CHARITY FOR

「すべての人に、星空を」。必要とする人に星空を届け、人と人、思いと思いをつなぐ〜一般社団法人星つむぎの村

皆さんが最近、星空を見上げたのはいつですか?
その時、どんなことを感じたでしょうか。

毎夜、私たちの頭上で輝く星。
ずっとずっと昔から、どんな人にも、どんな時にも、同じように等しく輝いてきた星。

「星空を眺めることで大きな時の流れを感じ、宇宙の視点から、今ここで共に生きている奇跡を感じることができる」と話すのは、今週、JAMMINがコラボする一般社団法人「星つむぎの村」共同代表の跡部浩一(あとべ・こういち)さん(60)と髙橋真理子(たかはし・まりこ)さん(52)。

「誰にも等しく輝く星。本物の星を見ることが難しい人たちにこそ、星空を届けたい」と、これまでに1000を超える場所を訪れ、プラネタリウムで星空を届けてきました。

「すべての人に、星空を」。
ご活動について、話を聞きました。

(お話をお伺いした跡部さん(写真左)と髙橋さん(写真右))

今週のチャリティー

一般社団法人星つむぎの村

「星を介して人と人をつなぎ、共に幸せをつくろう」をミッションに、プラネタリウムや星空観望会、星や宇宙に関するワークショップなどを開催、星空の下で集いつながることで、幸せを創出する活動をしています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2022/7/4

病院や療育施設、支援学校など、さまざまな場所で
たくさんの人たちに星空を届ける

(出張プラネタリウムの様子。「7メートルのドーム内で、満天の星に包まれる子どもたち。ドームでのプラネタリウムが最も臨場感がありますが、天井投影やスクリーン投影などさまざまな方法で、星空・宇宙体験をしていただいています」)

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

跡部:
「すべての人に星空を」というミッションを掲げ、出張プラネタリウムやワークショップなどのかたちで、依頼されたら誰でもどこでも、いろんな人に星空を届ける活動をしています。

髙橋:
「プラネタリウム」というと、多くの方はドーム状の建物をイメージされるかもしれませんが、学校や地域のホール、病院、子ども食堂など、映し出せる場所さえあれば、どこでも星空を見て、シェアすることができます。
ミュージシャンとコラボして、音楽と一緒に星空を届けることもあります。

──素敵ですね。

(フライングプラネタリウムを初めて体験した「しょうちゃん」とお母さん(2019年撮影)。「投影者である髙橋は、自宅からオンラインでお話をしました。満天の星が映し出される時、しょうちゃんのお誕生日星座であるおとめ座が映し出される時、宇宙に飛び出していく時…、お母さんによると、『ふだんはほんとに喜ばないと声を出さない』はずのしょうちゃんが、何度も声を出して嬉しそうにしていたそうです。『お医者さんからは耳が聞こえないと言われていたけれど、名前を言われるたびに反応していたので、聞こえているんだと確信しました』とおっしゃっていました」)

跡部:
「病院がプラネタリウム」というプログラムでは、重い病気や障がいのために本物の星空を見ることが難しい方やそのご家族に星空をお届けしてきました。コロナによって病院訪問が難しくなってからは、「フライングプラネタリウム」というかたちで続けています。

──どのようなものですか。

跡部:
自分たちが直接病院に足を運ばなくても、天井に星空を映し出す機材を直接ご自宅や病院などへお送りして、オンラインやオンデマンドでお届けしています。

(作曲家・ピアニストの小林真人さんたちと行う「Space Fantasy LIVE」。「音楽と語りと宇宙映像が混然一体となったライブです」。写真は、2019年1月、福岡市にある「なみきスクエア」にて)

星空を見上げることが、
今を生きる実感につながる

(NICU(新生児集中治療室)で行ったプラネタリウムの様子(2019年撮影)。「コロナ禍前は、NICUでのプラネタリウムもよくやらせていただいていました。中には『この子、どや顔で見ていました!』とおっしゃる看護師さんもいます。生まれてから初めて見る”自然”の風景だったのかもしれません」)

──なぜ、星空を届けるのですか?

