CHARITY FOR

川の清掃活動から、海のごみ問題を考えるきっかけを〜NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム

世界では年間800万トンものごみが陸域から海洋に流出しているといわれており、海に流入するごみの5〜8割は、陸由来といわれています。つまり、陸からごみを減らしていくことができれば、海洋ごみを減らすことにもつながります。

今週、JAMMINが1週間限定でコラボするのは、NPO法人「荒川クリーンエイド・フォーラム」。企業や自治体と協力しながら、参加者とともに東京・荒川を清掃、そこでの体験を、ごみ問題を考える次のアクションへつなげてもらうために活動しています。

過去のコラボでもプラスチックごみの問題を紹介させていただきましたが、私たちの生活から出たプラスチックごみは、一度河川や海に流れてしまうと、分解するまでに非常に長い時間がかかります。そして、このままの状態が続けば、2050年までに海に漂うプラスチックごみの量は、魚の量を上回るといわれています。

「海のごみは、海で出たもの」。そんなイメージを持つ方も少なくないかもしれませんが、海のごみの多くは、私たちの日常生活から出て、街から川をたどって海に辿りついたものです。

「日本屈指の流域人口を誇る荒川。この荒川での取組み事例がモデルとなり、ごみ問題を考えるきっかけになれば」。そう話すのは、荒川クリーンエイド・フォーラム事務局長の今村和志(いまむら・かずゆき)(38)さん。

活動について、お話をお伺いしました。

(お話を聞かせていただいた今村さん)

今週のチャリティー

NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム

調べるごみ拾いを中心に、環境教育や水質調査、情報発信などを行いながら総合的に荒川の環境を考え、市民の意識の向上をはかるNPO法人。荒川での活動をモデル事例として、世の中全体のごみ問題の解決を目指している。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2020/3/30

荒川で清掃活動「クリーンエイド」を実施

(クリーンエイドには、年間50以上の企業が参加する。写真は日本水産株式会社によるCSR推進員研修の様子)

──今日はよろしくお願いいたします。まずは、貴団体のご活動について教えてください。

今村:
私たちは、荒川の清掃活動を軸に、市民の方たちにごみ問題について知ってもらうきっかけをつくる活動しています。清掃活動である「クリーンエイド」は「クリーン」+「エイド」の造語で、荒川河川敷のさまざまな場所でごみを拾うなかで、一人ひとりがごみの問題を考えて次のアクションを起こし、豊かな自然を取り戻すことを目的としています。

クリーンエイドは、企業、自治体、市民団体、学校などがそれぞれ主体となって荒川清掃活動を実施する取り組みです。その数は年間で190回以上、参加人数は1.3万人に上ります。

──すごい数ですね!

今村:
日本は諸外国からきれいな国だと言われています。街中に落ちているごみも多くないかもしれません。でも、一歩荒川の水際に踏み込んでもらうと、川に大量のごみが溢れている現実を目の当たりにします。クリーンエイドに参加することで現実を知り、ごみ問題を考えるきっかけにしてもらえたらと思っています。

──企業や自治体さんはどのようなニーズがあってクリーンエイドを依頼されるのですか?

今村:
内容は多種多様です。「社会貢献の基礎について学びたい」という依頼もあれば「寮に住む新入社員にごみの問題について考えてもらいたい」「チームワークを強めたい」などもあり、本当にさまざまです。

(荒川清掃体験会の様子。スタッフが細やかに実施手法を説明)

クリーンエイドについて

(クリーンエイドで回収されたごみの山。「800人規模の活動では1000袋を越えるごみを回収することもあります」(今村さん))

──クリーンエイドは、具体的にどのように進められるのですか?

今村:
最初にごみ拾いの説明をして、1時間ほど清掃活動を行い、最後に活動をチームで振り返ります。全体で2時間ほどのプログラムがベーシックですが、依頼があれば自然環境教育などもセットで実施することもあります。

清掃には特徴があって、各会場でどんなごみが落ちていたのか、その数はいくつだったのかを確認しながら拾っていく、「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup、ICC)」のルールに準拠した「調べるごみ拾い」を行っています。6人1組のチームで、ごみを拾いながらシートに記入していくかたちです。ただ拾うだけではなく、集めたごみの種類と数を見える化することによって、参加される方たちに”気づき”が生まれます。

(クリーンエイド参加者と水質調査を行っている様子。「パックテストを用いた簡易水質調査です。精度がものすごく良いわけではありませんが、参加してくださった方たちの意識を育てるための一つのツールとして用いています」(今村さん))

──川にはどんなごみがあるのでしょうか?

