CHARITY FOR

野生のクマが暮らせる森づくりは、人間が安心して暮らせる環境づくりにもつながる。クマの棲む、豊かな森を次世代へ〜一般財団法人日本熊森協会

(撮影:佐藤嘉宏氏)

毎年、どれくらいの野生のクマが殺処分されるかを知っていますか?
2019年度は、5,736頭(ヒグマ711頭、ツキノワグマ5,025頭)もの野生のクマが捕殺(捕らえられて殺されること)されました。

ほとんどのクマが人を襲ったり危害を加えたりするわけではありません。荒廃した森の中で、エサを見つけられず、生きるために人家の近くにたどりついてしまったクマたち。
「クマは害しかもたらさない」「襲われるのではないか」「怖い」…、人間のそんな誤った認識から、ただ人前に出てきてしまったというだけで捕らえられ、殺されてしまう命があります。

「ひと昔前は、山間部の地域へ行くと町長さんや村長さんが『クマもうちの町民じゃ。いて困ったことなど一度もない』とおっしゃるぐらい、クマに対して地域の人たちの知識と理解があったし、何より棲み分けがきちんとできていました。しかし今、加速する森の荒廃や山間部の過疎・高齢化など、人間が原因のさまざまな問題が、結果として弱い立場にある命を奪うという残念な結果をもたらしています」

そう話すのは、今週JAMMINが1週間限定でコラボする一般財団法人「日本熊森協会」会長であり、弁護士の室谷悠子(むろたに・ゆうこ)さん(42)。活動について、お話を聞きました。

(お話をお伺いした室谷さん。釧路湿原にて)

今週のチャリティー

一般財団法人日本熊森協会

「動物たちに帰れる森を、地元の人たちに安心を」の合言葉のもとに、地元の人たちと協力しながら、クマをはじめとする動物たちが暮らせる奥山の自然林を再生、殺さない鳥獣被害問題の解決をめざして活動しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2020/6/29

クマをはじめとするすべての生き物と共存する
持続可能な社会の実現をめざす

(兵庫県宍粟市のクマ生息地にて、動物が棲める森の復元のための実の成る木の植樹風景)

──今日はよろしくお願いします。まずは、貴団体のご活動について教えてください。

室谷:
持続可能な社会の実現をめざし、豊かな森の再生や野生動物との共存のためにいろいろな活動をしています。

具体的には、放置人工林の間伐や実の成る木の植樹等、野生動物が棲める豊かな森を再生するための活動をしています。また、クマを含めた野生動物と共存できるよう、各地でクマが人里に出てきた際に現地に駆けつけてその原因を調べてこれ以上出て来ないように原因を取り除くお手伝いをしたり、クマが捕殺されないよう働きかけたりしている他、自然とのつながりの大切さを伝える環境教育にも取り組んでいます。

団体の特徴として、兵庫県の本部以外に24の都府県に支部があり、それぞれの地域で実践活動を行っていることです。現場を実際に見て、現地の人たちと協力しながら、自然を守るために努力してきました。また、自然を守ることができるように法律や制度の改正を求めたロビー活動も行っています。

(近畿2府6県の人々の生命を支える琵琶湖源流の水源の森を守るため、トチノキ巨木群を守った滋賀県支部の活動(撮影:高村洋司氏))

──24もの支部があるのですね!それぞれ支部は独立してご活動されているのですか?

室谷:
支部ごとにそれぞれの地域の課題に取り組んでいますが、大きな問題の場合は本部のスタッフも一緒に取り組むこともあります。たとえば、2010年と2014年に滋賀県でトチノキの巨木群の伐採計画があり、滋賀県支部や地元の方たちと本部が一緒に取り組んでこれを阻止したことがありました。

昨年、「森林環境税」という住民から一人1000円を徴収して、全国の市町村に配り、森林整備のために使用するという法が施行されました。しかし蓋を開けてみると「森林整備に関することであれば、使途は自治体が決めて良い」といった内容になっていました。それでは野生動物の生息地となるような水源の森に戻していくことには使われるかわからないので、国会に働きかけも行いました。森林整備の中でも、放置され荒れた人工林を天然林に戻していくことに使ってほしいと提案しました。その結果、法律の施行にあたって、国会委員会の意思を表明する「附帯決議」に森林環境税で「放置人工林の広葉樹林化(天然林化)を進めること」を入れてもらいました。

