CHARITY FOR

「あんなことあったな」。思い出がその人の糧になり、何かあった時に踏ん張る力になる。子どもたちに心温まる経験を〜NPO法人西淀川子どもセンター

今週、JAMMINがコラボするのは、大阪市西淀川区で活動するNPO法人「西淀川子どもセンター」。
子どもが何かあった時に駆けこめる居場所、何もない時でも訪れられる居場所を作りたいと活動をスタートし、今年、15周年を迎えます。

「先生は学校の中の子どもは見ても、家庭や育ちの事情までは見ていません。だから授業中に寝ていたり、必要なものを準備できなかったりしても怒られてしまう。

『自分を助ける一つの方法として、誰かに話す方法があるねんで』と子どもたちに伝えながら、地域の大人たちが、子どもたちに気軽に『どないしたん?』と声をかけられる関係をいかに作っていくか、試行錯誤を重ねてきました」と話すのは、団体を立ち上げた西川日奈子(にしかわ・ひなこ=以下「ひなやん」)さん(67)。

ひなやんさんは5年前、代表を息子の奈央人(なおと)さん(42)に譲り、現在も奈央人さんと二人三脚で、そしてまた若いメンバーと共に活動しています。

大阪・御幣島にある事務所にお伺いし、活動について、お話をお伺いしてきました!

(お話をお伺いした西川奈央人さん(写真左)、日奈子さん(写真右))

今週のチャリティー

NPO法人西淀川子どもセンター

子どもが自分自身を大切な存在と感じ、安心して納得した人生を送ることができるよう、地域に根ざした子ども支援を行うNPO法人。今年で活動15周年を迎えます。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2022/9/26

子どもたちの居場所や体験づくりのために活動

(ごはん会が開催される土曜日、その前に西淀川子どもセンターさんにお伺いしてお話を聞かせていただきました)

──3年ぶりのコラボですが、コロナ禍でのご活動はいかがでしたか。

奈央人:
なかなかそれまでのように気軽に「ごはんを食べにきてね」と誘うことが難しくなりました。緊急事態宣言が出てからは、毎週末に開催していた子どもたちとのごはん会「いっしょにごはん!食べナイト?」を一旦休止して、お弁当を持ち帰ってもらったりしながら、あの手この手で活動を続けていました。

スタッフの確保の難しさも感じました。以前はたくさん来てくださっていた学生のボランティアさんも皆、学校がオンライン授業に切り替わり、リアルな場につながることが難しくなりました。

(「みんなでごはん!食べナイト?」は、大阪の新型コロナ感染状況を見ながら、一時はお弁当を作って持ち帰る形式に切り替えて実施していた)

ひなやん:
子どもたちと一緒にご飯を食べることが難しいんだったら、と思って「学校の課題を一緒にやろか」と誘っても、それでは子どもたちはやって来ない(笑)。

奈央人:
コロナによって子どもたちの体験がより減っていることは肌で感じていたので、羊毛フェルトづくりのワークショップやアロマセラピー、家にこもりがちな子どもたちと一緒に外に出て、遊歩道をハイキングしたり、その次はサイクリングしたりと、様子を見ながら何らかのイベントを開催して、つながり続けていました。

──そうだったんですね。

(コロナ禍で始めた、羊毛フェルトのワークショップの様子。好きなキャラクターを作ってみたり、男女を問わずハマる子が続々!)

同じ区内で活動する団体や自治体と
ネットワークを構築

(2022年度は「体験する」をテーマに、アートに触れる機会も実施中。写真は演劇ワークショップ。「椅子に座る・立つ」をテーマに、みんなで状況設定して演じてみる体験)

奈央人:
2019年からは、子どもセンターが呼びかけて、同じ西淀川区内で子ども支援の活動をしている団体、また社会福祉協議会などの団体にも協力団体として入っていただき、「西淀川こどもネット」を立ち上げました。現在は区内で活動する11団体(+協力4団体)が登録しています。地域の中で、少しずつですがお互いの顔が見えるつながりができてきました。

登録しているのは、100人を超える規模の子ども食堂さんから、外国にルーツのある子どもとその家族を支える団体さんまでいろいろです。お互いに課題や情報を共有したり、コロナ禍においては、ご支援でいただいた食糧や日用品を共有したりする時などに、ネットワークが前向きに活用されています。それは一つよかったことでした。

(2ヶ月に一度開催している「西淀川子どもネット」会議。「この回では『子ども支援を考えるカードワーク』を実施しました。現場で感じていることなどを共有する場にもなっています」)

