クリスマスの思い出といえば、誰しも「サンタさんからのプレゼント」を思い浮かべるのではないでしょうか。
クリスマスの夜、ドキドキしながら寝床につき「サンタさんに会うために、がんばって起きていよう」と布団のなかで一生懸命睡魔と闘うのだけれども、いつの間にか寝てしまう。
…朝目覚めたとき、枕元にはプレゼントが!
幼心に、会ったことも見たこともないけれど、どこか遠くから自分のことを見ていてくれる存在であるサンタさんに思いを馳せた記憶があります。
今週のチャリティー先は、NPO法人チャリティーサンタ。
クリスマスの夜、サンタさんに扮したボランティアたちが子どもたちに「プレゼントと夢」を届ける活動をしています。
2008年の活動開始以降、これまでに22,000人を超える子どもたちに夢を与えてきました。
夢を与えるのは、子どもたちだけではありません。
サンタさんに扮して子どもたちに笑顔を届ける大人たちもまた、ボランティア経験を通じて、誰かを幸せにすること、誰かを思いやること、守ること、そんな温かさを感じるのだといいます。
立ち上げ当初は、親御さんから依頼を受けて家庭に出向くというスタイルでプレゼントを届ける活動をしていましたが、2015年より、経済的に苦しい家庭の子どもたちにもプレゼントを届ける「ルドルフ基金」という活動も新たに行っています。
「豊かな家庭の子どもも、貧困家庭の子どもも分け隔てなく、サンタクロースを信じるすべての子どもに、夢と笑顔を届けたい」。
そんな思いで活動を続けるチャリティーサンタ。今回は、チャリティーサンタ代表の清輔さんにお話をお伺いしました!
▲チャリティーサンタ代表の清輔(きよすけ)夏輝さん。
NPO法人チャリティーサンタ
2008年に始まった日本最大級のサンタクロース団体。独自のサンタ研修を受けたボランティアが依頼を受けた家庭の子どもにプレゼントとメッセージを届ける活動をしています。
——2008年から活動をされているとのことですが、具体的な活動内容について教えてください。
私たちはサンタを待っている一般の家庭に、クリスマスイブの夜にサンタ研修を受けたボランティアのスタッフを派遣し、子どもにプレゼントを届けています。
サンタの格好をしてただプレゼントを届けるだけでなく、申し込みの際、事前に親御さんやご家族に記入してもらった「伝えたいメッセージ」をプレゼントを渡す時に伝えます。
たとえばその子が頑張ったことやできるようになったことを「よくがんばったね」と褒めたり、「これからもがんばってね」と応援したり、一人ひとりに伝えています。
サンタを呼ぶにあたって、プレゼントは各家庭で用意してもらい、寄付としてお金をいただきながら活動を続けてきました。
▲クリスマスイブの夜、自宅にサンタクロースが!子どもたちも大喜び。
サンタを呼んだ親御さんや子どもたちはもちろんですが、サンタのボランティアに参加してくれる人たちもびっくりするぐらい喜んでくれるんです。
サンタになって見ることができる世界には、大きな感動があるんですよね。
サンタを呼んだ側も、サンタになった側もハッピーになれる。そんな活動です。
——すばらしいですね。経済的に厳しい家庭の子どもたちにもプレゼントを届けるために、新たに「ルドルフ基金」も始められましたが、これはどんな経緯で生まれたのでしょうか?
