CHARITY FOR

やりたくてやっているわけじゃない!大声が出たり、体が動いたり…意に反して起こるチック。正しい知識と理解で受け入れて〜NPO法人日本トゥレット協会

「トゥレット症」をご存知でしょうか。
突然、意に反して大きな声が出たり、体が動いたりすることを繰り返す「チック」の中で最も重症なものが「トゥレット症」と呼ばれます。若者の間で爆発的な人気を誇る世界的アーティスト、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)がトゥレット症であることを公表したことや、昨年大ヒットした映画『JOKER』の主人公がトゥレット症と思われる症状であったことから、この病気のことを知った方もいらっしゃるかもしれません。

症状として、まばたきや首振り、腕振りや顔のしかめ、体のねじりやジャンプ、人や物に触るといった動きとして起こる「運動チック」と、叫び声や咳払い、鼻すすり、同じ言葉を繰り返して発言したりする「音声チック」の二つがあります。

「そういえば、見かけたことがある」という方もいらっしゃるかもしれませんが、トゥレット症の当事者にとってつらいことは、これらの症状は自らの意に反して勝手に出るもので、自分でコントロールができないということ。周囲の視線が気になって電車やバスに乗れなかったり買い物にいくのが難しかったりと、日常生活で大きな支障が出てきてしまいます。

今週、JAMMINが1週間限定でコラボするのは、トゥレット症の患者家族会であるNPO法人「日本トゥレット協会」。

「症状が重いと、外出することもままなりません。なかなか外に出づらく、当事者やそのご家族の方たちの悩みが表立って出てきづらい、実態がつかみづらいという課題があります」。そう話すのは、協会理事の野口千里(のぐち・ちさと)さん(60)。ご自身の息子さんもトゥレット症をもち、さまざまな困難を乗り越えてきたといいます。

トゥレット症について、活動について、お話を聞きました。

(お話をお伺いした、日本トゥレット協会理事の野口さん)

今週のチャリティー

NPO法人日本トゥレット協会

トゥレット症の患者・家族・支援者から成る、チックの正しい理解、患者・家族に住みやすい社会を目指して活動するNPO団体。患者家族の交流会を実施しているほか、書籍や小冊子の発行、講演会を通じてトゥレット症の正しい知識の普及・啓発活動や調査研究への協力も行っている。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2020/4/20

医療関係者にもまだまだ知られていない
「トゥレット症」とは

(2017年11月、勉強会を兼ねての交流会「トゥレットの集いin千葉・松戸」。「資料DVDを視聴しながら理解を深めました。協会主催の交流会は神奈川・長津田(年6~8回)、京都(月1回)、千葉・松戸(年4回)、東京(年2~4回)で開始しています」と野口さん。昨年3月に開催された東京での交流会は、abemaTV・アベマプライムの取材クルーが入り、その様子が放送されました。現在abemaTVニュースのYouTube公式チャンネルで公開中。記事の最後にリンクを貼らせていただいています→【チック症・トゥレット症】「わざとじゃないのに」汚言や挙動に悩む当事者たち|#アベプラ《アベマTVで放送中》

──今日はよろしくお願いします。最初に、貴団体について教えてください。

野口:
NPO法人日本トゥレット協会は、2001年4月に任意団体として患者・家族・支援者によって設立された日本トゥレット(チック)協会を母体に、2003年に創設されました。会員は未就学児や小学生、中学生といった若い当事者とそのご家族、また成人された大人の当事者の方や支援者です。
活動内容はチック症・トゥレット症やその併発に関する情報交換、講演会や会員同士の交流会、理解啓発のための書籍作成や原因究明・治療法確立のための研究支援などです。

最近ではSNSで声を発信したり、当事者同士でつながりたいと行動を起こす元気な当事者の方たちもいて、活動が活発になってきたことを嬉しく思っていますが、一方でトゥレット症は一般の方はおろか、まだ医療関係者にも知られておらず、周囲からの無理解に苦しむ方が多くいらっしゃるという現実があります。私たちは、トゥレット(チック)症の認知度を上げるために啓発活動に力を入れていきたいと思っています。