髙橋:
きっとどんな人にも、生きていくために星空や宇宙が必要なのではないかと思っています。

138億年前に宇宙が始まり、時が重なって今、ここに自分が存在していること。数千億ある銀河系の中の、太陽を中心にした地球という星に生まれ、出会い、生きている奇跡。星空を見上げることは、自身の存在やいのちの奇跡、尊さを感じることでもあると思います。

(特別支援学校での、7メートルドームプラネタリウムにて(2019年撮影)。「満天の星が映し出される時、お誕生日星座があらわれる時、宇宙に飛び出していく時、宇宙の果てから地球に帰ってくる時、そして朝を迎える時…、20~25分程度の短い時間の中で、子どもたちの驚きや感動、さまざまな感情が表出されます」)

跡部:
世界的なコロナの流行やウクライナでの戦争…、分断の時代にあって、星空を見上げたからといって全てが解決するわけではありません。
だけど、人種や世代や文化を超えて「とにかく星を見ようぜ」じゃないけれど、宇宙から地球をみる視点、遠くから自分を見つめる視点を持つことが、何か一つ、共に生きる社会への足がかりになるのではないかと思っています。

その時に、自分で動ける人は外で自然の星空を見て感じることができるけれど、病気や障がい、環境によってそれが難しい人たちもいます。こういった方たちに、たとえ直接見ることはできなくても、誰にも等しく輝く星空を届けたい。そこに大きな意味があると感じて活動をしています。

(1990年、写真家の星野道夫さん(写真右)と、20歳の髙橋さん。星野さんを訪ねたアラスカ・フェアバンクスにて。髙橋さんは高校時代に出会った星野さんの記事とアラスカに魅了され、星と人をつなぐ現在の仕事に至っているという。「星野さんの写真と文章の中にある、自然の一部として生きること、夢を持つこと、聴くこと…。星野さんがお星さまになってまもなく27年が経ちますが、今の時代は、星野さんが映してくれた世界をますます必要としているように思います」(参考:『人はなぜ星を見上げるのかー星と人をつなぐ仕事』(髙橋真理子著・新日本出版・2016年))

星を共に見上げることでフラットな関係性が生まれ、
コミュニティとなった

(「プラネタリウムのプログラムには、宇宙の果てのようなところから、地球に帰っていくシーンがあります。それまではワクワクの宇宙旅行で、その場は見ている人たちの高揚感でいっぱいになるのですが、地球に帰る時には水をうったように静まりかえり、言葉通り皆、『吸い込まれるような』表情になります」)

──「星つむぎの村」という団体名の通り、村のようなコミュニティも大事にされているんですね。

跡部:
はい。全国に200人ほどの「村人」と呼ばれる会員がいて、さまざまなかたちで活動に関わっています。
ものづくりが得意な村人はアクセサリーや星グッズ、ミシンが得意な村人は子ども服やスペシャルニーズにあわせた服を作ってオンラインで販売したり、本好きの村人は、入院中の子どもに向けて、オススメ絵本を紹介する「本の森だより」というものを作って病院に届けたりもしています。

コロナ禍で、病院や学校への訪問の活動が難しくなってから、子どもたちがオンラインで集える「星の寺子屋」というワークショップを始めました。ここでもたくさんの村人が関わってくれています。

(オンラインショップ「星の雑貨屋さん」や各地のマルシェなどで扱っているオリジナルグッズ。「村人それぞれの、『すべての人に星空を』の想いを込めてつくられています」)

──団体のご活動として、星空を見る・届けるだけでなく、星をきっかけにさまざまな人がつながり、行き交う場でもあるんですね。

髙橋:
私たちの活動の原点は、私が勤務していた山梨県立科学館のイベントから生まれた「星の語り部」という市民のボランティアグループにあります。

「プラネタリウムを、市民の皆さんにいかに自分ごとにしてもらえるか。いかに主体的に関わってもらえるか」をテーマにいろんな企画を開催する中で、星空が好き、星や宇宙について語り合うことが好きという人たちが集まり、つながりやご縁の中で今日まで活動を続けてきました。

(山梨県立科学館で行っていたプラネタリウムワークショップ。星空の下で、表現をすること、それを共有することの意味を、教えてもらえた機会でした)

跡部:
そこに星があることで、たとえ初対面の方同士であっても共通する言葉や共有できる世界を持つことができました。そうして人のつながりがどんどん広がっていきました。星には人をつなぐ力があるように思えるんですね。

