CHARITY FOR

当事者の声を発信、国に働きかけながら、誰もが「ともに育ち、学び、働き、暮らせる社会」を創る〜NPO法人DPI日本会議

障害を理由に、やりたいことができない。入りたいお店の入店を拒否される、通いたい学校に通えない、交通期間を利用できない…。こういったことが起きているのをご存知ですか。

今週、JAMMINがコラボするのは、NPO法人「DPI日本会議」。当事者が主体となって声を発信し、より良い社会の実現のために活動してきました。
地域での生活や雇用、防災や教育…、さまざまな分野において、障害のある人を取り巻く環境はまだまだ良いとはいえません。DPI日本会議は1986年の設立以降、現場の声を集め、国の施策に反映させるための活動を行ってきました。

活動について、そしてまた当事者として、事務局長の佐藤聡(さとう・さとし)(53)さんと、事務局スタッフでありファンドレイザーの笠柳大輔(かさやなぎ・だいすけ)さん (38)にお話を聞きました。

(お話をお伺いした佐藤さん(左)と笠柳さん(右)。世界最高のバリアフリー水準を満たすべく働きかけ、完成した新国立競技場の前での記念撮影(2019年12月))

今週のチャリティー

NPO法人DPI日本会議

「障害の有無によって分け隔てられない社会」「すべての人の命と尊厳が尊重される社会」「障害のある人もない人と同じように暮らせる社会へ」の実現を目指し、障害当事者が主体的・能動的に関与することで、障害者権利条約の完全実施や、インクルーシブな社会を目指して活動しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2020/12/14

当事者としての声を国に伝え、
より良い社会の実現を目指す

(DPI日本会議の「全国集会」の様子。毎年日本中から数百名が参加し、2日間にわたり、総会、全体会、分科会を行い、国内外のあらゆる障害者問題の報告、情報共有、今後に向けた取り組みを確認する。写真は2018年に開催された神奈川大会の様子)

──今日はよろしくお願いいたします。まずは団体のご活動について教えてください。

佐藤:
私たちの活動には、3つの特徴があります。
一つ目は、当事者による活動であること。二つ目は、知的障害・身体障害・精神障害や難病といった障害の種別を超えて活動しているということ。三つ目は、障害者の問題を個人の問題としてではなく、社会の問題として捉えて活動していることです。

2020年5月現在、全国の93の団体が加盟しています。私たちは直接障害者を支援しているわけではなく、「地域生活」「アクセシビリティ(バリアフリー、情報保障)」「権利擁護」 「教育」「雇用労働・生活保護・所得保障」「障害女性」「国際協力」「尊厳 生」の8の部会に分かれ、それぞれに現場の声や課題を集め、国に対して制度や法制度改定の働きかけを行うことで課題解決のために活動しています。

(2004年、「障害者が地域で生活できるように」と台風の中、全国からたくさんの人が障害者自立支援法の廃止を求めて厚生労働省前に集まった)

笠柳:
1986年に設立された当初から、鉄道駅のエレベーター設置など、公共交通機関の利用に関する運動を中心に行い、2000年代に入ってからは障害者の地域生活や介護に関する課題についても、全国の仲間たちと共に声を上げて行動してきました。制度やしくみはすぐに大きく改善できるものではないので、一つひとつ地道な活動ではありますが、当事者としての声を国に向けて伝え、より良い社会の実現を目指しています。

──全国ネットワークならでは、また当事者ならではのご活動ですね。

佐藤:
そうですね。たとえば昨年は、誰もが乗車できることを謳った「UD(ユニバーサルデザイン)タクシー」の乗車拒否があったことを受けて、乗車拒否を無くし、またより利用しやすいタクシー開発を目指すために、10月30日に全国で一斉にUDタクシーに乗車する「UDタクシー乗車運動」を行いました。利用実態を調査して、国への提言を行いました。

(2019年10月、ちょうどオリパラ開催の300日前に全国で一斉に行った「UDタクシー乗車運動」の呼びかけのチラシ)

東京のバリアフリーは進んだ一方で、
地方との格差が大きな課題に

(2020年12月から運用が開始された、車両との段差と隙間がとても少ない新幹線の駅ホーム)

──佐藤さんはバリアフリーがご専門であるとのことですが、新型コロナウイルス感染拡大で延期にこそなったものの、2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、東京ではバリアフリー化がかなり進んだと聞いています。

