CHARITY FOR

「つながりは、生きるチカラになる」。がん患者同士がつながるサイトを通じて「生きにくさ」を解消したい〜一般社団法人キャンサーペアレンツ

生涯累積罹患リスクが二人に一人、つまり一生のうちに二人に一人が診断されるという「がん」。たとえ今健康な人にとっても、決して他人事の病気ではありません。一方で、がんを患う人の就業の継続や、地域・知人などのコミュニティーとどう関わっていくかなど、がん患者が社会とつながっていくには高いハードルがあるといいます。

「がんに対する先入観や誤解、知識不足による大きなギャップがあると感じています。がんと診断されても、24時間ずっと治療をしているわけじゃない。その人の生活には、子どもと遊んだり、勉強を教えたり、仕事をしたり、将来のことを考えたり…、病気以外の時間もたくさんある」。

そう話すのは、今週JAMMINがコラボキャンペーンを展開する一般社団法人キャンサーペアレンツ代表理事の西口洋平(にしぐち・ようへい)さん(39)。2015年、体調不良から病院を受診し、ステージ4の胆管がんであると告げられた西口さん。子どもを持つがん患者同士が、治療のこと、家族のこと、仕事のこと‥不安や疑問を話せるコミュニティサイト「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」を2016年4月に立ち上げました。

「僕のように若くしてがんになるのはマイノリティーで、悩みを相談できる場所がなかった。僕自身が情報を欲しかったので立ち上げたサイトですが、今ではたくさんの方が『この場所があってよかった』と言ってくれる。僕がそうであったように、がんと宣告された時、みんな本当に孤独からのスタート。ここでのつながりを通じてみんなが生き生きと変わっていく姿を見ると、こんな楽しい仕事はないなと思います」。

そう話す西口さんに、活動について話をお伺いしました。

(お話をお伺いした西口さん)

今週のチャリティー

一般社団法人キャンサーペアレンツ

小さな子どもを持つがん患者が毎年約6万人増え続けている事実(国立がん研究センター調べ)を目の当たりにし、子どもを持つがん患者同士がつながるためのコミュニティサイト「キャンサーペアレンツ〜こどもをもつがん患者でつながろう〜」を立ち上げ、運営する一般社団法人。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

子どもを持つがん患者同士のコミュニティサイトを運営

(子どもがいるがん患者同士がつながるためのコミュニティサイト「キャンサーペアレンツ〜こどもをもつがん患者でつながろう〜」TOPページ)

──今日はよろしくお願いします。まずは、貴団体のご活動について教えてください。

西口:
まず一つめが、お子さんがいるがん患者のコミュニティサイト「キャンサーペアレンツ〜こどもを持つがん患者でつながろう〜」の運営です。

お子さんがいるということを前提に、がん患者さんがサイトに登録すると、投稿したり他の人の投稿を閲覧したりすることができます。年齢やがんの種類、ステージのほか、お子さんの年齢や配偶者の有無など細かい検索ができて、自分と近しい境遇の人を見つけることができるのが大きな特徴です。さらに、患者さん同士が直接メッセージ交換もできます。これがサイトの基本的な機能です。

──なるほど。

西口:
このサイトの運営が活動の柱で、現在は全国に3,000人ほどの会員がいて、いろんなやりとりが生まれています。サイトの利用は無料です。

がん患者の生活に近い情報を調査・発信も

(2017年、東京で開催したオフ会「キャンサーペアレンツの集いin Tokyo」)

西口:
サイト運営を活動のベースとしながら、二つめの活動としてネット上だけでなく実際に出会えるオフ会も開催しています。
三つめの活動として、がんの当事者の悩みや困りごとなどの情報をまとめ、社会に発信しています。

会員さんにアンケートをとって、患者さんのリアルな現状を発信しているのですが、最近では、大学や医療関係の方たちと共同研究というかたちで論文にまとめたり、また、食品会社さんや保険会社さんなど、企業から依頼を受けてがん患者のリアルな声を調査したりといった活動も行なっています。

──具体的はどんな調査なのですか?