──「トゥレット症」について、詳しく教えてください。

野口:
目をパチパチさせたり貧乏ゆすりをしたりする「チック」をご存知でしょうか。
その中でも重症なものに、意志に反して「わっ」とか「うっ」と声が出たり、「ん、ん、ん」と咳払いを繰り返したりといった「音声チック」、顔をしかめたりまばたきをしたり、体を突然ねじったり揺すったりといった「運動チック」があります。

このような「複数の運動チック」と「1つ以上の音声チック」が1年以上続いている場合トゥレット症と診断されます。フランスの精神科医ジョルジュ・ジル・ドラ・トゥレットにより報告されたので「トゥレット症」もしくは「トゥレット症候群」と呼ばれるようになりました。

<メモ>
…「トゥレット症」「トゥレット症候群」「トゥレット障害」などいろいろな診断名の表記があるが、疾患の概要はほぼ同じ。ICD(WHOが作成している「疾病および関連保健問題の国際統計分類」)とDSM(アメリカ精神医学会が出版している「精神疾患の診断・統計マニュアル」)の分類や翻訳によって表記が異なる。日本トゥレット協会発行のハンドブックなどでは「トゥレット症」の表記で統一されているが、協会の発足当時や現在も「トゥレット症候群」と記載している場合も。今回の記事では「トゥレット症」で統一しています。

──原因は何なのでしょうか?

野口:
原因は十分にはわかっていませんが、大脳基底核の部分に原因があるのではないかといわれています。この部分は、LD(学習障害)やADHD(注意欠如多動性障害)、強迫症などの障害にも関わる部分で、トゥレット症の方は、他にも何らかの発達障害や睡眠障害、自閉症などを併発する方が少なくありません。

息子の場合は、意に反して考えやイメージが繰り返し浮かび、そのことによる不安を振り払おうと同じ行動を繰り返してしまう強迫症があり、痛くてたまらないのに口の中を噛み続けてしまうといった症状がありました。

ずっと口の中を噛むので口内はケロイド状(腫れて傷口が盛り上がること)になり、歯はグラグラし、それが気になって今度は歯を抜いてしまい、細菌が入って骨髄炎になったり、歯が抜けてスカスカになった口の中が気になって叩き続けていたら顎にヒビが入ってしまったり…本当に重度の症状を抱えていました。見た目ではわかりづらいですが、今は片顎がありません。

運動チックによる首の振りすぎで頸椎の骨を損傷した、尖ったもので目をついて失明してしまったという話も聞きます。こういった二次的な障害があるのもトゥレット症の特徴です。

(協会発行のリーフレットに記載している、トゥレット症の症状。「記載している症状の他にも、多彩なチックがあります。過去の会員アンケートからは、音声チックに一番困っているという回答が得られました。『もし、こういった症状が自分や家族に出たらどうだろうか』、そういった想像力が理解の第一歩かもしれません。生きづらさが周囲の理解によって軽減されることを願っています」(野口さん))

原因や、どれ位の人が苦しんでいるのかは正確にはわかっていない

(2019年の医療講演会の様子。「トゥレット症に関する医学的な基礎知識や最近の治療法などを説明する医療講演会を年に1度開催しています。もう一つは”教育”あるいは”福祉・就労”をテーマに、毎年交互で年に1度シンポジウムを開催しています。2020年は、秋に就労に関するシンポジウム開催予定です」(野口さん))

──症状は先天的なものなのですか。

野口:
先天的なものかどうかはまだわかっていませんが、小学校くらいから症状が出る人が多いです。様々な研究から、発症した2/3以上の方が成人までに症状が軽くなっていくといわれていますが、子どもの頃に症状があったけれど成長と共になくなり、20代後半になってからまた再発したというケースや、大人になってから発症したというケースもあります。
ストレスや環境の変化が誘因となって症状が悪化することがあるということも指摘されています。

──日本ではどのくらいの患者さんがいらっしゃるのでしょうか。

野口:
まばたきなどの単純チックは子どもの10人に1人くらい経験するともいわれていますが、トゥレット症についてはおよそ1000人に3~8人くらいいるのではないかといわれています。ただ、症状が急に出たり出なくなったりするので、疫学的に調べるのは困難で正確な数字はわかっていません。

