近年、労働力としてブラジルやペルー、フィリピンやベトナム、中国などからの外国人居住者が増加している日本。それに伴って公立学校にも外国人児童生徒が増えてきています。平成30年のデータによると、9万人を超える子どもたちが7800超の公立の学校で学んでいます(文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」より抜粋)。
母国を離れ、日本の学校で他の子どもたちと同じように学ぶ外国人児童生徒。
日本語の学習についていけず、母語も日本語も十分に発達しない「ダブルリミテッド」と呼ばれる状態に陥り、困難を抱えることがあるといいます。
今週、JAMMINがコラボするのは、NPO法人「にわとりの会」。
小学校教師として30年にわたり外国人児童生徒の教育の現場に携わってきた代表の丹羽典子(にわ・のりこ)さん(63)が、自身の経験や知識を生かして独自に教材を開発し、日本で学ぶ外国人児童生徒の学習言語習得の機会を広げるために活動しています。
「周囲の子どもたちと一緒に元気いっぱいに遊び、日常会話にも不自由がなくても、授業になると途端についていけないという子が少なくありません。それはまた、子どもの自信ややる気の喪失、不登校やドロップアウトにもつながりかねません。
無限の可能性を持つ子どもたちが、言葉や文化の違いで学習の機会や未来の可能性を奪われない社会をつくりたい」。
そう話す丹羽さん。
活動について、お話を聞きました。
(お話をお伺いした丹羽さん。団体名の「にわとりの会」は、「にわとり先生」という丹羽さんの小学校教師時代のニックネームからヒントを得たのだそう)
NPO法人にわとりの会
愛知県小牧市を拠点に、外国人児童生徒の学習言語の習得を応援する会。子どもの発達段階や興味にあった教材やカリキュラムを開発し、学習支援を行っています。
INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2021/7/5
(とある小学校の国際教室での一コマ。「にわとりの会」が開発した教材で漢字を学ぶ子ども)
──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。
丹羽:
私たちは、来日した外国人児童生徒のために、音の出る漢字カード「にわとり式漢字カード」をはじめとする教材やカリキュラムを開発し、広めている団体です。
外国人のための支援は他にもいろいろな方法がありますが、独自に開発した教材による学習言語の支援は、他にはない私たちの特徴だと思います。
(小牧市内にある公民館にて、「にわとり式漢字カード」を使って共に学ぶ子どもたち)
──外国人児童生徒は、学習面で困難を抱えているのですか。
丹羽:
はい。パッと見は元気いっぱいでドッジボールが強かったり足が速かったり、日本語もペラペラで周りともしっかりコミュケーションがとれて、一見何の問題もないように見えるんですね。会話も流暢で「日本語もしゃべれてるし、問題ないじゃない」と思うんだけど、いざ教科書を開いて「ここを読んで」というと、中学生くらいの大きな子でも、小学2年生の教科書が読めなかったりするということが少なくありません。
一見して困難が見えづらいために、長きにわたり見過ごされてきたところがあります。
決して彼らが学習を怠ったわけではなく、生徒に向き合ってよくよく話を聞いてみると、「実は字が読めんのだ」ということがある。日常会話には不自由なくても、漢字やひらがなが混ざった文章や日常ではあまり使わないような単語が出てくると途端に理解するのが難しいのです。
(小牧市東部のボランティア日本語教室「手まり塾」にて、おもちゃで遊ぶボリビア人の男の子。他の子どもたちと何も変わらず元気いっぱいで日本語も流暢なため、学習の面で困難を抱えているという問題が一見してみえづらい)
(「にわとり式漢字カード」で日本語を学習したブラジル人の高校生(右)が、同じブラジル人の小学1年生に同じ漢字カードを使って勉強を教えているところ。「適切な教材があれば、教える側も教えられる側も自分の母語を介して楽しみながら漢字学習ができます。『にわとり式漢字カード』は、教えたい気持ちがあれば、語学力の有無に関わらず使うことのできる、便利な日本語習得用の教材です」(丹羽さん))
丹羽:
つまり、私たちが生活で使用する「日常言語」と「学習言語」は異なり、外国人児童生徒はこの「学習言語」の習得において、困難を抱えてしまうことがあります。
