CHARITY FOR

母子家庭の子どもとお母さんが健やかに過ごせる社会を目指して「人生の基盤」を共に作っていく〜NPO法人リトルワンズ

子育てをしながら仕事をして、暮らしを支えるシングルママ。家計や仕事に悩むママも少なくありません。

厚生労働省が発表した「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯数は123.2万世帯、父子世帯数は18.7万世帯となっており、平均年間収入(母又は父自身の収入)はそれぞれ243万円、420万円。
なかでも母子家庭の世帯収入は、児童扶養手当などを足した数字で見ても、全国の児童のいる世帯の約半分の収入となっています。

今週、JAMMINが1週間限定でコラボキャンペーンを展開するのは、シングルママ、パパを支援する活動をしているNPO法人「リトルワンズ」。
母子家庭の抱える課題や活動への思いを、代表の小山訓久(こやま・くにひさ)さん(41)にお伺いしました。

(お話をお伺いした、リトルワンズ代表の小山さん)

今週のチャリティー

NPO法人リトルワンズ

東京都内を中心に、毎月のイベントや交流会の開催のほか、子どもとの生活に関わる相談や部屋探しなどでシングルママのサポートを行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

シングルママに寄り添い、トータルなサポートを行う

(リトルワンズに寄せられる相談の中には、緊急性が高いものも多いという。母子家庭を緊急訪問し、食事を手配)

──今日はよろしくお願いします。まずは、リトルワンズさんのご活動について教えてください。

小山:
リトルワンズは、母子家庭支援をしている団体です。今年で活動10年目を迎えました。毎月交流会やイベントを開催したり、全国のシングルママから仕事や生活に関する相談を受け付けているほか、空き家を活用したお部屋探しのお手伝いも行っています。

──相談を受けられているとのことですが、シングルママの方たちが抱えている課題はどういったことなのでしょうか。現状を教えてください。

小山:
相談は全国から、年間300件ほどあります。
生活にお困りの方が多く、統計的にいえばお金のこと、仕事のこと、子育てのことがベスト3です。
ただ、お金のことや仕事のこと、子育てのこと、その他のこと…それぞれの悩みは、独立しているわけではなくて、リンクしているんです。仕事の話になるとお金や子育ての話にもなるし、学校のことで困っているという話になると住む場所の話にもなります。

いろんな要素が複合的に絡み合っていることが多いので、私たちとしてはできるだけトータルなサポートで、お母さんと子どもたちが安心して暮らせる環境づくりのお手伝いをしています。

──トータルなサポートはすごいですね。何かコツはあるのでしょうか。

小山:
団体でできるサポートはしながら、相談の内容に応じて、弁護士や医師、行政など、それぞれの分野のプロにおつなぎしています。役割分担がコツなのでしょう。身近にいつでも相談できるような団体を目指しています。

ちょっとした悩みや不安があるときに、誰かにSOSを発信できるような、気軽に相談できる世の中になればいいなと思います。

(リトルワンズでは、母子に向けた様々なイベントや講座を毎月実施。こちらは過去に開催したバレンタインのチョコレート作り講座の様子)

母子家庭が抱える課題

(母子家庭を対象にした夏休み旅行での1枚。浜辺で遊ぶ子どもたち)

──シングルママが経済的に窮地に追い込まれてしまう背景にはどういったことがあるのでしょうか。

小山:
年収が少ないこと、養育費を受け取る機会が少ないことなども理由です。母子家庭の収入源は、お母さん一人です。手当があるとはいえ、お母さんが病気をしてしまうと生活がストップしてしまいます。

子どもが病気をしても、お母さんが子どもを看病しなければいけないので働きに行けません。働いて生活費を稼ぐことと、育児、自分のこと、将来のことなど、すべてがお母さん一人の肩にのしかかっています。

──自分や子どもが病気になったら、働きに行けない。収入が入らない。経済的な面でもしんどくなりますね…。

小山:
子どもが病気になった時には病院に預けることもできるのですが、お金がかかってしまいます。もっとラクに預けられれば良いのですが、お母さんが一人で踏ん張るしかない現実があります。