佐藤:
はい。普段はあまり褒めないのですが(笑)‥、公共交通機関、鉄道・バスに関していえば、東京はものすごく良くなりました。

鉄道だと、東京にある760駅のうち現在は約98%がバリアフリー化されています。「バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)は2000年に施行され改正されてきましたが、具体的な基準は古いものでした。東京オリンピック・パラリンピックの開催にあわせ、東京は良いタイミングで気運が高まったところがあります。オリパラ開催に向けて基準を改正し、またまじめにそれを実施してきたことで、世界の標準レベルに追いついてきています。

(バリアフリーに改修された日本武道館の車いす席。「1階の南(赤色の席)・南東(青色の席)・南西ブロック(青色の席)に車いす用席30席と同伴者席が30席あります。向こう側まで銀色の柵があるところが全部車いす席です」(佐藤さん))

──「バリアフリー化」とは、具体的にどういうことでしょうか。

佐藤:
エレベーターの設置、車いすトイレ、駅構内の段差の解消などです。またホームドアの設置も進んでいます。
しかし一方で、地方との格差も大きな課題になっています。東京は改善が進められたものの、たとえば鉄道でいえば、日本全国にある9500の鉄道の駅のうち、バリアフリー化されているのは4500駅ほどしかありません。つまり、残る5000の駅はバリアフリーに対応していません。

(全国一斉「UDタクシー乗車運動」のアンケート集計結果より。出典元:全国一斉行動!UDタクシー乗車運動
アンケート集計結果 DPI日本会議 バリアフリー部会 (2019年10月30日調査)

試合会場のバリアフリーも進んだ一方で、
小規模店舗等では未だ介入ができていない

(新国立競技場の車いす席500席。前の人が立ち上がっても見えるように設計(サイトラインが確保)されている)

佐藤:
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催というところでは、公共交通機関だけでなく、試合会場になるスタジアムのバリアフリー化も進みました。たとえば、会場となる新国立競技場は、全席68,000席に対して、車いす席が500席用意されています。

──それまではそんなにたくさんなかったのですか?

佐藤:
スタジアムについてはバリアフリーに関する細かな世界基準が設けられてはいるのですが、たとえば東京ドームは、46,000席のうち車いす席はたった22席しかありません。

この数字が多いのか少ないのかよくわからないと感じられると思いますが、アメリカにいくと、ニューヨークのヤンキースタジアムでは50,000席のうち車いす席が1,000 席設置されています。各国で基準こそ異なるものの、日本は全体的にまだまだ不十分だと言えます。

──そうなんですね。

(2015年8月、アメリカのヤンキースタジアムを訪れた際の一枚。「2層、3層にも車いす席があり、日本とのあまりの違いに衝撃を受けました」(佐藤さん))

佐藤:
また、来訪者の観光などを見込んで、新しくできるホテルなどに関しても細かい基準が設定され、バリアフリーが進んできています。先ほど東京都内の駅の話をしましたが、鉄道に関していえば、新幹線のバリアフリーも進んでいます。昨年末から国の検討会があり、当事者団体として参加してきましたが、たとえば東海道新幹線でいえば、1,323席のうち車いす席は1〜2席しかありませんでしたが、総席数に応じて約0.5%以上の車いす席を確保するように制度が改正されました。

──計算すると6〜7席は確保しなければならないということですね。
いずれにしてもオリパラ開催を追い風に少しずつバージョンアップされていたり、東京に関しては公共交通機関やスタジアムも良くなったとのこと、そうすると障害のある方も安心して東京を訪れることができますね。

佐藤:
…そう言いたいところですが、そうではないのが現状です。
というのは、スタジアムも、移動する公共交通機関も、帰って過ごすホテルもバリアフリーが進みましたが、一方で食事したり買い物したりする小規模な店舗についてはまったく改善できておらず、バリアフリーが進んでいないのです。
オリパラ開催でたくさんの方が東京に来られた際に、この辺りの課題がより浮き彫りになるのではないでしょうか。

(2015年、障害者の権利獲得のためにその生涯をかけたアメリカの偉大な障害者運動のリーダー・故マーカさんとワシントンDCで打合せをした時の一枚。「アメリカのレストランは車いす3名でも、ほ とんど入ることが出来ました」(佐藤さん) )

「何を食べたいか」ではなく
「どのお店なら入れるか」で選択せざるを得ない現実

(車いすでも入ることができる居酒屋にて、DPI日本会議副議長の西村正樹さんが大好きなおにぎりを手に大喜び)

佐藤:
小規模な店舗では、物理的なところでバリアフリーになっていないことに加え、もう一つの課題があります。2019年に私たちが集めた差別事例(約500件)のうち、最も多かったのは「入店拒否」でした。

実際、車いすの方たちが5人ぐらい集まって一緒に外食する時、普通だったら「何を食べたいか」を基準に選びますが、そうではなく「どのお店だったら入れるか」を基準に選んでいます。

──食べたいものを食べられないというのは、違う気がします。どのような理由で入店を断られるのですか?

