CHARITY FOR

すべての子どもたちに「好き」や「やりたい」を見つけるきっかけと、視野を広げる様々な学びの場を〜NPO法人Kacotam

ひとり親世帯や生活保護世帯、児童養護施設など困難な環境下の子どもたちは、ふたり親世帯の子どもに比べて学びの機会が得られにくい傾向があります。

「学びの機会はもちろん、進学率も困難な環境下の子どもは低い傾向があります。ふたり親家庭の子どものうち8割弱が進学するのに対し、ひとり親家庭の子どもは41.6%という調査結果が出ています」。

そう話すのは、今週JAMMINが1週間限定でコラボするNPO法人「Kacotam(カコタム)」代表の高橋勇造(たかはし・ゆうぞう)さん(32)。
「家庭環境によってこれだけの格差が生じている。それらの格差を解決するために、周りの環境に左右されない学びの場を提供したい」と、子どもたち一人ひとりに向き合いながら「環境づくり」に徹底した学習支援を行なっているKacotam。

活動について、お話をお伺いしました。

(お話をお伺いした高橋さん)

今週のチャリティー

NPO法人Kacotam(カコタム)

子どもへの学習支援を通じ、子どもたちが自ら考えて行動し、そしてそれを楽しみながら自己実現に向けて挑戦できる社会を目指すNPO法人。北海道各地で学習支援を行なっている。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

家庭環境によって学びの機会を得ることが難しい子どもに
学びの機会を提供

(学習支援の様子。ひとり親世帯や生活保護世帯の子どもを対象にした「スタサポ」。無料で食事の提供も行う「スタサポ へるすたでぃ」拠点の学習場面)

──今日はよろしくお願いします。まずは、貴団体のご活動について教えてください。

高橋:
私たちは「経済的理由や家庭環境によってなかなか学びの機会を得られない子どもに学びの機会を提供する」ことをミッションに活動しています。経済的に困窮した家庭やひとり親家庭は、教育に限らず、学校外で親子揃って食事をしたり一緒に出かけたりといった経験が一般の家庭よりも少ない状況にあるため、様々な学びの機会を提供したいと思っています。主に行なっているのは、学習支援と中高生の居場所づくりです。

ひとつめの事業は「学ボラ」という学習支援事業で、社会的養護下にある子どもたち、いわゆる児童養護施設や母子生活支援施設、児童心理治療施設等にいる子どもたちを訪問して一対一で学習支援を行っています。

(母子生活支援施設を訪問し、子どもたちに学習支援をしているところ)

──母子生活支援施設と児童心理治療施設は、それぞれどんな施設ですか。

高橋:
母子生活支援施設は、経済的理由や配偶者からのDVなどの理由から入所して、自立に向けて生活環境を整えるために母子が生活する施設です。児童心理治療施設は、虐待などによって、医療的なケアが必要な子どもたちが、治療や支援を受けながら生活する施設です。

もうひとつの事業が、「スタサポ」というひとり親世帯や生活保護世帯の子どもを対象にした学習支援事業です。こちらは決められた場所に子どもたちが集まって、一対一で学習支援を行っています。現在札幌市内6箇所、苫小牧1箇所、の計7箇所で運営しています。

他にも、定時制高校の授業のサポートや、過去に経済的理由や家庭環境で勉強できなかった若者を対象に高卒認定試験合格を目指して支援するリラーニング、必要に応じて受験の学習支援なども行なっています。

(札幌駅近くにある「スタサポ エルプラザ」拠点の学習場面)

「環境が整うことで、子どもは力を発揮する」

(中高生のオープンスペース「ゆるきち」。建物の1階の楽器スペースでセッションする若者)

──中高生の居場所づくりはどのような活動をされているのですか。

高橋:
「ゆるきち」は、一軒家を使った中高生のオープンスペースです。現在は火曜日と金曜日の週2回開館していて、子どもたちが勉強したりゲームしたりと自由に過ごせる場です。
さらに、学習支援で出会う子どもたちの視野が広がる環境づくりにも力を入れています。自然体験学習や料理教室、興味のある職業に就いている社会人にインタビューする「お仕事カコタム」や「子どもの『やりたい』をカタチにするプロジェクト」などを実施しています。