なぜ、そんな力があるのか。それは「すべての生命にとって、共有の風景」ということだと思うんです。誰にとっても、どんな生き物にとっても、等しくそこにあって、等しく輝いている。これは圧倒的に、他のものとは異なる点です。

──確かに。

(2020年1月、星つむぎの村合宿にて、参加した村人の皆さんと。「コロナ禍の前は、毎年1回、八ヶ岳に集まり、共に学びながら交流を深めていました。コロナ禍では、オンラインで、全国に散らばる人たちが頻繁に「会える」ようになりました」)

跡部:
星の下でコミュニティが生まれていった時、不思議とそこで紡がれていく関係性も、フラットになっていきました。

「あなたの思い出の星空をみせます」というワークショップをやってきました。これは、参加者からリクエストをもらい、「いつ、どこ」の星空を再現するというもの。プラネタリウムの得意技です。

(7メートルドームを設置しているところ。「7メートルドームは重さが40キロほどあり、出張の時には、いつも車いっぱいに機材を積んで出かけています」)

跡部:
自分が生まれた日、我が子が生まれた日、亡くなられたご主人と初めて出会った日…。思い出の星空の下で、参加者の皆さんが、自分の人生について赤裸々に語り始めるのです。

プラネタリウムの中は暗いので、自分の顔や表情をまじまじと見られないからにしても、ここまで自分の人生のことを初対面の人に語るなんて、これは白い壁に囲まれた会議室では起こらないことだと思いました。

(「皆で星を見上げて感じたことを言葉にし、それを紡いで共に歌を作ろう」と全国に呼びかけ、新月と満月に一行ずつ詞を公募して1年近くかけてつくった「星つむぎの歌」。「詩人・作詞家の覚和歌子さん(現在、星つむぎの村の顧問)が詞を選定し、財津和夫さんが作曲、平原綾香さんが歌ってくださっています。歌が完成したのは2008年1月。3月にスペースシャトルで2回目の宇宙飛行を行った、甲府市内の中学校の出身でもある宇宙飛行士の土井隆雄さんへの応援歌という位置づけでもあり、土井さんは完成したばかりのCDをもって宇宙に行き、ウェイクアップコールとして、全世界と宇宙に届いた歌になりました。多くの人たちの想いがつむがれたこの歌は、今も星つむぎの村のテーマソングとして、手話を交えて、大事に歌っています」)

「星や宇宙に向き合うことは、
いのちそのものに向き合うこと」

(星を通じてご縁がつながり、続いてゆく。「愛知県大府市で行われている『みんなでプラネタリウム』。驚くほどたくさんの方たちのパワーを感じるイベントです。プラネタリウムが、地域の人たちをつなぐ役割をしています」(2019年撮影))

──いつから、星といのちのつながりを意識するようになったのですか?

髙橋:
山梨県立科学館で天文担当の学芸員として働いていた時、「ただプラネタリウムで待っていても、ここに来られない人たちもいる」ことを知りました。

一度、余命わずかな男性が「オーロラを見たい」と科学館に来られたことがあったんです。この時、ご本人は歩くことはおろか、話すことも難しい状態でした。彼が科学館に足を運ぶのは、物理的にすごく大変だった。

(「2019年4月、東京の成育医療センターでのイベントで、7メートルドームのプラネタリウムと星座カード作りのワークショップを開催しました。そこで出会った、重心児である一樹くん含む3人の子がいる藤田ファミリーは、『一緒に星を見よういう呼びかけは、これまでに出会ったことのない支援の姿だった』と話してくれました。支えるとは、寄り添うとは。今では共に星空を見上げながら、問い続ける仲間になっています」)

髙橋:
また、その時付き添っていらした看護師の方が、娘さんを亡くされていたのですが、オーロラを見て「(亡くなった)娘に会えました」とおっしゃり、宙(ソラ)に向き合うことは、いのちそのものに触れることだと教えてもらいました。
プラネタリウムは、外に出られない人たちにこそ意味があるのでは、と思ったのです。

星空を待っている人がいて、かつ我々の星空を届けたいという思いがあるならば、じゃあやるしかないと。2013年には16年務めた科学館の職員を辞め、最初は個人事業として出張プラネタリウムの活動を始め、その後、2017年に「星つむぎの村」として法人化して活動を続けています。

