CHARITY FOR

路上生活者を排除せず、関係性を築き「人間らしさ」取り戻す支援を〜NPO法人岡山・ホームレス支援きずな

2020年3月、岐阜にて路上生活をしていた高齢の男性が未成年の集団に襲われ、亡くなる事件がありました。

同じ命であるにもかかわらず、彼の命はなぜないがしろにされたのか。ホームレス状態にある人に対して、「ホームレスを選んだ自分が悪い」「生きている意味がない」といった差別や偏見が、今も強く存在しているのではないでしょうか。

今週JAMMINがコラボするのは、岡山で20年近くにわたりホームレス支援を行ってきたNPO法人「岡山・ホームレス支援きずな」。
ホームレス状態にある人の食や住まい、仕事などのハード面をサポートする一方で、「人とのつながりやその人らしい生き方を取り戻して欲しい」と本人が自らの意思で生きていく、その回復のために力を注いでいます。

「僕らは、支援ための専門知識は持っています。でも住まいやお金を用意したからといって、それは果たして本人の人間らしい暮らしを約束するもので、幸せと言い切れるものでしょうか。衣食住には困らなくなったとしても、居場所を感じられず、再び仲間のいる路上の生活に帰る人もいます。今ある状況や過去の失敗で判断されず、困った時に『助けて』と言える社会、支え合える社会を築いていくことが大切です」

そう話すのは、きずなのスタッフで社会福祉士の新名雅樹(しんみょう・まさき)さん(49)。活動について、お話を聞きました。

(お話をお伺いした新名さん)

今週のチャリティー

NPO法人岡山・ホームレス支援きずな

ホームレス状態に置かれた人、ホームレス状態になるおそれのある人に対して積極的な関わりや心をつなぐ会話を持ちながら、さまざまな社会資源を利用して衣食住の確保や就労の支援を通じ、自立に向けての取り組みを行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2021/4/5

2002年より岡山で路上生活者を支援

(おとな食堂「安楽亭」のカレー。「毎週金曜日には、レシピにこだわった特製カレーを作ります。『できたてを温かいうちに、みんなで』がモットーです」(新名さん))

──今日はよろしくお願いします。まずは団体のご活動について教えてください。

新名:
2002年から岡山でホームレス支援団体として活動を始め、今年で丸18年になります。路上生活者の数は年々減りつつあり、統計では現在全国で4000人を切っていますが、当時は2万も3万人もいるとされていました。

きずなの活動の原点は炊き出しです。命につながる「食べる」ことを切らさないようにしようと、関東で炊き出し経験のあったキリスト教の牧師先生が始めました。任意団体として活動していましたが、2008年のリーマンショック後、岡山でも目に見えて路上生活者の数が増え、食だけでなく住まいや就業、居場所づくりなどさまざまな支援がしたいと2011年にはNPO法人として活動をスタートし、炊き出しの頃から根幹の部分は変えずに、支援のかたちを少しずつ増やしてきました。

(きずなは、雑誌『BIG ISSUE(ビッグイシュー)』の委託販売も行っている。「売り上げの半分が委託販売する販売者さん一人ひとりの収益となります。きずなが運営する『安楽亭』でも販売しており、こちらの売り上げの半分は団体の収益となって各運営費に充てられています」(新名さん))

──「ホームレス」と聞くとどちらかといえば東京や大阪といった都市のイメージが湧くのですが、岡山という地域ならではの特徴はありますか。

新名:
岡山は、中国・四国・関西、どこに出るにしても交通の便が良く、西日本の交通のハブ的な立地です。大手メーカーの下請け工場がいくつかあり、岡山で職を失ったという人もいるし、別の場所で職を失い、たまたま岡山に流れついたという人もいます。

──そうなんですね。

新名:
路上の生活を考えると食を確保する場所や雨風をしのげる場所が必要ですし、仕事も探しやすい場所でなければならない。都市でなければ難しいところがあります。岡山市内はコンパクトな街でありながら、必要なものは揃っていて生活しやすいし、他の地域への移動もしやすい。また気候も安定しており非常に過ごしやすく、そういった点からも路上生活がしやすい場所と言えるかもしれません。

(毎週水曜日、岡山駅周辺の夜回りの様子。「はじめにこちらから『こんばんは、夜回りをしています』と声をかけ、食料をお渡しします。その時の反応を伺いながら、当事者の方と話をします」(新名さん))

「人間らしい豊かな時間を」。
おとな食堂「安楽亭」をオープン

(活動を始めた当初の頃、岡山駅周辺の公園での炊き出しの様子。簡易的なものであっても、温かい食事を提供できるよう心がけていたという。ご飯に温めたレトルトのカレーをかけている様子がわかる)

新名:
活動を始めた頃は公園などで炊き出しをしていましたが、このやり方が果たして最善なのか?という疑問が出てきました。

──というのは?

