CHARITY FOR

虐待を受けた子どもや発達障害を抱える子どもの心の声を通訳、心理療法を通じて人生を切り拓く力をサポート〜NPO法人子どもの心理療法支援会(サポチル)

虐待や発達障害など困難な背景を抱え、心のケアを最も必要としている子どもたち専門的な心理療法を安定的に受けられるしくみを提供し、それによって自ら生きる力を切り拓ける社会づくりを目指すNPO法人「子どもの心理療法支援会(サポチル)」が今週のチャリティー先。
2020年1月にコラボしていただいて以来、2度目のコラボです。(1度目のコラボの記事はこちらから

日本ではまだまだ馴染みの薄い心理療法。サポチルでは、虐待を受けた子どもたちについては1回5000円のセラピーを団体が全額負担というかたちで、発達障害を抱える子どもについては3000円を団体が負担というかたちで専門的な心のケアを行っています。

「僕たちの仕事はある種、通訳者のようなもの。心に深い傷を抱えていたり生きづらさを感じていたりする子どもたちが感じている世界、見ている世界を理解、翻訳して、関わる大人たちにも伝えていくことができたら」

そう話すのは、団体理事で臨床心理士・医学博士の藤森旭人(ふじもり・あきひと)さん(38)。

現在、イギリスで心理療法を学ぶ藤森さんに、改めてサポチルさんのご活動について、心理療法についてお話を聞きました。

(お話をお伺いした藤森さん。現在ロンドンのタビストック・クリニックにて、より専門的な子どもの精神分析的心理療法を学んでいる)

今週のチャリティー

NPO法人子どもの心理療法支援会(サポチル)

発達障害を抱えた子どもたちや虐待を受けた子どもたちが適切な心理療法(心のケア)を受けられるようサポートしながら、最もケアを必要としている子どもやその養育者に対し、安定的な心理療法が提供できる社会環境づくりを目指しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2021/8/23

子どもに専門的な心理療法を提供、
同時にセラピストの育成も

(プレイセラピーでは遊びを通じて表現された内容から子どもの心の世界の理解を試み、言葉を通してその理解を伝えていく。「『分かってもらえた』という体験につながるよう理解を伝える工夫が重要です。それは大人がまだ言葉を話さない赤ちゃんの様子を注意深く観察し、赤ちゃんが求めていることを汲み取って応じることにとても似ています」)

──前回のコラボではお世話になりありがとうございました。サポチルさんのご活動について教えてください。

藤森:
虐待を受けた子どもや発達障害を抱える子どもが、無料、あるいは安価で心理療法を受けられるよう支援の場を提供している団体です。同時に、子どもたちの心をケアする専門的なセラピストの養成にも力を入れています。

(スクールカウンセリングに精神分析の考えを活かすための研修会。冒頭にサポチルの活動案内を行っているところ)

──「セラピー」や「心理療法」と聞いてもあまりはっきりしたイメージが湧かないのですが、どういうものでしょうか。

藤森:
そうですよね。「セラピスト」という名称は、特に法律などで定められているものではないので、ジャンルを問わず、言ってしまえば誰でも名乗ることができますが、「臨床心理士」は、一定の経験と知識が必要で、資格試験を受けて合格する必要があります。サポチルでは主に臨床心理士や公認心理師、精神科医など普段から子どもの心のケアに関わる方に向けて、精神分析的心理療法による、より専門的なアプローチを追求する研修などを行っています。

ただ、ひとまとめに「心理療法」といっても、対象が子どもなのか成人なのか、あるいは高齢者なのかによっても異なりますし、対象は同じであってもどうアプローチするのか、その方法論もさまざまです。心のケアに携わる専門職の人たちがどういう知識や経験を積んでいくのか、それぞれに委ねられているところがあります。

サポチルは、「子ども(とその養育者)を対象」に「精神分析的な心理療法でアプローチ」することに特化しており、研修やセミナーでより深い専門性を持った人を育成するために、独自に「子どもの精神分析的心理療法士」という資格を出しています。