英語では日常言語のことを「キッチン・ランゲージ」と言いますが、まさにキッチンで使われるような会話は本当に不自由なく迫力いっぱいに話せるけれど、こと本人が自分の夢を実現したりキャリアを積み上げていきたいと思った時、学習言語の壁が大きく立ちはだかるのです。
──なるほど。
丹羽:
日本語の学習において、特に漢字はものすごく高いハードルです。
一つの漢字に読み方がいくつもあることもそうですし、小学1年で習う「山」や「川」といった漢字は象形文字(ものの形をとった文字)なのでまだ比較的わかりすいですが、へんとつくりを組み合わせた、画数の多い形成文字(意味を表す部分と音を表す部分が組み合わさった文字)になると、途端にお手上げになってしまうということがあります。
(「にわとりの会」の活動とは別に、外国人児童生徒の学習支援ボランティアとして週に1度、子どもたちを教えている丹羽さん。「子どもたちのやる気や想像力を大切にして学習を進めていきます」(丹羽さん)
丹羽:
私は小学校教諭として外国人の生徒を集めた国際教室で5年教えましたが、何年生を教えても皆「小学2年生の漢字でつまずいている」という事実を発見しました。
たとえば、注意の「注」と石柱の「柱」。つくりは同じですが、意味はまったく違う漢字ですよね。へんの「氵」や「木」で日本人の私たちは意味の違いが理解できますが、外国人の生徒たちからするとまさに「なんじゃこれ」という世界なのです。
日本人の場合、日常生活の中で学習言語を習得する土台ができていきます。生活で得た感覚の下塗りがあって、そこに学習によって上塗りして定着させることができますが、この下塗りがないと、本当にお手上げ状態になってしまうのです。
日本人の児童生徒は、小学校に入る時点で1000〜3000語の語彙を持っているといわれています。一方で、日本にきたばかりの外国人児童生徒の日本語の語彙は、ゼロか、持っていたとしても100程度です。つまり、そもそものスタートラインが日本人生徒とは全く異なるわけです。すると日本人児童生徒と同じ学習のやり方では、いつまでたっても学力として追いつくことができないのです。
(中学3年生のブラジル人の男の子が、一学年下の中学2年生の子たちに母語のポルトガル語を使って国語を指導。「慣れ親しんだ母語があることで、勉強への理解が進みます」(丹羽さん))
──最初の時点でそんなに差があるのですね。
丹羽:
わかりやすくイメージしていただくとしたら、皆さん、自分が小学校4年生に戻ったとして、ある日突然家族でサウジアラビアに引っ越したと想像してみてください。看板はどれもアラビア語で、公衆トイレの入り口も出口もわからない。文化や風習も全く異なり、イスラム圏の国なので、女性は目の部分だけが開いたベールを全身に纏います。
現地の小学校に転入して、まずアラビア語は日本語のように縦書きや左から右に読むのではなく、右から左に読みますよ。このような環境にぱっと置かれた時、現地の子たちと同じように、問題なく学習が身についていくでしょうか?
…この状況こそが、外国人児童生徒のおかれている状況なのです。
──ちんぷんかんぷんの授業がいやになって、学校に通うことさえ億劫になりそうです。
丹羽:
そうですよね。慣れない言語に囲まれた環境で、授業がわからない、ついていけないとなると、次第にやる気も学校に通う気力も失せていきます。子ども自身、「自分は頭がわるくなっちゃったのかな」と自信を失い、つまずくことも少なくありません。
(愛知県からの受託事業として、愛知県内で子育てをする外国人保護者が楽しく安心して子育てできるよう、また保育園や小学校での生活がスムーズにできるようにとの願いを込めて、子育てに関するさまざまな情報や子どもの言語習得に関する情報をまとめた『あいち多文化子育てブック』を制作。ポルトガル語・英語・中国語・フィリピン語・スペイン語で発行されている。他にも外国につながる母親たちが子育てする際に必要な情報を5か国語に翻訳した『子育てに役立つ日本語』や、東海労働金庫の助成を受けて、外国につながる生徒が学校卒業後、働くときに役立つ日本語を覚えるための冊子『仕事に役立つ日本語』も制作。仕事に関する日本語を5カ国語に翻訳、敬語やマナーについて学習できるようになっている)
(「漢字をへんやつくりなどのパーツに分けて、それぞれは組み合わせでできていることを子どもたちに教えているところです。『力』という文字の意味、それが一部に入っている『助』や『動』の字も関連づけて教えることで、膨大な数の漢字をそれぞれグループにまとめて覚えることができます。また既に知っている言葉と関連づけて新しい言葉を覚えるため、頭の中が整理されて記憶しやすくなります」(丹羽さん))