ひなやん:
それぞれにしんどい時や浮き沈みもありますが、自分たちだけでがんばろうとすると潰れてしまう。
点を線でつないで、「今日、他で誰かもがんばってるんやな」と思うだけでも力になるし、何かあった時に「こんなことがあったんやけど」と話せて、励まし合える場になればという思いもありました。

何よりも子どもたちのことを思うと、中学校の校区に一つぐらいのイメージで、子どもたちが自分の足で歩いていける場所に、何か子ども支援をしている拠点があるというのはすごく良いこと。

奈央人:
西淀川子どもセンターには、区内でも少し離れた地域から通ってきてくれている子たちもいます。
その子たちに「自分の家の近所に、こんなところがあるで」と言えて、さらにそこのスタッフさんを「うちら、知り合いやで」と紹介できたら通いやすい。何かあった時に相談できる大人が近くにいたら、子どもにとっても安心ですよね。

(「西淀川こどもネット」登録団体の皆さん。「長引くコロナ禍に悩みながらも、前向きに支え合っています」)

──確かに。

ひなやん:
子どもは、「親がめっちゃ喧嘩するねん」とか「何も食べてないねん」とか、自分が抱えていることを積極的には話しません。
だから実際は、「何かあれば子どもが駆けこめる」ではなく、大人から「何かあった?」と子どもに声をかけたり、相談を受けることができる関係性を作るのが大事。一回でもつながってお互いの顔を知っていれば、大人もその子を見かけた時、声をかけやすくなります。そういう関係性を、もっと地域に作っていく必要があると思っています。

奈央人:
ネットワークを強くしつつ、少しずつですが行政も協力してくださることが出てきました。体制を作っていくのはこれから。それぞれに活動している団体が、「うちで全部やろう」と思わなくていい。
困っていることや得意なことを共有し合って、支え合っていけるようなネットワークにしていけたらと思っています。

(西淀川こどもネット主催で実施した餅つき大会。「地域の人も参加してくれました」)

バーチャルの世界に入っていく子どもも。
大人が「リアルで関わる姿勢」を忘れない

(コロナによって経験が減っている子どもたちのためにと、様子を見ながらさまざまな企画を実施。「密を避けて屋外へ。淀川沿いを皆でサイクリングも企画しました。2人乗りのタンデム自転車もレンタルして、ワイワイと交代しながら風を切って走りました」)

奈央人:
今、小・中学生の不登校がすごく増えています。
私たちも子どもと接しながら、子どもたちの生活が変わってきているということは感じます。価値観が揺らいできているんですよね。コロナで休校になって、「学校は絶対に行かなあかんところ」から、「あれっ、別に行かんでもいいやん」っていうのもあったと思います。

──学校へ来ても、給食だったり休み時間だったり、楽しくて醍醐味な時間に制限がかかったことも、子どもたちの気持ちには影響しているかもしれませんね。

奈央人:
そうですね。部活などに入っていれば、そこで体験できることもあるかもしれません。
でも、部活にも入っていない、塾や習い事にも行っていない、じゃあ放課後に外で遊ぼうかと思ったら、空き地的な空間も減っている上に、ボール遊び禁止とか騒音禁止とか、子どもたちにとって、なかなか自由に遊べる環境がないんですよね。

──確かに。

(この夏休みに、滋賀県・朽木村にあるアサヒキャンプさんと開催したキャンプ。「野外体験も毎年企画しています」)

ひなやん:
なかには、昼夜逆転の生活を送っている子もいます。そうすることで自分の身を守っているのかもしれないです。
「さみしいな」とか「暇や」と感じてくれたらまだ良いですが、ネットやゲームなどバーチャルの世界に入り浸り、そこでつながりや仲間がたくさんできた気になって、リアルの世界で寂しさを感じることもないし、特に思い入れることがない。そんな子も増えてきていると感じます。

バーチャルとリアル、どっちがメインかわからない生活になってきているから、傷つかない傾向です。

遊べる環境がない、経験ができない、子どもがそれを残念がっているわけではなくて。ネットの世界の方が安全で楽しかったり、待ち遠しかったりするんだと思うんです。

──ある種、社会の責任というか…大人の責任でもありますね。

ひなやん:
頭ごなしに「それはあかん」というのではなく、子どもの生活が変わってきているということは認めつつ、大人として、子どもと接する際にリアルな関係性を築く姿勢は忘れずに持っておくことが大切ではないでしょうか。

(子どもたちに大人気の「裁判官ゲーム」。「遊ぶときは大人も子どもも真剣です」)