(子どものセラピーを実践していくうえで欠かせない、“現在の子どもの心の状態をどのように見立てるのか(アセスメント)”に関する研修会。受講者が多く、関心の高さがうかがえる)

心の状態が表れる「プレイセラピー」

(プレイセラピーで実際に使用するおもちゃと、作品を保管するためのおもちゃ箱。「描画用具や工作道具、家族人形やミニカーなどが、その子ども一人ひとりの専用のおもちゃ箱に入れられています。制作や描画などの遊びに、子どもたちの心の世界が表現されます」)

藤森:
サポチルが最良のアプローチだと考える精神分析的心理療法では、「子どもがなぜその言動や心の状態に至ったのか」といった「見立て(アセスメント)」を大切にしています。
いろんな背景を生きてきた子どもたちが、どのような心の状態で、その背景をどう体験してきているか。同じ環境で育っていたとしても、本人の体験の仕方によって感じ方が異なります。この「どう感じているか」について考えることが見立て(アセスメント)ですが、そのための手段として「遊び(プレイセラピー)」があります。

──「遊び」ですか?

(プレイセラピーの中で子どもが描いた絵。「怒った顔をしたアニメのキャラクターたちが猛烈な攻撃をたくさん繰り出しています。心の中に溜め込まれた怒りを誰かに受け止めてほしい気持ちや、受け止めてくれる誰かを痛烈に求める気持ちなどが表現されているように見えます」)

藤森:
セラピーで用いる「遊び」には、子どもの内面や状態が表れます。
ケースバイケースではありますが、子どもと大人という一対一のセラピーは、子どもにとって最初、不安が喚起されやすい場面です。

一般的な家庭で過ごしていれば、大人に対して「優しい存在」「自分のことを考えてくれる存在」という体験やイメージがある程度あるように思いますが、ひどい虐待やネグレクト(育児放棄)を受けた子どもの場合はそうではありません。

50分のセラピーの間、個室にいることさえ難しく、部屋を出てしまう子もいます。
それはなぜか。閉ざされた部屋にいること自体、その子にとって虐待を受けている場面を想起することもあるからです。部屋自体にその子の心理が反映されているという考え方ですね。

子どもがどのような心の状態なのか、人のイメージが心の中でどこまでどのように育っているのか、見立てと解釈をしながら、その場に応じて対応していくことが非常に重要なのです。

サポチル理事長の平井先生も、この「見立て」を重視しています。中でも重要なのが、少し専門的な話になりますが「内的対象」という、一人ひとりが持っている心の中の人のイメージです。

(こちらもプレイセラピーの中で子どもが作ったもの。「武器を持った人々が戦っており、中には首を切られて流血している人も。虐待を受けた子どもたちは、このような争いに満ちた残酷な世界を遊びで表現することが多く、彼らがこれまでにどのような体験をしてきたのかが生々しく伝わってきます」)

セラピーを通じ、子どもの「内的対象」を探る

(サポチルの支援活動のひとつである子育てセミナーの様子。「保護者が子どもの心について考え、理解できることを促す時間です」)

──「内的対象」ですか?

藤森:
はい。言ってしまうと、その子の中にそれまでに培われてきた「イメージ」です。
わかりやすい例でいうと、よく学校で講演する際、先生たちに「校長先生のイメージ」を尋ねるのですが、「教師のことをよく考えてくれる優しい上司」とおっしゃる先生もいれば、「外面ばかり良い人」とおっしゃる先生もいます。
それはその学校の校長先生がそうだということを表しているのではなく、一人ひとりが体験してきたその人の「校長の内的対象」であって、「その人が校長をどう体験してきたか、どう取り入れてきたか」なのです。

──なるほど。

藤森:
全く同じ環境で育ったとしても、内的対象は人それぞれ異なってきます。たとえば双子のAさんとBさんがいて、お母さんの内的対象がAさんの場合は「優しい人」、Bさんの場合は「怖い人」ということも起こりえます。

