緒の部屋で過ごせる」ことですが残念ながら難しいのが現状です。同行避難の場合、一緒に避難所へ行くことはできても、ペットは軒下などにケージをまとめて並べて避難するかたちをとることがほとんどです。そのことに対して「一緒に過ごせないなんてかわいそう」「外に置くなんてどういうことだ」と主張のみするのは、果たしていかがなものでしょうか。

ペットを飼っている世帯は全世帯の約2割ほどです。残る約8割のペットと暮らしていない世帯への配慮を忘れてはいけません。避難所に避難するのであればルールを守ることが大切です。

(ペット用の防災バッグの例。「小さなスーツケースなど持ち運びやすいカバンに、必要なグッズを用意しておきましょう。持病のあるペットには、お薬も予備で用意しておくと安心です」(湯浅さん))

──避難所には地域中から人が集まるので、中には動物が嫌いな方も、アレルギーのある方もいるかもしれません。

松岡:
その通りです。飼い主として、そういった方たちへの配慮が必要です。
周囲に迷惑をかけないためにも、ケージに入って過ごすことができる、決まった場所でトイレができる、飼い主さんの言うことを聞くといったしつけを普段からしておく必要があります。

──「ワザ」ですね。

湯浅:
「同行避難」以外にも、公園などでペットと一緒にテント泊をする、安全に自宅にいることが可能な状況であれば飼い主さんだけ避難し、定期的にペットの様子を見に帰る、あるいは親戚や友人、かかりつけの獣医さんなど信頼できる人に預ける、車中泊をするという選択肢もあります。ペットの性格や避難所の状況などを踏まえ、事前に選択肢を見据えて準備しておくと良いですね。

(地域の避難訓練にて「ペットと防災」について話す松岡さん。「ペットを飼っている方はもちろん、ペットを飼っていない方にもペットの同行避難について啓発しています」(松岡さん))

地域とも良好な関係を築いておくことが大切

(「ペット防災グッズには必ず水を準備してください。被災時には水が不足することが多く、トラブルになることもあります。その際、ペット用と大きく書き込んでおくと事前に準備していたペット用のものとアピールできるのでトラブル回避にもなります」(湯浅さん))

松岡:
ペットと共生した防災まちづくりのためには、日頃から地域の人たちと積極的にコミュニケーションをとり、良好な関係を築いておくことも大切です。

地域の避難訓練にペットとともに参加する、それ以外の地域の集まりにも積極的に参加する、ご近所の飼い主さん同士でコミュニティを築いておくなどすれば、同行避難を想定した際にも周囲からの理解を得やすくなります。

要は、もし飼い主さんが地域の方たちと良好な関係を築いていて、ペットが噛み付いたり吠えたりせず、かわいくてご近所さんの間でアイドルであれば、避難した際に「一緒に避難させてあげよう」というふうになりやすい、ということはイメージしていただけるのではないでしょうか。ペットを守るために、日頃からご近所さんと信用・信頼関係を築くことが大切なのです。

──なるほど。ある意味、飼い主さんが普段地域の方たちとどんな関係を築いているかが、災害時に試されるのですね。

湯浅:
そうです。そしてその時に問われてくるのが「ワザ」、つまり「しつけ」の部分です。
どこかしこでもオシッコやウンチをしてしまう、吠えたりずっと鳴いている、飼い主さん以外の人に噛みつくなどといったふうでは、なかなか他の人たちから受け入れてもらうことは難しいということは、皆さん容易に想像がつくのではないでしょうか。

──確かに。

(京都市中京区の総合防災訓練にブースを出展した際の一枚。「たくさんの方がブースに来てくださり、関心の高さを感じました」(松岡さん))

松岡:
2015年の東日本豪雨の際、鬼怒川が氾濫して自宅の屋根に取り残され、ヘリコプターで救出されたご夫婦とワンちゃんの映像を観て、記憶に残っていらっしゃる方もおられると思います。

自衛隊の方が救助に来た際、飼い主さんと一緒にワンちゃんも隊員の方にしがみついて救助されましたが、もし吠えたり噛み付いたりしたらどうなっていたでしょうか。「人命救助が優先です」と、その場に置き去りにされてしまう可能性もあったかもしれません。

──確かに、一刻を争う状況では、吠えたり噛んだりされるとかまっていられないでしょうね。

松岡:
普段から「うちの子はしつけは無理だから…」とか「自由に生かしてあげたいから」というのは、果たして本当に家族の一員であるペットのためになるでしょうか。災害があった時にも、一緒にいられるでしょうか。「他人に迷惑をかけない」ことは、ご自身とペット、家族の生活を守ることにつながるのです。

(2020年10月より、アンビシャスとして「RADIO MiX KYOTO FM87.0」にて「ペットと防災」コーナーにゲスト出演している。「毎月第2火曜日午後12:05〜です。ぜひお聴きください!」(湯浅さん))

はぐれてしまった時のためには
マイクロチップが有効

(猫は警戒心が強く、犬のようにしつけが難しいという。日頃から逃走防止のために洗濯ネットに入る練習をしたり、猫が不安になった時に逃げる場所・いる場所を飼い主さんが把握をしておくと、とっさの時に役に立つ)

松岡:
東日本大震災の際に保護された犬猫のうち、飼い主さんの元に戻れたのはたったの1割程度でした。
はぐれてしまった時のことを想定すると、マイクロチップの装着が有効です。マイクロチップを装着してデータベースに住所や連絡先などの情報を登録しておけば、保護された際に警察署や保健所などでそれを読み取り、無事飼い主さんの元に帰ってくることができます。

