CHARITY FOR

農業を通じ、障害のある人もない人も、ともに楽しく暮らせる地域を目指す〜ごきげんファーム(NPO法人つくばアグリチャレンジ)

茨城県つくば市に、障害のある人たちが働く農場があります。その名は「ごきげんファーム」。障害のある人たちが排除されることなく、地域と深く関わりながら楽しい生活を送ってほしい。そしてまた、担い手不足の地域の農業を守りたい。そんな思いで始まったごきげんファームでは、現在100名以上の障害のある人たちが働いています。

農場からスタートし、現在はレストラン、そして養鶏場と、地域に密着し活動を広げているごきげんファーム。

「福祉の世界では、“どう社会とつながっていくか”が大切なテーマ。障害のある人とそうではない人との良い接点を、地道に丁寧に、いろんな場所で作っていきたい」と話すのは、代表の伊藤文弥(いとう・ふみや)さん(30)。

「地域の中で、応援してくれる人を増やしていきたい」と語るごきげんファームの活動について、お話をお伺いしました。

(「ごきげんファーム」代表の伊藤さん。ご家族と)

今週のチャリティー

ごきげんファーム(NPO法人つくばアグリチャレンジ)

農業を通じて「障害のある人がごきげんに暮らせる地域」を目指し、地域の耕作放棄地を使った野菜の収穫・販売をするほか、地域の農家の手伝いや体験農園などを運営するNPO法人。現在は100名以上の障害のある人が働いている。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

「社会課題と自分とは無関係でない」と感じたことが、活動のきっかけ

(キャベツの定植作業中、大角豆の圃場にて)

──今日はよろしくお願いします。まずは、ごきげんファームについて教えてください。

伊藤:
ごきげんファームでは現在、50品目、120種類の野菜を、100人を超える障害のある人たちや就労困難者と一緒に、地域の使われていない畑を借りて育てています。18歳から73歳までのありとあらゆる障害のある人たちが、それぞれの力を活かせるように工夫しながら、作った有機野菜を地域の方たちに直接配送したり直売所に卸したりしています。

「ごきげんファーム」の名の通り、障害のある人たちが元気に明るくごきげんに暮らすことが僕らの事業の価値だと思っています。

(毎週7〜8種、旬の有機野菜をお客様へ直接配送。近隣の地域にはトラックで直送している)

──活動のきっかけは?

伊藤:
大学時代、僕は政治家になりたいと思っていました。
ある議員の方の元でインターンをしていた時に、そこで発達障害の子どもたちのいじめや不登校の現状にについて調べる機会があったんです。今から10年ほど前の話です。

──まだ、発達障害について今ほどは知られていなかった時期ですよね。

伊藤:
そうですね。調べていくうちに、自分の身近な人が発達障害であることがわかりました。それまで社会課題と自分とは関係ないと思い込んでいましたが、実は自分が当事者の一人だったんです。社会課題と自分は、無関係ではない。そう感じたことが、障害のある人の問題に携わるようになった大きなきっかけです。

──そうだったんですね。

伊藤:
障害を持ちたくて生まれてきたわけではないのに、現在の日本では、障害があることによって本人やその家族が肩身の狭い思いをします。障害がある人への理解が進むことで、障害が当たり前のこととして受け入れられ、皆が明るく生きられる世の中を作っていきたいと強く思っています。

(障害のある人もない人も、みんなそれぞれに目的や思いを持って働くごきげんファーム。時にはぶつかり合うこともあるが、仲良く楽しく、生き生きと働いている)

農場にとどまらず、レストランや養鶏場を運営。
地域の人たちと顔の見える付き合いを

(ごきげんファームで採れた新鮮野菜が食べられるレストラン「ごきげんキッチン」。すぐ隣に畑が隣接しており、スタッフも一緒に手入れする。庭には地域の方々と作ったウッドデッキがあり、イベント時には憩いの場に)

──農場のほかにレストランや養鶏場も運営され、様々なイベントも開催されています。

伊藤:
「ごきげんキッチン」は、たくさんの人にごきげんファームで育てた自然の恵みたっぷりの野菜が食べてもらいたいとオープンしたレストランで、地域の人々が自由に集い、つながれる場です。

(「ごきげんキッチン」オープンから14時まで提供しているランチ。3段重に野菜たっぷりのおかずとメインのお料理、スープ、デザートがつく。ランチタイム後、15時からはパンケーキなどカフェメニューが楽しめる)

──素敵ですね!

伊藤:
さらに2018年に入ってからは、平飼い養鶏に取り組む「ごきげんファームかみごう」をオープンしました。もっとたくさんの障害のある人たちを受け入れられる体制を整えたいと試行錯誤を重ねた施設です。
「障害のある人への理解を深めましょう」と言っても、人は集まりません。収穫祭をやったり、マルシェを開催したり…。地域で、僕たちの活動を応援してくれる人が増えるようなイベント、関係性を耕してくれるようなイベントを数多く開催しています。

大人から子どもまで、楽しみながら、障害のある人と一緒に過ごすことへのハードルを自然に下げられたらと思っています。そして、障害のある人たちがごきげんに働き、地域の人たちもごきげんになる。そんな場を目指しています。

(「ごきげんファームかみごう」では、鶏にストレスを与えない平飼いの養鶏を行う。おいしい野菜と良質な水を栄養にすくすく育った鶏の卵は、8月頃採卵予定!)