お母さんは我が子のことを最優先にしていますが、それでも出来ないことがあります。
経済的な事情で塾にいけなかったり、習い事を途中で辞めてしまったり、最初から「習い事をする」選択肢が無い場合もあります。経済的な理由で、食べるものや着るもの、住まいの選択肢が狭まってしまうことも多いです。

大人から見れば、「服がない」「塾にいけない」「部活が続けられない」などは小さなことかもしれません。しかし子どもたちにとっては人生の一部です。それが不足してしまうのは、とても大きな問題です。

独自の奨励金で、
制度が届かない経済的な部分をサポート

(親子料理教室の1枚。毎月必ず1回はイベントを開催し、親子が楽しめる場を提供しているという)

──国の制度としてはどのようなサポートがあるのですか?

小山:
母子家庭には手当があったり、控除などもあります。自治体によっては、水道代や電車代が無料になることもあります。行政としては懸命に支援を届けているのですが、まだ足りないところも多いのです。

「子どもの貧困」という言葉は、10年前より一般化してきました。国も動き出して法律も変わってきましたし、支援活動をはじめる団体も増えてきました。手助けしてくれる機会や場所が増えたことは良いことだと思いますが、まだまだ幅も手段も足りていないのが現状です。

──活動のひとつとして、「小さな一歩応援プロジェクト」という習い事の支援をされていますね。こちらについて教えてください。

小山:
「習い事奨励金」は、こういった背景を受けて始めたプロジェクトです。
経済的な理由で部活を諦めてしまったり、部活ができない小学生に対して、奨励金を届けています。

高校生には奨学金や、スポーツが得意であれば特待生の道もあります。ところが、小学生には両方ともありません。おまけに、普通の子どもが部活やスポーツをすることには、国の補助はついていません。

そこで、ユニフォーム代や合宿代など、部活や習い事を始めるにあたって必要な金額を助成しています。また、習い事を続けるためにも使えるようにもなっています。2016年にスタートし、毎年20人、これまでに60人の子どもに5万円の返済不要の奨励金を届けてきました。

──すばらしいですね。

(「習い事奨励金」を受けた子どもからの感謝の手紙)

子どもの成長には「体験」が不可欠

(「習い事奨励金」を受けた子どもの母親からの感謝の手紙)

小山:
子どもの成長には、衣食住だけでなく「体験」が非常に大切です。

「子どもの貧困=経済的な貧困」と考える方が多いですが、実際は住居・文化・情報・教育・栄養・就労・安全・精神と、それぞれに不足しているのです。そして、体験の機会が少ないと、成長した時にも弊害がでてきます。それぞれの不足に対して少しでもお手伝いできるように、今できることをお母さんたちと一緒に考えて、作っています。

──文化の貧困というのは…?

小山:
これも体験の1つかもしれません。周囲の人は、文化としてごく普通に行っていることなんだけど、機会が少なかったり、知らなかったりと、様々な理由で出来ない子どももいます。

たとえば、赤ちゃんの頃からプラスチックのフォークやスプーンで食事をしていたので、小学校にあがって初めて木製のお箸を見た子どももいます。

家にお風呂がなく、健康ランドや銭湯へ行くことが、お風呂で、日常的に体を清潔にするということを知らず、体を清潔にすることはイベントごとだと思っていた子どももいました。

文化を知らないと言うのは決して悪いことではなくて、機会がなかっただけのこと。お母さんとしては本当はやってあげたいけれども余裕がなくてできなかったということもあるし、お母さん自体も知らずに成長してきたということもあります。

NPOとして、こうした文化の貧困、情報の貧困などを考えているのは珍しいかもしれませんね。衣食住はもちろんですが、子どもの将来の備えとして「体験の格差」を埋めていくことができればと思っています。

(奨励金を得て、夢だったというダンス教室に通う女の子)

シングルママと子どもが共に楽しめるイベントを主催

(過去開催した「田舎体験」のイベント。自然の中で、鬼ごっこをして遊ぶ子どもたち)

小山:
いろんな体験をしてもらいたいという思いから、BBQや社会科見学、旅行など、お母さんとお子さんが楽しめるイベントも、毎月最低1回は実施しています。

お母さん一人だとなかなか野外でBBQは難しいですし、遊園地などは費用がかかってしまいます。NPOが主催すれば、大きな負担なく楽しむことができるので、とても喜んでもらっています。子どもたちもお母さん同士も交流の場になっていて、情報交換やお友達作りの機会になっています。

──素敵ですね。ほかには、どんなイベントがあるんですか?

