CHARITY FOR

貧困や虐待を親のせいにせず、「社会みんなで子育て」をかなえる、家庭訪問型の支援を全国に〜NPO法人バディチーム

虐待のニュースが後を絶ちません。
この8月には、滋賀県大津市で、17歳の兄が6歳の妹を虐待死させるという衝撃的な事件もありました。

…最悪な結末になる前に、どこか頼れる先がなかったのか。専門機関の訪問や支援という改まったかたちではなくても、変わったことや家庭の不穏な動きを、地域の中で見守るようなことはできなかったのでしょうか。

今週JAMMINがコラボするのは、NPO法人「バディチーム」。
さまざまな事情を抱えた家庭を訪問し、家事の手伝いや子どもの保育、送迎、学習支援などちょっとしたお手伝いをしながら、親子に寄り添い、見守る活動をしています。

「さまざまな事情から孤立し、身動きがとれずにSOSを発することが難しい家庭もあります。それは『個人の責任』で片づけられる問題なのでしょうか。個人の責任なのではなく、私たち一人ひとりが関わる社会の課題ではないでしょうか」。

そう話すのは、代表の岡田妙子(おかだ・たえこ)さん。
活動について、お話を聞きました。

(お話をお伺いした岡田さん)

今週のチャリティー

NPO法人バディチーム

東京都内で、子育て支援・虐待防止を目的に、家庭訪問型の支援活動を行っています。家庭を訪問し、保育や家事など具体的なお手伝いをしながら親子を支え、家庭の孤立を防ぎながら「社会みんなで子育て」を目指しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2021/9/20

さまざまな背景を抱えた家庭を訪問、
家事や保育をサポート

(東京都江戸川区から委託を受けて実施している「江戸川区おうち食堂」の様子。「食の支援が必要なご家庭に支援員さんが訪問し、食事を作ります」)

──今日はよろしくお願いします。まずは、団体のご活動について教えてください。

岡田:
バディチームは、さまざまな事情や背景があり、子育てが大変な状況にあるご家庭を訪問し、日常生活の家事や保育などをお手伝いする活動をしています。

都内のいくつかの自治体からの委託を受け、大きく3つの訪問支援を行っています。
ひとつめが、養育支援訪問です。行政を中心に、保健師の家庭訪問や乳幼児健診、あるいは学校や幼稚園でのお子さんの様子から「支援が必要」と判断された家庭を週に1〜2回訪問しています。
二つめが社会的養護下の子どもたちを育てる里親家庭への訪問支援、三つめが困難な状況にあるご家庭を支援員さんが定期的に訪れ、食事を作って提供する食の支援です。

家庭への訪問は、私たちが「子育てパートナー」と呼ぶ支援者さんたちが多く関わってくださっています。学生さんから70代の方まで幅広い年齢で、性別や資格の有無も問わず、多くの方が支援に関わってくださっています。

(2021年3月に開催したオンラインイベント「生まれる前から始める虐待予防~産前産後の家庭訪問型支援の現場から~」にて、イベントに出演した子育てパートナーの皆さん。「支援を始めたきっかけや支援の内容、やりがいなどを発表していただきました」)

「一市民として寄り添い、見守る」

(訪問の様子。「保育支援ではお子さんの好きな遊びで保育をします。その間、お母さんは休んだり家事をされたりしています」)

──ご家庭に入っていくというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

岡田:
委託事業では私たちの方で訪問家庭を決めているわけではなく、自治体と連携しながらご家庭を訪問しています。
虐待やネグレクト(育児放棄)などが疑われた時、行政の専門機関の役割としては、課題解決のために「指導する」というふうになりがちです。そうすると家庭側が訪問を拒否したり、受け入れられないということも出てきてしまいます。

私達の役割は、「地域の一住民」という自治体とはまた異なる立場で、あくまで「寄り添う」こと。指導したり解決を求めたりするのではなく、寄り添いながら見守ることが孤立したご家庭の心を開き、やがて自ずと解決にもつながっていく部分があると考えています。