──1000人に3~8人となるとそれほど少ない数字ではないと思うのですが、そこまで頻繁には見かけないという印象があります。

野口:
トゥレット症の方で外出できる方は、症状が目立ちにくいものであったり外に出ている間はがんばって症状を抑えられたり、そこまで重症ではないということがいえると思います。しかし外に出ることが難しい方も数多くいらっしゃって、本当はもっとたくさんの方が苦しんでいるのではないかと考えられます。

また、トゥレット症の難しい点として、個人によって症状に大きな差があることがあります。運動チックか音声チック、どちらかの症状だけが強く出てもう片方はひどくないという方も少なくありません。また併発してくる他の障害によっても、生活への影響は大きく異なってきます。

(今年2月、京都長岡京市にて開催された、日本トゥレット協会関西ピアグループの「お話&交流会」。協会の理事を務める瀬川記念小児神経学クリニック理事長・星野恭子医師を招いた講演の後、グループに分かれて悩み事や情報の共有・交換を行い、交流を図った)

人によって症状が大きく異なり、
治療もさまざま

(トゥレット症について一人でも多くの人に知ってほしいと、啓発パンフレットの作成にも力を入れている。左から協会リーフレット『トゥレット症候群育成ガイドライン』(日本トゥレット協会編、難病のこども支援全国ネットワーク発行)、『トゥレット症候群Q&A』(日本トゥレット協会発行)、『チックをする子にはわけがある』(日本トゥレット協会編、大月書店発行)。「チック・トウレット症ハンドブック」(2018年3月発行)は頒布しているとのこと。詳細は協会ホームページの詳細ページ→http://tourette-japan.org/トゥレット症候群について/書籍・dvd/

──治療法はあるのですか。

野口:
原因が解明されていないため、トゥレット症を完治する治療法はまだありません。
治療の基本は、症状を理解し、うまく付き合えるようにする家族ガイダンスや環境調整になります。症状によっては薬物療法が選択されることがありますが、症状や併発症が人それぞれ異なるので、一人ひとりその時々に合わせて処方されます。その他にも認知行動療法、歯科スプリント、脳深部刺激治療(DBS)などがあります。

「これが効く」ということがトゥレット症をもつ誰しもに言えるわけではなく、人によって効果に差があります。さらに難しいのが、同じ方が同じ薬を服用していても、時期によっては効果に差が出てくることがあります。「去年はこの薬を服用していて調子がよかったのに、急に効かなくなってしまった」ということが起こるのです。しかし一方で、薬が合っていなくても症状が出ない時もあります。どういった条件で症状が出るのか・出ないのか、それすらわかっていないというのが現状です。

──そうなんですね。

野口:
息子の場合もそうでした。チックがあると、からかわれたり周囲から浮いた存在になりがちです。息子は小学3年生から中学3年生の前半くらいまで不登校になりましたが、自分に合わせて通える自由な校風の高校に入ってからはみるみる元気になり、症状もほとんど出なくなってアルバイトをするまでになりました。

「このまま良くなるかもしれない」と期待しましたが、高校卒業後、専門学校に入ってからは再び症状が出るようになり、重症化していきました。そのことで息子はもちろんですが、私もすごく落ち込んでしまいました。症状の増悪には誘因となる環境の変化などがあると思いますが、そうなると薬も効かず、どんどん負の連鎖が始まっていきました。

──いろいろとわかっていないことが多いのですね…。

(2019年5月31日~6月2日、日本小児神経学会学術集会(名古屋)にて、患者会ブースでの広報活動。「チック診療ガイドライン」策定ワーキンググループ代表であり久留米大学医学部教授の山下裕史朗先生(左)と、ワーキンググループ外部アドバイザーで日本トゥレット協会の理事も務める、東京大学医学部附属病院准教授の金生由紀子先生(中央)と。「チック診療ガイドライン策定にあたり、当協会も当事者・家族の立場から参考意見などを求められ、協力させていただきました」(野口さん))