小山:
毎月、プロのセラピストによる無料マッサージも開催しています。本格的な施術なので、「月に1度の天国です」「自分の身体に向き合える唯一の時間です」と大好評です。マッサージを受けている間は、お子さんもお預かりしています。

──ほっとできる空間があることで、また明日からがんばろう!と前向きな気持ちになれますね。

(月に1度の無料マッサージは、プロのセラピストが担当する)

住まい探しをサポート、
「人生の基盤づくり」を手助けする

(リトルワンズがサポートした家で暮らす子どもが描いた絵。新しい家で笑顔でくつろぐお母さんと自分が描かれている)

──住まいのお手伝いについても教えてください。

小山:
住まいの事業は、6年前から始めています。アパート、シェアハウス、一軒家や敷金礼金なし、保証人の入らない部屋など、ご家庭の要望にあわせて無料で物件を探し、マッチングしています。

DV(家庭内暴力)から逃げているお母さんの「このエリアには住むことが難しい」といった要望や、「子どもの学校がこの辺りだから、この近くに住みたい」などといった、ご家庭それぞれのご要望に応えられるような物件を、協力してくださっている不動産ともデータベースを共有し、活用しながらご案内しています。

東京都の指定居住支援法人にもなっていて、母子家庭に特化した団体は日本唯一と聞いています。始めた当初から比べると国や自治体の認知度も高まっていますし、協力してくださる不動産店も増えてきました。

──この事業を始められた背景にはどのようなことがあったのでしょうか。

小山:
シングルママは、家賃や保証人の問題から、部屋を借りるハードルが高くなります。保証人の代わりに保証会社をつけることもできますが、それも高額です。

また、働きながら子育てをする必要があるので、保育園や学校、働く場所が近くに無いと物件として成立しません。このような条件に合った部屋を探すのも容易ではありません。単に部屋を紹介するだけでなく、仕事や生活の相談なども合わせて提供しています。

家賃のことだけを考えると田舎に部屋を借りるのが良いですが、そうすると今度は仕事と子どもたちの学校が近くになくて、お母さんが孤立したり、住む場所はあっても生活することが難しい状況になりかねません。

家賃は高くなっても、都市部で暮らし、職場や子どもの学校が近くにあるということで得られるメリットや安心は大きいです。都市で暮らす母子家庭に向けた、都市型モデルの事業ですね。

──なるほど。

小山:
今では、東京都、関東にお住まいであればたいていのニーズにお応えできるようになっています。最短で3日でお部屋が決まった例もあります。

家は屋根と寝床だけではなく、生活の基盤、安心の場所でもあり、子どもにとっては成長する場所。家の支援は単なるマッチングだけではなく、お母さんとお子さんの人生の基盤づくりをお手伝いすることだと考えています。

(7歳の子どもが描いた「お母さんと自分」)

明るく、ポジティブなメッセージを発信したい

(「田舎体験」のイベントでは、田植えにも挑戦。参加した皆さんと賑やかな時間を過ごした)

──小山さんが、活動の中でやりがいを感じるのはどんな時でしょうか。

小山:
活動を始めて10年になるので、団体の活動初期から見てきた子どもたちも成長しました。今年は大学受験する子も出てきて、歳月の早さに本当に驚きます。

相談やイベントでやってきたお子さんが、最初は他人行儀だったのに、だんだん打ち解けて子どもらしい質問を投げかけてくれたり、寝転がって遊んでいる姿を見ると、「安心できたんだな」と嬉しくなります。

私もスタッフも、子どもたちが元気に大きくなることが、なによりの楽しみです。お母さんたちから「安心して暮らしている」とお便りをいただくのも、大きな励みになっています。

