CHARITY FOR

フィリピン・セブ島の子どもたちに、人生を豊かに奏でる「音楽」を〜NPO法人セブンスピリット

「フィリピン・セブ島」と聞くと、リゾートをイメージする方が多いのではないでしょうか?

近年は欧米より安い語学留学地としても知られ、日本からも多くの人が訪れる場所ですが、リゾートや語学留学といった華やかな面がある一方で、隣接するスラムで、今日食べていくのがやっと、という生活する人たちがいます。

今週、JAMMINが1週間限定でコラボするのは、NPO法人「セブンスピリット」。
フィリピン・セブ島を拠点に、音楽を通じて子どもたちのライフスキル教育を行うNPO法人です。

セブンスピリットのスタジオに通う子どもたちの中には、スラム街で育ち、過去に物乞いや物売りをしていた子どもたちもいます。その日を生きていくのが精一杯、という生活の中で、中には貧しさ故に犯罪を犯したり、ドラッグに手を出してしまう若者もいるといいます。

「ただただその日のご飯を食べるがやっとの生活の中で、夢を持つことすらなかった子どもたち。音楽を通じて夢を持てるようになっただけなく、さらにその夢を叶えるためには自分がどう努力すれば良いのかまで、今はわかっている」。

そう話すのは、セブンスピリット代表の田中宏明(たなか・ひろあき)さん(37)。活動について、お話をお伺いしました。

(お話をお伺いしたセブンスピリット代表の田中さん)

今週のチャリティー

NPO法人セブンスピリット

フィリピン・セブ島を拠点に、音楽やスポーツを通じて貧困層の子どもたちのライフスキル育成を行うNPO法人。楽しみながら学べる環境をつくり、子どもたちの生きる活力や生きがいを生み出すべく活動している。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

ストリートチルドレンの子どもを集めて「楽団」を結成。
活動を始めた当初は、苦労の連続

(セブンスピリットの教室にて、鍵盤ハーモニカを練習する子どもたち)

──本日はよろしくお願いします。フィリピン・セブ島で子どもたちを対象に音楽教育をされているとのことですが、具体的な内容を教えてください。

田中:
子どもたちから成るオーケストラの楽団を作り、日々練習しています。
楽器を練習することで少しずつ上達することはもちろん、周りの人と協力したりコミュニケーションをとったりしながら、力を合わせて何か一つのことを成し遂げる体験は、子どもたちにとっても大きな糧になります。

今でこそみんな熱心に練習していますが、活動を始めた当初は、ずっと同じ場所に座っていることも、大人の話を聞くこともできず、途中で帰ってしまったり、喧嘩やトラブルが絶えなかったり、収拾がつかない状況でしたね(笑)

(活動を始めた当時はまだ楽器がなく、歌とダンスだけのクラスだった)

──最初は子どもを集めるのにも苦労されたのではないですか?

田中:
そうですね。団員を集めるために路上のストリートチルドレンに声をかけましたが、最初は子どもたちの親御さんの理解を得るのも一苦労でした。

活動から7年が経ち、子どもたちも変わったし、周囲の目も変わりました。音楽隊の認知度も上がり、最近ではいろんな場所に呼ばれて演奏することも増えてきました。活動当初は子どものオーケストラ楽団が珍しかったようですが、今は演奏自体のクオリティーを見て声がけしてくださる方も多く、音楽的な面でも期待されているなと感じています。

──すごいですね!

田中:
親御さんたちからの信頼も得ています。「子どもが外に出ていると、どこかでドラッグに手を出しはしないか、悪い人につかまりはしないかと心配だが、セブンスピリットにいると、音楽の練習をしているということがわかって安心できる」と話してくれるようになりました。

(セブンスピリットのレッスンに通う子どもたちが住んでいる地域のひとつで演奏会を行った時の様子)

空腹を紛らわせるため、ドラッグに手を出してしまうことも…。
セブ島のスラム街の現状とは

(スラムの路地の子ども)

──「セブ島」と聞くと個人的にはリゾート地のイメージが強いのですが、スラム街の現状について教えてください。

田中:
スラム街はいろんなところに点在しているのですが、僕たちがかかわっているスラム街は、狭い地域に1,000世帯ほどが密集して住んでいる場所です。
子どもが多く、日の光も当たらないような真っ暗な手作りの家、二畳とか三畳ほどのスペースに、家族5人6人がぎゅうぎゅうになって暮らしています。電気については、どこかから盗んできたものが多いと思います。

──どうしてそんな暮らしをしているのですか?

田中:
いろんなケースがあるとは思いますが、両親が教育を受けておらず、小学校に行ったか行っていないかという状況で、選択できる職業が限られてしまうというのが一つあります。父親が仕事に就いていないケースもありますし、なかには刑務所に入所しているというケースもあったりして、厳しい生活をしている人もいますね。父親に代わって母親が必死に働いても、家族を養っていくだけの十分な収入を得ることはなかなか難しい現状があります。

そんな生活の中で、犯罪やドラッグに手を染めてしまう子もいます。犯罪やドラッグが子どもたちにとって身近な存在というのはあるでしょうね。

──貧困の現状は理解したのですが、なぜ、ドラッグが日常と化してしまうのでしょうか?

