CHARITY FOR

「犬と同じ方向を見て歩く」。聴覚障害のある人の耳の代わりとなる「聴導犬」を育成〜公益社団法人日本聴導犬推進協会 

きこえない人・きこえにくい人の耳となり、さまざまな音を伝えてくれる役割を果たす「聴導犬」。現在、全国には51頭の聴導犬が活躍しています。

今週のコラボ先は、公益社団法人「日本聴導犬推進協会」。
人と犬とが互いを思いやりながら、お互いにストレスのない形で社会参加できる聴導犬の育成を心がけてこられました。

「『人と一緒にいたい』という気持ちをたくさん持っている犬に聴導犬になってもらうことで、その犬も『いつも使用者さんと一緒にいられて幸せ」、それが当たり前というふうに思える。そんな犬たちを育てています」。

そう話すのは、事務局長であり、訓練士の水越(みずこし)みゆきさん(49)。
聴導犬について、活動について、お話を聞きました。

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お話を聞いた水越さん

今週のチャリティー

公益社団法人日本聴導犬推進協会

聴導犬があたりまえの社会、聴覚障がい者が安心して暮らすことができ、人と動物が共生できる社会を目指して、聴導犬の育成、普及啓発活動を行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2026/8/24

きこえない・きこえにくい人の
「耳」となって日常をサポート

インターフォンの音を知らせてくれているところ

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

水越:
「聴導犬」と呼ばれる、きこえない・きこえにくい方の日常をサポートする犬の育成をしている団体です。聴導犬のことを知らない方もたくさんいるので、普及啓発活動も行っています。

──聴導犬とはどのような犬ですか。

水越:
私たちは普段、さまざまな音に反応して生活しています。
「インターホンが鳴った」「冷蔵庫が開きっぱなしになっている」「洗濯が終わった」「車が近づいている」‥、日常生活で発生するさまざまな音、また緊急地震速報や津波警報といった命を守るために大切な「音の情報」に、人の代わりに反応し、伝えてくれるのが聴導犬です。

訓練の様子。「音が鳴ったところを知らせてくれて『なに?』とお互いに見つめ合って確認しているところです」

水越:
「(鳴ったのは)冷蔵庫だな」「洗濯機だな」と音を聞き分けているわけではなく、音の発生源を探し、見つけて確認したら使用者さんの体を触って「音が鳴っているよ」と伝え、使用者さんが「どこ?」と聞くと、発生源まで誘導します。

外出先では、聴導犬が耳となって、見えていない後ろなどから来る危険な音などを伝えます。犬が使用者さんの少し前を歩き、その顔が右、左、後ろ、どこを向いているか、使用者さんがその方向を見ることで視覚的な確認ができます。

──なるほど。

外出中、後ろから来る自転車を知らせる

水越:
聴導犬が、すべての音の情報を拾って反応するわけではありません。
人通りや車が多い場所では、反応しなくて良い音もあります。一方で、人通りが少ない住宅街、人間のすぐ近くを自転車が通るような商店街などでは、安全のために伝えてもらいたい音もあります。
環境に合わせて「これは気にした方がよさそうだ」という音を、犬自身が判別して反応し、使用者さんに伝えられるよう訓練を行います。

必要ない音に反応した場合は「こういうところではいらないよ」と伝えながら、やりとりの繰り返しによって「使用者がどのような音の反応を必要としているか」を、聴導犬自身が認識し、判断できるようになっていきます。

街の中を歩く訓練。「人混みや散歩している人、散歩している犬、立ち止まって観光している人や写真撮影をしている人など、さまざまな人がいる場所で訓練を行います」

「性格や個性に合わせた、
負担のかからない聴導犬を社会に」

2026年3月にデビューした聴導犬「あるはみ」。「教えたことを素早く理解し、応用力も高く、使用者さんをしっかりサポートしてくれる頼もしい存在です。使用者さんと共に様々な場所に同行し、社会参加の機会を増やしています」