今村:
容器包装系のプラスチックごみが多いですね。人の生活とごみの内容と相関があります。例えば、流行っている飲料水やお菓子のごみがすぐ川のごみとして反映されます。

──なるほど。

今村:
かといって、新しいごみばかりというわけでもありません。荒川は河岸に植物がたくさん生えていて、そこにごみが一度ひっかかったら、大きな出水でもない限り、ずっとそのままごみが留まり続けるという特徴もあります。ごみ拾いをしていると昔のごみが出てきたりすることもありますね。

(回収されたタイヤはドロドロ。「重たいタイヤも仲間となら回収できます」(今村さん))

流域人口は一千万人。
荒川ならではのごみ事情

(荒川河口付近のごみが溜まりやすいエリア。毎日大量のごみが漂着する)

──海のごみとは違う特徴もあるのですね。河川ごみならではの特徴は他にありますか?

今村:
海岸漂着ごみは波に洗われるため、タバコのフィルターなどの小さなごみも見つけやすいですが、荒川の場合は泥が堆積しているので、小さなごみは泥にまみれて見つかりにくいという特徴があります。

河川ごみは、私たちそれぞれの生活の身近な場所にある支川(支流の川)や水路から流れ出たごみが集約して集まってくるので、海洋ごみと比較してごみの密度が濃いという点も特徴の一つです。特に荒川はその流域人口が1,000万人といわれており、沿川にたくさんの人が住んでいることから、集まってくるごみも必然的に多くなります。

──なるほど。

今村:
もう一つ、荒川のごみ問題の特徴として挙げるとすれば、河川敷生活者の出すごみかもしれません。

荒川下流域の30kmには200名ほどのホームレスが暮らしています。生活に必要な道具を拾ってきたごみの中から調達している方もいます。街中からごみをたくさん集めてきて、使わないものは川に捨ててしまうといった問題もあります。河川敷に住まなければならないという社会構造自体も一つの社会課題と言えるので、問題はそう単純ではないと言うことも知っておかなければなりません。別方面からの支援も必要になります。

(「河川敷生活者の住居とごみの問題は人権なども絡んでくるため、これまで触れられてくることはありませんでした」(今村さん))

スーパーのレジ袋から、テレビや冷蔵庫まで…。
川に漂着する、ありとあらゆる種類のごみ

(荒川から回収された粗大ごみ。「本当にどんなごみでもあります」(今村さん))

──河川ごみの種類には何か特徴はありますか。

今村:
やはり容器包装系のごみが多いです。一つひとつのごみの由来をさかのぼって追跡することはできないのでどこから来たかはわかりませんが、私たちの生活にある、ありとあらゆるごみがあると言っても過言ではありません。壊れたビニール傘やスーパーのレジ袋はもちろん、空き缶や滋養強壮剤の空き瓶、テレビや冷蔵庫、トラクターのタイヤまで、本当になんでもありますね。

──ええっ、そんなものまで川にあるのですね?!

今村:
大きな一本の荒川に対して、たくさんの支川や水路がつながっており、そのそれぞれに人々の生活があります。ごみをきちんとごみ箱に捨てた、ごみ回収の日にちゃんと出したと思っていても、たとえば雨の日に屋外のごみ箱やごみ集積所から流れ出たり、生活の中で出るマイクロプラスチック(小さなプラスチック片)が河川へたどり着いたりすることもあります。

(荒川河口の土には、バラバラになったプラスチック、レジンペレット(成型前の原料プラスチック)などが混ざり合う)

──マイクロプラスチックは、近年大きな問題になっていますね。

今村:
化学繊維の洋服を洗濯した時にもマイクロプラスチックが出ますし、使い捨てのコンタクトレンズを排水口に流す方がいますが、これもマイクロプラスチックの元となります。

「自分はちゃんとごみ箱に捨てているから、海や川のごみは関係ない。海や川にごみを捨てる人が悪い」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちの生活と河川/海洋ごみは密接に関わっているということを知っておいて欲しいと思います。