活動を始めて6年経った頃、2014年に、活動を通じてプレゼントを届けた子どもの数が1万人を超えました。
それで「1万人を超えました!」っていろんなところで言いふらしてたんですけど(笑)、「あなたたちは、数を追っていくことだけでいいの?届けている子どものことをわかってる?把握できている?」という問いをもらったんですね。
そこで、自分たちの活動を振り返る意味もあって、これまでチャリティーサンタを利用してくださったご家庭に対してオンラインアンケートを実施したんです。
そこでわかったのは、チャリティーサンタを利用してくださっていたのは「経済的に豊かな家庭」がとても多かったということでした。
チャリティーサンタの活動が、金銭的に余裕のある人のためのサービスになってしまっているってことが、アンケートを通じて見えてきたんです。
世帯年収が平均よりも低い家庭にヒアリングをしてみると、「クリスマスに何かしてあげたいけど、金銭的にも時間的にも余裕がない」という声が聞かれました。
サンタさんは、子どもたちに夢を与えてくれる存在。
「チャリティーサンタ」を名乗る僕たちが、日本の経済的に厳しい家庭の子どもたちにプレゼントを用意して、 “(貧困の家庭にあっても)子どもにはサンタさんがやってくる”っていう夢を叶えようと、2015年に「ルドルフ基金」を立ち上げました。
——「子どもの貧困」という単語は、最近本当によく聞かれるようになった言葉ですよね。
JAMMINもこれまで別のNPO/NGOさんとのコラボを通じて、貧困が原因で、子どもの学力の格差や食生活の面で偏りが出てしまうということは伝えてきましたが、「クリスマスの日」というのは考えてみたことがなかったです。
実際には、どんな声が聞かれるのでしょうか?
私たちが独自に行ったアンケートで見えてきたのは、「経済的な理由により家族の思い出作りがなかなかできない」という現状でした。
「生活はなんとかやっていけても、プレゼントを準備するお金がない」、「一緒に出かけたいが、シングルマザーで働かねばならず、経済的にも時間的にも厳しく、子どもに寂しい思いをさせている」、そんな声が聞こえてきたんです。
▲貧困家庭にクリスマスプレゼントを届けたとき。子どもは全身で喜びを表現してくれました。
クリスマスは特別な日だから、その1年を締めくくる意味も込めて、もしサンタさんがうちに来てくれたら、きっと特別な日になる。
そして家族の思い出が増える。貧困による「思い出の格差」を埋めることならできると思ったんです。
——「思い出の格差」…!考えてみたことがなかったです。
でも、確かにそうかもしれませんね。
僕たちがご家庭に伺う時、親御さん・お子さんとサンタが一緒に写った記念写真を、親御さんの携帯やカメラなんかで撮るようにしてるんです。
親子2人の場合、一緒に写っている写真がなかなかなかったりして、「あのときはこうだったな」って思い出せるような写真が少ないという声をヒアリングで聞いたことから始めたことです。
「子どもと一緒の写真が撮れて、すごく嬉しかった!」、そんな声もいただきました。
——話は少し変わるのですが、ルドルフ基金のプレゼントは、チャリティーサンタ側が用意するのですよね?
そうですね。
プレゼントは今、試行錯誤しているところなんです。一昨年は、クリスマスのブーツに入ったお菓子の詰め合わせをプレゼントしました。
——子どもが大好きなやつですね(笑)。
昨年は、少し趣向を変えて、紙袋にお菓子を詰め合わせたプレゼントを用意しました。
男の子も女の子もいるし、これまでは消耗品であるお菓子だったんですが、今後は企業と協賛したりしながら、何か子どもの愛着につながるようなプレゼントにしていきたいと思っています。
——すばらしいですね!
▲昨年のクリスマスプレゼントと、プレゼントを届けるために、集まったサンタたち。
また、貧困家庭へのアプローチの方法は、現在まだまだ模索中なのですが、少しずつ工夫を加えて改善しています。
各家庭に「サンタに申し込んでもらう」ということは変わらないので、申し込みのハードルを下げること、貧困家庭になかなか届いていかない情報を届けていくために、ママたちがネット上で使っているサービスとタイアップしたり、SNSのひとり親コミュニティーにアプローチしたりとITを使ってダイレクトなアプローチを試みています。
あとは、貧困家庭にアプローチしているNPOとタッグを組んで、貧困の家庭にサンタさんとの思い出が届けられるようにするなど、いくつか方法を試みています。
いずれにせよ、ずっと心に残ってくれるような、特別な思い出を届けたいと思ってますね。
——そういうところからいくと、クリスマスの思い出がなかなかない児童養護施設や子ども食堂を訪れて、チャリティーサンタのサンタさんがプレゼントを届けるというのは考えていらっしゃらないのでしょうか?