水越:
とはいえ、犬たちが皆、訓練を通じて同じようにものごとを覚えるわけではありません。
もともと勘が良く、自分でできることをどんどん広げる子もいれば、一方で教えたことや決めたルールを忠実に守る子もいます。何でもすぐに興味を持ってくれてすごく訓練しやすい子もいれば、興味を持ってもらうまでに時間がかかる子もいます。

犬の性格により、育成・成長の過程も、本当にそれぞれ違ってきます。

「『シャチ』は、千葉県で放浪していたところを保護され、協会に来ました。協会ではPR犬として10年間活動し、聴導犬の普及を担ってくれました」

──そんな中でも、聴導犬としての向き不向きはあるのでしょうか。

水越:
私たちとして「犬がストレスを抱えた状態で仕事をしないこと」は強く意識しています。
犬が環境の変化が苦手だったり、恐怖心があったり、何かにつけて声が出てしまったりすると、「社会参加」という視点で見た時に犬にとっても負担が大きく、聴導犬としてやっていくのは難しいです。

その犬にとって向いていないことであれば、それはストレスになるので、違う道を考えます。「犬にも使用者さんにも負担がかからないような聴導犬を社会に出していく」ということを心がけています。

2025年7月に引退した聴導犬。「現在は、引退犬ボランティアのご家族と共に余生を満喫中です。現役中は、使用者さんの学会参加のお供で2度も渡米しました。また、協会のパンフレットやイベントのチラシなどに掲載する聴導犬のモデルとしても活躍しました」

水越:
聴導犬に向いていないからといってダメとか悪いということはなくて、一般家庭で家庭犬として愛されて過ごしますし、PR犬として活躍してくれたりもしています。

──保護犬から育成されることもあるそうですが、いずれにしても「中型以上」の犬を育成されるそうですね。

日本聴導犬推進協会では、育成開始当初からオレンジ色をシンボルカラーと決め、聴導犬にはオレンジ色のケープに背中・脇に「聴導犬」と記載。「ペットと間違われないよう、周囲の方にご理解いただけるようにしています」

水越:
聴覚障害は、パッと見てその障害がわかりません。聴導犬が一緒にいることで「見えない障害を、見える障害に変える」という役割も果たしますが、それを考えた時、小型犬だとどうしても遠くから見てわかりにくいということがひとつあります。

聴導犬は、盲導犬のように犬種が決まっているわけではありません。見た目はほぼペット犬と同じで「働いている犬」ということが分かりづらいので、外では「聴導犬」と書かれたケープを身につけますが、その時に小型犬だと、やはり少し分かりづらいです。

もうひとつ、小型犬は、移動についても体力的に難しいということがあります。

PR犬の「ヒマワリ」。「年間、80件前後の講演やイベントに一緒に参加しています。各会場では、聴導犬のお仕事を紹介したり、ふれあいや写真撮影を通じ、聴導犬の普及を担当しています」

──詳しく教えてください。

水越:
毎日の通勤やお出かけで使用者さんと人混みを歩くとなった時、中型犬以上であれば、人の膝あたりに目線がきますが、小型犬は目線が足先になります。蹴られたり踏まれたりするような状況になりかねないし、犬にとっても大きな負担になってしまいます。

また、最近は猛暑日が多いですが、地面からの熱も、小型犬と中型犬とで受ける度合いが違ってきます。他にも骨折しやすかったりということもあり、聴導犬としてできることが限られてしまうため、中型犬以上を育成しています。

「『いろは』は、多頭飼育になりそうなところから保護された犬です。嬉しくても声が出てしまうために聴導犬になることはできませんが、人に寄り添うことが上手なので、音に反応するペットとして、きこえない方のところに行くことが決まっています」

より自然に、音に反応する
犬を育てる

「使用者さんとの日常生活の中で利用するであろうスーパーやパン屋さんでお買い物の訓練をしているところです。商品のにおいを嗅いだりせず、カートを押している人が来たりしても落ち着いて回避できるようにします」

──育成の際、意識していることはありますか。

水越:
使用者さんにとって、聴導犬はまさに耳の代わりとなる存在です。
犬たちにとって、より自然な動きとして音を聞いて反応してもらうことが、お互いに負担が少ないと思っているので、そのあたりは意識して育成しています。
「無理にやらせている」「働かせてかわいそう」という意見をいただくこともありますが、私たちとしては、ペットの生活の延長線上として、少し特別なことをしているという認識です。