ちょっと頼りにできる、親戚のような存在に

(緊急事態宣言中も、高校生世代の集まり「ときどき?Ourナイト!」は休止せずに開催。「月1でも、顔を合わせていろいろ話すのが楽しいようでした」)

取材に訪れた日は土曜日。夕方から開催される子どもたちとのごはん会「いっしょにごはん!食べナイト?」のスタッフとして前乗りしていた薫さん(18)。薫さんは、高校3年間、西淀川こどもセンターの「ときどき?Our(会わ)ナイト!」に通った卒業生でもあります。

「ときどき?Ourナイト!」は、「いっしょにごはん!食べナイト?」の高校生バージョンとして派生したプロジェクト。2019年から、月に1度のペースで開催していたといいます。高校3年間、西淀川子どもセンターに通ったという薫さん。高校を卒業した今も団体と関わりを持ち、この夏のキャンプには、ボランティアとして参加したそう。「ときどき?Ourナイト!」がどんな居場所だったか聞いてみました。

薫:
毎回5〜6人とスタッフも2〜3人集まり、「次何作る?」という感じで、晩ご飯のメニューを考え、買い出して一緒に作って、食べるという時間でした。全般的に楽しかったです。

(高校生世代は調理もお手のもの。自分たちでメニューを決めてお弁当を作る。写真の日のメニューは、手作りデミグラスソースたっぷりのハンバーグ)

──どういうところが楽しかったですか?

薫:
ふだんの自分の生活の環境で、みんなで一緒にご飯を食べるということがありませんでした。だから、一緒の空間にいるみんなでご飯を作ったり、おいしいねと言い合ったりしてごはんを食べられたのが新鮮だったし、楽しかったです。

──ここは、どんな場所ですか?

薫:
親戚の家みたいな感じです。お菓子を作りたいからと、頼んでここに集まったこともありました。

奈央人:
友達と集まりたいけれど、家には場所がなくて友達を呼べない、ということもあります。月1の集まりとは別に、希望があればここで集まって、お菓子やお弁当づくりをしたこともありました。

(「ときどき?Ourナイト!」の最終回を迎える子どもの卒業式、メンバーやボランティアさんからのメッセージ色紙をプレゼント。「『楽しかった』『ここがあってよかった』『ありがとう』と、卒業生たちが語ってくれていたのが印象深いです」)

ひなやん:
高校を中退したり、卒業はしたけど進路が決まらなかったり、いろんな背景の子がいるけど、来ている子同士が仲良くなって、今は従兄弟の集まりのようです(笑)。
「子どもたちがちょっと頼りにできる、親戚のような存在になりたい。気軽に集まれる親戚の家のような場所をつくりたい」と思って始めたので、楽しくつながる場になってよかったなと思っています。

私たちのような世代だけでなく、子どもたちに近い世代、若い世代がいてくれたら、子どもたちはお兄さんお姉さんが大好きですし、その多様性で吸収していけることがたくさんあるように思います。

(笑顔が素敵な理事のトミーさん(写真右)とウエケンさん(写真左)は、小学校1年生からの同級生。トミーさんは社会人になってから、学生時代からボランティアとして団体に携わっていたウエケンさんに誘われて活動に参加。以来、団体をサポートしている。「子どもと一緒にいる限りは楽しく、その子に興味を持とうという意識で関わっています」と話してくれました)

「思い出」が、その人の生きる力になる

(3年前にコラボしたいただいた時とかわらない、実家のような懐かしさと、和気あいあいと何気ない会話を楽しむ皆さんが、心地よい空間をつくり出していました)

──15周年を迎えられますが、振り返っていかがですか?

ひなやん:
私はもともと保護司として、鑑別所や少年院から帰ってきた子どもたちも見てきました。
家庭環境も周囲の環境も何も変わっていない、そこにまた子どもを返したところで、同じことが繰り返されてしまう。

子どもたちの環境をなんとかしないとと行政に訴えても、なかなか耳を傾けてもらえませんでしたし、一方で犯罪を繰り返したり、行き場がなくて公園で寝泊りしている子がいるという事実が衝撃で、「なんとかしないと」と成り行きでスタートした活動でした。

「あんた、どないしたん?」と近所の大人が聞けて、子どもが「ちょっとしんどいねん」とか「困ってるねん」と話せる関係を、地域に根付かせていくしかない。それを地域にどうわかってもらうか。振り返ってみるとそのための試行錯誤を続けてきた15年やったと思います。

──そうだったんですね。

(阪急・阪神百貨店をはじめとするH2Oリテイリンググループの社会貢献団体「H2Oサンタ」の支援で、百貨店から定期的にパンの寄贈を受けている。名付けて「サンタパン」。おいしいパンを子どもたちも毎回楽しみにしている&フードロス削減にもなり、一石二鳥)