その後は、本部も支部も、各自治体に、「森林環境税を使って放置人工林の天然林化を進めてほしい」と働きかけ、実際に、予算が組まれる自治体も出てきています。

(2019年3月、森林環境税を放置人工林の天然林化に使ってほしいと、全国から2万7000筆の署名を集め、総務大臣に提出。左から古賀友一郎総務大臣政務官、室谷さん、日本熊森協会顧問の片山大介参議院議員)

クマは「森そのもの」。
人工林の増加により、棲み家を失った野生のクマたち

(四国はツキノワグマが残り10数頭といわれており絶滅寸前。スギ・ヒノキの人工林率が60%を超える四国の奥山でクマの餌場を再生させようと、2018年には高知県香美市の山林46ヘクタールを寄付金で購入した)

──クマをはじめとする野生動物が棲むことができる森づくり活動をされていますが、今、クマの棲み家が危ないのですか?

室谷:
クマは奥山に生息する動物です。しかし歴史的にみれば、今私たちが暮らす平地にもともとクマが住んでいて、そこに人間が入っていく過程で、どんどん山奥に追いやられていきました。

それでも昔は豊かな森があり、きちんと棲み分けができていたのですが、明治以降、特に戦後の政府による拡大造林政策によってそのバランスが崩れていきました。原生林が伐採され、スギ・ヒノキの人工林が増えたことは、クマにとって致命的でした。

(クマの生息する奥山の外観(中国山地)。ブナ、ミズナラなどの広葉樹が主体で、ところどころスギなどの巨木の針葉樹が混じる)

(多種多様な植物と動物、微生物によってつくられるクマの棲む森の内観(岡山県若杉天然林)。「この森を次世代に残すために活動しています」(室谷さん))

──なぜでしょうか。

室谷:
クマに対してなんとなく肉食のようなイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、実際は9割ベジタリアンで、残りの1割程度は他の動物の死骸や昆虫などを食べる雑食の生き物です。
クマはブナ、ミズナラなどをはじめとする広葉樹がもたらす木の実や木の葉、花、山菜など季節ごとの山の恵みに食糧の多くを依存していて、それはつまり、クマが「森そのもの」を象徴する存在であることを示しています。

原生林のような豊かな生態系が揃っていなければ、クマは生きられない。しかし元来そこにあった自然の森が消え、実のならないスギやヒノキの人工林が増えたことにより、どんどん生息環境が奪われていったのです。拡大造林計画によって伐採された天然林の広さは、東北6県ほどにもなると言われています。

(クマの親子。母グマは1年半以上子グマと共に過ごし、食べ物や生き方を教える。人間の生活が豊かになる一方で、他の生き物の棲む場所が失われている(撮影:佐藤嘉宏氏))

室谷:
森の荒廃によってこれまで生きてきた場所で生きられなくなった野生動物が人里に出るようになり、クマについては絶滅の危機に瀕している地域が多くあります。私たちの団体が発足した1997年、まさに西日本のクマは絶滅の危機にありました。

人里にクマが現れたというニュースが報道されますが、その現象だけ見ると「クマが人の方に寄ってきた」と見えるかもしれません。しかし実際は、クマは奥山開発や人工林によって本来の生息地を私たち人間によって奪われてしまった被害者なのです。

「山から降りてきて、人を襲う悪い生き物」というイメージが浸透していますが、クマの立場に立ってみるとどうでしょうか。山奥で人を避けてひっそりと生活していたのに、環境の変化や破壊によって生息環境を奪われ、人里に出てこざるを得なくなってしまった。それがクマなのです。

(伐り出すことができない奥地まで植林が進み、全体が人工林になってしまった山)