丹羽:
私は教師として、自分の専門分野を生かしてこの課題をなんとかできないか、より多くの子どもたちを効率よく手助けできないかと思いました。毎日学校に来る外国人児童生徒に、学校で習う漢字をよりわかりやすく覚えてもらいたい。そこで開発したのが、音声つきの「にわとり式漢字カード」です。
もう一つ、外国人児童生徒を指導する現場の先生や日本語教室のボランティアの方たちを助けたいという思いもありました。
教師として国際教室を担当していた時、同じように国際教室に配属になった先生が、どう教えていいのかわからず途方に暮れている姿を見てきました。
特に海外を訪れたり外国語を学んだりといった経験がない先生は、子どもたちが何に困り迷っているのかを想像しづらく、苦労されているように感じました。
そうすると、漢字を覚えられない子どもに直面した時、自分が受けてきた、あるいは教えてきた教育と同じように「10回書けば覚えるよ」と言ってしまう。だけど子どもからすると、意味のわからない模様をなぞったり書いたりしているだけで、10回書いても20回書いても覚えられないんですよね。
(「にわとり式漢字カード」は、カードと音の出るペンがセット。ペンで文字をなぞると音が出て、音の情報も使いながら学習をサポートする)
──先ほど聞いた「下塗り」の感覚や知識を持っていない状態ですもんね…。
丹羽:
フィリピンから来て1年生から日本の小学校に入学したある子は、小学校4年生の3学期になっても小学1年の漢字を2つか3つしか覚えていませんでした。あれっと思ってその子の過去の漢字ドリルを見ると、1年生の時からちゃんときれいにドリルをやっているんですよね。ただ、自分が知っていて家族と会話している英語やタガログ語、母語の単語一つひとつと、日本語のそれとが全く結びついていなかったのです。
意味がわからないまま、ただただよくわからない記号を静かに模写していたんです。
──そうか。そういうことですね。
(授業の一コマ。文字だけでなく絵も取り入れながら、子どもたちの理解を促していく)
丹羽:
私は外国人児童生徒とのやりとりの中で、子どもたち一人ひとりが知っている母語や物、一人ひとりの認識の世界と照らし合わせて「これは日本語ではこうやっていうんだ、こうやって書くんだ」ということをつなげることができれば、確実に覚えることができるということを体験として感じていました。
(小学校3年生でブラジルから来日、学習に困難を抱えていた時に出会った広ヒオゴくん(18、写真左)。「にわとり式漢字カード」によって漢字を克服、大学の外国語学部に進学した彼の夢は「教員免許を取って、国際教室の先生になること」。現在は週に3回、にわとりの会の教室で勉強を教えている)
丹羽:
「山」という漢字をただ教えても覚えられないけれど、紙に山の絵を書いて、その子の母語で、たとえばスペイン語で「モンターニャ」と伝えると、「山」が何なのかを理解して覚えてくれるんです。
子どもたちはすでに、それまで生きてきた経験の中で「言葉の網」を持っています。それを一つひとつ日本語や漢字にしていくことができれば、すでに網はあるので、オセロのように一つひとつ、本人の認識を日本語にひっくり返していくことができる。
一方で、その「言葉の網」と日本語とが結びつくタイミングがなければ、本人の持っている網とは別の場所に、よくわからない日本語たちが存在することになります。そうすると学習の現場で日本語を用いていくことは困難になりますよね。この、本人の持つ「言葉の網」と日本語とを結びつけるものが「にわとり式漢字カード」なのです。
(7年前の2014年、完成したばかりの小学校3年生向けの「にわとり式漢字カード」を使って学習する当時11歳の広ヒオゴくんと丹羽さん。「子どもは新しいことを学ぶことが好きだし、面白い先生も好きだけれど、勉強をわからせてくれる先生が好きなんだなと感じます」(丹羽さん))
(小学校1、2年生で学ぶ「ごんべん」シリーズの中心となる「言」のカード。「キモカワキャラクター『ナッチェ星人』が出てきます」(丹羽さん))
──「にわとり式漢字カード」について教えてください。
丹羽:
一つの漢字につき一枚のカードになっています。表には読み方と例文、イラストが、裏には北京語・広東語・英語・スペイン語・ポルトガル語: ・タガログ語の6ヶ国語で例文の翻訳が載っていて、セットになっているタッチペンでそれぞれの音を読み上げてくれるしくみになっています。
