CHARITY FOR

「もったいないのおすそわけ」。余った食べ物を引き取り、必要な場所へ届け、いのちをつなぐ〜NPO法人フードバンク関西

日本国内では、1年間に投入される食資源は9千万トン。そのおよそ1/3が食品廃棄物として排出され、その中でまだ食べられるのに廃棄されてしまう食品(食品ロス)は、年間500万〜800万トンに上ると言われています。日本のコメの収穫量が、年間約850万トン。つまり、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品の量と、コメの収穫量が、ほぼほぼ同じという現状があるのです。

「食は、いのちへとつながるもの。まだ食べられるのに廃棄されてしまう食べ物を、必要な人たちに届けたい」。そんな思いで活動をしているのが、今週、JAMMINが1週間限定でチャリティーキャンペーンを展開する『NPO法人フードバンク関西』です。

兵庫・神戸市にあるフードバンク関西の事務所にお伺いし、代表の浅葉(あさば)めぐみさん(70)にお話をお伺いしました。

(お話をお伺いした浅葉さん。フードバンク関西の事務所兼倉庫にて)

今週のチャリティー

NPO法人フードバンク関西

本来なら廃棄されるはずの食品を救出し、食料を必要とするところに無償で届け、「食品ロス」と「空腹の人」の両方を減らし、環境と人に優しい社会を目指して活動するNPO法人。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

まだ食べられるのに…。
様々な理由から廃棄される食品を企業から引き取る

(「フードバンク関西」の倉庫兼事務所の入り口)

阪神芦屋駅から徒歩五分。閑静な住宅街の中に、フードバンク関西さんの倉庫兼事務所はあります。中に入ると、たくさんの食べ物や飲み物が入った段ボールが、天井に届くほど積み上げられ、ところ狭しと並べられていました。

(天井まで高く積み上げられた段ボール。こちらはすべて企業からの寄贈だという)

様々な種類のお菓子や飲料、米や、冷蔵庫にはチーズなども入っています。聞くと、企業や個人から寄贈を受けた、販売期限切れや包装破損等の理由で商品としては扱えなくなった、あるいは個人で使いきれなかった食料品だといいます。

一体どのような食品なのでしょうか?浅葉さんに、尋ねてみました。

浅葉:
フードバンク関西では、生肉や生魚、牛乳などの日配品(鮮度が重要で、毎日店舗に配送される食品)を除く様々な食品を扱っています。いずれも賞味期限内の、れっきとした「まだ食べられる」食品です。

──まだ食べられるのに、なぜ廃棄される予定だったのでしょう?どのような背景の食品なのですか?

浅葉:
食品関連企業さんでは、配送途中に箱が壊れたり、ラベル印字ミスがあったりすると、それらの食品を商品として扱えなくなります。

また、店舗が決めた販売期限を過ぎてしまった売れ残り品は、賞味期限が切れていなくても店頭から回収されます。それらの食品は食べ物としては全く問題がないのですが、企業さんからすると、商品ではないので廃棄の対象になります。

「支援を必要とする人達に無償分配します」という約束のもと、企業さんとの間に信頼関係を築き上げ、こういった食品をフードバンクに寄付していただきます。

(お菓子や飲料水のほかに、乾麺やグラノーラ、お茶など、バリエーションも豊か)

浅葉:
また、一般の企業さんの「災害備蓄食品」もあります。災害時に備えて常備しておく食品ですが、もちろん賞味期限がありますよね。期限が近づいて備蓄品の交換のタイミングで、旧品を賞味期限前に引き取ります。

他には、「季節食品」もあります。
たとえば、クリスマスやひな祭りなど、季節のイベントにあわせて、限定パッケージの食品が販売されていますよね。賞味期限はまだまだ先ですが、イベントが終わると売れ残った商品がメーカーさんから提供されます。ちょうど今の時期は、3月3日にメーカーに返品になった「ひなあられ」が倉庫にたくさん積んであります。冬がシーズンの「鍋つゆ」なども売れ残った分を、春になるとメーカーさんから受け取っています。

──賞味期限内であれば、翌年にまた販売すれば良いと思うのですが…?!