田中:
最初に断っておくと、セブンスピリットに通っている子どもで、現在ドラッグをしている子どもというのは一人もいません。ですが、スラム街には今日食べるものがあるかないかの状況で、いつもお腹を空かせている子どもがいるのも事実です。

シンナーは、吸うと2〜3日は空腹を感じないのだそうです。ここではパンを一つ買うのと、シンナーを1回吸うのが同じ値段なんです。パンを一つ買って空腹を満たしても、2〜3時間後にまたお腹が空いてしまうけれど、シンナーを吸えば、より長期間、空腹を感じずに済みます。
空腹を紛らわせるために、友だちに勧められてなんとなく…という感覚で、ドラッグに手を出してしまう子どもたちがいるんです。

──空腹を満たすためにドラッグに手を出す…。つらいですね。そこが入り口になって、その後の人生を大きく狂わせるかもしれないのに…。

(スラムの路地裏)

「悪いことではなく、良いことで子どもを笑顔にしたい」

(レッスンで、嬉しそうな笑顔を見せる子どもたち。フィリピンの学校では音楽教育が重要視されておらず、今後はその普及にも努めていきたいと田中さんは話す)

田中:
悪い仲間とつるむようになると、学校に通わなくなる。また「学校に行くぐらいなら、働いてお金を稼いで来い」という家庭もあります。いずれにしても、教育の土台がないと安定した仕事に就くことは難しく、貧困は連鎖します。
また、何かやりがいをもって日々を生きることで、意識が変わっていくことってあると思います。僕たちは、子どもたちが情熱を注げる場所や機会を創り出したいと思っています。

──田中さんは、こういった状況を変えていく手段として、どうして「音楽」を選ばれたのですか?

田中:
きっかけはいくつかあるのですが、ひとつ大きいのは、旅行で訪れたベトナムでの経験でした。
友人がストリートチルドレンの子どもに財布を盗まれたんです。子どもたちが走り去るのも見ていたんですが、ものすごいキラキラした笑顔だったんですね。「犯罪を犯しているのに、どうしてあんなに笑顔ができるんだろう」と思いました。それで、気づいたんです。彼らにとっては、それが犯罪かどうかより、お母さんを喜ばせてあげることの方が重要なんだ、と。

「あんなキラキラした笑顔を見せるんだったら、悪いことではなく、良いことをして笑顔が出せたらいいのに」とその時思ったのが、一つのきっかけですね。

音楽は、教育とかワクチンとは異なり、すぐにわかりやすい結果が出るものではないですし、実際に見てみないとピンとこないものかもしれません。でも、練習をすればそれだけ上手になるし、一生懸命打ち込むことで得られるものはとても大きい。
音楽を通じて変っていく子どもの姿を、日々目の当たりにしています。

(一つのことに打ち込む経験が、子どもたちの未来を育む)

「レッスンに通うなら、学校にも通うこと」が唯一条件。
楽しさと厳しさのメリハリをつけながら、子どもを指導

(全体練習の様子)

──セブンスピリットの実際のレッスンについて教えてください。

田中:
レッスンは無料ですが、一つだけ条件をつけています。「レッスンに来るなら、必ず学校にも通うこと」。楽器を演奏したいばっかりに、頑張って学校に通う子どももいます(笑)。
週一の休み以外は、それぞれ楽器のパート、歌やコーラスなどに分かれて2時間のレッスンが組まれています。週に2、3日は全体練習の日を設け、みんなで演奏を合わせる練習もしています。

──通っている生徒はどのくらいいるのですか?

田中:
7歳から18歳までの子どもが、現在65人います。

──それぞれ担当の楽器があるということですが、その担当はどうやって決めるのですか?

田中:
本人の希望は聞きますが、チューバやトロンボーンなど低音を出す大きい楽器は適正もあるので、体の大きさや口のかたちを見て判断することもあります。あとは、オーディションもやります。

──オーディションですか?!

田中:
「みんなで仲良くやろうね」ではなくて、時には競争も必要だと思っています。切磋琢磨じゃないですが、互いに良い影響を与えながら成長できる場であればという思いからです。一度ひとつの楽器を担当すると愛着が湧くのか、最初は思い通りの楽器じゃなくても、その後はずっとその楽器を続けていることが多いですね(笑)。

(練習以外の時間は、スナックを食べたりみんなで一緒に遊んだりと楽しく過ごす。子どもたちにとっても居心地の良い場所だ)

音楽を通じて積み上げる「成功体験」が、
子どもたちに変化をもたらす

──これまでの生徒の中で、最も印象に残っている子どもはいますか?