ひなやん:
決してその子のせいではない事情で、不利益を被っている子どもは少なくありません。
子どもたちは皆、すごく我慢強いけど、打たれ弱い。「もういいわ」「もうあかんわ」ってなってしまう前に、子どもたち一人ひとりに向き合って、その子に合わせて何か一緒にやってみながら、感じてもらえることがあったらと思うんです。

子どもの中に一つでも、「これはおもろかったな」とか「こんな事やったな」というなつかしい思い出があったら、拓かれていく道はまた違ってくると思うんです。

子どもたちと対等に、共に時間を過ごす中で、彼らが大人になった時に「あんな場所あったな」「あんな人おったな、なつかしいな」ってふと思い出してもらえたら。「スイカ割りしたな」とか「竹もってきて流しそうめんしたな」とかね。

「なつかしい」と思える感覚、そんな思い出があったら、それが、しんどい時に自分を励ましてくれて、踏ん張る力になると思うんです。

──思い出があることが大事なんですね。

(「いっしょにごはん!食べナイト?」の様子。密を避けて広めの配置での食事。いただきますの歌も小声で楽しく)

ひなやん:
そうです。思い出って、自分の頭の中だけに留まっていたら思い出にはならなくて、誰かと共有することで、誰かと会話としてキャッチボールをすることで、「思い出」になるんですよね。
ごはんを食べるのもそう。一人で食べて「おいしいな」って頭の中で思っても思い出にならんけど、みんなで「おいしいね」ってワイワイ言いながら食べた思い出は、きっとその子の記憶のどこかに刻まれて、力になっていくと思うんです。

──確かに。

ひなやん:
つないだ手を握りきれずに、すり抜けてしまう子もいます。
なかなか力は及びませんが、それでも出会えたことはご縁やから、私はあなたのことを忘れんと覚えておくよ、ということ。

子ども本人の人生であって、誰も代わりはできません。その子がその子の人生を生きるしかないし、そのためには、本人がその気にならないと、何の役にも立ちません。

奈央人:
子どもたちが何を楽しいと感じられるか、どんな思い出をつくっていくか。

そのためには大人が、「これしかない」ではなくて、一つでも多い選択肢を用意してあげられるかが大切。
子どもたち一人ひとりが本来持っている力を発揮していくための、これからも支援ができたらいいなと思います。

(「必要だと言う子がいるかぎり、活動を続けていきたい」。3年前と変わらない笑顔と底抜けの明るさで私たちを迎え入れてくださった皆さん。大人たちのこの明るさに、前向きな力をもらう子どもは少なくないのではないでしょうか)

チャリティーは、子どもたちの体験を広げていくための活動費として活用されます!

(2022年10月8日(土)には、西淀川子どもセンター設立15周年を記念して、「子ども支援は地域のパワー」と題したシンポジウムを開催。「湯浅誠さんをゲストスピーカーにお招きします。参加無料、要事前申し込み(定員150名)。詳細・申し込みは、西淀川子どもセンターのHPまたは画像のQRコードからどうぞ!」)

──今回のチャリティーの使途を教えてください。

奈央人:
チャリティーは、子どもたちの体験を広げていくための活動費として活用させていただく予定です。
好きか嫌いかも、体験してみないことにはわからない。いろんなことに挑戦してみて、その中で何かちょっとでもヒットするものがあったらいいなと思っています。ぜひ、チャリティーアイテムで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(インタビューの後、西淀川子どもセンターの皆さんと!お忙しい中、ありがとうございました!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

西淀川子どもセンターさんを訪れたのは実に3年ぶり。前回コラボの時に1度訪れたきりですが、足を踏み入れると「懐かしい〜!」という感覚が。この温かい雰囲気というか、なんともいえないアットホーム感というか。とても言葉にしづらいのですが、その空間に「お邪魔している」っていう感じというよりは、「私がここにいる」と感じられる空間。借りてきた呼吸ではなくて、自分で呼吸している感。これはすごいなあと感じました。

・西淀川子どもセンター ホームページはこちらから

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【2022/9/26~2022/10/2の1週間限定発売!】
雲の上で、思い思いにくつろぐ人の姿を描きました。自分が心地良いと感じられるスペースがあること、そしてまた自分のペースが尊重される場所が地域の中にあることで、子どもたちの中にも安心や自信が自由に広がっていく様子を表現しています。

“It’s okay to take a break”、「やすみやすみ行こう!」というメッセージを添えました。

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