CHARITY FOR

発展途上国の子どもたちに、履けなくなった靴や衣類を届ける〜NPO法人SB Heart Station

私たちが普段、当たり前に履いている靴。あまり深く考えることもないかもしれませんが、フィリピンやカンボジアでは、貧しい生活の中靴を買うことができず、裸足で生活する子どもたちがいます。

今週JAMMINが1週間限定でコラボするNPO法人「SB. Heart Station」は、日本国内で履けなくなった靴や衣類を集め、それらを途上国の子どもたちに届ける活動をしています。

10年前、旅行先のフィリピンでゴミの山の上を裸足で遊んだり、お金になるものを拾い集めたりしている子どもたちの姿を見て「この子たちのために何かできないか」と日本国内で靴を集め、それを届ける活動を始めたという代表の小川喜功(おがわ・きよし)さん(69)。
今回は、小川さんと事務局スタッフの南澤正久(みなみざわ・まさひさ)さん(59)に、活動についてお話をお伺いしました。

(お話をお伺いした、SB. Heart Station代表の小川さん(左)と事務局スタッフの南澤さん(右))

今週のチャリティー

NPO法人SB. Heart Station(エスビーハートステーション)

埼玉を拠点に、世界の恵まれない地域の子どもたちに靴や衣類、文房具や楽器を届け、生活向上のための支援を行なっているNPO団体。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

日本の子どもたちが履かなくなった靴や衣類を
途上国の子どもたちへ

(フィリピン・ミンダナオ島にあるディゴス市のサンミゲル小学校での靴の寄贈風景)

──今日はよろしくお願いします。まずは、貴団体のご活動について教えてください。

小川:
私たちは、フィリピン、ミャンマー、ベトナム、タイ、そしてこれからはカンボジアも予定しているのですが、発展途上国の子どもたちに日本の子どもたちが成長とともに履かなくなった靴や着られなくなった衣類などを届ける活動をしています。

他にも、教育やスポーツもがんばってほしいという願いを込めて、ノートや鉛筆、消しゴムなどの文房具や、サッカーボールやサッカーシューズなども届けています。

──届ける靴や衣類はどうやって集められているのですか?

小川:
日本各地から私たちの元に届いたアイテムをお届けしています。
大変ありがたいことに、個人の方の寄贈の他に、企業や小学校、大学のスポーツクラブさんなどからの寄贈もあります。送っていただいたアイテムは、現地の協力団体さんと一緒に、学校や孤児院などで子どもたちに手渡しています。

──すばらしいご活動ですね。

(ミャンマー・バガンにあるイエ・テュイン・ジー寺院での靴の寄贈風景)

きっかけは、旅行先のフィリピンで見た光景

(フィリピン・セブ島のゴミ集積場で靴を配布した際の1枚。子どもたちはゴミ回収車で運ばれてくるゴミの中から、プラスチックや金属などお金になるものを拾い生計を立てている)

──ご活動を始められたきっかけを教えてください。

小川:
今から10年前にフィリピンへ旅行に出かけた際に、ゴミの山で裸足で遊んだり、お金になるものを拾っては集めたりしている子どもたちを見たことがきっかけでした。
ショッキングな光景を目の当たりにし、「この子たちに何かしてあげることはできないか」と思い、帰国してから活動をはじめました。

2011年に初めて靴を届け、その後、2012年にNPO法人を設立しました。スタートが靴を届ける活動でしたので、現在もメインで靴を届けていますが、最近は夏物の衣類や文房具、スポーツ用品などもたくさん寄贈いただいています。

──全国からたくさんのアイテムが届くんですね。素晴らしいですね!

(同じ埼玉にある小学校から寄付されたたくさんの靴や文房具)

これまでに届けた靴は6万足超

(裸足で歩く男の子。2018年10月、フィリピン・ミンダナオ島アラカン地区トウマンディン村にて。たとえ貧しくても、子どもたちは明るく、目は生き生きと輝いている)

──子どもたちにどうやってアイテムを届けられているのですか?

南澤:
年に2〜3回、スタッフや会員さんと一緒に1週間ほど現地に滞在し、現地の協力団体と共に、何地域かの小学校や孤児院を訪れ、子どもたちにアイテムを届ける「手渡しツアー」を行なっています。これまでに62,382足(※2018年12月現在)の靴、60,764枚の衣類、86,056個の文房具類のほか、2,000近い楽器、サッカーシューズやサッカーボールなどを届けてきました。

──すごい数ですね。アイテムはどうやって現地まで運ぶのですか?

