CHARITY FOR

「天井のない監獄」を生きる子どもたちに、人間らしく生きる環境と、平和な未来を〜NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン

「パレスチナ」と聞くと、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。紛争、爆撃、人々の泣き顔…。ネガティブなイメージを浮かべる人が多いのではないかと思います。
同時に、「歴史や宗教が絡んでいて、どんな問題なのかはよくわからない」と感じている方が多いのもまた事実ではないでしょうか。

今週は、未だ争いの続くパレスチナの問題について一緒に学びませんか。

今週JAMMINがコラボするのは「NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン(CCP Japan)」。パレスチナ地域内外を問わず、困難な状況にある子どもたちやその家族を、教育や福祉、経済面などから支援しているNPO団体です。

パレスチナでは今、何が起きているのか──。CCP Japanのスタッフで、パレスチナ自治区の一つ「ガザ地区」に3年に及び滞在し支援にあたった中村哲也さん(なかむら・てつや)さん(36)に、パレスチナの現状について、そしてCCP Japanの活動について話を聞きました。

※パレスチナ自治区を理解する上で、その歴史的な背景についても知る必要があると思いました。そちらについては、以下のページで中村さんに詳しい話をお伺いしています。
→【THIS WEEK CHARITY】自治区が二分、故郷を追われて海外へ逃れる人も。パレスチナという地域が抱える背景 

(お話をお伺いした中村哲也さん)

今週のチャリティー

NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン(CCP Japan)

パレスチナ問題により困難な状況にある子どもとその家族・コミュニティーに対し教育・保健・福祉・心理・経済面で人道的な支援を行い、子どもたちの人権を擁護し、自立的な生活向上に貢献するNPO法人。1986年に活動を開始し、現在はパレスチナ・ガザ地区での緊急支援や教育支援、障がい者自立支援のほか、レバノンでのシリア難民支援、パレスチナ難民支援など様々な活動を行っている。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

「ガザ地区」〜流通がすべて制限される「天井のない監獄」〜

(ガザ地区の様子。琵琶湖の半分ほどの大きさの土地に、190万人が暮らす)

──本日はよろしくお願いします。中村さんが滞在していた「ガザ地区」について教えてください。

中村:
私たちの活動拠点のひとつであるパレスチナの「ガザ地区」は、封鎖されており、現地の人権団体が「天井のない監獄」と呼ぶような状態です。「パレスチナ」と聞いて爆撃や紛争をイメージされる方は多いと思います。2014年にも大規模な軍事侵攻があったことは記憶に新しいところですが、現在このガザ地区が抱えているもう一つの大きな問題は、封鎖によって発生しているといえます。

──どういうことでしょうか?

中村:
ガザ地区は幅10km、長さ40km程度の小さい地域です。西に地中海、北と東をイスラエル、南をエジプトに接していますが、そのいずれにおいても人や物の出入りが極端に制限されている状態なんです。

海やイスラエルとの境界はイスラエル軍に監視され、境界に近づいたり沖合に出ようとすると攻撃対象とされます。エジプトとの境界には数年前まで密輸トンネルが多く存在していましたが、現在ではほぼ破壊され、エジプトとの国境もほぼ閉ざされています。

人や物資の通行は数カ所の検問所だけに限定されているわけですが、一般の人が出入りするのは大変厳しい状態にあります。人道支援団体は辛うじて出入りを許可されていますが、それでも厳しい検問を越えていく必要があります。

一般の人が出入りすることはもちろんできません。ガザは自給自足ができる場所ではなく、人口190万人を超える都市化した社会です。

小さな地域にこれだけ多くの人が暮らしているのに、外界との流通が遮断され、必要な物資や水、エネルギーが手に入らない。食料難やガソリンや重油などの燃料不足と停電、それに伴って上下水道のインフラが止まったりと、生活の上に様々な影が落とされています。電気は一日のうち4時間ほどしか使えず、医療機関でも停電があります。経済は停滞し、人口の8割の人が支援に頼らざるを得ない状況にあります。

産業が停滞し、失業率が増加。
近年は若者の自殺率の増加も課題に

(破壊された街の中、幼稚園に通う少女)

中村:
度重なる爆撃により、多くの建物が破壊されました。工場や農地など働き口となる場所も破壊され、多くの人が職につけずにいます。破壊された工場などの建て直しのための建築資材も中々手に入りませんし、輸出もできませんので産業が停滞しています。