新名:
屋外で炊き出しをしていると、市民の方たちがあからさまに「うわっ」という表情をされたり嫌がられるということがありました。「路上で恵んでもらっている人」という見られ方は、食事をもらう側も「俺たちは所詮こんな人間なんだ」とそのスティグマを背負うことになるのです。

周囲から「恵んでもらっている人」というレッテルを貼られた時に、その人が人間らしい暮らしいを取り戻せるのか。そんな思いがありました。

──周囲の目が、本人にとっても自己価値をさらに低めてしまうということがあるのですね。

新名:
また、たとえばですが炊き出しで豚汁とおにぎりを配ったとしますよね。そうすると片方の手で豚汁、片方の手でおにぎりを受け取って両方の手が埋まってしまいます。
食べるためにはベンチなのか地面なのか、一旦どこかに食べ物を置かければいけません。あるいはその場で立ったまま、周囲の目を気にしながら、誰とも目を合わさず会話もなく、ただお腹を満たすために食べることになります。それを果たして「食事」と呼べるのかと。

路上生活者は、食べ物を見つける場所を「餌場(えさば)」と呼びますが、食べる状況を考えた時、炊き出しも同じように「食事」ではなく「餌」になってしまうのではないかと思ったのです。

「かわいそうだからあげる」のようなお恵み的なものでも、ただお腹を満たすものでもなく、食を通じ、人間らしい豊かな時間を作りたい。そう考えた時に「食堂」というかたちに行き着き、2011年に子ども食堂ならぬおとな食堂「安楽亭(あんらくてい)」をスタートしました。生活困窮者の方に、食事だけでなく入浴と洗濯のサービスも提供しています。

(安楽亭の外観。「縦縞の建物が目印になっています。写真奥に平屋の古民家があります」(新名さん))

見た目にもおいしい食事が、
本人の自己価値も高める

(安楽亭は築80年の古民家を改装した建物。おばあちゃんの家に来たような安らげる空間を意識し、照明などにもこだわったのだそう)

新名:
人の目も気にすることなく、立ったままでも寒いところでもなく、テーブルに食べ物を置いて、ゆっくり食事を味わうことができる。さらにはスタッフやボランティアさんとも交流が生まれます。行きつけの大衆食堂のような感じで利用してもらえたらと思っています。

そこにいけば自分のことを知っている人がいて、「○○さん」と名前で呼んでくれる。そのときにその人は「○○さん」であって「路上生活者」ではないんです。「同じ釜の飯を食う」ではないですが、一緒にご飯を食べる空間が、仲間という意識を生むひとつのきっかけにもなります。

──確かに。

(ボランティアさんと協力し、50人分の食事を作る)

新名:
食堂はいただくご寄付でなんとか運営していますが、調理のボランティアさんが工夫してやりくりし、見た目にもおいしい食事を心がけてくださっています。

手間ひまかけた料理を、安心できる空間で食べること。当たり前に聞こえるかもしれませんが、路上生活はこういったこととは無縁です。ここで食事することで、忘れかけていた人間らしい暮らしや感性を思い出したり気づいたりしてもらえたらと思っています。

お腹がいっぱいになれたらどうでもいい、食べられたら何でもいい、どんな場所で食べてもいいのではなくて、人間らしい空間で「人として」大事にされることが、本人の中でも、自分の存在価値を高めるきっかけになると思っています。

(ガパオライス(ひき肉や野菜を炒め、ナンプラーなどで味付けしたタイ料理)など、一風変わった料理を提供することも。添えてあるライムが本格的!)

人間らしい暮らしや感覚、
関係性を取り戻す場所

(毎年お正月はおせち料理を作り、ご飯を食べに来た人たちをおもてなし。共に新年を祝う)

新名:
安楽亭では無償で入浴設備と洗濯機も利用できるようにしていますが、これは路上生活者の衛生面を保つということもありますが、汚れや匂いが目立たないことで良い意味で社会に溶け込んで、「路上生活を送っている」ということを、本人も必要以上につらく思わないで済むと思うんです。

あとはやっぱり、本人が人間らしさや自分らしさを取り戻すことがとても大事だと思っているので、たとえば安楽亭のお風呂に入りながら「自分だけのお風呂でゆっくり湯船に浸かりたい」とか「毎日洗濯した服を着たい」と感じてもらったら、「よし、路上から出よう」みたいなかたちで、自立への一歩を自らの意志で、自然に選択できるきっかけになればという思いもあります。