クマが棲めない森は、
やがて人間にも悪影響をもたらす

(放置され、荒廃した人工林の内部。地面に光が入らず下草も生えず、表土が流失し、保水力も失われる。ここでは動物たちは棲めない)

室谷:
クマが危ないと聞いたところで「自分には関係ない」と思われる方もいるかもしれません。しかしクマをはじめサルやイノシシ、シカやネズミなどの野生動物が棲めなくなった森は、やがて私たち人間にも悪い影響を及ぼします。

人工林に植えられるスギ・ヒノキなどの針葉樹は根が浅く、特に放置されて荒れた状態になると、保水力は著しく低下します。昔の森を知っているお年寄りに話を聞くと、谷川の水位は、子どもの頃と比べると1/2から1/3にまで低下していると言われます。水が蓄えられない放置人工林は、日照りが続くと沢枯れや渇水を起こし、雨が降ると洪水や土砂災害を引き起こします。

(2017年7月、九州北部豪雨で崩れた山。放置人工林の崩れやすさがよくわかる)

室谷:
放置され荒廃した人工林は崩れやすく、全国にある人工林の3分の2が放置されていると言われていますので、次にいつどこで大きな災害が起きるかわかりません。放置された人工林を自然の広葉樹林に戻していくことは、野生動物だけでなく、我々人間の命と暮らしを守ることにもつながるのです。そういった視点から、私たちの活動に賛同してくださる地元の方たちもいます。

──そうなんですね。

室谷:
人工林を増やしすぎたことによって森の生態系はズタズタに崩れ、結果として人間にも大きな被害をもたらすことになりました。花粉症もその一つですよね。

自然のバランスを崩すと、それはいつか私たち人間に返ってきます。今も事態は刻一刻と静かに進行しており、それが目に見えるようになった時はすでに手遅れに近いでしょう。
日本の森林率は67%ですが、今の状況は今後の日本文明の存亡をかけたギリギリのところにあると思います。危機感を持って森の再生に取り組む必要があり、山から出て来るようになったクマたちは、その危機を私たちに教えに来てくれていると感じます。

(母グマを殺され、孤児グマとして引き取られ育てられた「太郎」。「太郎ももう30歳のおじいちゃんです。日本熊森協会もお世話を手伝っています」(室谷さん))

人里に現れると捕らえられ、殺されるクマ。
その原因は、私たち人間にある

(イノシシ用の罠にかかったクマ(愛知県にて撮影)。クマはとても罠にかかりやすい。近年、クマが罠で過剰捕獲されることが激増しており、大問題となっている)

──2019年度に捕殺されたクマの数は過去最多で五千頭を超えているということでした。大きな数字で驚いていますが、どういった理由で殺されるのですか。

室谷:
環境省が2020年4月に発表したデータでは、2019年度に5,736頭のクマが殺されました。
去年に関しては、近年の奥山の大荒廃に加えて全国的に山の実りが大凶作で、食べる物を求めてクマが多く人里に現れたことも影響しています。

(くくり罠に左前足がかかったツキノワグマ。鳥獣被害対策としてシカやイノシシ用の罠がたくさんかけられており、クマが誤ってかかることがとても多い。誤捕獲されたクマは放獣しなければならないが、密かに殺処分されている例も多い)

室谷:
一方でクマが出る地域は限界集落も多く、過疎と高齢化によってクマの問題に対応できなくなってきており、クマを寄せ付けないように対策する人手もありません。

クマは元来、ものすごく警戒心の強い生き物です。隠れるところがないような場所にはふつう出てきません。またツキノワグマは、恐怖心ゆえに突然至近距離で人間と出会うと人間から逃げたい一心で向かってきて事故になることがあります。人とクマが十数メートルぐらいまで近づく前に、クマが人の気配に気がつけば、クマの方から逃げていきます。

現在、中山間地域では過疎と高齢化によって人が減って人手がなくなり、雑草や木々が生い茂って見晴らしが悪くなり、高齢者のご家庭では動くことが難しくなって、庭に成ったカキの実や生ゴミを放置してしまったりして、クマを誘引する条件がそろってしまうんです。