「一番つらく、しんどい思いをしているのは
チックの症状が出る本人」

(当事者である菊地涼太さん(25)のメッセージ。「僕はトゥレット症を抱えながらもそれに負けずに、電車で会社に行き、楽しく仕事をしています。この写真は、休日を利用して友人と大楠山という神奈川県三浦市にある山に登った時の一枚です。つらいこともたくさんありますが、この写真のような笑顔を常に保てるように意識しています」)

野口:
ただ一つ知っておいてほしいことは、チックは本人が「出したくない」と思っていても、意に反して出てしまうものだということです。一番つらく、しんどい思いをしているのは本人なのです。

チックは出ても感情もあれば、判断力も普通の人と何も変わりません。だからこそ余計に、チックが出た時の周囲の反応を敏感に感じとるし、「周囲に迷惑をかけているのだろう」「変な目で見られているのだろうな」ということもすごく良くわかっています。トゥレット症をもつ方たちは、だからこそつらい部分があります。

そしてまた、時期によっても症状の重さに差があります。症状が少なく調子の良い時の当事者を知る周囲の人たちが、この障害をよく知らないばかりに「ここ一年ぐらい症状が出なかったのだから、前みたいに我慢できるでしょう」といってしまうこともあるります本人もやりたくてやっているわけではありません。周囲の無理解は、本当につらいと思います。

──本人でもどうすることもできないし、尚更しんどいですね…。

野口:
トゥレット症は今でこそ脳の機能による障害、神経の病気であることがわかってきましたが、一昔前までは「心の病気」だと考えられてきました。親の養育や家庭環境が原因、「親が十分に愛情を注いでいないから」「育て方がわるい」というふうにいわれてきたのです。長い間、当事者と家族は苦しんできました。

(協会の前身、「日本トゥレット(チック)協会」の設立総会のレジュメと、NPO設立当時の会報誌。「2001年4月29日の設立総会には、医療関係者・当事者・家族等177名の方に参加していただきました。「もう皆さんは孤独ではありません!」という高木代表(当時)の言葉は、その症状のつらさからただただ途方に暮れる日々を過ごしていたたくさんの当事者や家族の希望となり、励みとなりました」(野口さん))

──そうだったんですね。

野口:
私たちの場合も、共働きで仕事が終わるのが遅かったので、周囲の先生やお母さんたちから「はやく帰れるようにしたら?」「もっと愛情を注いで」などといわれてつらい思いをしたこともありました。

今から19年前になりますが任意団体日本トゥレット(チック)協会の設立当初は、今のようにインターネットも発達しておらず情報もなく、当事者や家族の方たちはそれぞれ本当にしんどさを抱えていました。集まった時には、自分や家族の症状や状態を皆泣きながら話し、何か症状を緩和させられる方法がないかと情報交換をしていました。2003年にはNPO法人として再出発し、そこからは情報発信だけでなく、啓発のためのハンドブックやパンフレット作成なども行うようになりました。

今でも悩みや困りごとが沢山ありますが、同じ病気の仲間と話せることと、19年前よりはこの病気のことがわかってきただけでも、大きな心の支えになっていると思います。

(2017年12月、神奈川・長津田でのクリスマス会の様子。「一品持ち寄りのアットホームな会でした。美味しい料理やケーキを囲み、おしゃべりも弾みました」(野口さん))

併発する症状も相まって
就労も難しい現実がある

(野口さんと息子さんとの2ショット。「今まで2人で写真を撮ることは殆ど有りませんでした。今回良い機会をいただき、近くの公園で撮りました」(野口さん))

──息子さんが重度のトゥレット症だったということですが、詳しくお伺いしても良いですか。

野口:
今年32歳になる息子は、保育園の頃から症状が出始めました。口の中を噛む自傷行為です。小児科で薬を出してもらったり、口に何かをくわえていたら噛まなくて大丈夫そうだと禁煙パイポをくわえてみたり、ティッシュをくわえてみたり、ありとあらゆる手段を試しました。

でも、その時は何とかなっても、時間がたったらまた繰り返してしまうのです。本人も噛んだら痛いとわかってるけれど、「痛い、痛い」と泣きながら、それでも口の中を噛んでしまう。噛み続けたことで口の中はいつもケロイド状でした。