漢字カードは現在アプリも開発していて、こちらはベトナム語とネパール語を加えた8ヶ国語の例文の翻訳を掲載しています。
2011年9月に小学校1・2年生の漢字にプラスαを加えた256枚のカードが完成し、その後、「先生、3年生や4年生のカードはないの?」と子どもたちにキラキラした目で言われて、そうやって言われたらやらない選択がないですよね(笑)、最終的には小学6年生までの漢字・713枚のカードを作りました。ただ、現在生徒用にリリースしているのは2年生まで、それ以上の学年は教育者版となっています。
──すごいですね。アプリも開発されているとは最新ですね。
(「にわとり式漢字カード」のインストラクター養成の様子。「カードの使い方だけでなく、漢字の学習に挫折した子どもがやって来るので、その気持ちに寄り添うことを忘れず、気長に子どものやる気を引き出していってほしいとお伝えしています」(丹羽さん))
丹羽:
いろんなところに持っていくたびに「アプリにならないか」という声をいただきました。子どもであれば一枚のカードにたくさん群がってみんなで一緒に勉強するのもまた楽しいですが、おとなの方の日本語学習にも用いていただいており、その場合はアプリの方がより手軽に自分のペースで進めることができます。アプリもカードと同様の作りで、タッチペンの代わりに文字を手で押すと音声が流れます。
──ハイテクですね。
丹羽:
私の思いとして、文明が発展したからこそ気軽に国を超えてくる子どもたち、だからこそ生まれしまうこの課題を、同じように文明で解決できないか、文明を逆手にとって支援できないかという思いがありました。カードもアプリもどちらも良さがあるので、ハイブリットで併用しながら学習するのが良いのかなと思いますね。
(漢字カード(あるいはアプリ)と併用してドリルを使用。「漢字が読めるようになったら、書きたい気持ちも出てきます。でも、見慣れない漢字を真っ白な紙に書くのは難しい。まずは画数の少ない漢字をなぞることで書くことに慣れていく、それを可能にするのがこのドリルです。正しい書き順で何度も書くことで、だんだん漢字をきれいに速く書くことができるようになります」(丹羽さん))
──開発にあたってこだわられた点を教えてください。
丹羽:
絵があり、母語とその読み上げの音があると、子どもたちの反応は全然違いますね。それでもやっぱり集中力が途切れてしまうので、時々カードに二択クイズなども入れています。正解と思う方を押して、合っていたら「ピンポン」と鳴る。子どもたちは喜んでくれますね。
子どもの意欲を引き出すために、一部、絵に音声をつけた点もポイントです。
たとえば、「一」のカードの例文は「一(いち)日に一(ひと)つりんごを食べた」なのですが、りんごのイラスト部分をタッチすると「ムシャムシャ」とリンゴをかじる音がしたり、「全」のカードには「全(まった)くだめだ。全(ぜん)部まちがい」という例文をつけているのですが、イラストをなぞると「ガーン」という音がします(笑)。
(生徒の漢字ドリル)
丹羽:
音を探すのも大変な作業でしたが、ポップでちょっとおふざけな感じも入れながら、楽しいカードを作りました。
あと、このカードで何より特徴的なのは、漢字の並び順です。あいうえお順でも画数順でもなく、外国人児童生徒が漢字を覚える際に適した並び順を意識して作成しました。
(「口」のカードで、自分の口元に口のイラストを持ってきて周りの生徒を楽しませる子ども。「笑いは世界共通です。ちなみに、『口』のカードの例文は『この町は口(くち)の大きな人の人口(こう)が多い』です(笑)。おとなからは『ちょっと意味が変ですね』といわれるような例文も、子どもたちは純粋に楽しんでくれます」(丹羽さん))
((あるボランティア日本語教室での一コマ。「カードでカルタ取りをしながら漢字が覚えられるから嬉しい」「漢字の勉強が楽しくなったよ」という声をいただき、嬉しかったです」(丹羽さん)))
──お話を聞いていて、目も耳も不自由だったヘレン・ケラーに手話を教えたサリバン先生を思い出しました。言語という概念やその本質的な意味を知ったことで、ヘレン・ケラーはその後多くの言葉を覚え、歴史に名を刻む偉人になりましたよね。
丹羽:
感覚だけが残っていたヘレン・ケラーに水を触らせ、「water、water、water、これが水、水なんだよ」と働きかけたことで、彼女の中で病気になる前に記憶していた世界がわーっと流れ、言葉という概念と結びついた。それと同じような体験が、外国人児童生徒にも瞬間起こります。