南澤:
量がたくさんある時は、20フィート型コンテナ(長さ約6m×幅約2.4m×高さ約2.5m)のコンテナで運びます。
昨年ベトナムに届けた際にはこちらのコンテナを利用し、6,582足の靴と1,295足のサンダル、419足の長靴、176足のサッカーシューズのほか、衣類2,650枚、サッカーボール37個、バレーボール18個、鉛筆7,000本、ボールペン500本、ノート2,600冊、消しゴム450個、鉛筆削り器332個を届けました。

──すごい。たくさん運べるんですね。

南澤:
コンテナのチャーターにはお金がかかるので、たとえばフィリピンへ送る時、それほどの量でない時は「バリクバヤンボックス」という段ボールの小口輸送で送っています。
昨年フィリピンへ届ける際には、1021足の靴と695枚の衣類、115のサッカーシューズとボールを何箱かのダンボールに分けて送りました。

諸外国に物資を届けていますが、その輸送費やツアーには毎回100万円ほどの費用がかかります。現地の子どもたちに定期的に物資を届けられるよう、安定した資金集めが今後の課題の一つです。

(諸外国に送るために箱づめされたアイテム。靴、長靴、サンダル、サッカーシューズ、衣類、文房具などに分類され、現地に送られる)

目を輝かせてアイテムを受け取る子どもたち

(列に並び、順番を待つ子どもたち。「自分の順番まで靴は残っているかな?」と不安そうな表情を浮かべる)

──受け取った子どもたちの反応はどうですか?

小川:
前もってプレゼント(手渡し寄贈)に行くという情報はお伝えして行くのですが、そうすると子どもたちだけでなく、お父さんやお母さんも含めて待っていてくれて、長蛇の列になります。
子どもたちは、「自分の順番まで靴や文房具がちゃんとあるだろうか」とずっと心配そうに見ているのですが、順番が回ってくると一目散に駆け寄って、目を輝かせて靴の大きさやデザインを確かめて選んでいます。そんな姿を見ると、「プレゼントできて本当に良かった」と思いますね。

中には、並んで自分の靴をもらってから、その靴を木陰に置いてもう一回列に並んだり、1足だけでなく、2足も3足も抱えようとする子どももいます。
「1足だけだよ」と声をかけると、「今日はお兄ちゃんと妹が来ていないから、二人の分ももっていってあげるの」と。

(ミャンマー。バガンのイエ・テュイン・ジー寺院での靴の寄贈)

小川:
貧しい地域では、子どもたちも労働力として働いています。学校で勉強することよりも、まずは今日食べるものがあって、生きていくことが優先です。野菜や果物の収穫の時期になると、それが唯一の収入ですから、学校を休んでお父さんお母さんと一緒に働く子どもたちが大勢います。

そうやって一生懸命働いても、たとえばお父さんお母さん、子どもが2〜3人というご家庭で1ヶ月の収入は6,000円ほど。子どもの靴は600円から1,000円ほどします。月の収入の1〜2割する靴を買うことが難しいという現実があるんです。

学校を休んでいるきょうだいのことを思って、彼らの分も靴をもらおうとする子どもを見て、かわいいなと思いますし、「一人一足まで」というルールでは縛るわけにはいきませんよね。大目に見てあげたいと思います。

──取り合いになったり、足りなくなったりすることはありませんか?

小川:
取り合いになることはないですね。
実際に現地に赴くと、いろんな問題も出てきます。何箇所かを訪れるのですが、人数をしっかり把握していないと、持って行った靴や文房具が足りなくなってしまうということはあります。

──もらえる子ともらえない子が出てしまいますね。

小川:
そうですね。そうするともらえた子たちが言うんです。「もらえなかった子のために、またここに来てください」と。もらえなかった子どもたちは、もらえた子に「良かったね」と声をかけている。ここは日本と随分違うなと感じます。

(年齢に関係なく、仲良く遊ぶ子どもたち。フィリピン・ミンダナオ島にて)

──日本だとケンカになったりしてしまいそうなシーンですが…、もらえなかった子はなぜ「良かったね」と声をかけられるのでしょう?