──なるほど。

岡田:
支援が必要でありながら、訪問ができていないご家庭もたくさんあると感じています。中には訪問を拒否されるご家庭もありますが、ヘルパーさんのような感じで「家事をお手伝いします」と言うと、「だったらお願いしようかな」と受け入れてくださるご家庭もあります。訪問して掃除や洗濯のサポートをしているうちに少しずつ心を開き、悩みや困りごとを相談してくださるような関係性も生まれていきます。

子どもが一時保護された家庭に対して、「バディチームが毎週訪問する」ことを条件に、お子さんが家庭に戻ったケースもありました。私たちの役割として、家事や保育をサポートするということだけでなく、とにかく定期的にそのご家庭に入ることで家庭の状況を把握し、孤立を防ぐということもあるのです。

──家庭に入るからこそできることですね。

岡田:
そうですね。食の支援でも、子ども食堂がこれだけ盛んになった今でも、中にはやはり子ども食堂にさえたどりつけない家庭があるのが実情です。

同じような状況であっても、虐待リスクの高い家庭と低い家庭とがあります。このリスクの差が何に起因するかというと、「社会や地域から孤立しているか否か」なんですね。
「来てくれるのを待つ」だけでなく「こちらから訪問する」ことでつながり、開かれていくこともあると考えています。

(2021年2月2日に放送された「渋谷のラジオ」渋谷社会部の収録の様子。「江戸川区職員の横山さんと支援員の方をゲストにお招きし、江戸川区の子育て支援事業『おうち食堂』『おとなりさん』について。行政との連携や日々の活動の様子をお話いただきました」)

「定期的な訪問」も大きなポイント

(2019年11月に開催されたイベント「いま子どもと親は、だれに支えられて生きるべきか」にて。「子ども食堂をはじめとした【居場所型】の支援とバディチームの行う【訪問型】の支援の連携を考えるトークイベントに多くの方が参加してくださいました」)

──支援の入り口として家事などのサポートがあって、定期的に訪問することが見守りや孤立の防止にもつながるのですね。

岡田:
定期的に家庭に入っていると、情報からだけではわからない、実にさまざまなことが見えてきます。冷蔵庫に食べ物があるかどうか、子どもが問題なく成長しているかといった安全の確認にもなりますし、愛情表現は上手ではないかもしれないけれど、お母さんが実はお子さんのことをこんなにも愛しているんだなということも見えてきます。

かなり心配に映る家庭でも、どこかに健康的な習慣や愛情があります。そういったことも含め、定期的に訪問するからこそ、家庭への理解が深まっていきます。そしてそこから、その家庭が本当に必要としていることは何なのか、より良い支援の方向性も見えてきます。

(「江戸川区おうち食堂のお料理です。限られた調理器具や食材の中を上手にやりくりしてくれる支援員さん。子どもたちの好き嫌いを把握し、リクエストに応えます。最近はワンプレートの盛り付けが人気です」)

岡田:
目に見える大きな変化ではなくても、訪れるうちに気持ちや経験に少しずつ変化が生まれてきます。たとえばたった一人で子育てする産後すぐのお母さんが、1週間に一度、私たちが訪問する2時間だけでも子どもと離れて物理的に休めたら、それだけでも表情が全く変わってきます。

部屋が散乱していたり料理をする習慣がなかったりするようなご家庭でも、私たちが週に1度でも継続して定期的に入ることで、少なくとも深刻な状況には陥らず、現状が維持できるといった効果もあります。

家庭への訪問はまた、子どもにとっても健康的な大人のモデルになります。
支援を必要としている家庭は、親御さん自身が家庭的なことを知らずに育ってきたケースも少なくありません。訪問して家事をしたり料理をしたりする姿や、一緒に遊んだり勉強したりする姿を見て、子どもたちが「こういうふうにやるんだな」とか「こんな大人もいるんだな」ということを知る機会にもなります。

──確かに。

岡田:
目に見えてわかりやすい成果や効果はないかもしれません。だけど少しずつ気を許し心を開いてもらいながら、ご家庭の気持ちや安全を担保しつつ伴走したいと思っています。

支援には「傾聴・受容・共感」が大切

(里親家庭支援研修に参加した「子育てパートナー」の皆さん。「里親家庭への訪問にあたり、通常の研修とは別で里親に特化した事前研修を受けていただいています。コロナの関係で現在はオンラインで開催中です」)