浅葉:
毎年、中身やパッケージが少しずつ変わるので、前年の売れ残った分を保管して売るということはあまり無いようですね。

──なるほど。その分ロスが発生してしまうということですね。

(事務所では、ボランティアスタッフの皆さんが仕分けなどの作業中)

見栄えが悪ければ、味は全く同じでも廃棄の対象に

浅葉:
ほかには、「味にはまったく問題がないけれど、見栄えが悪くて売れない」という食品もあります。

たとえば、取引いただいている企業が製造しているスモークチーズの検品落ちのもの。6ピース入りやスライスチーズなどは、裁ち端などは再度練り直すことが出来るそうですが、スモークチーズは一旦燻製の香りや色がついてしまうと、再製品化するということができません。
スモークがまだらになったものは、見た目がよくないので検品の際はねられるけれど、味は正規品となんら変わらない。捨てるのはもったいないですよね。

──本当ですね。

浅葉:
皮が一部はがれた豚まんも、同じような理由で引き取らせていただいています。

豚まんを製造する過程で、隣り合った豚まんどうしの表面の皮がくっつき、剥がれてしまうということがたまに起きるそうです。味はなんら変わりませんが皮がはがれた豚まんは見た目が悪く販売することは難しい。かといって、捨てるのはもったいない。そんな食品を受け取り、福祉施設や子ども食堂、母子家庭などに届けています。

(こちらは個人から受け取った食品。地域の集まりなどで食べきれず余ったお菓子などを受け取ることもあるという)

食品ロスは、一般家庭やスーパーからも

(食べ物が余っている人も、食べ物に困っている人も。皆が笑顔になれるのが「フードバンク」の仕組み)

──食品の受け取り先は、食品メーカーからが多いのでしょうか?

浅葉:
スーパーや個人の方からも、販売期限を過ぎた食品や食べきれない食品の提供を受けています。

たとえば、私たちが活動を開始した当初から取引していただいている尼崎の外資系量販店からは、日々約200kgのパン野菜果物の売れ残りが出るので、それらを毎日受け取っています。

──200kgも?!

(事務所のホワイトボードには、今後の引き取り予定のスケジュールがぎっしり)

浅葉:
そうです。この店舗では、たとえばパンは、焼いて3日目が消費期限ですが、店頭に置くのは、焼いた当日とその翌日だけ。3日目を迎えるパンは、開店前に回収され、販売されません。

野菜や果物も、新しいものが入ったらどんどん入れ替えます。傷んでいなくても、古いものから順に商品棚から回収される。そういったものが店舗から提供されるので、フードバンクのボランティアが引き取って、必要としている人たちに届けることで、食品ロスをぐっと減らすことができます。

──個人からはどうですか?

一般家庭から捨てられる生ごみの4分の1が手つかずの食品で、その中のさらに4分の1は賞味期限が切れていないという調査結果があります。
家庭で出た食べきれない食品や余った食品を個人が持ち寄り、それを回収する「フードドライブ」という取り組みや、宅配による寄付の形で、食品を回収しています。

──味も賞味期限も問題ない食品を廃棄しなくて済むし、食に困っている人は食べ物を手にすることができる。すごく理にかなっているというか、すばらしいことですね。

(スーパー「ダイエー甲南店」での「フードドライブ」の様子)

「賞味期限」も食品ロス発生の原因のひとつ

浅葉:
日本の課題として、食品ロスが生まれてしまう理由はもう一つあります。食べ物に記載されている「賞味期限」をご存知ですよね。

──はい。それが何か関係があるのですか?