佐藤:
私が友人とご飯を食べに言った時、車いすが入れるスペースがあったのに「熱い料理を運ぶ際、通路にあなたがいると狭くなって、あなたが危ないです」という風に言われたことがありました。だけど、見る限り全然そんなことはないんです。

(2016年に施行された「差別解消法施行」をお祝いするパレード。日本全国からたくさんの仲間が集まり、東京でパレードを行った)

──バリアフリー対応していないことで、段差があるとか安全が確保できないといった物理的な理由での拒否と、気持ちの面、意識の面での拒否があるように思います。

佐藤:
そうですね。盲導犬ユーザーさんに関していえば6割以上が入店拒否を経験しています。毎年調査結果を見ながら、全く改善されていないと感じます。それはすなわち、改善のための「しくみ」がないということを意味にしています。法制度を整えて「しくみ」を作っていけば改善も進みますが、国としても権限がないのが現状なのです。

デパートやモール、商業施設などは、床面積2000平米以上の施設についてはバリアフリーの整備義務がありますが、これは共用部分にしか適用されません。なので通路やトイレはバリアフリーでも、テナントを借りている各ショップに入ると、段差があるとか、通路が狭い、いすが固定されていて車いすで座れないといったことが起きています。

──そうなんですね。

(2017年、アメリカ・ワシントンD.Cで世界19か国から障害者のリーダーが集まって、障害者の自立生活のためのネットワーク「World Independent Living Center Network(WIN)」が設立された。その際の一枚)

笠柳:
国は2016年に「障害者差別解消法」という法律を施行しましたが、守らないと罰則があるとか営業できないといった効力を持つものではありません。障害者が社会参加しづらい環境がまだまだ残っています。

そういった分野において、当事者団体である私たちが声をあげ、国に働きかけ、事例を提示しながら、制度政策を改善していくこと。粘り強く一つずつ、細かい基準を改善していく以外に道はないと思っています。

(2020年10月、山本博司厚生労働副大臣を表敬訪問。「厚生労働行政における障害福祉策に対する要望書」を提出し、意見交換を行った)

「障害のある人もない人も
同じ場所で同じ時間を過ごすことが何より大切」

(2016年、台湾の障害者リーダー・リンさんが来日、DPI日本会議で研修を受けた後、打ち上げでの一枚)

──お話をお伺いしていると、物理的にどれだけバリアフリーが進んだとしても、健常者と障害者が交わり、互いを理解し合っていくことを無しにして、つまりハードに対して“ソフト”面での壁が打ち壊されないことには、本当の意味のバリアフリーは難しいのではないかと思いました。

佐藤:
ソフト面については、政府が「心のバリアフリー」を進めています。でも、「心のバリアフリー」って果たして何だろう?ということなんです。
国は「心のバリアフリー」の定義を「UD2020行動計画」というもので具体的に定めていて、一つは差別をしないこと、一つは国連が定めた「障害者権利条約」を実現するための社会モデルを理解すること、一つは障害者の立場に立って想像して理解することとしていますが、それって果たしてどういうことなんだろう?ということなんです。

障害があるからといって、優しくしてほしいわけではないんです。当たり前の権利を認めて、どこにも参加できるようにしてほしい。「優しさ」で終わらせてほしくないんです。

(2020年8月、新幹線のバリアフリー対策検討会に出席する佐藤さん)

──障害の有無に関係なく、一人の人間として個々が尊重され、共に生きられることですね。しかしなぜ、ソフト面でのバリアフリーはなかなか進まないのでしょうか?

佐藤:
僕は「教育」がその根源にあると考えています。障害者と健常者を隔てるのではなく、幼いうちから同じ空間を共有すること、「インクルーシブ教育」を行うことが非常に大切だと考えています。

(2019年、愛媛県松山市で開催されたDPI全国集会にて、打ち上げで道後温泉街の居酒屋へ)

佐藤:
考えてみてください。例えば自分がお店を開くことになった時、障害のある友達がいたら、障害のある人のことを知っていたら、「その人はここに入れるだろうか?」と想像すると思うんです。障害のある人のことを知っていたら、健常者の視点では見えないいろんなことが見えてくるし、気づかなかったことに気づくことができると思うんですね。