昨年、脳に電極を埋め込んで継続的に神経に刺激を行うことで重度のトゥレット症状を抑える「脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)」の手術を受けました。パーキンソン病やてんかんの症状などに効果があるとされており、トゥレット症の場合は命の危険に関わるぐらいの重度な症状になってきた時の最終手段としての治療法です。この手術を受けたことで、症状はかなり抑えられています。

(トゥレット症をもつ人にとって、電車をはじめとする公共交通機関の利用は大きな課題。「国土交通省発行の『発達障害、知的障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック』改訂・検討ワーキンググループの会合(2015~2016)に当協会も参加させていただき、ハンドブックの中にチック・トゥレット症の症状についても掲載していただきました」と野口さん。ハンドブックはこちらからダウンロードが可能です→http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf

──重度の症状がある方が早い段階でこの治療を受ければ、症状が抑えられるのではないですか?

野口:
この治療法は、日本では施術できる医療機関も限られ、また手術に至るまでには様々な条件があるため、希望するからといってすぐ受けられるものではありません。また、症状が大人になるにつれて自然に軽減していくこともあるので、本当に手術が必要かどうかの判断も難しいところがあると思います。

──なるほど。日常生活に様々な支障が出るということをお伺いしてきましたが、トゥレット症をもつ方の就労は難しいのでしょうか。

野口:
会社の理解を得て就職している方、フリーランスや起業して働いている方もいます。ただ、症状が強いと家から会社まで公共機関を使って行くのも難しいし、運動チックによって字を書くことやパソコンのキーボードを打つことも容易ではありません。そうすると履歴書を書くのも大変ですし、音声チックを抑えながら面接を受けることもかなり厳しいです

就労支援の場で少しずつ慣らしながらペースをつかんでいく方もいらっしゃいますが、お伝えしている通り、強迫症やADHD、睡眠リズムの乱れ、自閉スペクトラム症、不安やうつ、怒りのコントロールの困難など何らかの併発症を持っている方が多いので、両方が足かせになって就労に困難を感じている方が少なくありません。

(「僕のトゥレット症の症状の中でも特に辛いのが汚言症と自傷行為です。汚言症は文字通り汚い言葉が出てしまうので、その言葉を極力出さないように、通勤時や仕事中は水を口に含んでいます。また自傷行為については、噛んだ時の痛みの緩和と傷口を広げないように、マウスピースをしています」(前出・当事者の菊地涼太さん))

「トゥレット症の人を見かけたら、
やさしく温かく、受け流してほしい」

(毎年開催している、協会主催の夏のレクリエーション。「毎年、屋外でBBQや広場で簡単なゲームなどをしていましたが、近年の猛暑の影響かから一昨年は室内でアナログゲーム大会を行うことに。その時のスナップ写真です。参加者全員初めて体験するゲームで、ハラハラドキドキ、あたふたしながらも笑いのある楽しいひと時でした。しばし症状も忘れ、リラックスして楽しめました。その後のランチも話が弾みました」(野口さん))

野口:
今、息子は「何もしんどくないよ」と人生を前向きに捉えてくれています。でも、そんなことを言い出すとキリがないのですが…、もしトゥレット症がなかったらどうだっただろうか? 学校にも通えただろうし、大好きなバイクに乗っていろんなところへ行けただろうし、映画を観に行けただろうし、もっと自由があって、みんなが普通にしていることを普通にできたのではないかと思ったりしますね。

──運転もできないのですね。

野口:
運転中はチックが出にくいようでドライバーとして仕事をしている方もいます。息子の場合は中型バイクの免許を取得して調子の良い頃にはよく友達とツーリングに行っていましたが、症状の多い時は壁にぶつけたり人に当たったりしてしまう危険があるので、最近はバイクも乗らなくなりました。免許証の更新時には音声チックがあることを説明して代筆出来るところはお願いし、講習を受ける時は一番後ろの席で受けさせてもらい無事に更新できています。
多くの方がトゥレット症のことを少しでも知ってくれていたら、周囲の無理解によるしんどさの部分だけは、軽減できると思うんです。