小川:
彼らが普段の生活から、共同体の中で皆で助け合って生きていることが一つの理由だと思います。
たとえば、こういった地域では子どもが病気になっても医者にかかることができずに亡くなってしまうケースがあるのですが、一人の子が病気になったら、村中でその子が医者にかかれるようにお金を集める。そんな背景があるからだと思います。だから、非行やイジメもなく、お金はないかもしれないけれど、家族や村人が肩を寄せ合って、生き生きと楽しそうに生活していると感じますね。

(靴を手に笑顔を浮かべる子どもたち。フィリピン・ミンダナオ島にて)

小川:
ありがたいことに最近はいろんなデザインやサイズの靴を送っていただくようになったので、子どもたちにも自由に選んでもらえるようになりました。でもね、私も知らなかったんですが、私たちが帰ったあとに靴を返しにくる子どもがいるんです。

──なぜですか?

小川:
手渡しする際に、足が痛くないか、サイズは合っているかは聞くのですが、「ママが、もう少し大きいサイズにしろって」と戻してくるんですね。
確かに、今ぴったりということは、子どもが成長して、1年後には履けなくなってしまう。お母さんの気持ちもわかるなあと思いますが、子どもはぶかぶかの靴はいやがりますよね(笑)。

──その子の足が大きくなって、もらった靴が履けなくなった1年後に、また同じ場所を訪れて、新しいサイズの靴を渡すことができたらいいですね。

小川:
そうですね…!それができたら本当に嬉しいですね。

(悪路の中、道を進むトラック。訪れる多くの場所がこういった道を進んだ先にある村だという)

全国から届くアイテムは
日本で仕分けし、送られる

(2018年12月に行われた靴仕分け作業の様子。ボランティアスタッフと手際よく仕分けする)

──各地から靴や衣類が届くということですが、日本で仕分けしてから現地へ送られるのですか?

南澤:
はい。まずは届いた段階で靴・文房具・衣類といったかたちでカテゴリごとに仕分けします。靴はそこからさらに、SS・S・M・L・LLの5種類に分別しますが、これは月に1度、第4土曜日の午前中にボランティアさんたちと行っています。

──そうなんですね。

(靴は片方ずつはぐれてしまわないよう、一足セットにして、紐で結んでの寄付をお願いしていると南澤さん。「輪ゴムでもいいのですが、細いものだと輸送中に切れてしまいますので、太い輪ゴムでお願いします」)

南澤:
毎月平均して20名ほどの方が参加してくださるのですが、ここで中心となって活躍してくれているのは地元の高校生たちです。途上国の子どもたちに靴などを贈り届けるだけでなく、日本の子どもたちにとっても、海の向こうにそんな子どもたちがいると知ることは、大きな学びになると思っています。

──素晴らしいですね。「全国たくさんの方が支援してくれている」というやさしさも、同時に感じることができますよね。

小川:
本当にそうですね。
アイテムを送ってくださる方たちの中には、リピーターの方もたくさんいらっしゃいます。一足二足を送ってくださることもありますし、お友達同士で声をかけ合って、皆さんでダンボール一杯の靴や衣類を送ってくださることもあります。嬉しいですね。

(靴の仕分け作業終了後、ボランティアで参加した皆さんと)

「捨てられていたかもしれないものが、
再び命を吹き込まれ、子どもにとっての宝物になる」

(小川さんと現地の子どもたち。2018年10月、フィリピン・ミンダナオ島にあるサンミゲル小学校で靴を寄贈した際の1枚)

──ご活動の中で、どんなときに「やってて良かった」と感じられますか?

小川:
都心部から6時間7時間かけて、悪路の中をトラックで村へと入っていくのですが、そうすると、1日のボランティアでも行きと帰りを入れると3日かかってしまいます。
でもやっぱり、そんな地域に持っていくと、子どもやお父さんお母さんが本当に楽しみに到着を待っていてくれるんですね。目を輝かせ、期待胸を膨らませて私たちを笑顔で迎えてくれる姿が、本当に嬉しいです。あとはやっぱり手渡しできた時ですね。

現地に着いた翌朝に散歩しているとね、「ジャパニーズ・オガワ!」とか「SB、SB!」って子どもたちが声をかけてくれるんです。嬉しいですよ。

──それは嬉しいですね…!