普段から、そしてまた幼い頃からずっと生活が分断されていたら、相手を知らないが故にイメージしきれないし、理解に至らないということがあるのではないでしょうか。障害者のことをよく知らないがために、「傷つけたらいけないな」とか「余計なことをしたらいけないな」と不安になって、できるだけ近寄らないとか、話しかけないとか、排除の意識はなくても、結果としてそうなってしまうということが起きていると思います。

──確かにそうですね。

佐藤:
皆さんにお伝えしたいのは、まずは「障害のあるお友達を作ってください」ということです。一緒に遊んだり、ご飯を食べたり、関わることで、本当にいろんなことが見えてきます。

(2016年7月、アメリカ・ホワイトハウスにて、大統領の障害担当顧問からヒアリングを受けた。その時の一枚)

笠柳:
私も車いすで生活していますが、やはり障害者と健常者を分ける「見えない壁」というものを、日々感じます。

私は「シャルコー・マリー・トゥース病」という足の筋肉が徐々に萎縮する生まれつきの障害を持っていますが、小さい頃は走ったりすることもでき、普通学級に通いました。7年ほど前から車いす生活を送るようになり、またこの団体で10年間働いてきた中で、日々様々な障害当事者と同じ時間を過ごしながら「こういうことで困っているんだな」ということを学び、気づかされてきました。

DPI日本会議には分野ごとに8の部会があるとお伝えしましたが、それぞれの分野にこの「見えない壁」が存在しています。当事者の声を発信し、制度や政策を変えていくことによって、そこを取り壊していきたい。健常者の方たちが当たり前にやっていることを、障害の有無にかかわらず誰もができる社会を実現できたらと思っています。それは同時に、障害者以外の方たちにとってもより「生きやすい社会」の実現につながっていくと私は考えています。

──本当ですね。

(JICAの草の根技術協力事業を通じて南アフリカに「障害者の自立生活セン ター」を作り、自立生活を支えるプロジェクトも行っている。写真は2015年、佐藤さんが現地へ視察に訪れた際の一枚)

笠柳:
今日、障害の有無にかかわらず、生活の中で生きづらさを抱える人たちは多くいます。会社で働くにしても生産性を高めなければいけない、利益をあげなければいけないと経済主導の社会の中で、追いつけないとどんどん切り離され、分離が進み、取り残されてしまうという恐怖や不安。こういったものが、社会全体に閉塞感を生んでいます。果たして、それだけが全てでしょうか。

当事者として声を発信し、国の政策や制度に訴えかけていく私たちの活動が、それは障害者だけでなく、生きづらさが蔓延する社会にとっても一石を投じることにつながると信じています。

(全米障害者自立生活センターのブルース代表とサラ副代表が来日。
「日米の制度に関する情報交換、また交流を行いました。写真はお花見を楽しんでいるところです。私たちは国際交流も積極的に行っています」(佐藤さん))

チャリティー使途

(オンラインミニ講座の収録の様子)

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

笠柳:
DPI日本会議では、コロナ禍により対面で行う講演活動やイベントが少なくなった為、2020年9月よりオンライン動画で短いセミナー形式で情報発信を開始しました。現在、3回までが終わっています。

連続企画として継続し、来年は12本のオンライン動画を作成したいと思っています。
今回のチャリティーは、手話や字幕付けなど、身体的なハンディキャップによってその動画を視聴することが難しい方にも動画を提供するための情報保障費、また編集費として使わせていただきたいと考えています。ぜひ、チャリティーで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(2019年、DPI日本会議の事務所にて、スタッフの皆さんで記念撮影!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

食べたいものを食べる、行きたいところへ行く。私にとっては、疑問すら持たず、ほぼ無意識で生活のなかで行っていることです。それが「障害」を理由にできなかったら、どうだろう。近年でいえばGo toキャンペーンによって旅行へ行こう、食事へ行こう、そんなふうに計画された方も多いのではないかと思いますが、宿泊先で、食事するレストランで、また移動の交通手段において、制限があったらどうでしょうか。あなただったらどう思いますか。
今回はバリアフリーをメインにご紹介させていただきましたが、ここだけに限らず、「障害」を理由に「当たり前」がかなわないシーンがあるのだということを改めて考えさせられるインタビューでした。

・DPI日本会議 ホームページはこちらから
・オンラインミニ講座はこちらから

09design

様々な果物や野菜の断面図を描きました。
皆それぞれ違うからこそ、社会としてずっと豊かで深みが出る。そんな思いを込めています。

“A voice of our own”、「(当事者である)私たち自身の声」というメッセージは、それぞれの単語をあえて書体を変えてユニークに描き、個性を認め合う、豊かな社会を表現しました。

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