──なるほど。

今村:
街のごみを減らしていくことができれば、河川ごみを減らすことができる。河川ごみを減らすことができれば、海洋ごみを減らすことができます。世界は海でつながっているので、海洋ごみの問題を日本だけで解決することは難しいですが、まずは一人ひとりが日常生活の中で意識して、「もしかしたらこれは海洋ごみになるかもしれない」という視点を持ち、使い捨てや無駄を無くしていくことが、ごみの削減に大きくつながります。

(池間島(沖縄県宮古島市)に漂着したごみ。「海洋ごみ問題は越境問題です」(今村さん))

「荒川をモデルケースに、
全国に清掃活動を広げていきたい」

(荒川を管理する国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所。「荒川清掃活動にも複数回参加してくださっていて、ごみ拾いで一緒に汗を流しています」(今村さん))

今村:
私たちの団体のように有給専従職員を雇い、年間これだけの回数の川の清掃活動を行っているのは、国内でも有数であり、年中ボランティアができる仕組みは荒川下流部にしかありません。
荒川下流域については、クリーンエイドで回収したごみを、国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所や沿川の各エリアを管轄する自治体に回収してもらっていますが、活動を続けていくためには、行政や各自治体の協力が要です。他の地域の川の清掃では、毎回、個別に行政に依頼してごみを回収してもらっているのだそうです。
この仕組みを荒川だけでなく、全国の川に広げていくことができればと思っています。

──全国の川で清掃や連携が進めば、海に出ていくごみを減らしていくことにもつながりますね。

(社員研修でクリーンエイドをした後、記念撮影。「若い笑顔がまぶしいです」(今村さん))

今村:
クリーンエイドに参加された方からは、「思ったよりも荒川が汚かった」という感想がよくあります。沖縄出身の参加者からは荒川のごみの量の多さが想定を超えていたようで、「ごみ箱の中でごみ拾いをしているみたい」とおっしゃった方もいました。

荒川は「天井川」といって、川底が周辺の地面の高さよりも高い位置にあります。そのため、下流域では川と街が堤防によって隔てられています。これは「市民の生活が川から一歩離れている」ともいえます。

ごみがあるのかどうなのか、どれぐらいあるかは、河川敷まで降りてきて、さらに水際まで近寄ってみないとわからない。電車や橋の上など遠くから見る限りはそんなにごみがあるようには見えないのですが、橋脚の下や水際の一定のところにわっとたくさんのごみが溜まっています。

見えづらいために問題意識が低くなりがちなごみ問題ですが、実際にそこまで足を運んで目の当たりにしてもらうことで、課題として、自分ごととして捉えていただけると思います。

(環境教育の様子。人工河川荒川の生物多様性や外来植物が繁茂している現状を説明するスタッフ)

「ごみを拾う人を増やし、ごみを捨てる人を減らす」

(水質改善により、荒川では絶滅していたといわれていた「トビハゼ」が戻ってきた。「トビハゼは水が嫌いな変な魚。しかし、水質にうるさい生物指標です」(今村さん))

今村:
最初に澄んだきれいな川があって、それがだんだん汚れていくと、人々は危機感を抱くでしょう。しかし汚れた荒川を当然としてみていると「きれいにしなきゃ」という意識にはなかなかなりづらいというのではないでしょうか。汚い川を見て育った子どもたちにとってはそれが当たり前の光景なので、逆に澄んだきれいな荒川のイメージも湧きづらいでしょう。

「昔は川の水を飲むことができて、魚釣りを楽しんでいた」という話を聞くこともありますが、現時点ではやはり決して状態が良いとは言えないので、いかに良い川を見せていくか、そして市民の皆さんのモチベーションをどう上げていくかが課題です。未来をどうというよりは、まず今をなんとかしなければならない、そんな状況だと思いますね。

(活動に若い世代を取り込んでいきたいと、アプリ開発などにも力を入れている。こちらは
電子図鑑アプリ“SOIL(ソイル)”。「荒川の環境について学べるアプリで、他の市民団体と共同開発しています」(今村さん)(協働:OLTVECS))

──そうなんですね…。

今村:
私がこの団体に入職した2016年、荒川河口から3km地点の土を採取してみたところ、土とプラスチックの割合が1対1だった時はさすがに私も危機感を覚えました。