他の人と「接点を持つ」ことに関して、農業は優秀なツール

(野菜の摘み取り体験イベントにて。ブースでお客様を待っている際の一枚!)

──なぜ、農業だったのでしょうか?

伊藤:
「接点を持つ」ということに関して、農業はすごく優秀です。農業体験をしたい人はたくさんいるし、野菜ほど皆が必要としているものもありません。人と人とがつながり合っていく、そして同じ空間を体験し合っていくという意味で、農業はすごく良いと考えています。

効率だけを重視した結果、日本は障害のある人を隔離してきたという歴史があります。その方が効率的だという考えでしたが、障害のある人を隔離することは、健常者との壁を大きくしてしまいました。接点も何もないまま、偏った情報や固定概念で、溝が深まってしまいました。

言葉で表現しづらいのですが…、隔離することが、本当に効率的なのかな?と疑問を持つようになったんです。たしかに効率的な部分もあるかもしれませんが、健常者との間に溝が深まることのデメリットもたくさんあります。
だったら、一緒に混じり合った方がおもしろい。混じり合うことによって得られるメリットもたくさんあると思ったんです。

農業は、「地域の人たちと一緒にできる」という良さがあります。この「一緒にする」ということ、互いを知るということが、すごく大切だと思っています。

(農作業中はみんな真剣そのもの。休憩中やイベントの際は、屈託のない笑みがこぼれる)

「お金を稼ぐ」ことだけが目的ではない。
障害のある人が「社会の役に立っている」と実感できる場を

(地元の農家さんのお仕事を手伝う「農業ヘルパー」の様子。「最初は不安だったと思うが、スタッフのこともよく気にかけてくださり、少しずつ責任のある仕事を任せていただけるようになってきた」と伊藤さん)

伊藤:
でも実は、これはやっている途中で気づいたこと。最初はいかに売り上げを上げて、雇用する障害のある人たちの工賃を一円でも増やせるかが大事と思って活動していましたから(笑)。でも、障害のある人たちの工賃を上げる役割は、大きな企業が担うべきだと思っているんです。僕たちのような小さな団体の役割は、僕たちのできること、つまりかなり絞った雇用をするべきだと考えています。

──というのは?

伊藤:
障害のある人の中には、重度の障害のため働く場所だけでなく、居場所もない人たちがいます。そんな人たちも「社会の役に立っているんだ」と実感を持ってもらえるような、生きている意味を見いだせるような、そんな場所を作っていきたいと思っています。

──なるほど。

伊藤:
障害のある人が何にどう幸せを感じるかは、その人の障害や年齢によっても変わってきます。過去に僕たちのところで働いている人やその家族の方に何に困っているかアンケートをとったことがありました。すると、お金よりも友人関係や家族関係で困っている人の方が多かった。

私たちのような就労継続支援B型施設の1ヶ月の給料が1万円や1万5千円。そんな話を聞いて、活動を始めた当初は「信じられない」と感じていましたが、「お金を稼ぐ」ことだけが必ずしも彼らの目指す幸せではないんだと教えられました。この現実を目の当たりにした時、「彼らが困っていることに寄り添おう」と決心し、より地域の中で生きていくこと、地域の人と関係性を築きながら暮らしていくことを意識し、より地域に根付いた場所を目指して舵を切ることになりました。

「お金を稼ぐ」ということが第一の目標でなくなった時に、経営の面で捉えると少し甘さが出ます。それでも、たとえば地域の子ども食堂に野菜を提供したり、地域の人たちと一緒にイベントをしたりといったことには、お金には変えられない、すばらしい価値があると感じています。

(年に数回、地域の方やお世話になっている方たちに感謝を込めて、「流しそうめん大会」「収穫祭」「餅つき大会」など様々なイベントを行っている。ファームスタッフ(障害のあるスタッフ)も運営に参加し、たくさんの方に楽しんでもらう)

福祉施設が「地域の困りごと」解決の場に

(事務所の目の前に広がる体験農園。ゆったりとした自然の中で楽しく野菜づくりができる。畑の管理や代行サービスはごきげんファームが行なっている)

伊藤:
ごきげんファームでは野菜を育てるほかに、体験農園を運営したり、地元の農家さんのお手伝いをしたりもしています。

──農家の担い手不足というのが、背景にあるのでしょうか?