──なるほど。

(安楽亭の洗濯コーナー。生活困窮者を対象に、洗濯や入浴設備を無償で提供している)

新名:
家がない、お金がない、病気がある、障害があるといったことについては、我々も専門の知識を持っているし、必要な支援につなげることができます。だけど悩ましくも最も向き合わなければならないことは、一度途絶えてしまった本人の人間らしい暮らしや人との関係性を、どう回復していくのかということだと思います。

(毎週水曜日には、安楽亭の庭で路上生活をしている方たちと共に野菜作りに精を出す。「収穫した野菜は炊き出しに使ったり、販売してその売り上げを安楽亭の運営費に充てたりしています」(新名さん))

「ホームレスは本人の責任」「その人が不幸だっただけ」。
果たして本当にそうなのか

(毎週月曜日に安楽亭にて開催される茶話会「月曜の会」。「いろいろな立場の人とたわいのないコミュニケーションの時間を共有することで、路上生活を送る方が社会との関わりを継続できるようにしています」(新名さん))

新名:
「ホームレス」は状態を指す言葉であって、その人自体を指す言葉ではありません。
ホームレス状態にある人のことを、「社会からこぼれ落ちた人」とか「自己責任だ」と批判する風潮がありますが、「ホームレス」はその時の状況に過ぎません。一体その人の何を見て「こぼれ落ちた人」と断言できるのでしょうか?

家庭の事情や個人的な事情、障害などを抱え、サポートもない中で必死に生きてきた人たちも少なくありません。努力してもなお、どうすることもできないこともあります。

生まれた環境や病気、事故などで困難を抱えて生きていて、気がついたら路上に出ていた。それは「たまたまその人が不幸だっただけ」で済まされることなのでしょうか?本当にそうでしょうか。

(生活相談の様子。「長年きずなでボランティアをしてくださっている方が相談者さんの話に耳を傾けています。どんな立場であっても、互いに相手に寄り添う気持ちがあれば、少しずつ思いは伝わって道は拓けていくのではないかと思います」(新名さん))

新名:
ホームレスの人たちは、誰だって正々堂々と「私はホームレスで御座い!」なんて思ってはいません。
みんな自分から目線をそらして、自分のことをまっすぐに見てくれる人はいない。まるで透明人間のように扱われ、誰からも必要とされない暮らしはどのようなものでしょうか。「ホームレスであることを誇れる社会」は難しいかもしれない。だけど「ホームレスであることが排除されてしまう社会」は、僕は非常に怖いと思います。

望んでホームレスになる人はいません。この世の中に不要な人はいないし、差別されていい人は一人もいません。以前、「人権とは等しく誰にもあるもの。人がいる場所に必ずあるものだ」といわれてハッとしたことがありました。ここにはあるけど山奥にはないとか、あの時はあったけど今はないというものではなくて、誰しもに等しく備わる、自由である権利なんです。

だからこそ、その人がその人らしくあるための取り戻し方が大切です。そしてその時に、「一緒に悩む人がいること」が大事だと思っています。

社会から排除され孤立した時、本人も深く傷ついているし、人と関わりを持つことを諦めたり、煩わしく感じたりしています。住む場所や就業といった物理的な支援につなげることだけを成果とするのではなく、ここをどう回復していくかが非常に重要です。
そのために、「何があってもあなたとつながっている。何かあったら助けにいくよ」という僕らの思い、覚悟を伝えていかなければならないと思っています。

(新名さんは、もともとはボランティアとして活動に参加していた。「こちらは13年前の写真です。公園で炊き出しをしていた頃が思い出に残っています」)

人間らしさを取り戻し、生き直すきっかけになった
「手作りのサンドイッチ」

(年末年始の連日の炊き出しに参加されているボランティアの方たち。たくさんの人たちが関わり、団体名の通り「絆」を築き上げてきた)

──これまでのご活動で、印象に残っている方はいますか。

新名:
本当にたくさんの方と関わらせていただいてきたので難しいですが…、そうですね、Aさんでしょうか。
Aさんは関東で測量の仕事をしていた方です。ひとり親方で仕事のために地方も転々としたそうですが、60を過ぎたある日、ずっと暮らしていたアパートが代替わりで立て壊しをすることになって転居を求められました。その時に生きる目的を失い、「もういいかな。人生を精算しよう」と思ったそうです。