これは何も実母との関わりだけから築かれるものではありません。友達のお母さんだったり、テレビや何かで見たお母さんのイメージなども反映されるのです。

子どもへのセラピーでは、これが部屋や遊びに表現されます。その子の内側でどのような内的対象が育っているかが見えてくるし、また一緒に遊ぶことで、その内的対象が新陳代謝するというか、書き換えられて新たなものになっていくという効果があります。

(「双子の例でいうと、仮にAさんとBさんが同じような失敗体験をしたとしても、“失敗を責めずに慰めてくれる内的対象”を持つAさん(画像:左)と、“失敗をとことん責め続ける内的対象”を持つBさん(画像:右)とでは、その体験の受け止め方や感じ方が変わってきます。現実に起こった出来事をどのように体験して意味づけるのかは、その人がこれまでの人生で形作ってきた内的対象が持つ特徴によって決まってきます」)

──つまり、虐待を受けて大人に対して良くない内的対象を持っている子に対し、「大人はそんなに怖くないよ!楽しい大人もいるよ!」という関わりをされるのでしょうか?

藤森:
いいえ。セラピストは極力、自己開示をしません。
イメージでいうと、セラピーの間、子どもが心を映し出せるよう「空白のスクリーン」になるような感じでしょうか。ただ、セラピストも人なので完全に無になることは難しいですが…。

いずれにしても、子どもに「やさしい大人もいるんだよ」と積極的に話しかけるとか、説得するということはありません。説得したところで何も変わらないことが多いし、セラピーに来る子どもたちは、すでにそういった経験を経て、結果としてセラピーを受けているからです。

子どもの内的対象を受け取りやすいように空白になって、その子がこれまでに体験してきた大人のイメージが投げ込まれた時、まずそれを理解し、なぜそのような心の状態に陥っているかを分析しながら関わっていきます。

──良いイメージを持っていない子どもが多いのではないですか。

藤森:
壮絶な体験をしてきた子ほど、セラピーの際に酷いものを出してくる傾向があります。
ただ、本当に酷い状況でも、その中にほんの少しでも良い内的対象が根付いていないか、注意深く観察します。

たとえば、親からひどい虐待を受けていたけれど、近所のおばちゃんがやさしくしてくれた経験が残っているかもしれない。ほとんどが悪いイメージに押しつぶされてしまいますが、心の中に少しでも良い内的対象が残っていれば、そこを拾い、広げていくことができるかもしれません。それが私たちの役割です。そのためにはセラピストとして、洞察力や訓練が必要ですし、スキルが問われて来る部分でもあります。

──すごく微細なものなのですね。

(月に1度開催され、サポチル会員が自由に参加できる「土曜研究会」の様子。参加者同士で精神分析に関する文献を購読し、発表者がレジュメをまとめる)

一瞬の表現を見逃さず、
一人ひとりに合わせた関わりを

(「虐待を受けた子どもたちの心の中には、“赤ちゃんのときから成長が止まってしまった心の部分”が存在していて、彼らが時折示す暴言・暴力などの問題行動は、赤ちゃんが泣いて助けを求めることにとても似ています。サポチルはプレイセラピーを通し、子どもの心の赤ちゃん部分から発される苦しみに寄り添い、手を取って伴走し続けたいと思っています」)

藤森:
先ほど「遊び」に子どもの内的対象が反映されると話しましたが、たとえばセラピーの遊びの中で、子どもの人形を思いきり殴ろうとする子がいます。その後、レスキュー隊が助けにやって来ることがあります。「なぜ助けに来たの?」と聞くと「つらそうやから助けにきたんや」と答える。つまりそれはその子の中で、多少なりとも「困った時には助ける」「つらい時には助けに来てくれる人がいる」という内的対象があるということを意味することもあるのです。

子どもから出てくる表現をある種、待つというか。
良い内的対象がその子の中でどのぐらい残っているのか、そこを探りながら、もしそれが出て来た時、その一瞬の表現を見逃さず、関わっていくということなのです。

ただ、わかりやすく良い内的対象が表現されることは滅多にないので、子どもの動きや視線なども含めてかなり繊細にキャッチする必要があり、やはり感度や経験値、訓練が必要になってきます。