(「病院がプラネタリウム」は、2014年1月から、髙橋さんの個人事業「星空工房アルリシャ」として始まった。写真は「病院がプラネタリウム」を初めて開催した長野こども病院にて。「子どもたちの『明日も来る?』という言葉が、胸にささりました」)

入院中の子どもたちに星空を届ける
「病院がプラネタリウム」

(「2007年に小児科医の犬飼先生に出会い、はじめて山梨大学附属病院の院内学級でプラネタリウムをやらせていただきました。当時は機材も何もなかったので、家庭用のプラネタリウムで投影しました。犬飼先生にはこのあともずっとお世話になり、2014年の「病院がプラネタリウム」がスタートする際にも、大きく背中を押していただきました」)

髙橋:
入院中の子どもたちやそのご家族に星空を届ける「病院がプラネタリウム」のきっかけとなった、山梨大学附属病院の小児科医である犬飼岳史先生との出会いも、星が紡いでくれたご縁です。犬飼先生は、小さい頃の夢は天文学者というほど星が好きで、「病室でプラネタリウムをやったらどうだろう」というこちらの提案に、すぐに「やりましょう」と言ってくださいました。

この出会いがきっかけとなって初めて病院に足を踏み入れ、入院中の子どもたちやその家族が置かれている現状を知ることになりました。

重い病気のために一年も二年もずっと入院している子どもがいる。頭ではわかっていても、初めて出会う世界でした。プラネタリウムを開催した後に、「普段はあまり表情を出さない子が、星空を見てとても喜んでいた」といった感想も聞き、「自分に一体何ができるのか」を考えながら、後々の活動へとつながっていきました。

──そうだったんですね。

(「難病のため、横向きで寝たきりの結莉奈ちゃんは、星や宇宙が大好き少女。好奇心旺盛で、チャレンジ精神にあふれています。結莉奈ちゃんは、株式会社オリィ研究所が運営する『分身ロボットカフェDAWN』でのプラネタリウムを企画提案し、それを実現しました。また自身が入院中、病院に『病院がプラネタリウム』ができるように提案し、入院中の仲間たちが一緒に星空を楽しめるように、村人としてがんばってくれました」。写真は「分身ロボットカフェDAWN」にて、2021年11月撮影)

髙橋:
苦い経験もあります。余命宣告を受けた男の子のもとへ、訪問して星空を届ける予定でしたが間に合わず…、彼は亡くなってしまいました。

日時を決めてこちらが出向くのではなく、プラネタリウムの機材一式をお届けして、好きな時に好きなように、好きな場所で星空を見ることができる「フライングプラネタリウム」は、この経験も踏まえてスタートしたプログラムです。

社会課題ありきではなく、星が紡いでくれたご縁の中で、出会いが生まれ、「この人と一緒に何かやりたい」という思いが生まれ、今の活動へとつながっています。

(2017年5月、プラネタリウムを見た後に『ひなちゃん、元気になったよ』と言った3歳のひなたちゃん。「その後病状が悪化し、6月に予定していた出張プラネタリウムが間に合わないかもとの連絡をもらい、急いでひなたちゃん向けの動画をつくってご両親にお送りしました。ひなたちゃんの好きな『きらきら星』の曲をいれて、文字キャプションのみの星空と宇宙映像でした。『ずーっと一緒だよ。お星さまが輝く限り』という言葉をお母さんが読んでくださり、ひなたちゃんは何度も何度も見てくれました。いつも笑顔を見せてくれたひなたちゃんは、その4か月後、2017年9月にお星さまになりました。ひなたちゃんに導かれるように、お父さんもお母さんも、子どもたちの幸せのための活動をがんばっています。お母さんは今、星つむぎの村のプラネタリウムの解説も行っています」)

「星空には、何かある」

(八ヶ岳山麓・山梨県北杜市にある星つむぎの村の事務所「アルリ舎」と天の川。「一歩外に出れば、降るような星空に会える場所です。来年にはこの隣に、『星つむぐ家』というゲストハウスが建つ予定です。星に会いに来てください」)