人と一緒に歩くことは、ペットの犬もしますよね。そこにもうちょっとだけプラスして、「音を聞いて、反応する」という普段当たり前にやっていることを、ちょっと強化しているだけ。そんなイメージです。

──そうなんですね。

使用者さんと聴導犬。「大学で講義中の使用者さんの足元でその様子を見守っています」

水越:
「働いている犬はそんなことはしないだろう」と思われますが、普通にイタズラもするし、噛んではダメなものを噛んで壊すこともあります(笑)。

他の犬と同じように大好きな飼い主さんと一緒に過ごしながら、ただちょっとだけ、特別なお仕事をしている。それが聴導犬です。
だからこそ、常に人と一緒にいることを喜びと感じる性格の子でなければ、聴導犬になることは難しいです。

ペット犬の場合は、飼い主さんがお仕事に行っている間などお留守番があったりしますが、聴導犬は、家でも外でも、ずっと使用者さんと一緒です。
「人と一緒にいたい」という気持ちをたくさん持っている犬に聴導犬になってもらうことで、本人も「いつも使用者さんと一緒にいられて幸せ」、それが当たり前というふうに思える。そんな犬たちを育成しています。

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「お互いを理解し、関係性を築く」

新施設での一コマ。「PR犬ヒマワリと、新しく協会に仲間入りした候補犬のごん太、引退犬アーミのお昼寝です(笑)」

──「より自然に聴導犬として仕事をしてもらう」というところで、なにかコツのようなものはあるのですか。

水越:
私は訓練中だけでなく、24時間ずっと、犬たちと生活しています。人の日常生活を知らなければ、聴導犬として働くことが難しいからです。

一緒に生活する中で、「人はいつも、あなたたちのことを気にかけているよ」ということ、「あなたたちが発信する情報を、人が読み解き、やりとりできるよ」ということ、「それが人と犬の当たり前の関係だよ」ということを伝えていきます。

公共交通機関を利用しての訓練の様子。「人の乗降や扉の開閉、揺れや音などに気をつけながら訓練を行います」

水越:
使用者さんのところに行った後も、その「当たり前の関係性」を受け継ぎ、築いていってもらうことが大切で、聴導犬に限らずですが、お互いにすれ違ってしまうと攻撃性に発展したり、心を開かないということも起きてきてしまいます。

人が犬の思っていることを読み解くというのはもちろん、犬たちも自分たちが情報を出すだけではなく、人が何を考えているのか、どうしてほしいと思っているのかというのを、しっかり読み取れるように育て、その関係性をずっと保っていくこと。お互いに「何を考えている」「何をしてほしい」ということを、理解し合っていくことが大切です。

──難しそうですね。

水越:
こちらとしては「どうしてほしいか」をまず持っている必要があります。
そこが曖昧だったり、やってはダメなことをしているのにスルーしてしまったりするのは良くありません。怒るとか叱るということではなく、違うことは「違うよ」とはっきり伝えないといけないし、特に命に関わってくるようなことは、強く伝える必要があります。

「こうしてほしい」と伝えることもしますが、その子が自分なりに「この人はこうしてほしいと思っているのかな」と考えて行動した時は、「そうだよ」「それでいいんだよ」っていうふうに、しっかりフィードバックしてあげることも大切です。

新施設には、シャンプーのためのドッグバスを設置しました」

──大切にしている姿勢などはありますか。

水越:
「犬と同じ方向を見て歩く」ことかな。
「犬と向き合う」ことも大事だけど、「聴導犬になる」という方向に向かって、お互いがお互いを気にかけながら、一緒に歩いていきたいと思っています。

犬が足を止めて戸惑う時があれば、こちらも足を止めて原因やどうすればいいかを考えるし、もし犬が一歩踏み出すことが難しい時は「先に進むから、一緒に行こう」って声をかけられるし、逆に犬が走り出しそうになる時は「一旦止まって、ゆっくり、理解しながら進んでいこう」と言えます。