──面白そうですね。なぜ、環境づくりに力を入れられているのですか。

高橋:
子ども自身は、もともと意欲や何かに取り組む姿勢を持っています。しかしそれが、置かれている環境によって失われたり、育むことが難しかったりすることがあるのではないかと思います。環境がしっかり整えば、あとは子どもたちが自然に、向かいたい方に向かって動いていくことができる。だからこそ、環境づくりが私たちの役目だと考えています。

(「ゆるきち」にて、談笑する中高生とスタッフ。何気ない時間を大切にしている)

「子どもを変えよう」という意識を持たず、
「環境づくり」に徹底する

(子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトの一場面。ボーカロイドのキャラクター「初音ミク」の秘話を聞いているところ)

高橋:
学習支援をする中で、大人はつい子どもに対して「あるべき姿」を抱きがちです。大人は状況がわかるだけに「どうにかして学力を上げないと」とか「勉強させないと」とか、つい「こうしなければ」というものを持ってしまいがちなんですね。でも、大人のその態度が子どもの可能性を失うことにつながりかねません。

──どういうことでしょうか?

高橋:
子どもからすると「自分は信じてもらっていない」「自分よりも他のことを大事にしているんだ」と感じ、大人との関係性が崩れてしまうこともあります。

──自分をわかってもらっている感じがしないのかもしれませんね。

(子どもたちの希望を募って開催されたプログラミング体験会の様子)

高橋:
施設にいるからとか、ひとり親家庭だからといって、関わる際に特に何か意識しているかというと、そういうわけではないんです。自己肯定感を高めるためにとか、そういうことも意識していません。あくまで子どもの力を信じて、必要な環境を用意すること。それが、私たちの役目だと思っています。

実は私自身、活動を始めた当初はどちらかといえば「子どもを変えよう」という意識を持っていました。積極的に学習を進めるとか、自己肯定感を高めるためにたくさん褒めるようにするとか、理想を持って子どもと関わっていました。しかし活動を続ける中で、そういった働きかけをしなくても子ども自身が自然と何かを感じたり得たりしながら変わっていく様子をたくさん見てきたんです。この経験が、団体として「環境づくりに徹底すること」につながっています。

──そうだったんですね。

高橋:
もちろん、私が良いと思うことと、子どもが良いと思うことにギャップがある場合もあります。長く生きている分、「こうした方がいいよ」とついアドバイスもしたくなりますが、こちらがどれだけ働きかけても、本人の納得がない限りは前に進まないし、仮に前に進んだとしても「自分で決定した」という事実がなければ、後々になって本人が後悔してしまうことにもなりかねません。

私自身が子どもと関わりながら、そしてまた他のメンバーと子どもとの関わりを見ながら、だんだん団体として何をしていきたいのか、何をするべきなのかが見えてきた、という感じです。子どもを変えようとしないこと。子どもを変えることよりも、子どもに学習環境を提供することや、学習の成果を大事にしていきたいと考えています。

(やりたいをかたちにするプロジェクトの1枚。「微生物の勉強をしたい」という希望を受けて、顕微鏡で微生物を観察。真剣な表情を浮かべる子ども)

信じて向き合うことで、子どもの感じ方も変わっていく

(「スタサポ エルプラザ」拠点での学習場面。一人ひとりのペースで学習を進める)

高橋:
ある施設の訪問で出会った一人の中学生は、出会った当時、万引きや暴力が絶えませんでした。その中学生を担当したメンバーは「暴力はやめよう」とか「万引きは良くない」という働きかけを特にしませんでした。ただいつも通り、会って一緒に勉強したり、話をしたりしている中で、次第に彼の問題行動がなくなっていったんです。