(靴を手に、嬉しそうな表情を浮かべる子ども。2018年10月、フィリピン・ミンダナオ島にて)

小川:
活動の輪が広がってきた中で、本当に全国各地から、履けなくなった靴や着られなくなった衣類を送っていただくようになりました。

日本では使われることがなく、もしかしたら捨てられていたかもしれないものが、海を渡り、再び命を吹き込まれて、子どもたちにとって宝物になる。その素晴らしさも感じますし、各地からものを送っていただいて、日本という国の郵送機関の発達の素晴らしさも感じています。活動を通じて、日本は本当にありがたい国だなあと実感しますね。

南澤:
私はここで働くようになって1年なのですが、笑顔はやっぱり素晴らしいなと思いますね。中でも将来を担っていく子どもたちの笑顔は、何よりも素晴らしいと感じています。私たちの活動を通じて、子どもたちがより自分らしく、大きく育ってほしと思います。

──今後の目標はありますか?

小川:
今の活動は日本国内だけですが、いつか世界に発信できるような体制を作っていきたいと思っています。

もう一つ、これは個人的に思っていることなのですが、届ける先のほとんどの場所は、道も整備されておらず、車と車がすれ違うのもやっとのような場所です。そういう場所は電気や水道などのインフラも整っておらず、いつかそういう地域に井戸を掘って、きれいな水をみんなに飲んでほしいと思っています。

(小学校の教室の中で、靴の寄贈を今か今かと待つ子どもたち。2018年10月、フィリピン・ミンダナオ島にて。)

「靴を履けば、より子どもらしく生きられる」

(さいたま市の小学校にて、子どもたちが履かなくなった靴の贈呈式を行なった。たくさんの生徒たちから、まだ履くことのできる色とりどりの靴が集まった)

小川:
この活動をフィリピンからスタートした時に、温暖な気候なのでゴム草履や裸足で遊ぶのが普通なのではないか、なぜ靴なのかと言われることがありました。私もそのことを疑問に感じて、現地の方たちに何度も「靴のプレゼントは役に立ちますか?嬉しいですか?」と尋ねました。

講演をさせていただくことがあってその時にもお伝えしているのですが、一度、靴を脱いで歩いてみてください。ガラスなど危ないものが落ちていないかを確認したり、足の裏が痛くなったりして、普通に靴を履いて歩く時の2倍も3倍の時間がかかると思うんです。

そうしたら、やっぱり途上国の子どもたちも同じですよね。
日本のように学校が近くにないですし、舗装もされていない道を1時間も2時間もかけて歩いて通う子どもたちにとって、靴があったらできることもたくさんあると思うんです。

サッカーボールだって思いっきり蹴ることができるし、歩いたり走ったり、仕事のお手伝いも、靴を履いていれば、より子どもらしく、楽しく生きられるのではと思います。

チャリティーは、途上国の子どもたちに靴を届けるための送料となります!

(さいたま市の小学校にて、活動について生徒に語る小川さん)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

南澤:
発展途上国の子どもたちに靴や文房具などを届けるための送料に充てたいと思っています。昨年一年間に、発展途上国に物資を届けるためにかかった郵送料を届けた靴の数で割ると、靴一足あたりの送料は200円でした。コラボアイテム1枚につき、3.5足の靴を現地に子どもたちに届けられることになります。

今回のチャリティーで、500足分の靴を届けるための送料・10万円を集めたいと思います。ぜひ、ご協力いただけたらうれしいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(2018年10月、フィリピン・ミンダナオ島を訪れた際の集合写真)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

日本で履かなくなった靴や着なくなった衣類を途上国に届けるというSB.Heart Stationさんのご活動。無駄がなく、ものを贈った側も、受け取った側も、みんながハッピーになれる本当に素晴らしいご活動だと感じました。
ものを通じて笑顔がつながっていく。ものにも心があったら、きっと笑顔で「ありがとう」と言っているかもしれませんね!

・SB.HeartStation ホームページはこちら

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一足の靴の中にニコちゃんマーク。
靴を贈られて子どもが笑顔になり、贈る側の人たちも笑顔になる。そんな温かなストーリーを表現しました。

“Grow with every small step”、靴を履く足と掛け合わせ、「小さなステップと共に成長する」というメッセージを添えました。

Design by DLOP

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