(2015年8月に開催された第11回ワークショップコレクションの様子。取り壊し前のビルが、こどもたちのキャンバスに)
みなさんは、こどもの頃「勉強以外の何か」に夢中になったことはありますか?
JAMMINのメンバーで言えばDLOP。彼は、こどもの頃から(勉強を放っぽり出して)絵を描き続けていました。
もちろん、人にそうしろ!とか言われた訳ではなく、自分の思いで──。
最近では、教える・教えられるという関係ではなく、自分で考えることを重視した教育が注目されています。
私、高橋の上の娘が、来春に入園予定の幼稚園でも「こども達が受け身になる教育ではなく、こども達が自分の力で考えて行動する教育「能動的教育」を柱に」という文言がHPにあります。
また、最近では、嵐の櫻井くん主演のドラマ「先に生まれただけの僕」でも「高校生のアクティブラーニング」がテーマとなるなど、こどもたちの「考える力を伸ばす」取り組みが注目され始めているのです。
考える力、アクティブラーニングって聞くと難しく感じるかもしれませんが、パパ・ママだって夢中になって、誰に言われるでもなく絵を描いたり何かを作ったりすることに取り組んでいた経験があるはず。
こどもだけでなく、大人も一緒になって、純粋な気持ちをもった「学び」をまた考えてみたい──。
そんな思いから、今週コラボするのは、「NPO法人CANVAS(キャンバス)」です。
NPO法人CANVAS(キャンバス)
幼稚園から小学生の子どもたちに向けた、「自ら考え学び、創造・想像すること」を重視する、ワークショップを、全国各地で開催する非営利法人。
CANVASは、日曜の夜に流れていた「いつかきっと作っちゃお〜♪」の歌が流れる、真剣な大人とともに、こどもたちが楽しそうに基地を作る様子が流れる清水建設のテレビCM。CANVASは、あのCMのこどもたちの映像作りへ協力したNPOさんでもあります。
スタッフの並木 江梨加(なみき えりか)さんにお話をお伺いしてきました!
(写真右端 CANVASワークショップコーディネーター・講師。年間50件ほどのワークショップの企画・運営を担当)
INTERVIEW & TEXT BY KEIGO TAKAHASHI
──まずは、CANVASさんの取り組みを教えてください。
並木:
学校や公共施設、幼稚園などで、多様なテーマでのこども向けワークショップの企画・運営を行なったり、ワークショップの普及啓発として、誰でもどこでもワークショップを運営できるような環境づくりをしたりしています。団体を創立して15年目を迎えました。
(参加する子どもたちはみな生き生きした表情!)
──ワークショップの講師はCANVASさんがやるのですか?
並木:
私たちが講師を務める場合もありますし、企業の方、クリエーターさん、行政など産官学で連携しながら、一緒にこどもの学びのための機会をつくっています。
──開催するワークショップはどんなものですか?あと、参加するこどもの年齢は何歳ぐらいですか?
並木:
たとえば、CANVASが主催・企画・運営を担って拠点をつくり、スクールのように開催しているワークショップや、企業や学校、行政と連携してこどもたちの活動と社会との接点を広げるようなワークショップなどをしています。参加してもらうのはだいたい幼稚園〜小学校までのこども達です。
──具体的に、それぞれのワークショップの内容も教えてください。
並木:
CANVASが主催するワークショップの一つに「キッズクリエイティブ研究所」があります。テーマは「造形」「サイエンス」「デジタル」など多岐に渡ります。
例えば、大量の紙コップをつかってかたちを造形したり、虹をいろいろな方法でつくり光について体験しながら学んだり、プログラミングして、ロボットを動かすことに挑戦したりと様々です。
(キッズクリエイティブ研究所の一コマ。身近な材料で会場の景色が様変わりする)
──なるほど!もう1つの企業とのコラボ型ワークショップというのはどのような内容ですか?