「今まで行ったことのない場所、見たことのない場所で死のう」と思い、Aさんは会社をたたみ、手に残ったわずかなお金を持って家を出て、「宮島に行ってみよう」と広島を訪れ、お金が尽きて岡山にたどり着いたということでした。

しかし死のうにも、こわくて自殺はできない。「このまま緩やかに死ねたらいいな」と、口にする一切のものを絶ったのだそうです。

僕たちは夜回りの活動の中でAさんと出会ってはいましたが、関わりを拒まれていました。夜回りの際には少しでもお腹の足しになればとカップ麺をお渡ししているのですが、Aさんは生きるつもりがないので、全て周りの方にあげていたらしいです。

──そうだったんですね。

(きずなでは岡山市からの委託事業を受け、路上生活者の一時生活支援施設「ひびき」と保護観察所からの委託で主に身寄りのない刑余者の支援をする自立準備ホーム「なごみ」の運営も行っている)

新名:
カップ麺とは別に、手作りの食べ物をお渡しすることがあります。路上生活の方たちのことを考えて「ちょっとでも体にいいものを」「食欲がなくても食べられるように」と、野菜たっぷりのサンドイッチだったり具材たっぷりの炊き込みご飯のおにぎりだったり‥クオリティーがすごく高いんです。ある日、Aさんは手作りのサンドイッチを受け取りました。

そして、死ぬために何も食べないと決めていたのに、つい一口食べてしまったそうなんです。その時に、「なんて美味しい食べ物があるんだ」と思ったというのです。そして「こんなおいしい食べ物があるうちは死ねない。もう一回、やり直そう」と。

──ええ…!

新名:
愛情のこもった手作りの食べ物を口にして「おいしい」と感じた時、Aさんは人間らしさやその感覚を取り戻したのではないかと思うのです。そこから僕たちとつながってくださって、路上生活から抜け出し、のちに就業先も見つかって関東に戻られました。
死ぬためだったはずの旅が、生き直すための旅になったんですね。そしてそのきっかけが、手作りのサンドイッチだったんです。

──サンドイッチが、心を動かしたんですね。

新名:
「えっ、これが」と思うことかもしれません。だけどそんな小さなことでも、その人にとっては大きな価値で、人生をやりなおすきっかけになり得るのだということを教えてくれました。この活動は一期一会なところがあります。路上で出会う方が、来週も同じ場所にいる保証はありません。一つひとつの出会いを大切に、真心を込めて丁寧さの奥深くを突き詰めていきたいと思います。

(安楽亭がオープンする日は、毎回大きな釜で50人分のご飯を炊く)

チャリティーの使い道

(「同じ屋根の下、誰かと一緒に温かいご飯を食べることこそ人間らしさを取り戻すのではないかと思います」(新名さん))

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

新名:
安楽亭の食器購入のための資金にしたいと考えています。
心を込めて料理してくださるボランティアさんたちの思い、そのおいしさも器が後押ししてくれると思うし、自信をもって「食べてみて!」と言える。いろどり豊かな食事を提供してもらったら、食べる側もうれしいです。作り手も食べる人ももっともっと豊かになれる空間を作っていけたらと思っていて、その時に「器」が力を発揮してくれると思っています。ぜひ、アイテムで応援してくださったらうれしいです。

──素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

(安楽亭のある日のボランティアメンバーの皆さん。「コロナで大変な時期ですが、感染症対策をしながらも、毎回楽しく食事を作っています!」(スタッフの皆さん))

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

これまで何度かホームレス支援というテーマを取り上げてきましたが、その度に感じることは「衣食住や就業を支援すれば問題は解決する」という単純な問題ではないということ。今の社会の構造のあり方や偏見、蔑視…、さまざまな問題が絡み合い、より複雑な状況を生み出しているのではないでしょうか。社会全体に蔓延している閉塞感が生み出している問題であるようにも感じます。

「身近なところで私たちに何ができますか」と新名さんに尋ねると、「自分や自分の周りの人をまずは大事にしてほしい。困った時に『助けて』と言い合える関係を築いてほしい」と答えてくださいました。私はここに、問題解決のための本質がある気がしました。

・岡山・ホームレス支援きずな ホームページはこちらから

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器や食べ物、収穫した野菜を手に、肩を並べる動物たちを描きました。それぞれが居場所を感じ、誰も排除されず、自分のことも相手のことも大切にできるきずなさんのご活動や「安楽亭」を表現したデザインです。

“Every day is a fresh start“、「毎日が、新しい始まり」。
人はいつでも、思い立った瞬間から新しい生き方ができる、未来は必ず拓けているというメッセージを添えました。

Design by DLOP

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