これまで数年に渡って、いくつかの施設等で取組をさせていただいてわかったことは、児童養護施設等は季節の行事を大切にしている傾向があるように感じています。
つまり、すでに別でプレゼントを準備されていたり、そういった支援があったりすることが多いようです。
しかし、これからも様々な関係者の方と対話を重ね、置かれた環境に関係なく、すべての子ども達にサンタクロースとの思い出を届けていきたいという気持ちはかわりません。
▲サンタ講習会の様子。ボランティアのスタッフたちは皆、チャリティーサンタが実施する講習を受講します。
プレゼントをくれるだけでなく、自分の家に来てくれて、「君はこんなことがんばってるよね、すごいね。応援してるよ、これからもがんばってね」と話しかけてくれる。
自分のことを見守ってくれている「身近なサンタ」こそが、僕たちチャリティーサンタの役割だと思っています。
——今後のビジョンについて、教えてください。
テロ、戦争やいじめ…毎日、いろんな悲しい事件が起きています。
こんな事件がなくなって欲しいと思いますが、ゼロにすることってすごく難しいと思うんです。だけど、1年365日のうちの1日、クリスマスの夜だけでも、サンタの到来を心待ちにしている子どもに、大人たちがこっそり協力して、夢を与える。
▲サンタコスチュームもオリジナル。株式会社ナルミヤ・インターナショナルと共同開発しました!
その1日、その時間だけ、すべての子どもたちに夢を届けることは、僕は決してできないことではないと思うんです。
クリスマス1日だけでも、大人が誰かのサンタになって、子どもが夢を見ることができたから、それをもし、クリスマスの1日だけでなく続けていくことができたら…、社会って変わっていく。そして同時に、私達の活動に参加した多くの大人は「社会は変わっていく」と感じてくれると思っています。
僕は「みんなもっとおせっかいになればいいのに」と思ってます(笑)。
子どもたちにとって、「将来が楽しみだ!」と思える社会は、大人たちにとっても同じ時を過ごしていく社会なわけで、大人たちがワクワクする社会は、子どもたちにとってもワクワクする社会なわけで。だから、「サンタクロース」っていうハッピーなアイコンを使って、気持ちの良い、ワクワクする社会を作っていきたいと思うんです。
——なんか、想像するだけでハッピーになりますね!
——最後に、チャリティーの目標額と使途を聞かせてください。
JAMMINとの今回のコラボで、貧困家庭の子どもたち30人にプレゼントを届けるために、90,000円を集めたいと思っています!
1人の子どものプレゼントを届けるには、約3,000円かかります。
チャリティーサンタの支部は、全国に約30あります(2017年現在)。
各支部につき1人ずつ、貧困家庭の子どもにプレゼントと思い出を届けたいと思っていますので、ぜひご協力いただけるとうれしいです!
——今回のコラボで、プレゼントと夢を届けるお手伝いができたら嬉しいです!
ありがとうございました!
▲サンタクロースみんなで集合写真。「あなたも誰かのサンタクロース」!
インタビューを終えて〜編集後記〜
「サンタクロースの思い出」って、大人になってからも割と盛り上がる話題だったりしませんか?
「うちは煙突がないけど大丈夫だろうか」、「他の子どもにもプレゼントを運んでいるだろうから、疲れているに違いない」…そんな余計な心配をしたものだなあと(笑)、思い出すだけでほのぼのとした気分になります。
しかし今回、清輔さんのお話で「思い出の格差」という言葉を聞いて、ハッとしました。
子どもの特権って、夢見ることにあると思います。
次はあなたが、誰かのサンタ。
真夏のサンタをイメージした今回のチャリティーTシャツで、子どもの夢にご協力ください!
NPO法人チャリティーサンタのホームページはこちら
真夏のバカンスを楽しむサンタクロース。子どもたちへのプレゼントの配送に追われる冬と違って、夏はオフシーズンだもんね?!
いえいえ、それだけではないですよ!
“IT’S YOUR TURN”、「次はあなたの番」!
サンタさんから、あなたに仕事の任務が回ってきました!
あなたが誰かからそうしてもらったように。次はあなたが誰かに、笑顔と夢を届けましょう!
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