西口:
患者さんって、病院で治療の話はしますが、それ以外の話はしないんですね。でも、生活の中で実は困っているという事実があります。

たとえば、運動や食事について。術後治療をしながらどこまで運動をしたらいいのかとか、食欲がない時にどうやってカロリーを摂取したらいいのかといった情報は、患者さんも知らない状態なんです。私たちがサイトを通じて調査してみたら、やはり9割の患者さんがそういった情報を得ることができなかったと回答しました。

(「調査結果が新聞(読売新聞)に取り上げられたり、企業のみなさんにその結果をお伝えしたりながら、また新たなテーマをいただいたりしています」(西口さん))

患者さんの生活を考えると、他にお金についての悩みもあります。
入院や治療のために仕事ができなくなると収入が減りますが、子どもがいる場合、教育費をどうしようかという悩みが出てきます。
「旅行費や娯楽費は削れるが、教育費はできれば本当は削りたくない」という思いを抱えている親御さんがたくさんいるのではないかと調査を行いました。

「がんになったからこうだ」という一言だけでは片付けられない様々な影響があるという実態を、調査結果を通じてたくさんの方に知ってもらいたいと思っていますし、患者さんの実態を知ることで、困りごとを解決するための方法が見えてくると思っています。

他にも薬のことや仕事のこと、子育てのこと…、テーマはまだまだいろいろあります。正しい情報がきちんと伝わるという点では、患者さんにとっても企業にとっても有益だと感じていますし、実際に私たちの活動の収入源はこの事業からです。治療や薬のことは専門の先生たちがいらっしゃるので、私たちはより生活に近い情報の発信を今後も広げていきたいと思っています。

(2019年3月には、より広くがん患者の “声” を社会へ発信するために、調査を通じてたくさんの方々の意見を集めるべく、医療領域のリサーチに強みを持つメディリード社と共にがん患者向け調査サービス「キャンサーベイ」をリリースした)

「若くしてがんになるのはマイノリティー。
悩みを相談できる場所がなかった」

(がんと診断される直前、会社で誕生日を祝ってくれた同僚たちと)

──なぜ、この活動を始められたのですか。

西口:
2015年に僕自身がんと宣告された時、身近に相談できる人がいませんでした。
当時、若くしてがんになるというのはまだまだマイノリティーでした。子どもがいて、夫婦共働き。日中は働いているか子育てをしているかで、同じ境遇の人と会ったり語らったりできる場所がなかったんです。

──そうだったんですね。

西口:
僕は、娘への告知をどうするかですごく悩みました。同じように悩んでいる人がどこかにいるのではないかと思い、子育て世代のがんの当事者たちが悩みを話し合えるようなサイトを作ろうと思ったのが最初です。
顔の見えないインターネットはネガティブな面もあるかもしれませんが、利便性がそのネガティブな面を超えると感じました。

がんと告知された時、子育てのこと、治療のこと、仕事のこと、家族への告知…、本当にいろんな悩みが出てきます。同じ境遇の人が近くにいない。まさに孤独からのスタートでした。

でも、がんになっても、日々の生活は同じように続いていくんですよね。
なんの解決もしないかもしれないけれど、気持ちを聞いてくれて、同じ思いで話し合うことができる人がいたら、それだけで今日は笑える。そうやって少しずつ、本人の思いも変わっていくと思います。そういう場所がネット上で存在しなかったし、逆にいうと、そういう場所がなかったということが驚きですらありました。

(手術後の2015年4月、娘さんの小学校の入学式。「手術ができなかったことで早めに退院でき、参加することができました」(西口さん))

患者同士が自由につながれる場所

(キャンサーペアレンツの会員の方々が参加した、がんに関するテレビ番組。「皆さんこのサイトで出会って仲良くなった方々です」(西口さん))

──サイトで工夫されていることはありますか?

西口:
サイトでは「治療のアドバイスはしない」「意見を強要しない」といった最低限のルールは定めていますが、それ以外は基本的にフリーです。同じがん患者でもみんな環境や価値観は違いますし、正解は無いからです。

当事者同士が情報交換しながら「そんな考え方もあるんだ」とか「こういうやり方もあるんだ」と多様な意見に触れられるのは、このサイトならではの特徴ではないかと思います。
正解を見つけることではなく、「自分はこうしよう」と納得して決断していくためのお手伝いができたらと思っています。

──なるほど。

西口:
つながり方も自由だし、そこにも正解はありません。入り口は緩いですが、そこから強いつながりになって、一緒に出かけたり遊びに行ったりする会員さんもたくさんいます。サイトを運営している僕たちも「こうつながってほしい」という理想も特に無いし、一人ひとりが心地良い距離感や付き合い方を見出すことができたら、それがベストなのだと思います。