自分が知っている物の絵があり、母語が聞こえ、聞いたことのある日本語が聞こえた時、その子の中でこれらすべてがつながる瞬間があるんです。それはやがて膨大な知識となり、本人の自信にもつながっていくと思います。
(来日後、再び母国に戻る子どもも。「ブラジルに帰る子のために母語教室を開催。漢字カードのポルトガル語を拡大し、教材として使用しました」(丹羽さん))
丹羽:
ヘレン・ケラーではないですが、言語環境の複雑さのために本来の能力が埋没してしまう。だけど、能力がないなんていうことは決してないんですね。
子どもたちはたまたま日本に来て、言葉がわからないだけなんです。だから、「自分はばかになってしまったのか」「学習についていけない自分は頭がわるいのか」と自信を喪失する期間を、できるだけ短くしてあげたい。
生きていく上で、それがたとえ日本であれ世界であれ、言語は非常に重要です。母語も日本語も学習言語が身についていない「ダブルリミテッド」の状態を作りたくないと思っています。
(中学2年の4月に来日した男の子(写真左)。「日本語がゼロだったにも関わらず5ヶ月で『にわとり式漢字カード』を学び、冬休みも返上して高校受験にチャレンジ、見事合格しました。入学式の日に、高校の前でお父さんと撮った一枚です。多くの外国につながる子どもたちが、学校の授業についていけず、学習を諦めて中学卒業後に働きはじめます。でも本当は皆『もっと学びたい』と思っています。この子のように言葉がわからないつらさを体験しながらも、地道な努力の後に現われる晴れ晴れしい気持ちを、どの子にも味わってほしいのです」(丹羽さん))
(中学3年で来日した一人の男の子。学校の授業についていくことは難しく、学習を諦めて中学卒業後に働きはじめた彼だったが、同じくブラジルから来日して日本語がわからない小学1年生にやさしく日本語を教える。「言葉がわからないつらさを体験した人間ならではのやさしさだと思います。このような光景を目の当たりにする度に心が洗われます」(丹羽さん)
──丹羽さんの子どもへの思いやモチベーションを教えてください。
丹羽:
子どもの存在自体が大きな可能性のかたまりで、全知全能で幸せにあふれています。本当にかわいくて仕方がないですね。
子どもたちは皆、最初は目をキラキラさせて期待や希望でいっぱいで学校の門をくぐるのに、どこかつまずき、くすんでいくことがある。そのひとつの原因として「勉強がわからない」ということがあります。
私は教師として、子どもたちが何か切り札として「これをやれば次のステージに行ける」と夢を持ち続けられるもの、夢をかなえるためのツールを提示してあげたいと思っていますし、それが自分の役割だと思っています。
(国の文化を知ることも学びのベースには必要。時には教室から抜け出して、さまざまな体験活動も。写真は和服体験)
──最後に、チャリティーの使途を教えてください。
丹羽:
私たちの活動拠点である愛知県にも、日本にやってきた外国人やその子どもたちを支援するさまざまな団体があります。今回のチャリティーで、1セット3万円の漢字カードセットを、外国人児童生徒の学習をサポートする団体へと届けたいと考えています。
外国人児童生徒たちの明るい未来のために、ぜひ応援いただけたら嬉しいです。
──貴重なお話をありがとうございました!
(小牧市南部コミュニティーセンターの日本語教室にて、スタッフ、ボランティア、生徒の皆さんと記念撮影!)
インタビューを終えて〜山本の編集後記〜
スマホでなんでも検索できる時代ですが、まず「言葉」を知らないことには、欲しい情報や求めている情報にたどり着けないということがありますよね。
「言葉を知る」ことは「概念を得る」ことであり、その先の情報や知識を得ていくことにもつながる。まさに学問の「窓」であり、人が生きていく上で非常に重要なものではないでしょうか。これから成長していく子どもたちにとっては、ある意味栄養のようなもので、言葉を吸収してどんどん世界を広げ、自信を広げていくツールなのだと思います。そんな言語を、つまずきなく学べるように。
ぜひチャリティーを応援していただけたら幸いです!
コックさん、学者、農家…、夢をかなえたにわとりたちの姿をカードにして描きました。漢字カードによって学習言語を得ることで可能性が広がり、なりたい未来を実現する様子を表現しています。
“Once you choose hope, anything is possible”、「ひとたび希望を選んだなら、君はなんでもできるんだ!」、学びとは希望であり、学べる環境もまた希望であり、それによって願いがかなえられていくというメッセージを添えました。