2016年の調査では、ガザ地区の若者の失業率は60%を超えると言われています。大学を出ても就職できず、ガザの中では将来に希望を見いだせないと感じている若者が非常に多くいます。近年では、若者の自殺も増加しています。ガザの人たちが人間らしい生活を取り戻すための復興への道筋が破壊されて見通しが立たないのです。

──封鎖が、様々な問題を引き起こしているのですね。

(笑顔を見せる子どもたち。過酷な状況であっても、ここが彼らの生まれ育つ場所であることに変わりはない。健康に育ち、希望ある未来を描けるように活動を続けている)

人口の過半数が16歳以下。
子どもと、子どもを支える大人へのサポート通じ、生活の質の向上を目指す

(爆撃で足を失った少年。義足の提供とリハビリ、心理サポートを行った。現在は歩いて学校へ通い、「将来の夢はゴールキーパー」と語るほど、元気と笑顔を取り戻した)

──そんな状況の中で、どんな支援をされているのですか?

中村:
私たちは、パレスチナの子どもが無事に成長し、彼らが抱く未来への希望が平和につながるようにと1986年より活動を開始しました。

ガザ地区での緊急人道支援や農業支援、子どものための児童館支援や障がい者の自立支援のほか、レバノンでも、難民支援や教育支援、医療支援を行っています。

パレスチナは人口の過半数が16歳以下というぐらい子どもの多い社会です。その大きなニーズに対して支援の効果を広げるためには、子どもへの直接的な支援だけではなく、学校の先生、爆撃などにより障がいを持った子どもたちを支える理学療法士、またお父さんお母さんなど、子どもと接する大人たちにも力をつけてもらう必要があります。

子どもと、そして子どもと関わる大人を支援することで、子どもの生活の質を向上することへとつなげています。

(CCP Japanの支援の一つが「食料支援」。嬉しそうに給食をたべる子どもたち)

人々の生活

(ガザ地区にて、農業支援に携わる中村さん(右)。現地の人たちと)

────現地へ赴任されていたとのことですが、実際にはどんな場所なのでしょうか?緊迫していたのではないですか。

中村:
危険がないわけではありませんが、基本的にはきちんと安全を常に確認しながら活動をしていましたし、楽しいこともたくさんありました。

パレスチナの人たちは人懐こくて、人同士の距離が近いんです。私はガザ地区で農業支援に携わっていましたが、農家さんのところに行くと「よく来たね」と帰り際にたくさんの野菜を持たせてくれたりしましたね。日本人に対しても良い印象を持っていて、歓迎されていることを感じることが多かったです。

──どんな野菜が採れるのですか?

中村:
きゅうりやトマト、オクラやにんじん、とうもろこしやひよこ豆など、日本でも馴染みのある野菜が採れます。

ただ、農家の人たちは野菜を育てては売り、生きる糧にしているのですが、野菜を育てるには水や肥料、電気などにお金がかかります。それに見合った収益を得ようとすると野菜の価格も必然的に高騰します。逆に売れる値段にすると農家が利益を得られないこともあります。また、封鎖によって電力が不足しているので、冷蔵保存ができません。生鮮品の流通をコントロールすることが非常に難しいんです。

一方で、仕事がなく貧しい人たちにとっては野菜や生鮮食品は高価で、そう簡単に手を出せるものではありません。食料として市場には出回っていても、なかなか手が届かないのが現状なんです。乳幼児の栄養失調が問題になっていますが、背景にはそうした状況があります。

(パレスチナと聞くと紛争や爆撃をイメージしがちだが、豊かな文化に溢れた場所でもある。こちらはパレスチナ刺繍。伝統的な柄が一針ずつ丁寧に縫われている)

多くの子どもたちが栄養不足。
成長を助けるため、医療支援のほかに父母向けのワークショップなどを開催

(小児科医による診察の様子)

中村:
ガザ地区の小児科医によると、乳幼児の健康状態はかつてないほど深刻な栄養障がいが見られるということです。たとえば、貧血31%、鉄欠乏32%、免疫や成長に必要なミネラルである亜鉛の欠乏が71%、骨作りをサポートするビタミンDの欠乏が64%などが報告されています。
本来であれば食生活を変えることで栄養状況の改善をはかるところですが、厳しい封鎖による食料不足や生活難により、栄養改善はかなり難しい状況です。

私たちは、支援の一つとして乳幼児の栄養支援を行っています。栄養不足の子どもたちを医師が診察し、一人ひとりの栄養状態にあわせてビタミン剤や鉄剤などの薬剤を処方し、1日も早い回復を支援しています。

また、栄養障がいを抱える子どもの母親や父親たちへのワークショップも開催しています。限られた中でどういう食材を選んで、どうやって子どもたちに適切な栄養分を届けられるのか、小児科医が具体的なテーマを親たちに伝えたり、相談にのったりしています。

(栄養改善ワークショップに集まったお母さんやお父さんたち。我が子の幸せを願う親の気持ちは、日本人と何一つ変わらない)

「人の中に残る支援」を目指して

──これまでの活動の中で、中村さんが印象に残っていることはありますか?