浅葉:
この「賞味期限」は、食品製造企業が設定し、ほとんどの場合この日までに食べてくださいねという「品質保持期間」の8割の日付に設定されているんです。

──賞味期限を少し過ぎたものを消費者が食べるかもしれないから、とあえて短く設定してあるんですね。たとえば製造から10日持つ食品であれば、ギリギリいっぱいの10日後ではなく8割、つまり8日後に賞味期限を設定して表示する、ということですね。

そうです。ただ、ここで問題なのが、食品に製造年月日は記載されていないということ。製造されたのがいつかわからず、賞味期限しか記載されていないのです。

──そこに従わざるを得ませんね。

浅葉:
もう一つは、食品流通業界の商い慣習である「3分の1ルール」というもの。
賞味期限は、商品としての食品の最終のデッドラインを示すものですが、食品業界では、製造年月日から賞味期限までの期間を3分の1ずつで区切って、「納品期限」と「販売期限」、そして「賞味期限」としているんです。

「納品期限」は、メーカーが小売業者に食品を売り渡す期限(製造から賞味期限までの3分の1以内)、「販売期限」は、小売業者が店頭に置く期限(多くの場合製造から賞味期限までの3分の2以内)です。納品期限を過ぎてしまった食品は、メーカーから小売へ販売できなくなり、販売期限を過ぎると小売業者が販売をやめてメーカーに返品したり廃棄したりするので、食品ロスにつながってしまうのです。

(「3分の1ルール」)

──確かに、1〜2年ほど持つような食材が、賞味期限があと2〜3ヶ月の状態では滅多に売っていないですよね。特売品コーナーにはありますが…。つまり、どこかでの段階で回収して、廃棄なのか、何らかの策が取られているということですよね。

浅葉:
そうです。ただ、納品期限切れであろうと販売期限切れであろうと、まったくの賞味期限内であることには変わりません。食べ物として、全く問題ないんです。

寄贈された食品は、無償で子ども食堂や福祉施設、
母子家庭など100箇所以上の場所へ

(活動を始めた当初、「フードバンク関西」の看板を掲げる。旧事務所にて)

──引き取った食べ物は、どんなところへ届けているのですか?

浅葉:
神戸や大阪を中心に、児童支援施設やホームレス就労生活支援団体、障がい者の通所作業所やDVシェルター、老人介護施設などの、支援を必要とする人達を支える福祉団体・施設、子ども食堂など100箇所あまりに月に1〜3回、無償で届けています。

一部は他のNPOと連携して貧困母子家庭約40世帯に毎月1回宅配で送ったり、行政からの支援要請を受けて、困窮する市民へ緊急支援食品として届けています。昨年度はこの緊急支援が521件もありました。

喜んでもらえるので、うれしいですね。

──廃棄される予定だった食品を引き取ることで、まず無駄を減らすことができる。さらにそれを必要な人に届け、食べ物をおいしく、ありがたく受け取ってもらえる。ダブルで嬉しいですね。

(食べ物を受け取った家庭の親御さんや子どもたちからの、感謝の手紙。「経済的に苦しいと、子どもにお菓子を買ってあげることはおろか、食材を買うことも難しい。私たちが食べ物を届けると、その中にお菓子を見つけて『クリスマスと正月が一緒に来たみたい!』と目を輝かせて喜んでくれた子がいたりして、やはりそんな姿を見ると、こちらもうれしくなる」と浅葉さん)

浅葉:
本当にそうです。食品を引き取る際に、企業や個人の方からも「捨てないで済んでよかった。ありがとう」と言っていただけるし、受け取った方からも「ありがとう」と言っていただける。食べ物を集めて回るのも、配って回るのもとっても楽しいです。食べ物は、いのちの糧です。それを最後まで活用することは、とても意義のあることだと思っています。

私たちのところに来る食品は、もちろん賞味期限内ではありますが、さきほどいった「納品期限切れ」や「販売期限切れ」のものも多く、「1ヶ月で配り切らなきゃ!」と倉庫内をボランティアがバタバタ走り回っています(笑)。
それでも、楽しみにしてくださる皆さんの顔を思うと、やっぱり嬉しいし、楽しいんです。

(フードバンク関西が食品を届けている大阪府内の子ども食堂。お腹いっぱいになって、とってもうれしそうな笑顔!)

──フードバンク関西さんは、どのように活動されているのですか?

浅葉:
2003年に任意団体として活動を始め、皆さまからの寄付に支援されながら、活動を続けてきました。
企業への食品の引き取り、また、新しい提供企業さんの開拓、受け取った食品の仕分け、福祉施設への配送などを行うスタッフは総勢80名で、皆ボランティアです。団体として安定した収入があるわけではないので、有給スタッフを雇うことは難しいです。

(ボランティアスタッフの皆さんの集合写真)

フードバンク活動が守られない、
日本の法律の現状

──こんなに素晴らしい活動なら、国が奨励してもっといろんな企業が取り組めば、食品ロスはもっと減らせるのではないでしょうか?