──そうなんですね。

藤森:
僕がセラピーを担当した児童養護施設で暮らすある子は、毎回セラピー中、わざと床に物を落として壊そうとしました。ある時、物を落とす前にこちらをチラッと見たのです。「今からやるぞ」というサインだったように思うのですが、その子の場合、この行為の裏には「行動を止めて欲しい」という本人の思いがあると判断しました。

物を壊すのは良くないので基本的には止めに入って制限をしますが、あくまで一人ひとりの子に合わせて、その子とのそれまでの関わりやセラピーから、一つひとつの行動をどう紐解き、判断し、対応していくかが問われてくるのです。

──なるほど。

(サポチルの理事の一人、久永航平(ひさなが・こうへい)さんは、行政の臨床心理士として小学校や幼稚園を巡回し、子どもたちへの関わり方に迷う教員や保護者の相談支援に従事。複数の職場を兼業し、教育相談の現場では虐待を受けた子どもの心理療法を、医療の現場ではうつなどに苦しむ大人の心理療法に取り組んでいる)

セラピーの中に、
『いたいの いたいの とんでいけ』をどれだけ入れられるか

(子どもの精神分析的心理療法士の育成、および精神分析的心理療法を通じた子どもたちへの支援で世界的に有名なロンドンのタビストック・クリニックにて、子どもの心理療法の研修を受ける藤森さん)

藤森:
先ほどの子の場合は、多動で落ち着いて人と関わるということがあまりありませんでした。施設でも学校でも、物を落としては壊し、怒られる、を繰り返す。その繰り返しの中、本人の心には「大人は自分の行動を制限して怒る」という内的対象が築かれ続けていたわけです。

セラピーでは、その子にとって「この人にも怒られた」で終わるのではなく、注意された後にどんな気持ちになるかも一緒に話したり代弁したりするように意識しました。「どうして僕ばっかり怒られないといけないのかなあって思うかもしれないね」といったことです。

よく子どもがケガをしたりぶつけたりした時、大人がそこに手を当てて「いたいの いたいの とんでいけ」とやりますよね。それと似ています。実際に痛みや傷口が飛んでいくわけはありませんが、「痛い」という気持ちを汲んでもらったら、不思議と痛みは消えていく。そうやって寄り添うことで、その子の内的対象が変化していくというか。僕自身は、内的対象が新陳代謝をしていくようなイメージでセラピーをしています。

──なるほど!わかりやすいですね。

(藤森さんがロンドンに渡る直前、スクールカウンセリングにおける事例を発表した研修会の様子。「日本での活動の集大成であり、さらにロンドンで心理療法について学び、より子どもの心について理解を深めたいと思えた研修会でした」)

藤森:
虐待を受けてきた子どもは、ほとんどのケースで大人に対する良い内的対象を持っていません。でも、セラピーを通じて心の動きを理解してもらい、受け止めてもらう経験があれば、「人ってそんなに悪くないかもしれない」「世の中ってもしかしたら悪くないかもしれない」という風に思えるようにもなるのではないでしょうか。

しんどい体験や難しい体験をしている子ほど、問題行動などを起こして日常生活では怒られたり制限されたりすることが増え、そちらにばかり時間が割かれてしまいがちです。そうすると、その子の感情やその子がどう思ったのかを取り上げる機会が減ってしまう。それはしんどいループを繰り返すことにもつながりかねません。だからこそセラピーでは、その子の心に寄り添って「いたいの いたいの とんでいけ」をどれだけ入れられるかが大切だと考えています。

──よくわかりました。内的対象の最終的なゴールというか、完成したイメージみたいなものはあるのですか。

藤森:
良くなりすぎないし悪くなりすぎないこと。内的対象が理想化されすぎても、後々外の世界に出て行った時に「あんなセラピストみたいな大人はいないじゃないか」と幻滅してしまうかもしれません。ほどよい内的対象が内側に根付くのが理想のように思います。