中村:
私は2004年からパレスチナ子どものキャンペーンに携わり、ガザへの支援に関わるようになりました。十何年も支援を続けていると、当初出会った子どもたちが、今では成長して大きくなっているんです。

ガザの子どもたちがたくさんの経験を通じて自信を持って成長できるようにと、2006年に設立した児童館があります。昨年12月にガザを訪れた際、ここに過去に通っていた女の子に会う機会があったんです。
大学生になった彼女は、ジャーナリズムを専攻しているのだそうです。「この先自分の夢がかなうかどうかはわからないけれど、児童館で得た経験が自信になって、自分のことを誇りに思える」と話してくれました。

パレスチナに関するニュースは、暗いことばかりです。
爆撃によって多くの人の命が奪われ、積み上げてきたものが破壊されるだけでなく、長く続いている封鎖は人々の生活や心をも破壊します。一見希望を育てるのは難しいような状況ですが、それでも活動を続けていると人の中には何かが残り、何か役に立つことができて、変わらず成長していくものがあるんだと実感した瞬間でした。

子どもたちは生まれる場所を選べません。そしてどんな状況であっても、子どもたちが次の社会を担っていく存在であることには変わりはありません。教育や成長が保証され、次世代をつくっていく人材として力をつけ、やがてはパレスチナの自立の力となっていくような支援をこれからも続けていきたいと思っています。

(CCP Japanが支援する「ナワール児童館」の子どもたち)

チャリティーは、栄養不足の子どもたちに
薬剤を届けるための資金になります!

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

中村:
ガザ地区の子どもたちへの医療支援で、低栄養状態にある子どもたちへ薬剤を提供するための資金を集めたいと思います。

栄養状態に応じて処方する薬剤は異なりますが、1ヶ月あたり、一人およそ500円ほどの薬剤が必要です。今回のチャリティーで、300人の子どもに1ヵ月分の薬剤を提供するための費用・15万円を集めたいと思っています。Tシャツを着て、ぜひご協力いただければ幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(CCP Japanがガザで続けている聴覚障がい者支援についてのシンポジウムの後、参加者、ボランティア、登壇者を交えて記念撮影)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

ちょうどこの原稿を書いているとき、Facebookのタイムラインに友人がシェアした動画が上がってきました。兵士によって引き裂かれる母と幼い子どもたち。子どもたちは母を行かせまいと泣き叫び、しがみつきます。しかし兵士が引き離し、母親はトラックに乗せられてその場を去りました。子どもは泣き叫びながら走り去るトラックを追いかけます。胸が張り裂けそうな動画でした。「映像から、おそらくパレスチナでの出来事だろう」とコメントが添えられていました。

同じ地球の上で、同じ時間を生きながら、こんな悲惨な出来事が起きているなんて──。半ば、信じられないような気持ちにさえなります。「ただ生まれた場所が違ったというだけの理由で、こんなにも苦しむ人たちがいるのはどうなのか」。中村さんもインタビューの中で、そう話していました。

争いをすぐに止めることはできないかもしれません。でも、困っている人たちに手を差し伸べることはできます。ささやかであっても、私たちと同じように成長し、夢を持ち、それを胸に生きていくことができるように、私たちにもできることがあるはずです。

パレスチナ子どものキャンペーン ホームページはこちらから

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パレスチナに生息するラクダと、平和の象徴である「オリーブの樹」「鳩」を描き、困難の中にある子どもたちが人間らしく生きられる世界の実現と、平和な未来への願いを込めています。

“A beautiful world starts with you”、「美しい世界は、あなたから始まる」。
決して他人事ではなく、私たち一人ひとりがこの問題を考えることで世界は変わっていくんだよ、というメッセージを添えています。

Design by DLOP

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「未来をつくるプロデューサー」パシフィックコンサルタンツ株式会社。
60年の歴史と1,600人を超えるプロフェッショナルが、地域や社会の未来に貢献しています。
会社ホームページはこちら: www.pacific.co.jp

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