髙橋:
「星空には、何かがある」。この活動を続けながら、より強く、そう感じるようになりました。

特別支援学校で出張プラネタリウムを開催した時のことです。一人の男の子は、ふだん表に出る感情のほとんどが怒りでしかなかったそうですが、プラネタリウムの後、涙を流していたんです。

暗くて怖かったから泣いていると思った先生が、「暗くて怖いところに連れてきてごめんね」と言ったら、その子が一言、「感動しました」と。先生はびっくりしたそうです。「ありがとうございました」と書いたカードを作って、私のところにも感謝を伝えにきてくれました。

(2022年2月、宮城県内の特別支援学校でのフライングプラネタリウム。「語り手である私がその場にいないのに、『真理子さんの誕生日はいつ~?』など大盛り上がり。地球が映し出されると、『地球ってこんなに綺麗なんだ』『俺たちってここにいるんだよね?』『ロシアとウクライナだ』などの声も聞こえてきたそうです」)

髙橋:
別の支援学校では、皆で寝転んでプラネタリウムを見た後、終わったのに起き上がらない子がいました。そのまま寝ちゃったのかな?と彼の元へ行くと、違ったんです。
彼は泣いていて、起き上がることができなかったんです。そして、彼が一言「感無量です」と言ったんです。「この子からこんな言葉が出るなんて」と先生はびっくりされていました。

──お伺いしていると、何か、星に触れることで、本来その人が持っている力が引き出されたような感じがします。

髙橋:
年長の時に白血病になり、長く闘病していた「さちちゃん」という子がいます。
病室の天井いっぱいに輝く星空を届けた際、彼女は「これで一年生きられる」といいました。その後、毎月オンラインの「星の寺子屋」にも顔を出してくれて、体調がすぐれない中でも、本当に楽しんで参加してくれていた姿が印象に残っています。

(闘病中のさちちゃん。「『毎日必ず笑う』ことを、信念にもっていたさちちゃん。つらい治療にも文句を言わず、少しでも楽しいことを考え出していました。星の寺子屋でバルーンづくりをやった時、自分でさらに調べて犬をつくり、同じ病棟にいる年下の友達にプレゼントしてまわったそうです。最期まで感謝の気持ちを持ち、『自分らしく生きる』ということを、命をかけて教えてくれました」)

髙橋:
しかしいよいよ厳しい状況になり、最期の時間を過ごすために自宅に戻ったさちちゃんは2週間がんばった後、お空に帰りました。9歳でした。亡くなる瞬間まで、彼女は強く生きる姿を私たちに見せてくれました。

さちちゃんは生前、同じ病棟に入院していた「りちちゃん」と二人で、いつか私たちの活動拠点であるここ八ヶ岳に、本物の星を見に行きたいと言ってくれていました。

亡くなった後、お母さんから「りちちゃんも状態が厳しいから、八ヶ岳に行きたい」と連絡がありました。小児科医の犬飼先生に相談して山梨での緊急受け入れ体制を整え、亡くなったさちちゃんのご家族と、りちちゃん、りちちゃんのご家族が、八ヶ岳まで6時間近いドライブをして来てくれました。

りちちゃんは動いたり食べたりすることが難しい状況でしたが、夜には家族水入らずの時間を過ごし、二日目には外出してソフトクリームを舐めることもできて、自然の中で穏やかな時間を過ごしました。

そして八ヶ岳から帰った三日後に、息を引き取りました。

(八ヶ岳を訪れたりちちゃん家族。「りちちゃんたちが来てくれた日は雨でしたが、翌日は素晴らしい青空が見え、皆でソフトクリームを食べにいきました。ソフトクリームを食べるのが、今回のりちちゃんの旅の一つの目標だったのです。さちちゃんが応援してくれていたのでしょう、空には彩雲が見えていました」)

髙橋:
八ヶ岳の大自然の中で撮った、りちちゃんの家族写真が本当に素敵で…、りちちゃんが精一杯生きた、その最期の時間を、星が紡いでくれたのだと思います。

──ご家族が滞在中に、本物の星は見られましたか?