突然声が出たり、体が動いたりする人を見た時に「危険な人かもしれない」「何かされるのではないか」と感じる方もいます。でも、この病気のことを知ってくださったら、そうではないということも理解してもらえると思います。

「周りに迷惑をかけているのではないか」ということは、誰よりも本人が強く感じています。そのことを知ってもらうだけで、対応もまた変わってくるのではないでしょうか。

私たちは「やさしい無視」と言っているのですが、トゥレット症の方を見かけたら、温かい目で受け流してもらえたらうれしいです。中には「汚言(おげん)」といって、意志に反して性的な言葉や暴力的な言葉を発してしまうという症状もあって、受け流すことが難しいこともあるかもしれません。ただ、本人も意に反して体が動いたり言葉が出たりして、しんどい思いをしていたり、傷ついていたりするのだということを少しでも知っていただけたらと思います。

(「写真は我が家の愛猫です。トゥレット症は、決して致命的な病気ではないけれど、本人も家族も、追い詰められたり心が折れそうになることがあります。そんな時、私はピアノを弾いて心を空っぽにして、猫に癒されてきました。癒しの時間、心が休まるひとときは大切です。多くの当事者や家族は、本当にいろいろな形で心のバランスを保っているのではないかと思います」(野口さん))

チャリティーは、トゥレット症啓発のための資金となります!

(協会のブースに貼られたポスターとリーフレット。「学会などでの広報をはじめとする理解・啓発活動で使用するポスターなどは古くなってきているので、最新情報を盛り込んだものを作成したいと思っています」(野口さん))

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

野口:
チャリティーは、トゥレット症を一人でも多くの方に知っていただくためのポスターやパンフレットの作成、そしてまたこれらを各地に発送するための資金として使わせていただきたいと思っています。
これまで啓発のためのポスターや小冊子などの制作に力を入れてきましたが、現在は動画制作にも取り組んでいます。

──動画はよりわかりやすそうですね!

野口:
そうですね。こういったツールを通じて、医療関係の方たちだけでなく、たとえば学校、保育園や特別支援学校など教育関係の方たちにもトゥレット症を知ってもらい、理解を深めていただくきっかけになればと思っています。そして、トゥレット症のある方たちが少しでも生きやすい社会が広がって欲しいと願っています。ぜひ、チャリティーアイテムで応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(事務局を担当する理事の皆さん。「それぞれ仕事をしながら、協会の業務を担当しています。ふだんはなかなか時間が取れずお互いの近況を話すこともあまりないのですが、偶然皆の都合が合って、息抜きを兼ねて湘南に出かけた際の一枚です。トゥレット症と向き合う中、仲間の存在は本当に大切だと実感しています。理解啓発と共に、当事者やご家族の皆さまの仲間作りのために、何か一つでもお役に立てたらと活動しています」(野口さん))

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

テレビで特集を見たことをきっかけに、JAMMINでもいつかご紹介したいと思っていたトゥレット症。野口さんにお話をお伺いし、トゥレット症をもつ方たちが生活を送るにあたって、想像以上に大きな壁があると感じました。意に反して出てしまう声や行動、症状自体へのしんどさはもちろんそうだと思うですが、それが出た時、周りからの視線や心ない反応・言葉、つまりは周囲の無理解が、どれだけ当事者をつらくさせているのかと思うのです。

「自分が良ければそれで良い」ではなく、誰かに、皆にとってやさしい社会を私たち一人ひとりがつくっていくために、やさしい視点と、ちょっとした知識を持つことができたら良いなと思いました。

・NPO法人日本トゥレット協会 ホームページはこちらから

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鳥、飛行機、ロケットや飛行船…。空飛ぶいろんなものをワクワク楽しく描きました。

同じ空という空間で、それぞれが自分のペースで自分らしく、好きな方向に向かっていく。お互いの違いを受け入れながら、明るく楽しい未来に向かって進んでいこうというメッセージを表現しています。

“Everyone goes at their own pace”、「皆、それぞれのペースで」という言葉を添えました。

Design by DLOP

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