並木:
企業の技術やノウハウなどを生かして、子どもたちの活動をサポートしたり、子どもたちのアイデアや構想を発信し、社会に還元するようなことをしています。
たとえば、企画のプロである広告代理店のクリエイティブチームのみなさんと一緒に、未来のことについて考えるプロジェクト「新未来学」を立ち上げ、自動車の会社に「未来のくるま」について子どもたちのアイデアを提案したり。
(新未来学ワークショップの様子。自分のアイデアを形にして誰かに伝える)
──なるほど。企業の社員さんにとっても「仕事に対するやりがい」を感じれそうですね。
並木:
こども達にとっては、自分たちのアイデアを真剣に大人が聞いてくれる、ということが、「自分も社会の一員なんだ」という社会参加の体験につながることと思います。
──そもそもCANVASを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
並木:
理事長の石戸奈々子が、CANVASを立ち上げる以前、デジタルのコミュニケーション・表現教育に関する最前線の研究所である、マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボに在籍していました。
メディアラボには、訪れた多くの方々が「おもちゃ箱のようだ」と語るように、オープンで、ありとあらゆるツールが揃う環境や、多様で深い専門性のコミュニティ、学び合い教え合うフラットなメンバー同士の関係性など、とても創造的で理想的な学びの場があったそうです。
(活動する空間をどうつくるか?ということも大切)
それから、多様性や変化に寛容であること、アイデアを形にして新しい価値をつくる、ということを何より大事にする思想がありました。こういった学びの環境やコミュニティ、考え方に触れたことが、CANVASの原点になっています。
そのような学びの場づくりに共感し、こどもと同じように、自身も好奇心をもち続けて学ぶことを大切にしている大人がCANVASのまわりにたくさん集まってくださり、現在のような活動につながっています。
──ここまで聞いてくると、「創造的」であることが、学びにとって重要であるということがわかりますね。「遊び」と「学び」の線引きが難しいような気もしてきました。
並木:
これまで大切にされてきたのは、より多くの知識を得る、ということでしたから、先生が持っている知識を生徒たちに伝達する、一方向型の授業が現在の学校の学びの主流だと思います。
一方で、自分の頭で考える、想像力・創造力を発揮する時間や行為が少ないのではという課題意識をもっています。
(大人は、活動の伴走役としてこどもたちを見守り支える)
──先生から教えられることが当たり前になり、自分で考えることを止めてしまうというイメージですか?
並木:
誰かに教え込まれたことより、興味が持てること、楽しいと思えることに取り組んで、失敗したり成功したりを繰り返すことで、私たちはより深い学びを得られるのだと思っています。
勉強以外のことも含めて、子どもが自分の興味関心を広げたり、試行錯誤することができる場所として、私たちは学校とも塾とも異なる「学びの場所」を担っているという認識です。
(こどもたちが思い切り、成功や失敗を繰り返せる場所として)
──そもそも、私は子ども向けワークショップと聞くと、ショッピングセンターとかでプラ板作りましょう!というものを連想しがちです。ある意味幼稚なというかチープな感じというか。団体が提供する、専門家が監修した「学びが溢れる」ワークショップに対しての理解は進んでいますか?
並木:
私たちが主催するワークショップの博覧会イベント「ワークショップコレクション」というイベントでは、多いときには2日間で10万人の来場者がありました。
CANVASが立ち上がった当初に比べ、「学びの体験」としてのワークショップに対する認識が高まってきていると思います。
(より多くの子どもたちに想像的・創造的な学びを届けたい、という想いからはじまったワークショップコレクション)
──今、ワークショップはどんな場所でやっているのですか?
並木:
先にお話しした「キッズクリエイティブ研究所」は、主に東京都内の大学や公共施設などで定期的に開催しています。街中のいろいろな場所を子どもたちの学びの場所にしたい、というコンセプトで会場を選んでいます。
──都内だと車を持たない家庭も増えていると思います。きょうだいがいる親御さんだと移動すら大変なことだと思うのですが。
並木:
そうだと思います。例えば、開発が進んで、人口が郊外へ伸びているので、急速にこどもの数が増えている地域もありますし、より多くのいろいろな場所でワークショップが開催できるよう、「道具」や「場」などの運営に必要な費用をチャリティーで集めて行きたいですね。
──色んな場所でワークショップが開催できるようになること、楽しみにしています!!
インタビューを終えて〜編集後記〜
ある日、うちのデザイナーDLOPに聞きました。「そもそも、なんで絵を描こうと思ったの?」と。
DLOP曰く「子どもの頃、自分の絵を見せたら、友達から上手いね!って褒められて。それがすげえ嬉しかったんですよ! それ以来、夢中で授業中も描いてました(笑)。今もその気持ちが原動力です」とのこと。
彼も小学生の頃、「将来は絵で飯を食う!」なんて決めていた訳ではありません。
ただ、「勉強以外の何か」の一つ、絵が好きだったから描き続けた。それを評価してくれるのは「成績」ではなく「友人の笑顔」。それをとことん突き詰めていくことで、今のデザイナーとしての彼があるのだから、人生とは分からないものです。
(より多くの人に喜んでもらえるよう、日々奮闘中!)
CANVASのワークショップも、言ってしまえば「勉強以外の何か」を見つけるための取り組み。その興味・関心の幅を広げるためのものに他なりません。
私が今回のコラボで一番伝えたかったのは、「勉強以外の何か」の大切さ。子どもでいえばそのまま「勉強以外の何か」であり、私たち大人でいえば「仕事以外の何か」。
子どもに「勉強しなさい!」ではなく、「勉強以外のことを一生懸命やってね!」と言えるパパになりたいものですね!
子どもだけでなく、私たち大人も一緒になって、未来という「キャンバス」に、ワクワクするような未来を一緒に描いてみませんか?
みんなの輪の中心にあるのは、真っ白なキャンバス。
多様な人が、いろいろな意見を出し合って、未来を考える様子をデザインしています。
「LEARNING BY DOING」〜行動することが学びになる〜
子どもだけでなく、大人も人生を楽しくするための言葉を選びました。
Design by DLOP