(山の実りが悪い時に、人里にあるカキの実を食べに来るクマ。「昔は干し柿にしていたそうですが、今はカキの実を収穫しなくなりました。クマが民家近くに来る原因になってしまうので、カキを採って少し離れた山奥へ持って行かせてもらいます」(室谷さん、写真は兵庫県豊岡市))

──なるほど…。

室谷:
実際にクマが出没した現場に行くと、「ああ、これが原因だな」というものが意外と容易に見つかります。こういった原因を取り除くだけでも一つ対策ができるし、電気柵を張ったりして対応すれば、むやみに人里に現れて捕獲され、殺されてしまう命を減らすことができるのです。

昔は地域のコミュニティに力があり、野生動物を寄せつけない環境整備は、地域で取り組むことができていました。それが時代とともに失われ、クマが出て来ないような対応ができなくなってしまったのです。

(2015年、大阪府豊能町でイノシシ用の罠につかまり、殺処分されそうになっていたのを救出された「とよ」。現在は大阪府豊能町にある「高代寺」で保護飼育している。とよはプールが大好き)

──そういった面でも、クマは被害者といえますね。
しかし、何も殺さなくてもいいのではないかと思ってしまいますが…。

室谷:
自治体としても、正直対応が面倒ということがあるのだと思います。捕らえたクマを「危険だ」とか「危害を加えるかもしれないから」と殺してしまえば、騒ぐ人もいないし、簡単に問題が解決できる。つまり、結局弱いところにしわ寄せがいくんですね。

でも、野生動物も、私たち人間と同じ、この地球に生きる仲間であるはずです。命があるし、心があります。生きるために必死で山から降りてきたのに、それを殺してしまうのは、まるで弱い者いじめです。子どもたちに誇れるような問題解決の方法とはいえません。

(購入した四国の山では現在、人工林を伐採し、広葉樹林化に向けて活動中)

いとも簡単に殺された後、
どうなるのかは闇の世界

(密猟や乱獲の原因となっているクマの胆。「1頭獲れば数十万円になることもあると聞いています」(室谷さん))

──捕らえられると、その場ですぐ殺されてしまうのですか。

室谷:
クマの捕獲の基本的なルールとしては、まず発見者が通報し、その後「捕獲申請」というものが出されます。「クマが出てきているから、捕まえてもいいか」というものですね。これは通報者が申請する場合もあれば自治体が申請することもあります。地域差があるようです。この捕獲申請は、出せばほぼ100%許可が下り、許可が下りると捕えるために檻が設置され、多くの地域では檻にかかればクマは殺処分されます。出てきたというだけで、こんなに簡単にクマを捕殺できるのは日本だけではないでしょうか。

──ええ…。その時点で「本当に殺す必要があるのか」という議論や判断はないのですか。

室谷:
本当に殺す必要があるかどうかを判断し、場合によっては森に返している地域は本当に少ないです。

(膨大な罠の常設によって過剰捕獲が生じているとして、捕獲罠を規制するよう、兵庫県庁に何度も申し入れを行っている)

──殺処分はどう行われるのですか。

室谷:
多くは地元の猟友会が委託を受けて、銃で撃つ、あるいは槍で刺すなど、何らかの方法で殺しているようです。

──殺された後、どうなるのですか?

室谷:
埋葬や焼却処分を指導しているという行政が多いですが、実際のところどうなっているのかはわかりません。
「熊の胆(くまのい)」と呼ばれるクマの胆のうの部分は漢方薬として重宝されており、かなり高額で取引されています。全く表に出て来ない闇の部分ですが、肉も売買されていると聞いています。

地域の猟友会から、「山に無許可で罠をたくさんかけ、クマを乱獲している人がいる」という連絡を受けたこともあります。しかし証拠をつかむのは至難の技で、立証するのは非常に難しいです。

(クマ生息地の草刈りボランティアの様子(兵庫県豊岡市)。「クマのひそみ場をなくし、集落に入って来ないようにしたり、至近距離でクマと出会い事故になるのを防ぐ活動です」(室谷さん))

