【FACTORY#03】デザインをプリント出来るよう版に落とし込む

2015.6.21 | CATEGORY : THE FACTORY

毎日のように目にするモノ。それにも関わらず、なんとなく見過ごしてしまって、魅力的なストーリーがあることに気がつかない。私たちの身の周りには、そういうもので溢れているのではないでしょうか。わたしたちは今顔が見えるモノづくり、MADE IN JAPANを進めています。モノづくりの現場を見に行くことで、裏側にある職人のこだわりや想いをこのFACTORYでは伝えていきます。

京都・久世。専門業者として作り続けるプリント用製版の工場

京都から西南方向へ電車で10分程度の場所にある久世。久世地域は京都市内からほど近く、神社や城跡等、昔の雰囲気が残る地域でもあります。この久世に工場を構えるのが株式会社サンコウ。Tシャツ等のシルクスクリーンプリントに使われる版を製造する会社です。

そもそも京都のプリント業界では分業制度(製版は製版だけ、プリントはプリントだけ)が定着しているそうで、中でもサンコウは昭和47年の創業依頼、製版に特化して成長してきた会社さん。サンコウはアロハシャツ等を制作する紡績工場さん向けに版を制作していました。

生地の生産拠点が海外に移るに従い日本の紡績工場は徐々に廃業。少しずつTシャツ等のプリントアパレル制作のための版作りにシフトしていき、今も全国のアパレルブランドのプリント工場へ版を納めています。

コアとなるのは職人の勘。高い品質の版を作るための2つの工程

製版はアルミもしくは木材のフレーム(枠)に、感光膜を塗布した紗(しゃ)にデザインを焼きつけるものです。スクリーンの上にインクを載せ、ゴムベラで刷り込むことで生地の上にデザインをプリントします。製版には高いデータの再現性はもちろん、ずっと同じデザインを表現し続けられる耐久性が求められる等、プリントする上で重要な役割を果たします。

ここからは、実際に工場を見学させて頂いた様子から、スクリーンが出来上がっていく工程を順に紹介していきます。

まず前半は、素材を組み合わせて土台(紗張りされたスクリーン)を作っていきます。プリントするデザインの大きさにあわせてフレームを選び、紗をボンドで貼付けます。この時、紗は4方向へ均等に引っ張り、テンションをもたせて貼り付けることがポイントになります。

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(紗張りは4方へ均等に引っ張れているかバランスを見ながら慎重に行われる)

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(紗の素材は薄く、目隠し用のレースカーテンのよう)

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(ボンドで固定され、隙間からインクがもれないようオレンジの紙テープを張り付けてスクリーンの土台は完成)

ここからは後半の工程。いよいよデザインをスクリーン上で表現していく作業を見ていきます。均等に張られた紗に紫外線に反応して固まる特殊な薬品を塗り、乾燥させます。この薬品が塗られた時点では全ての目が詰まっています。

デザインが印刷されたフィルムの上にこのスクリーンを置き、下から紫外線を照射して感光膜を硬化させます。この時、紫外線が当たらないデザイン部分の感光膜は硬化しません。この部分を水洗いし感光乳剤を取り除きます。そうすると、デザイン部分が浮かび上がってきます。

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(紗張りされたスクリーンに均等に乳剤を塗っていく。その後一度乾燥へ)

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(スクリーンの下にフィルムをセットして下から照射)

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(紫外線照射直後の様子、デザイン部分の色だけ違うのがわかる)

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(デザイン部分の感光乳剤を洗い落としスクリーンはほぼ完成する)

繊細なデザイン。それを長くプリントし続けるための工夫

デザインを版にする時に気になるのが、その再現度。手書きの味を残しながら、イメージを変えることなく、版に落とし込むことは容易な作業ではありません。サンコウではイラストレータ・フォトショップはもちろん、現場で使う素材を熟知したオペレータが常駐。細かい部分までデザインの風合いを再現できるよう、気を配っています。さらに、版を作った段階で終わりにすることなく、実際に工場で試し刷りまで行うことでその精度を入念にチェックしています。

手作業でデザインを表現していた時代から続く製版の技術

サンコウではパソコンが普及する以前から製版を行っています。当時は職人が1点1点、彫刻刀のようなものでデザインを職人が数日かけてフィルムにしていたそうです。

サンコウはその時代を経てなおも製版を続けています。手作業でスクリーンを作った時代から磨かれていた製版の技術。これからも変わらず技術が受け継がれていくことを願ってやみません。

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(株式会社サンコウ代表の森本克彦氏(右)と現場を統括する白数氏(左))

会社情報

会社名:株式会社サンコウ
住 所:〒601-8213 京都府京都市南区久世中久世町三丁目37
電 話:075-933-2224