伊藤:
担い手不足も一つありますが、もう一つは農業というのは季節労働が多いんですね。収穫の時期は人手が必要だけど、それ以外の手入れは一人でできてしまう。そうすると、常時人を雇用するのは難しいですよね。そんな時にお手伝いは重宝してもらえます。付き合いが長くなるにつれて、農家さんも責任のある仕事を用意してくれます。

農業従事者が減り、また労働人口自体も減っていく中で、仕事を求める障害のある人と、地域の農業をつなげ、問題を解決していく。「農業×福祉」(農福連携)には、まだまだ大きな可能性があると感じています。

──どちらも「地域」が共通項というか、キーワードになっていきますね。

伊藤:
そうですね。農業の意味は「=食料をつくる」だけでなく、景観だったり水だったり、その土地の生態系だったり…、その地域の様々な要素が絡み合ってきます。

緑を見て自然と心が癒されるように、農業にはその職業以外の「地域の豊かさ」を感じられるという価値があります。「農業は大事」、それは多くの人たちが認識していることだと思いますが、その維持が難しくなっている。そこに福祉が乗っかった時、担っていくことができる可能性はまだまだたくさんあると感じています。

(野菜づくり講習会での一コマ。野菜の植え付けや管理方法を、職員がひとつひとつ丁寧に説明する)

「地域で暮らす一人ひとりが変わることで、
社会が変わっていく」

(にんじん畑にて。しぼりたての無添加人参ジュースはごきげんファームの人気商品)

伊藤:
僕がこの活動を始めた当初は、社会を変える活動をしている社会起業家に憧れました。でもわかったことは、社会っていうのは、基本的には変わらないんです。「社会が変わる」ことはすなわち「地域が変わる」こと。それは「地域で暮らす一人ひとりが変わっていく」ことなんです。

国が政策を打ち出すと、一瞬社会が変わったような錯覚を覚えます。法律によって障害者雇用は増えましたが、実際の人々の認識はどうでしょうか。「法律で雇わなきゃいけないから雇う」「障害者は面倒くさい」、そんなマイナスの認識が広がっているように感じます。

障害のある人に対する認識をプラスに変えていくというのは、決して楽ではないし、地道な作業です。でも、その拠点を増やしていかないことにはその認識は広がっていかない。少しずつ、一人ひとりの認識を変えていきいと思っています。

(ごきげんファームで採れた野菜を配達するトラック)

──今後の目標はありますか。

伊藤:
事業を整備した後、これをいろんな地域でやっていきたいと思っています。
働き口のない障害のある人たち、そして担い手のいない農業。これは何も茨城に限った問題ではありません。福祉施設が地域の困りごとを解決し、また人と人とをつなぐ場所になっていく。
そんな福祉施設を全国に増やせていけたらと思っています。

──素晴らしいですね!

(2017年に開設した「ごきげんファーム茎崎」では、米作りを行う。初めての稲刈りも皆で協力して行った)

チャリティーで、ファームで採れた新鮮お野菜が食べられる「ごきげんキッチン」に小屋を作りたい!

(毎年冬に開催する「餅つき大会」での一コマ。野菜販売で、地域の方たちに野菜を手渡し。イベントは地域の方との会話はもちろん、つながりが生まれる大切な場所だ)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

伊藤:
障害のある人たちがごきげんに働き、そうやって育てた野菜や卵を食べてくださった方たちや、関わった方たちもごきげんになってほしいと思っていて、現在もいくつかのプロジェクトが進行中です。
今回のチャリティーは、ごきげんファームで採れた新鮮な野菜を楽しめるレストラン「ごきげんキッチン」の外に、家族連れの方や障害のある方でも気楽に食事を楽しめる小屋を建てるための資金に充てたいと思っています。

ぜひ、チャリティーにご協力いただけたらうれしいです!

──貴重なお話、ありがとうございました!

(つくばの象徴・筑波山の神社での初詣にて、皆で記念撮影!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

2011年に「ごきげんファーム」を創業し、キッチン、養鶏場と活躍の場を広げている、代表の伊藤さん。話題は福祉だけでなく、地域のこと、人材のこと…多岐にわたり、とても興味深く楽しいインタビューでした!

どんな話題を切り取っても、伊藤さんの覚悟と信念、そしてこれまでのご経験で得てきた自信を感じ、そんなお話に触れながら「福祉×農業」、「福祉×地域」の可能性を、ものすごく強く感じました。

「地域の困りごとを、福祉施設が解決できる」。核家族や地域との疎遠が話題になる昨今ですが、福祉の現場が、地域の人たちが集い、つながり、互いを思い合う場になれば…、日本全国各地でそれが起きたら…、どんなに素晴らしい社会になるだろう。そう思うと、今からワクワクします!
まだまだ、私たちにできることはたくさんありそうですね!

・ごきげんファーム ホームページはこちらから 

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たくさんの野菜を描き、収穫の恵みを表現しました。
農作業を通じて、地域の人たちとの間に生まれる関係やそこから生まれる幸せも、大きな収穫のひとつ。幸せの種を植えていこう、そんなメッセージを込めています。
“Planting friendships to harvest happinesss”、「幸せを収穫するために、友情のタネを植える」という言葉を添えました。

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