新潟で保護された3頭の親子。
「人間と野生動物の共存のシンボルに」

(南魚沼市から日本熊森協会に引き渡された直後の親子グマ。母グマはまだ麻酔が効いて動けず、子グマたちは母グマにぴったりと寄り添っていた)

室谷:
昨年、新潟でも大量のクマたちがえさを求めて山から出てきては捕殺されていきました。新潟県は人工林率が20%台と低く、クマが生息していくことができる本来の自然の森が多く残る地域でした。原因はわからないものの、ナラ枯れ、昆虫の激減など、近年、確実に森で何か異変が起きているということがいえると思います。

なんとか殺さない対応ができないものかと悶々としていたところ、南魚沼市で3頭の親子(母と子グマ2頭)が捕殺されそうになっているという情報が入りました。新潟の山も昨年大凶作だったため、エサを求めて川沿いを下り、川の土手にある診療所の縁の下で力尽き、段ボールをちぎってまさに冬眠しようとしているところを発見されたのです。子を連れた親グマは特に警戒心が強く、よほどのことがない限り子どもを連れて人がいる場所に近づきません。親子のクマは、本当に食べるものが何もなかったのでしょう。

間違いなく捕殺されるであろうこの親子を「助けてやってほしい」と新潟の会員の方から連絡が入りました。事態が起きたのがちょうど日曜日で、翌朝早朝には殺されるだろうと危惧したスタッフが兵庫県本部からすぐに現地に駆けつけると、町では大騒ぎになっていました。

行政と交渉し、クマたちを殺処分しないで春まで私たちの団体が預かり、今春に放獣するという了解をもらいました。法人会員である地元の運送会社に協力いただけることになり、その敷地内のトラックの中に檻を設置し、3頭を春まで保護することになりました。

(3頭は、箱型の保冷車の中に設置された狭い檻の中で5か月を過ごした)

室谷:
クマは人間を見るなり襲う生き物であるかのように扱われていますが、それは誤解です。襲うことがあるとすれば、人間に殺されるというパニックや恐怖心からです。人身事故はあってはならないことですが、日本ではクマを見つけるとたくさんの人が集まって騒ぎ立て、クマをどんどん興奮状態に追い込んでしまいます。カナダではこんな時、反対にみんなが家の中に入ってクマが立ち去るのを静かに待つそうです。これだと人身事故は起きません。

──その後、3頭はどうなったのですか。

室谷:
たくさんの方たちの協力を得て、春のクマの食料である山菜やブナの新芽が出そろったのを見て、この5月に3頭を森に放獣しました。
少しでも人間に飼育されたクマを野生に返すのはどうか、人間に慣れてしまっているのではないかという声もあると思いますが、一定期間クマを保護した上で、森に返すというご活動をなさっている方がいらっしゃって、その方の話だと「一頭も帰って来んかった。狭い檻に戻るのは嫌なんじゃろ」ということです。細心の注意を払って森に返すことができました。

(放獣の様子。まず母グマが檻から出た)

(子グマたちは怖いのかすぐには檻から出なかったが、しばらくして檻から出ると、母親が待っていた所に飛んで行って一緒に山の中へと消えていった。「3頭が森の中で豊かに生きていけるように願っています」(室谷さん))

──そうだったんですね。

室谷:
お母さんグマは警戒心が非常に強く、私たちが保護している間も2頭の子グマを人前に出すことは絶対にしませんでした。子グマが人に近づこうとすると、子グマをはたいて怒っていましたね。
その警戒心があれば、再び人間の前に出ていくこと─つまりそれは殺されることを意味しますが─はしないでしょう。
散弾銃を発砲されたり麻酔を打たれたり、クマたちは本当に怖い思いをしたと思います。3頭が森の中で自由に生きていってくれることを、心から願います。

「たった3頭の命を救うだけでも、
こんなにたいへんなのだと痛感した」

(誤捕獲され殺処分寸前だった「とよ」を救出した後、獣舎を建設。とよの引っ越しを無事終えたスタッフとボランティアの皆さんの笑顔)