(キャンサーペアレンツでは、がんになった親ががんのことを子どもと一緒に理解できるツールとして絵本を出版する「えほんプロジェクト」も行なっている。第一弾として2018年に出版した「ママのバレッタ」は、抗がん剤治療に取り組む母親と、それを見つめる娘の日々の暮らしを綴った物語。出版記念パーティーにて)

「がんが病気ではなく、
生活の中の個性として受け止めてもらえる環境を」

(活動の目的やビジョンについて、様々な人たちと議論を行う)

西口:
僕もそうだったんですが、病気になった瞬間に「病気の人」になってしまうんですね。本人も周囲も「病気だから」が負担になる。「これはしない方が良いのではないか」、たとえば「大変だから仕事は辞めた方がいいのではないか」とか「病人を前にして笑っちゃいけないのではないか」とかネガティブになってしまうんです。
相手がそれを望んでいればいいですが、大抵の人はそれを望んでいないのではないかと思います。「病気だけど、なにか?」でいいんじゃないか。そう多くのがん患者さんが思っているのではないかと思います。

──距離感というか、壁を生んでいるんですね。

西口:
コミュニケーションのいろんな問題から発生している課題だと思いますが、健康だった人が、いきなり病気になって「あっち側」から「こっち側」になるわけです。健康だった時は「がんって怖い病気でしょ。死んでしまう病気でしょ」と思っているから、その意識があるがゆえになかなか周囲にもカミングアウト出来ない。

最近、有名人の方がブログなどでがんを公表されることが相次ぎました。
「負けるな」とか「治療に専念してください」と言っている人たちが、じゃあ次の日にがんと宣告されて、そういう言葉をかけてもらいたいのでしょうか。がんと診断されたからといって、がんがその人の生活や人生の中心であるのでしょうか。
がんが病気としてではなく、生活の中の個性として受け止めてもらえるような環境を作っていけたらと思っています。

(「えほんプロジェクト」のメンバーの皆さん)

がんと告げられた時のこと

(闘病中の西口さん。病院にて)

──西口さんががんと告知された時のことを教えてください。

西口:
2015年、最初にがんと告げられた時は、僕も怖い病気だと思っていたので「死ぬんだな」と思いました。

感覚としては元気で仕事にも行っていましたし、ただ下痢が続いて調子が上がらず、体重も減っていたために「疲れているのかな
と受診したら、突然の宣告を受けました。当然ですが、まさかそんな想像すらしていないので、にわかに死ぬとは思えないんですね。

歩いていて、誰かとすれ違った瞬間に相手がバケモノになることってないじゃないですか。それと同じです。昨日の自分と今日の自分は何も変わらないのに、宣告を受けたことで何かがガラリと変わってしまった。

2月の頭に告知を受け、その月の半ばには手術を受けました。「うまくいけばなんとかいけるのではないか」という望みもあって子どもや会社、友人に伝えるのはそれからでもいいかなと思っていたのですが、開腹してみると転移が進んでいて、手がつけられない状態になっていました。いよいよ危ないということで、逆に言わなきゃならないと、会社や友人にも病気のことを伝えました。

──簡単ではなかったのではないですか。

西口:
簡単ではなかったです。特に子どもは、がんに対してどんなイメージを持っているかもわからない。「死ぬのではないか」ということが頭をよぎった時、娘にどう説明したら良いのか、死ぬとはどういうことなのか、考え出すとさらに何も言えなくなった。「いったん置いておこう」と思いながら、ずっと心のどこかにひっかかっている。そんな状態が長く続きました。娘には、妻が伝えてくれたのですが。

(2018年春、家族で遊びに行った時の1枚)

「ただがんの患者さんがやっているというだけで、
特に変わったことはやっていない」

(東京都の小学校にて、6年生向けにがんの授業を行っている様子)

──2016年4月にオープンされて今月で丸3年ですが、サイトについてどんな風に感じていらっしゃいますか。

西口:
がんと診断されて、治療のこともそうですが、周囲の人たちにどう伝えるとか、仕事をどうするかとか、全部が初めてのこと、しかも決断しなければならないことがたくさんあるんですね。今でこそ4年経って一通りの経験をしてきましたが、最初はストレスもとても大きかった。