──子どもの内的対象が変化したな、というのは目に見えてわかるものですか。

藤森:
セラピストと落ち着いて関われるようになってくると、外での人間関係も改善されてきます。学校で友達と遊べるようになった、皆と一緒に何かできるようになったという話を聞くと、それはその子の中で良い内的対象が育ちつつある証だなと判断したりします。

児童養護施設に入所している小学校低学年の子どもが描いた藤森さん。「大人が自分のことを理解してくれるとは思えず、セラピストをほとんど見ることもなかった子が、数年のセラピーの末、初めてまじまじとセラピストを見据えて描いた絵です。この時、この子とのつながりが強く感じられました」

周りの大人たちが協力し合い
子どもによってより良い環境を

(サポチル会員の皆さん。2020年1月、前回のJAMMIMNとのコラボデザインTシャツを着て)

──高い専門性やスキルが必要な支援であることがよくわかりました。日本ではその専門性や需要さがあまり理解されていないようにも感じるのですが、いかがでしょうか。

藤森:
僕たちが単体で子どもを支援するだけでなく、たとえば居場所支援など、子どもと関わる他の領域の方たちと協働していくことは非常に重要だと考えています。

物理的な居場所があることにより、子どもの心の内側にも居場所ができます。同時並行してセラピーを受けることができれば、内的対象の新陳代謝がより早くなると考えています。

子どもの言動の背景にある心理状態や意図を僕たちのようなセラピストが汲み取ることができれば、周りの大人たちともそれを共有し、問題解決のための手立てがしやすくなります。自分のことを考えてくれる大人が複数いるというのは、子どもの内的対象にも大きく関わってきます。一般的な家庭では、親や家族が協力して自分のことを考えてくれるように思いますが、社会的養護が必要な子どもたちに対して、そこを他の団体とも協力して一緒にやっていくようなイメージでしょうか。

私たちは「内在化」と呼びますが、「ここに行けば安全だ、安心できる」という空間があることで、自分の内側に居場所を見出すことができるようになり、その結果、成長した後々もそんな場所が他にもあると思えるようになる。生きやすくなるし、社会ともつながりやすくなるのです。

(ロンドンの公園にて。休日に子どもとブランコを楽しむ藤森さんと、同じくサポチル理事で、タビストック・クリニックでの研修を終えた後、現在はロンドンで児童青年心理療法士として子どもへの心理療法支援を精力的に行っている西村理晃さん)

「僕たちの仕事はある種、
通訳者のようなもの」

(サポチル会員の一人の、実際に相談業務で使っている相談室。「左のソファのスペースで心理士が保護者の話を聞きながら、右側のキッズスペースで実際に遊ぶ子どもの様子を観察し、その様子からわかったことを保護者と共有します。保護者が子どもの心をより深く知る手助けをすることを目的とした部屋の構造になっています」)

──発達障害を抱えるお子さんたちのセラピーもされています。

藤森:
僕の個人的な理解ですが、社会的養護が必要な子どもは内的対象に対する理解が重要ですが、発達障害を抱える子どもの場合は、「その子がどのように世界を見ているのか」といった、感覚水準での理解をしていくことも重要だと考えています。世界の捉え方が根本的に違うことも多いので、セラピーでは常識を一旦取り払い、まっさらな状態になって彼らの感性やその世界に接近するようにしています。

たとえば、僕が関わっていた自閉スペクトラム症の小学校低学年の女の子は、シャワーを浴びるのがずっと嫌いでした。親御さんはなぜあまりにもシャワーが嫌いなのか、理解できずに困っていました。

ある時、その子のお母さんは、彼女が「38」という数字を言っていることに気づきました。何かと思ったら、それはシャワーから出ている水の本数だったんです。感覚が過敏で、シャワーが体に当たるたびに38本の水が当たっていることがわかったら、それは気持ち悪いですよね。
彼女は38本を感じて大変な思いをしているかもしれない、ということを僕がお母さんに伝えたら、お母さんも状況が理解できて、それによって劇的に状況が変わるわけではありませんが、先ほどの「いたいの いたいの 飛んでいけ」ではないですが、共感されたり、理解されることで彼女のしんどさが少し緩和された例です。