室谷:
私たちはこの3頭のクマが「人間と野生動物の共存のシンボル」になってくれたらと思っています。次々と捕獲して殺すのではなく、同じ地球で生きる仲間として、もっともっと積極的に放獣をしていく必要があると思っています。

2019年、新潟県で捕殺されたクマの数は543頭で、新潟県のクマ推定生息数の58%にあたります。捕獲された命が救われたのは今回の3頭だけです。たった3頭の命を救うだけでもこんなにたいへんなのだと痛感しました。クマは捕まえたら最後、殺さなければならない生き物ではありません。森に、自然に戻してあげる、それが当たり前となる世の中を作っていかなければならないと思っています。

(現在、罠によるクマの乱獲を規制し、放獣体制を確立することで、捕殺に頼らない共存対策のための署名活動を行っている日本熊森協会。「秋に始まる臨時国会に合わせて、環境大臣に持って行きたいと思っています。一人でも多くの方に署名をしていただけるとうれしいです」(室谷さん)。ダウンロードはこちらから

──室谷さんのモチベーションは何でしょうか。

室谷:
まず、自然を守り、他の生き物と共存する生き方を貫き、そういう社会をつくりたいという思いがあります。後は、次の世代が生きる将来の社会への危機感です。自然を破壊し続けることは、人間が破滅に至ることを意味します。次世代のことを考え、未来の子どもたちに対して責任を果たしたいと思っています。

そうはいっても、普段の活動のなかでは歯痒い思いをすることばかりで、やりたいと思っていることがまだまだ実現していないと感じることがほとんどです。自然破壊を耳にするたびに胸が痛みます。なんとかしたいと思います。もっと多くの人たちに活動を知ってもらい、仲間になってくださる方を増やし、法整備にまで持って行って、世の中を変えるような団体になりたいと思っています。

がんばっても変えられなかったこともありますが、実現できたこともあります。新潟の3頭の放獣は、まさにその一つでした。あきらめずにこれからも、未来を変えていくために、1つ1つの問題に真剣に取り組んでいきたいと持っています。

(クマの棲む水源の森を体験してもらおうと、原生林ツアーを行っている(写真は岡山県若杉天然林)。「子どもたちにも、自然の中で生きものたちが豊かな森をつくっていることを伝えています」(室谷さん))

チャリティー使途

(2019年秋、兵庫県宍粟市で開催された動物の棲める森復元のための実の成る木大苗植樹会)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

室谷:
チャリティーは、捕殺に頼らないクマとの棲み分け共存のために、活動を広げていくための資金として使わせていただきたいと思っています。クマの生息地である奥山の広葉樹林の復元のため、また、クマが集落に出て来ないように草刈りや誘引物の除去、民家近くのカキもぎなどに必要な資金として使わせていただく予定です。ぜひ、チャリティーで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話、ありがとうございました!

(全国の支部長と、本部スタッフで記念撮影!「年に1度、集まって研修会をしています。職員は有給ですが、会長や支部長をはじめ、ボランティアとして無償で運営に関わっている人たちも多くいます」(室谷さん))

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

年間六千頭近くものクマが殺処分されていたなんて、知りませんでした。
しかも人間を襲ったとか一方的に被害を与えたというわけではなく、ただ人里に出てきてしまったという理由だけで、捕われて殺されてしまうなんて…。皆さんは、この事実をどう受けとめますか。

大地は、人間だけのものではなかったはずです。いつから人は、すべてを自分のものにしようとするようになったのでしょうか。豊かな奥山が守られ、再生され、クマたち野生動物にとって住みやすい地域が広がっていくように、一人ひとりの理解が進んでいくことを願っています。

・日本熊森協会 ホームページはこちらから

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仲良く歩く3頭のクマの親子の姿。その体には、森の豊かな生態系を描きました。恵みに溢れた森でクマが暮らし、そんなクマがいるから私たちの豊かな生活も存在する。自然のすべてがつながり、支え合っている様子を表現したデザインです。

“Save wildlife and forests, they will save us in future”、「野生動物と森を守ろう。彼らは未来に私たちを守ってくれる」というメッセージを添えました。

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