──咎めず、一対一で自分と向き合ってくれる大人がいたことが変化につながったのかもしれないですね。

高橋:
直接本人に聞いたわけではないのでわかりませんが、安心感はあったかもしれません。その子がどういった経緯で施設に入ったのかはわかりませんが、信頼している大人から暴力を振るわれたり、大事にされなかったり、何らかの事情があって入ってきているわけなので、毎週決まった時間に約束通りに来てくれる人がいて、一緒に勉強したり話をしたりすることを積み重ねていく中で、「この人は信頼できる存在なんだ」というふうに思えるようになったのかもしれません。

一人でもそう思うことができれば、そのイメージを持って、他の人とも関わりを持てるようになります。そんな中で万引きや暴力も緩和されたのかもしれません。

(企業とNPOと連携して行っている自然体験学習の様子。札幌市手稲区の星置川を訪れ、虫や魚を探しているところ)

「好き」「やりたい」をかたちにする
子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクト

(子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトにて。高校生の女の子の「オリジナルのエフェクターを作りたい」をカタチにしている場面)

──子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトはどのようなプロジェクトですか?

高橋:
「好き」「やりたい」を実際にやってみるプロジェクトで、やる前には気づかなかったことが見えたり、新しい「好き」「やりたい」が見つかるきっかけにもなっています。

子どもたちがふと放つ言動に彼らの興味や可能性が詰まっています。このプロジェクトもまさに環境づくりで、やりたいことをかたちにしていく中で子どもたち自身が誰かと一緒に何かを考えたり、自分の好きなことを突き詰めてもいいんだ!と感じたり、そんなことが身につくきっかけにもなるかなと思っています。

(「ジェットストリームはなぜ書きやすいのか」の疑問を解決するために、三菱鉛筆北海道販売株式会社に訪問、担当者に話を聞いた)

高橋:
たとえば、「ジェットストリーム」というボールペンをご存知でしょうか。ある時、一人の子が「このボールペンが書きやすいよね」と言うので、「そうだね、なんでだろうね」という話になりました。「確かに書きやすいね」という共感で終わるのもアリかもしれないけど、「なぜだろう」という素朴な疑問を深められるように、「ジェットストリーム」を作っている三菱鉛筆北海道販売さんに伺ったことがあります。「どんなことを聞こう」とか「どんな質問をしたら答えてくれるだろう」を一緒に考えて伺いました。

──楽しそうですね!

高橋:
他にも、「大きい折り紙で巨大折り鶴を折りたい」という願望をかたちにしたり、最近では「からあげ研究会」を立ち上げて、おいしい唐揚げの粉の配分について調べたりしました。

──からあげですか?

高橋:
「美味しいからあげを作りたいんだけど、どうしたらいいか」という声があって、高校生の子どもたち3人が参加しました。おいしくするための条件として、粉の配合を変えたりしながら、理想のからあげに近づけるために試行錯誤しました。

──面白いですね(笑)

(からあげ研究会の1枚。「衣」をテーマに、小麦粉・片栗粉・米粉の配合と卵の使用有無からなる30通りの条件を設定し、作って試食。メンバー一人ひとりが味を判定、表にまとめ、多くの人が美味しく感じた条件がどういったものだったのかを考察をしたそう。参加した子どもは料理人や管理栄養士を目指していて、この企画を通じてレシピ研究の楽しい面と大変な面との両方を感じたと同時に、次の「やりたい」が出てきたそう)

問題の答えだけでなく、
大人が一緒に調べたり考えたりする時間が大切

(「ゆるきち」でくつろぐ高校生)

──活動の中で心がけていらっしゃることはありますか。

高橋:
大人が働きかけなくても、子どもたちは自然と関わりの中で何かを感じ、何かを得て、ありたい姿に向かっていきます。子どもに必要なのは、教科書に載っている問題の答えだけではなくて、調べたり考えたり、一緒に試行錯誤することや、その時間でもあるのではないでしょうか。

──本当ですね。

高橋:
ひとり親家庭の子どもや施設の子どもは、日常的に自分の意志を発するのが難しい環境にいます。信頼関係を築き、少しでも思いを口にできる雰囲気を作るよう心がけています。