(「年に1回行われるサポチルの総会後の懇親会の様子です。サポチルの活動や会員の各自の現場について談話できる貴重な時間です」)

──確かに。あるいはシャワーはやめて、洗面器で水をかけるとか、対策も考えられますね。

藤森:
僕自身が今イギリスにいて感じたことでもあるのですが、僕たちの仕事はある種、「通訳者」のようなものではないのかなと思うようになりました。こういう子どもたちは、普段は怒られたりダメ出しをされたりすることがどうしても多くなってしまうところがあります。
虐待を受けた子どもたちや発達障害を抱える子どもたちが感じている世界、見ている世界を理解し、翻訳して、関わる大人たちにも伝えていく。

「ニューロ・ダイバーシティ(脳多様性)」という言葉がありますが、心理療法を通じ、人の多様性を伝えていくことが、僕たちの役割だと考えています。

(団体や理事の方たちが監修した、心理療法に関するさまざまな書籍。左から『児童養護施設の子どもへの精神分析的心理療法』(NPO法人子どもの心理療法支援会著・誠信書房)。児童養護施設にてセラピーを実践する様子が詳細に描かれている。▶︎左から2冊目『子どもと青年の精神分析的心理療法のアセスメント』(NPO法人子どもの心理療法支援会著・誠信書房)。学校や病院、母子生活支援施設などの様々な現場にて、セラピーを始める前に実施するアセスメントについて詳細に描き出した本。▶︎左から3冊目『子どもの精神分析的セラピストになること―実践と訓練をめぐる情動経験の物語』(木部則雄・平井正三監修/吉沢伸一・松本拓真・小笠原貴史編著・金剛出版)。サポチルに関わるセラピストが、精神分析的セラピストになる上での訓練やそのプロセスで感じてきた思いについて詳述。▶︎左から4冊目『小説・漫画・映画・音楽から学ぶ 児童・青年期のこころの理解』(藤森旭人著・ミネルヴァ書房)。身近な作品を通じて「内的対象」を含む精神分析の理論について平易な言葉で説明)

チャリティーは、心のケアを必要としている子どもたちに
心理療法を提供するための資金となります!

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

藤森:
チャリティーは、虐待を受けた子どもたちや発達障害を抱える子どもたちに、引き続き心理療法を提供するための資金として活用したいと考えています。ぜひ、アイテムで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(今回のコラボ企画の前日の研修会にて、参加者の皆さんと!今回のコラボTシャツを早速着てくださっています!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

今回のコラボでは、心理療法についてより詳しくお伺いさせていただきました。とてもわかりやすく紹介していただき、特に「内的対象」の話は、自分のそれを思い浮かべて(分析して?)も非常に興味深く、とても勉強になるインタビューでした。
深く傷ついていたり自分の意思を上手に伝えることが難しい子どもに寄り添うのが、決してプロである必要はないと思います。ただ、藤森さんのような専門的な立場の人がいて子どもの心理の分析があることで、現場として課題を共有できたり、その子にとってのベストを考えたりしていくことがよりスムーズになるのではないでしょうか。
イメージするとすれば、「体がなんとなく痛む」という時に「ここがこうで、こうなっているから痛むんだね」と、体の構造を知りつくして、症状を解釈して伝える人いたら、じゃあ痛みが出ないために何ができるか、食事や普段の生活でどんなことを気をつけたらいいかも見えてくる。とても重要な役割だと感じました。

・NPO法人子どもの心理療法支援会(サポチル)ホームページはこちらから

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クジラの背中にまたがって宇宙空間を浮遊する人を描きました。サポチルさんの提供する心理療法により、子どもの心の傷が癒え、目に映る世界が広がっていく様子を表現しています。

“Listen to your heart”、「心の声に、耳を傾けて」というメッセージには、言葉にならない心の声を探り、寄り添い、理解していく団体のご活動だけでなく、セラピーを通じ、やがて当事者が自分の声に耳を傾けながら、力強く人生を歩んでいってほしいという願いも込められています。

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