浅葉:
フードバンクに関しては、日本は実は後進国です。
アメリカ、カナダやヨーロッパ諸国、韓国では、食品メーカーに対して、食べられるけれど商品価値のないものは寄付を促すような法律(※)があります。
これは、困っている人たちが食べ物には困らないようにという福祉的な目的も含んでいるのかもしれません。フードバンクに余剰食品が流れるような仕組みがあるんですね。しかし、日本はこういった法整備がまだできていません。

──そうなんですね。

浅葉:
それから、もう一つ。たとえば、もし企業がフードバンクに寄付した食品で、何らかの事故が起きてしまった場合。
善意による活動で、もしも万が一のことが起きてしまった時、フードバンク先進国では、食品提供企業とフードバンクは免責される法律や公的賠償制度(※)があります。

しかし、日本には寄付をした企業や活動団体を守る法律がありません。日本がフードバンクの後進国にならざるを得ない一つの理由です。

(※)…アメリカ、カナダ:善きサマリア人法
韓国:食品寄付活性化に関する法律 生産物賠償責任保険制度
フランス:エネルギー転換法(食品廃棄の禁止) など

──何かあった場合の責任を考えると、善意の寄付より廃棄を選んでしまう…ということはありそうですね。

浅葉:
日本の食品自給率は、たった39パーセントで、足りない分を海外からの輸入に頼っています。また、貧困などにより満足な食にありつけない人たちがいます。このような現実があるのに、まだ食べられる、味も美味しく賞味期限も切れていない全く問題のない食品を次から次へと廃棄してしまっていいのだろうかという事がこの活動の根本の問題意識です。

──法律的な部分が整備され、活動が広がっていくと良いですね。

(食品を運ぶボランティアの皆さん。企業への引き取りや、施設や個人への配送、新規の引き取り先の開拓などもすべてボランティアスタッフが行っている)

チャリティーは、フードバンクの活動を支え、食べ物を必要な場所へ届けるための資金になります!

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

浅葉:
フードバンク関西の活動は、皆さまからの寄付で成り立っています。
フードバンクを続けていくために、倉庫を借りていますし、食品を引き取り、必要な場所にデリバリーするためには、ガソリン代や高速代など、多額の配送費がかかります。また新しい引き取り先や新規の提供企業を開拓するにも経費が掛かります。1つの福祉団体に食べ物を届けるには、様々な諸経費も含め、だいたい3,500円ほどかかっています。

今回のチャリティーで、30か所への食品配送経費として105,000円を集めたいと思います。ぜひ、ご協力いただけたらうれしいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(倉庫兼事務所前にて、ボランティアの皆さんと、「フードバンク関西」お揃いのエプロンをつけて。食品ロスを減らし、必要な人に食べ物を届けるため、ぜひチャリティーにご協力ください!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

フードバンク関西さんの倉庫兼事務所は、本当にいたるところに寄贈された食品が入った段ボール箱が積み上げられており、圧倒されるような光景でした。
その一つひとつが、誰かの手元に届き食事となり、いのちのもととなっていくことを思うと、本当に素晴らしい活動だと感じました。

誰しも、楽しかった食事やうれしかった食べ物の記憶ってあると思います。
廃棄されるかもしれなかった食べ物が、受け取った方たちの体の栄養となるだけでなく、心の栄養となっていく。ますますこの活動が広がっていけばいいなと感じました。

ぜひ、フードバンク関西さんの活動を、コラボアイテムを通じて応援してください!

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袋にいっぱい詰められた食べ物を、一人の人からもう一人へと手渡ししている様子を描きました。
食べ物をつなぎ、いのちをつなぐ「フードバンク関西」の活動をストレートに表現しています。

“Reduce food waste, provide food to people in need”、「食品ロスを減らし、必要な人に食べ物を届ける」。活動をそのまま、英語で表現したメッセージが入っています。

Design by DLOP

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