小学生以下の子どもたちは、少なくとも先入観とか「こうあるべき」という姿を持っていないことが多いです。だからこそ「こんなことやってみたい」「あれがやりたい」が出やすいです。大人はその「やりたい」を尊重して、一緒にそれをかたちにしていく必要があるのではないでしょうか。
成長して中高生になると、他人と自分を比較したり、空気を読んだりしながら自分のあり方を模索していて、素直に「やりたい」と発するのが難しくなりがちです。ただ、本人の「やりたい」をあきらめたり避けたりすることがないように、大人がサポートしていく必要があると思っています。

──本人が自分の気持ちを諦めないでいられるよう、その環境を用意するということなんですね。

(「微生物の勉強をしたい」という中学生の「やりたい」をかなえるため、大学の研究室を訪問して微生物を観察)

「子どもたちが家庭環境に
後ろめたさを感じないような環境づくりを」

(写真に興味がある子どもたちが集まり、近くで撮影会を行った時の1枚。みんなで撮った写真を見ている場面)

──今後の目標はありますか。

高橋:
自分たちの団体だけでなく、様々な団体と協力しながら、北海道内179の市町村の一つ一つに学びの場ができたらいいなと思っています。私たちが7年間この活動をしてきたノウハウを生かしながら、環境に左右されず、子どもが学びの機会に触れられる場を提供していけたらと思いますね。

もう一つはやはり、子どもの視野が広がる環境づくりにも力を入れていきたいですね。子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトは、企画から実施までをプロジェクトチームが担当するかたちでやってきました。しかし、このやり方には限りがあります。プロジェクトチームのメンバーでなくても、ボランティアスタッフ一人ひとりが企画を考え、一人ひとりの「やりたい!」に応えていくことができたらと思います。

──メンバー個々人がプロジェクトを企画していく、ということでしょうか。

高橋:
そうですね。「知りたい」「学びたい」というタイミングは子どもによってそれぞれです。それぞれのタイミングにクイックに応えられるよう、環境を整えていきたいです。

ひとり親家庭であったり生活保護を受けていたり、経済的に苦しいということは本来、後ろめたく捉えることではないと私は思います。しかし、当事者は後ろめたく捉えてしまう。それがなくなるようにしていきたいですね。関わる子どもたちに、他ではなかなか経験できないような学びの機会を提供することで、逆に周囲から「羨ましい」と思われるぐらいになれば、後ろめたさもなくなっていくのではないでしょうか。そういうことも、ゆくゆく考えていけたらいいなと思っています。

チャリティーは、子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトを実行するための資金になります!

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

高橋:
子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトを実施するための資金として使わせていただきたいと思います。
子どもによってそれぞれ興味は違い、毎回企画の内容も異なります。また、直接学力につながるものではないので助成金などを得ることも難しい企画です。ぜひ、チャリティーアイテムで、子どもたちの「やりたい」を応援いただけたら幸いです。

──貴重なお話、ありがとうございました!

(年に1回行っている研修にて、スタッフの皆さんと)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

「『こうなってほしい』というのは持たない。それは子どもたち一人ひとりがそれぞれ考えること」と高橋さん。あくまで「子どもの意志」を尊重される視点がとても印象的でした。そういえば小さい頃、確かに大人に何を言われても聞く耳持たずでしたが(怒られることだけは怒られないように渋々やっていましたが)、自分が納得したことだけはやっていたように思います…。そして「これをやりたい」という意見に耳を傾けてくれる大人がいたことが、そんなこと考えてみたことなかったですが、今思うとすべて現在の生き方につながっていて、そう言える存在の重要性を改めて感じました。「やりたい」をカタチにして、生き生きと生きる子どもが増えますように!

・NPO法人Kacotam ホームページはこちら

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宇宙の中で自由に飛ぶ鳥たちの姿を描きました。
自分の向かいたい方向に向かって思うままに行動する子どもたちの無限の可能性を表現しています。

“Each day is willed with possibility”、「毎日は可能性に満ちている」というメッセージを添えました。

Design by DLOP

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