マイクロプラスチックが海に流れ出て、プランクトンと勘違いした魚がマイクロプラスチックを食べ、その魚を私たちが口にする。人体に入ったマイクロプラスチックの99%は排出されると言われていますが、マイクロプラスチックが人体に及ぼす影響はまだよくわかっていません。
より体の小さな生物がマイクロプラスチックを摂取した場合は、その影響度合いも大きいと考えられ、生態系そのものへの影響がある可能性もあります。食物連鎖を介して私たちにもじわじわと影響を与えるかもしれないという意識は持っておいた方が良いと思います。

ごみを拾って「良いことをしたね」で終わるのではなく、活動への参加をきっかけに、日々の生活でどうごみの問題と向き合っていくことができるのか、それぞれの生活に戻られてから次のアクションを考えて、行動に移してしてもらえたらと願っています。

「ごみを拾う人」を増やし、「ごみを捨てる人」を減らす。「ごみの早期回収」と「ごみ問題の啓発」の両輪を回していくことが大切だと思っています。

(フィールドワークも好きですが、新入社員研修の室内プログラムで河川/海洋ごみ問題解決プランをみんなでワイワイ話し合うのも好きです。こちらはセールスフォース・ドットコムでの研修での一枚です」(今村さん))

チャリティーは、クリーンエイド開催のための資金となります!

(クリーンエイドでの一枚。「希望者には投網の投げ方も教えています(笑)」(今村さん))

──人が生活の中でごみを出し続ける限り、川のごみ拾いには終わりがないのではありませんか。

今村:
そうですね。1箇所をきれいにしても、3ヶ月経つと、もう元あったごみの3〜4割のごみが溜まっていて、1年も経てば、ほぼ清掃前と同じ量になっていることもあります。でも、回収した分は確実に海洋に流出するごみが減るわけなので、根気強く、今後も活動を続けていきたいと思っています。

荒川を巡る環境問題もそうそう暗いことばかりでもありません。例えば東京湾を生息の北限とする環境省準絶滅危惧種の魚「トビハゼ」が、水質改善などによって荒川に戻ってきた事例もあります。荒川は人工河川ではありますが、他にもさまざまな生き物が生育・生息しています。川をきれいに保つことで、この生き物たちの多様性を守ることにもつながります。

(荒川河口で捕獲されたカレイ。海とのつながり示す)

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

今村:
今回のチャリティーは、荒川での清掃イベント開催のための資金として使わせていただきたいと思います。川をきれいにするだけでなく、参加してくださった一人ひとりがイベントに参加した後もごみの問題に向き合い、それぞれの生活のなかでできることからアクションを起こしてくださる方を増やしていくためにも、ぜひチャリティーにご協力いただけたら幸いです。

──貴重なお話をありがとうございました。

(スタッフの皆さん。「社会課題河川/海洋ごみという根深い問題にも積極的にかかわっていただける皆さんの思いで、スタッフも頑張れます。豊かな自然環境も好きだけどやっぱり人が好きですね」(今村さん))

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

私たちが日常生活を送る出るごみと、海や川に浮かんだり沈んだりしているごみとがなかなか結びつかないかもしれません。でも、川や海にあるごみは、確実に私たちの生活から出たもの。ごみを拾うだけでは追いついていかないので、やはりごみ自体を増やさない生活を心がけていくことも大切だと改めて感じました。

この7月からは、レジ袋の有料化がスタートしますが、日々の生活の中の小さな工夫で、楽しく、豊かにごみの削減を意識していくことができたらと思います。

・荒川クリーンエイド・フォーラム ホームページはこちらから

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ごみ箱から困った顔を出しているのは、荒川はじめ、各地の川に生息する鳥「カワウ」。
ごみで溢れかえった川からは魚が消え、ついには陸のごみ箱を漁るしかなくなったカワウ。こんな未来の結末を迎えないように、手には「クリーンエイド」と書かれたごみ袋が握られています。

豊かな自然のある未来のために、今できることからアクションをしよう。そんな思いを表現しました。

“If you want to change the world, start with yourself”、「もし世界を変えたいのなら、あなたからはじめよう」というメッセージを添えました。

Design by DLOP

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