──なかなかサポートにもコツがいると思うのですが、ご家庭を実際に訪問するパートナーさんの育成にもコツがあるのですか。

岡田:
研修では、まず「傾聴・受容・共感」が大切だということをお伝えしています。
子育てパートナーさんが指導的になって「こうした方が良い」とか「これじゃダメ」などと意見を言うようになってしまうと、弱っているご家庭にとってそれは重く厳しく、受け止め難いところがあるからです。まずは受け止め、寄り添う態度を示していくことが大切だということを伝えています。

──しんどい状況で、さらに指示されてしまったら、「もう来なくていいです」となるかもしれないですね。

岡田:
そうですね。ここは、ご家庭と子育てパートナーさんの相性もあります。それぞれのタイプを見極めながら、過去の経験も生かしつつ、事務局の方で慎重にマッチングしています。
あとは、座学の研修を受けて頭では理解をしていたつもりでも、実際現場に行くと思っていたのと全然違う、ということもあります。コーディネーターが訪問するご家庭だけでなく、パートナーさんとも常々コミュニケーションをとりながら現場を調整しています。

──コーディネーターさんがどちらにも目を配っているのですね。

(江戸川区の事業チームのミーティングの様子。「刻々と変化する訪問家庭の様子や、支援員さんの情報共有を定期的に行っています」)

岡田:
ここでもやはり「傾聴・受容・共感」が大切になります。…そういう意味では、誰でもできるようで、誰でもできないようなところがあるというか。

子育てパートナーさんがそれまで生きてきた価値観で、「親としてこれはどうなの?」と感じるような現場も出てくるかもしれません。訪れるご家庭の中には、調理器具が一切ない、食材が一切ない、コンロがなくて食材を温められるのは電子レンジだけという家庭もあります。
許容できる範囲であれば親の方針にも寄り添いながら、多様な価値観や状況がある中で、いかに受け入れ、共感できるかが大きなポイントになってきます。

「虐待は親の責任ではなく、
社会の問題」

(東京ボランティア・市民活動センターが主催する「企業ボランティア・プロジェクト2019」にて、チームメンバーと企業「UBSグループ」の皆さんと。「コンサルセッションなどを通じ、バディーチームを応援していただきました」)

岡田:
社会では一般的に、子どもの家庭環境を「親の責任」「親に原因がある」と見ているところがあります。
しかし家庭の困難の背景には、予期せぬ妊娠や若年での出産、親御さんご自身が家庭や親の愛を知らずに育っていたり、産後うつや精神的な疾患、障害や病気といったことが潜んでいたりするケースも少なくありません。DVやパートナーとの不和、外国籍や経済的な貧困などといった背景もあります。

こういったことも踏まえ、果たして本当に「親の責任」なのでしょうか。
特に母親は、「こうあるべき」という世間のイメージが強く、苦しんでいる中でも父親より責任が問われるようなところがあると感じています。そこ自体がまず変わって行く必要があると思います。

(2020年3月、東京都中央区にある「協働ステーション中央」にて、「十思カフェVol.105 」に登壇。「孤育てを減らして虐待を防ぐ~日常生活に関わり親子を支える協働の取り組み」と題して講演を行った。「講演を聞き、その場でバディチームの活動内容をグラフィックレコーディングしてくださいました。可愛いイラストでわかりやすくまとめていただき感謝です」)

岡田:
私たちが掲げているビジョンは「社会みんなで子育て」です。

さまざまな事情から孤立し、身動きがとれずにSOSを発することが難しい家庭もあります。それを果たして「個人の責任」で片づけられるでしょうか。これは個人の責任ではなく、社会の課題です。
誰かを責めたり批判したりするのではなく、自分たちができることで支援を届けていくことが必要で、そのためにはみんなが自分の得意なことを持ち寄りながら、自然な形で力が発揮されるようなしくみが今後、もっと広がっていけばいいなと思っています。

(「江戸川区と一緒に作成した、おうち食堂メニュー集です。昨年度の支援員さんが訪問家庭で調理した料理を、写真付きで掲載しています。支援員さんの工夫やアイデアがいっぱい詰まっています」)