私たちはあくまで、犬たちにとっての通過点。使用者さんとの暮らしの中で、いろんなものを築き上げていく、その土台の部分を作るのが役割です。

新施設で定期開催されている、聴導犬について学べる見学会「聴導犬に会いに行こう」の様子

──印象に残っている聴導犬はいますか。

水越:
どの子も印象に残っていますが…、自分の仕事にものすごく誇りを持っていた子がいました。エスカレーターが苦手で、訓練は大変でしたが、それ以外は申し分のない子でした。

使用者さんもとてもアクティブで、常に一緒に行動し、たくさんの経験をしました。「自分は、使用者さんの耳の代わりなんだ」ということをよく理解していて、それができることを誇りに感じていることがいつも伝わってくる子でした。

もう一頭、ものすごく真面目な子がいました。
教わったことを忠実に守りたいというとても几帳面な性格でしたが、一方で使用者さんがわりと適当で、犬的にはフラストレーションが溜まったようです。
耳がきこえない分、どうしても世界が自分だけの視野になってしまうこともあって、犬一頭分それを広げるのはなかなか難しいこともあるのですが、この子は「俺のことも考えろ!」って、使用者さんに体当たりしたり、目の前でぐるぐる回ったりして不満を爆発させ、しっかり使用者さんの世界を広げさせた子でした。

使用者さんは「はー、また怒られた」としょっちゅう悩んでいましたが(笑)、最期までずっと一緒に過ごす中で、関わりはみるみる変わっていきました。その子はきっと、どこかの段階で「俺がなんとかせねば。この人のことを怒ってあげないと」と思ったんだと思います。そういう使命感が、非常に強い子でした。

「雨の日はカッパを着用して、使用者さんと共に行動します」

「同じ方向を見て、対話しながら育成を」

次代の聴導犬候補ごん太、PR犬ヒマワリ、引退犬アーミ。「年齢も大きさも違いますが、お互いにやりすぎないように気をつけながら仲よく遊んでいます」

──聴導犬を育成していてよかったと思う時はどんな時ですか。

水越:
使用者さんに「犬がいてくれてよかった」と言ってもらう時でしょうか。
使用者さんと聴導犬、ペアになり始めた時から、合宿、試験、合格、デビュー、その後も私たちは、二人の姿を後ろからだったり、横からだったり、見つめながら関わっていくわけですが、その中で「犬がこういうことをやってくれて、嬉しかった。よかった」と言われた時が、やっていてよかったと思う時です。

協会としては、使用者さんともしっかり関係性を作り、希望を伺いながら、育成していく必要があります。犬と使用者さん、お一人お一人とも対話をしながら、これからも皆で、同じ方向を見て歩いていきたいと思います。

完成した新施設

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

水越:
2025年8月に新施設が開所しました。現在はここを拠点に、犬の訓練だけでなく、講習なども行っています。
今回のチャリティーは、新施設の室内に滑り止めシートを敷いたり、施設周辺に防草シートを敷いたりなど、新施設の犬たちの住環境整備のために活用させていただきたいと思っています。ぜひ、応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

2025年8月20日、新施設開所式にて、参加した皆さんとの記念撮影

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

それぞれの犬の性格や個性を見極めながら、使用者さんの「耳の代わり」を、楽しみながらできる犬を育てていく。今回で3度目となる日本聴導犬推進協会さんとのインタビューですが、毎回、水越さんのお話から、犬への深い愛情と思いやりを感じます。
きっと犬もそれを感じ取り、だからこそより一層、人が好きになり、人と一緒にいたいと思うのかもしれません。

・日本聴導犬推進協会 ホームページはこちらから

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【2026/8/24-30の1週間限定販売】
音符をまとい、楽しそうな姿の犬たちを描きました。
聴導犬として、犬たちが楽しみながら音を伝えていること、また聴導犬と一緒に暮らすことで、使用者さんの人生もまた、楽しく豊かなものになる様子を表現しています。

“Different ears, same heart(耳は違っても、心は同じ)”というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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