そんな中でも「妻も子どももいてまだ若い僕がどうして?」とか「病気になったのは、あれのせいだったんじゃないか?」とか、整理できずやるせない気持ちがずっとあって、悲劇の主人公だと思っていました。

だけど、サイトをオープンしてみたら同じような人たちがたくさんいたんです。ここでの出会いが、それまでの「自分はなんてかわいそうなんだろう」「なんで自分だけなんだろう」という思いを消してくれました。たくさんの同じように悩み、生きる人たちに出会い「僕一人が悩んでいる場合じゃない。よし、行こう!」と思わせてくれたんです。

──そうだったんですね。

(社会人の方々に向けて、がん患者のリアルを伝える西口さん。写真は社会人向けの大学院にて)

西口:
僕たちがやっていることって、ただがんの患者さんがやっているというだけで、特に変わったことはやっていないんですよね。
がん患者にだって、子育てや仕事の悩みもあれば将来の悩みもあるし、日々の生活の中でちょっとしたいろんな悩みがある。人として当然のことで、それを「がん患者がやっている」というだけ。

そう考えると、「がん患者だから」という壁、「あっち側」と「こっち側」という意識の壁がなくなれば、いつか僕たちの活動は必要ではなくなると思っています。その壁が本当にすべて無くなるのかはまだわかりませんが、そこを目指して今後も活動していきたいですね。

(がんといわれても動揺しない社会を目指して、2019年に発足したプロジェクト「CancerX」のスタッフの皆さんと)

一歩踏み出したら、意外とできる。
「やってみようぜ」と伝えたい

(2018年の誕生日、娘さんと一緒に)

──最後に、読者の方にメッセージをお願いできますか。

西口:
僕は普通の人です。サラリーマンとして評価されることもあれば評価されないこともあったし、家庭を持って子どもができて、仕事が忙しくて子育てにも参加できず、思い出もそんなにない(笑)。ダメお父さんなんです。
プログラミングもできないし、会社を作ったこともないし、営業しかできない人が、がんになってここまでやってこれた。「一歩踏み出してみたら意外とできるんだ」ということを、病気になって初めて教えられたんです。

がん患者さんだけでなく、閉塞感を感じていたり、一歩を踏み出したいと思いながらも踏み出す勇気を持てずにいたりする人に、僕が正解なわけでもないし、今大成功しているわけでもないけど、「やってみようぜ」というメッセージも伝えられたたいいなと思っています。

長生きできたら良いという雰囲気がありますが、たとえ40で死んだとしても、「これをやったんだ」と胸を張って言える人生が良いと思っています。
僕は早く死ぬかもしれないけれど、自分が何をやってきたのか、それが大事だと思っています。

(子どもたちと共にに楽しむイベントを開催。大人も楽しんで参加した)

チャリティーは、より使いやすいコミュニティサイトを目指し、開発費用やオフ会開催のための資金となります!

──今回のチャリティーの使徒を教えてください。

西口:
僕たちの活動のメインは、子どもを持つ患者同士がサイト上で交流することです。今回のチャリティーは、サイトをより使いやすくするための開発費、そしてまた、オフ会開催のための資金として使わせていただきたいと思っています。

──貴重なお話ありがとうございました!

(2017年に開催した「がん患者と医療者のぶっちゃけトーク」。イベントの運営スタッフのみなさんと記念撮影!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

ユーモアを交えながらインタビューに応じてくださった西口さん。なぜかふと思い出したのは、10年以上前、私がまだ20代前半だった頃に通っていたヨガクラスの更衣室で「私ね、がんなの。おっぱいもないのよ」とカツラをとって教えてくれた40過ぎの一人の女性のことでした。あの時、彼女はどんな思いでそれを私に伝えたのだろう。当時の自分がどんな反応をしたのか、どんな言葉を返したのか、覚えてもいないのですが‥。がんだから、自分の、相手の何が変わるというのでしょうか。今一度考えてみると、変わることもたくさんあるかもしれないけれど、変わらないものもたくさんあると思うのです。
本質で、自由につながっていくことができる社会がつくられていくことを願って。

・キャンサーペアレンツ ホームページはこちら

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大小様々な植物が生い茂った浮島を描きました。
浮島はキャンサーペアレンツのコミュニティを、植物はそれぞれ一人ひとりの生き方を表現しており、それぞれがつながりながら、自分らしく生きていく様子を表しています。

“To connect is to live”、「つながりは生きるチカラになる」という団体のメッセージを添えました。

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