私個人としても、支援をしているというよりも、お母さんや子どもたちと一緒に作り、ともに成長している感じです。お母さんたちから教えてもらうこともたくさんあります。子どもからの声に、気づかされることも多いです。お互い「よかったね!」ということを共有できるのがいいなと思っています。仲間やスタッフが「やってよかった!」寄付をしてくださる方が、「寄付してよかった!」と言ってくださるのも、ありがたいですね。

──素敵な関係性ですね。

小山:
シングルママに対して「かわいそう」「ダメな人」という言い方や扱いを、私たちはしません。いわゆる可哀そうアピールは、メッセージが強いので、寄付が集まります。一方、「かわいそう」と言われた本人は大きく傷つきます。

子どもたちも、大人になったときに気づいて傷つくでしょう。私たちは、可哀そうアピールをしないように、情報の伝え方には最大限の工夫をしています。また、支援をする側、される側というよりも、いつもフェアなおつきあいをするということを心がけています。

(クリスマス会での1枚。サンタクロースに大喜びの子どもたち)

チャリティーで、新一年生の子どもたちにピカピカのランドセルを届けます!

(ピカピカのランドセルを背負い、うれしそうな子どもの後ろ姿)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

小山:
4月に小学校に入学する母子家庭の子どもたちに、新品のランドセルを届けてあげたいと思っていて、チャリティーはこの購入資金としたいと考えています。

ランドセルの寄付自体は昔からあるのですが、いただくランドセルのほとんどは中古品です。みなさんキレイにしてから送ってくださって本当にありがたいのですが、現在の日本では、入学のお祝いとしておじいちゃんおばあちゃんがピカピカの新品のランドセルを贈るのが当たり前になっています。

そうした中、中古品を送ると、いくらきれいな中古ランドセルでも、新品に比べれば、見劣りしてしまいます。新入学で、新品と中古の差に気づいてしまって、「自分だけ違う」「ボクのは古い」と泣いてしまう子もいました。

ランドセルは、子どもたちにとってはただのカバンではなく、新しい人生の象徴です。学びに行くための必需品です。
なので、なんとか子どもたちの声に応えようと、少ないですがこれまで新品の文具・ノートと合わせて新品のランドセルを届けてきました。今後、もっと多くの子どもたちに新品のランドセルと文具を届けたいと考えています。

(ランドセルと文具、洋服をセットにしてプレゼント。箱を開けた時の子どもたちの歓声と笑顔が聞こえてきそう!)

小山:
ランドセルと文具を送ってくれる大人、子どもたちの門出を祝ってくれる大人が増えてくださればと願っています。子どもは未来の主人公でもあり、わたしたち大人の未来の後輩です。桜の下で待っている小さな後輩の小さな一歩を、どうぞ応援してあげてください。

──貴重なお話をありがとうございました!

(リトルワンズのスタッフの皆さん。リトルワンズを訪れた国連賞視察団の皆さんと)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

日本では見えづらい「シングルママの苦悩」と「子どもの貧困」。
「かといってすべて見えるようにすることが良いとは思っていません。目に見えない部分を想像してもらえれば。子どもの貧困のニュースで聞いて、『そうなんだ』で終わらせないで、『インフルエンザが流行っているけれど、お子さんは大丈夫かな』と子ども目線で考えてくれたら嬉しい。そして、もし機会があったら、手を差し伸べてほしい。そういうことが当たり前に出来る世の中になれば」とインタビューの最後におっしゃっていた小山さんの言葉が、強く印象に残りました。

春、新しい生活をスタートさせる子どもたちの門出に華を添えるピカピカのランドセル。チャリティーアイテムで、彼らの新たな出発を共に応援してください!

・リトルワンズ ホームページはこちら

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生活に必要な衣食住のアイテムや文化的な体験を象徴するアイテムを描き、子どもの成長になくてはならないものの存在を表現しました。

“Little things are big”、「小さなことの積み重ねが、大きなことになる」というメッセージを添えました。

Design by DLOP

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