湯浅:
マイクロチップは磁気なので、MRIなどの検査の際に影響があるといったリスクもあります。それもきちんと知ってもらった上での装着を推奨しています。まずは、かかりつけの獣医さんに相談されるのをお勧めします。
マイクロチップは動物病院で3〜6,000円ほど(別途情報登録料が必要)で装着できます。自治体にもよりますが、たとえば京都府であれば、京都市獣医師会・京都府獣医師会の助成を受けることができ、情報登録料のみの1,000円ほどしかかかりません。マイクロチップを装着した後、飼い主の情報を記載した申込書を管理している団体に送付して完了です。

最近はマイクロチップを装着した状態で犬猫を販売しているペットショップもありますが、飼い主さんがきちんと情報を登録しなければ、装着しただけでは何の意味もありません。

──そうなんですね。

松岡:
さらに、マイクロチップを装着して登録すれば必ずしも安心というわけでもなく、生活しているうちにマイクロチップが読み込めなくなってしまう可能性もあるので、きちんと読み取れるかどうか、獣医さんに行った際など定期的に確認してもらうと良いでしょう。

(実際のマイクロチップと注射器、チップを読み取るためのリーダー(リーダーは色々な種類がある))

「良い時も悪い時も、
パートナーとしてともに生きる飼い主であってほしい」

(松岡さんの30年にわたる犬との生活の原点となった犬たち。「ボルゾイやドーベルマン、スタンダードプードルなどの大型犬からトイプードルのような小型犬まで、ドッグショーやドッグスポーツなどを通じてそれぞれの犬から学び、悩み、成長して今の私があります」(松岡さん))

──ペットと防災にまつわるお話をお伺いしてきましたが、お二人にとってペットとはどんな存在ですか。

松岡:
30年以上ペットとともに暮らしてきましたが、彼らがいるおかげで人生が広がり、明るくなりました。豊かな生活を送らせてもらっています。言葉はないけれど、気持ちを一番にわかってくれるパートナー、それがペットだと思います。相手の年齢や職業、身分などに関係なく「その人自身」を見て、無償で、純粋に愛してくれる。それが彼らです。

湯浅:
私も同じですね。ペットのおかげで世界が広がり、それまでなかった視点から社会とつながるようになりました。じっと目を見つめて、自分を肯定してくれる存在です。だからこそ、どこでも生き抜ける社会性を身につけること、そしていのちが続く限り、最後まで見守るという責任と覚悟が必要なのではないでしょうか。
縁あってパートナーになったのだから、良い時も悪い時も、その仔のパートナーとしてともに生きる飼い主でありたいと思います。

──ペットと防災という切り口でお話を聞かせていただきましたが、突き詰めると、飼い主さんが「どんな時も責任を持ってともに生きられるか」ということなのですね。

(湯浅さんと愛犬。「我が家の家の愛犬は、当初は女の子の『りえる』のみ。男の子は面白いよ、という声に背中を押されて『バジル』を迎えました。それぞれ性格も違えば行動も違う、最初は戸惑いながも楽しみながら犬育て、いや犬を通じて自分育てをしているように思います」(湯浅さん))

チャリティー使途

(セラピードッグのトレーニングだけでなく、メンバーもレベルアップ!「普通救命講習を受講したり、認知症サポーター講習などを受講したりしています」(松岡さん))

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

湯浅:
ありがたいことに、「ペットと防災」に近年少しずつ注目が集まり、イベントや講演等、各地でお話しさせていただく機会も増えてきました。私たちの活動はボランティアであることも多く、交通費などは持ち出しであったりします。今回のチャリティーは、各地で「ペットと防災」についてお伝えするための遠征費として使わせていただきたいと考えています。チャリティーアイテムで応援していただけたら嬉しいです。

(2019年6月京都・鷹峯にて、アンビシャスのボランティアスタッフの皆さんと。「早く状況が落ち着き、また皆で昔のように集まりたいですね」(湯浅さん)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

大好きなペットと一緒にいる時、この時間がずっと続いてくれたらと思いますし、自分やペットの身の上にもしも何かが起きてしまったら、ということを想像したくないというのが、多くの飼い主さんの本音でではないでしょうか。
しかし、愛するパートナーだからこそ、例えば自分が入院してお世話できなくなった時、被災して避難しなければいけなくなった時にどう動くのかをしっかり考えておく必要があるのだということを改めて感じたインタビューでした。「ペットと防災」という切り口ですが、突き詰めていくとそこには「自分にとって、ペットはどんな存在なのか」という深いテーマがありました。「あなたにとって、ペットとは?」そして「ペットの幸せのためにできること」を今一度、考えてみませんか。

・NPO法人アンビシャス ホームページはこちらから
・NPO法人アンビシャス ペットと防災を伝える「アンビシャスチャンネル」YouTubeはこちらから

09design

部屋でくつろぐ犬や猫たちですが…、よく見るとヘルメットをかぶっていたり、缶詰や懐中電灯、マイペットカルテなどの防災グッズを確認したりしています。
ペットが安心して過ごすことができるのは、飼い主さんがその空間を守っているからこそ。「ペットと防災」について今一度考えよう、というメッセージを込めたデザインです。
(さらによく見ると…部屋にかけられた絵が、前回のコラボデザインになっているのもポイントです!シリーズでぜひどうぞ!)

“We can do more together”、「一緒だったら、もっといろんなことができるよ」というメッセージを添えました。

Design by DLOP

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