髙橋:
あいにく天候に恵まれなかったのですが、さちちゃん家族と夜中に起きて一緒にしゃべっていた時、外に出ると、雲の切れ間からふと一つだけ、輝く星が顔を出したんです。「さちちゃん、やってくれたね!」と思いました。

(「地上は街明かりでまばゆいばかりですが、その上には満天の星と天の川があります。天の川は、わたしたちの太陽系がある天の川銀河を内側から見た様子。夜空を横ぎる天の川は、わたしたちが広大な宇宙の中の小さな小さな存在であることを教えてくれます」)

「星を見上げるということは、
あらゆる境界線を乗り越えていくこと」

(「地上を飛び出し、宇宙空間に出た時、私たちが一番最初に目にするものはこの美しい地球です。この小さな星に、皆でへばりつくようにして、あらゆる生命が共に生きている。ここに過去から未来まで、あらゆる人生がつまっているということに想いを馳せることができたら、この世界はもう少し美しくなるのにな、と」)

──星を介して、私たちはつながり続けるんですね。

跡部:
活動の中で出会ってきた人たちに、星の持つ力を教わってきました。人生を変える人もたくさんいます。
単に星空を眺めるだけでなく、共に生きていることを感じられるからこそ、私たちはそこから、生きるエネルギーを得られるのではないでしょうか。

髙橋:
星を見上げるということは、あらゆる境界線を乗り越えていくこと。
宇宙の視点でものごとを見た時、私たち一人ひとりの違いはあまりにも小さい。多様性を包み込む大きな宇宙の存在を感じずにはいられません。

そしてまた、星空を見上げることは、大いなる自然の中の一部として、この大地に足をつけて生きている実感を与えてくれるようにも思います。

(「誰の上にも、天井の上にも、必ず星は輝いています。そんな星空の下では、私たち一人ひとりの違いはとても小さく、一人ひとりの力も小さい。だからこそ、お互いに手をつなぎあっていきたい。同じ星空の下で」)

療養中の子どもとその家族に星空を届ける!チャリティーキャンペーン

(2021年度に「おうちでプラネタリウム」を体験した方たちの笑顔。「お子さんのお誕生日の星空を出したり、ご家族を宇宙飛行士にしたり…。それぞれにスペシャルな投影を行っています」)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

跡部:
チャリティーは、在宅で療養する子どもとその家族のところへ「おうちでプラネタリウム」を届けるための資金として活用させていただく予定です。
プラネタリウムを届けるためには、1家族につき、およそ4万円かかります。このうち半分・2万円を今回のチャリティーで集め、10家族に星空を届けたいと思っています。

髙橋:
ご自宅の天井に映せるようにしたプロジェクター、サイズにするとみかん箱よりちょっと大きなものをお届けします。予め見ていただく時間を決めておいて、ライブでお話することもあるし、オンデマンド動画をお届けすることもあります。

お子さんが生まれた日の星空を出したり、ご家族の写真をお借りして、宇宙飛行士として宇宙に飛ばしたり。一人ひとりに合わせたプラネタリウムを作っています。貸し出している間に何回も何回も見てくださるご家庭もあります。

ぜひ、チャリティーアイテムで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(2022年4月、久しぶりのリアルイベントに集まった村人の皆さんと。「7メートルドームの投影に加えて、ワークショップや星の雑貨屋さんなどを開き、いろいろな障害を持つ子どもたちやそのご家族との時間を楽しみました」)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

初めましてでオンラインでお会いした時から、お二人のお話を聞くのが、もう楽しくて楽しくて。ワクワクしかしませんでした。
なぜだろうと思った時に、やっぱり宇宙が自分にとって「自分ごと」なんですよね。宇宙を感じることは、いのちを感じることそのもの。星は今日もここで輝いて、このいのちがどこからやってきて、やがてどこへ向かうのか、ただただ驚くばかりの奇跡と深淵な、そして揺るぎない愛を、絶えず感じさせてくれるのです。

星が紡いでくれた、高橋さん、跡部さんとの出会いに感謝して。

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いつでもどんな時も、誰にもどんないのちにも、私たち一人ひとりの頭上には、星が輝いている。星が輝く壮大な宇宙がある。

宇宙からのメッセージを、星空を通して一人ひとりに届けたい。そんな思いを、雄大な星空と自然を閉じ込めたスノードームで表現しました。夜空には、北斗七星とカシオペア座が輝いています。

“We all share the same stars”、「私たちは皆、同じ星をシェアしている」というメッセージを添えました。

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