「それぞれに、できることがある」

(スタッフ間のミーティングの様子。「重い内容を話し合うことも多いので、ちょっとした時間を使って雑談や楽しくコミュニケーションを取るようにしています」)

──岡田さんは、なぜこのご活動を始められたのですか。

岡田:
今は日々当たり前のように報道され周知されている子どもの虐待ですが、「児童虐待防止法」が制定された2000年当時はまだまだ知られておらず、私自身がその頃に妊娠・出産を経験したこともあって、事実を知り大きなショックを受けました。望んでようやく授かった我が子を育てる中で、幸せを感じつつ子育ての大変さも痛感し、「サポートがなければ人ごとではないな」と感じてもいました。

自分に何ができるかを模索している中で、ある地域で先駆的に実施していた家庭訪問型のサービスに出会いました。そのスタッフに登録し、2年間、さまざまな家庭を訪問しました。
いろんな家庭があることを知りましたし、家庭に入らないことには見えてこない課題があるということも感じました。そしてまた、この訪問支援があるかないかで、子どもたちの虐待を防止する力はまったく異なってくるのではないかという手応えも感じ、2007年に団体を立ち上げたのが最初です。

(2007年、団体設立当初の写真。「お世話になった会社の一角をお借りして事業をスタートしました。写真はご厚意によりお借りした会議室にて、子育てパートナーの研修をしているところです」)

──そうだったんですね。
読者の方に、メッセージをお願いします。

岡田:
虐待は社会的な課題になってきていますが、何か事件が起きた時、親や行政の専門機関を責めたところで何かが大きく変わるわけではありません。子どもたちのために、それぞれの地域で、私たち一人ひとりがそれぞれにできること、少しでも動けることがあるのではないでしょうか。そう思って、ぜひ活動の輪に参加してもらえたら嬉しいですね。
そしてまた、子育てに大変さを感じている方がいたら、無理をせずSOSを発信してください、ということをお伝えしたいと思います。

(「利用家庭のお子さんから、お手紙や折り紙などをいただくときがあります。お子さんの思いがとても嬉しくて、私たちにとっては宝物です」)

チャリティーは、訪問型支援事業を広げていくために活用されます!

(「2020年10月、日本こども支援協会さんの『10月4日里親の日 ONE LOVE 全国一斉里親制度啓発キャンペーン』という里親啓発キャンペーンに、子育てパートナーの皆さんと参加した時の一枚です。ハート型のチラシには里親制度の説明と社会的養育の現状が記されています」)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

岡田:
「社会みんなで子育て」を実践してきた中で、事務局の方でも少しずつ経験が積み上がってきました。今後は別の地域でも訪問型支援の活動を広げていくことへのお手伝いもしたいと考えています。
そこで今回のチャリティーは、こういった訪問型支援をより多くの方に知っていただけるよう、普及啓発のためのイベントやセミナー開催などの活動費として使わせていただけたらと思います。ぜひチャリティーアイテムで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(2020年9月、事務局スタッフの皆さんと。「ホームページのリニューアルのタイミングで撮影した集合写真です。それぞれのできることで、一歩一歩『社会みんなで子育て』のために頑張っていきます!」)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

「家庭」という空間に第三者が入っていくことは、そう簡単ではないと思います。家事や保育を介してであれば、そこをサポートしてもらうだけでご家庭の側も助かるだけでなく、共通の話題や親しみも生まれやすいのではないでしょうか。とても可能性のある取り組みだと思いました。虐待や孤立と聞くとつい、「あってはならないこと」「大変なこと」という自分の日常と分断した方向に意識が向かいがちですが、実は身近な場所にあるかもしれず、何かできることはないだろうかという視点を持つことで、少しずつ変わっていく部分があるのではないでしょうか。

・NPO法人バディチーム ホームページはこちらから 

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家の窓辺に、さまざまなギフトを運んでくる動物たちを描きました。家から出ることが難しかったり、地域から孤立しがちな家庭を訪問し、温かく寄り添うバディチームさんの活動を表現しています。

また風にそよぐカーテンは、訪問を通して少しずつご家族の心が開かれ、家庭内の風通しが良くなっていく様子を象徴するものとして描きました。

“Go forward together”、「一緒に前へ進もう」というメッセージを添えました。

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