田中:
現在14歳になる「インジュン」でしょうか。リコーダーやトランペットをやっている子です。僕たちのところに来るようになってもう5年なので、生徒の中でも最も長い付き合いの男の子です。出会った当時、彼は路上で物乞いをしていました。「お父さんお母さんが死んでしまった」と嘘をつき、同情を得てお金を得て生活していたこともあったようです。

(トランペットを練習中。手前がインジュン君)

田中:
当初は嫌々参加していたようですが、リコーダーが上達するにつれて周りの人に褒められるのがとても嬉しかったみたいです。ある時開催したコンクールで、彼は1等賞をとりました。みんなの前で自分の名前が一番で呼ばれた時、彼はすごく嬉しかったんだと思うんです。

練習の積み重ねで意識が少しずつ変化していったのか、今はすごく正義感の強い男の子になりました。「将来は消防士になりたい」と語っています。
彼だけではありません。スラムに生き、これまで「がんばったことに対して報われる」という成功体験を経験しなかった子どもたちが、音楽を通じて成功体験を積み、自信を得て、未来へと希望を抱いたり、周囲へ気遣いをするようになるんです。

──音楽をやる中で、少しずつ意識が変化していくんですね。

田中:
そうですね。インジュンは、「今度は僕が誰かを助けたい」と彼は言っていました。音楽を通じて、すばらしい空間をたくさんの人と共有したからこその変化だと思っています。

(演奏会前は、練習にも一段と熱が入る。吹奏楽クラスの練習の様子)

音楽を続けることが、
やがて生きていく上での大きなモチベーションにも発展する

(2017年にはクラウドファンディングでお金を集め、長年描いてきた夢である日本での演奏を実現させた。日本への渡航は、レッスンに通う子どもたちにとって「夢はかなえることができる」という自信や希望にもつながったという)

──各地で演奏することも増えてきたということですが。

田中:
ありがたいことに引き合いが多く、たくさんの人の前で演奏することが増えてきました。自分たちの演奏が喜んでもらえることや、舞台の上で注目されること、拍手をもらえることが、子どもたちにとって大きなモチベーションにつながっています。

──素晴らしいですね。何か今後の目標はありますか?

田中:
今後は、もっと活動の幅を広げていきたいですね。
実は今、私たちのところへ通う生徒のうち2人が、音楽で優秀な成績を納め、授業料免除で高校へ通っているんです。フィリピンのいくつかの大学には楽団があって、楽団のオーディションに受かると、大学の授業料が免除になるんです。音楽を続けることで大学にまで通うことができたら、子どもたちに対して「努力次第で自分のやりたいことは叶えられる」という証明にもなります。

(日本での演奏会では、歌やダンスも披露した)

田中:
「大学進学」という、スラムに生きる子どもたちにはなかった夢を与えられたらと思っています。
もう一つは、フィリピンの子どもたちが音楽教育を受けられる場所をもっともっと増やしていきたいということ。いずれセブンスピリットから羽ばたいた子どもたちが音楽講師として働くことができれば、彼らの職にもつながります。音楽を通じて、楽しみながら各々の「生きがい」を見つけてくれたら、嬉しいですね。

(音楽を通じて様々なことを学び、成長する子どもたち)

チャリティーは、楽団のお揃いのステージ衣装の購入費用になります!

(日本での演奏会の一コマ。たくさんの人の前で、ずっと練習してきた曲を披露!)

──最後に、今回のチャリティーの使途を教えてください。

田中:
ありがたいことに人前で演奏させていただく機会が増えてきました。他の楽団と共演したりすることもあるのですが、私たちの楽団には、お揃いのステージ衣装がないんです。
今はお揃いのポロシャツと、それぞれ自分たちの黒っぽいズボンでステージに立っています。今回のチャリティーで、演奏だけでなく見た目もカッコよくビシッと決められるお揃いのステージ衣装を購入したいと思っています。

──どんな衣装ですか?

田中:
黒のジャケットとズボン、インナーには白か黒のシャツを合わせた、フォーマルな衣装を予定しています。靴も黒でシックに統一したいのですが、革靴だと高くなってしまうので、プラスチック製の軽くてカポッと履けるタイプのものを揃えたいと思っています。価格は一式で3,000円ほど。今回のチャリティーで、大きめのステージに立つ際にも対応できるよう、33人分の衣装費・10万円を集めたいです!
ぜひ、チャリティーにご協力いただけたらうれしいです。

──子どもたちのモチベーションがまた一段と高くなりそうですね!貴重なお話、ありがとうございました!

(レッスンに通う子どもたちやスタッフみんなで集合写真!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

姪っ子が楽器を習っています。練習風景は時に凄まじいです。泣きながら練習しているのを見ると「やめたらいいのに…」とさえ思ってしまいます。が、本人はとにかく、人前で披露したり、「上手だね」「すごいね」と褒められるのが嬉しいらしく、特に発表会は、きれいにおめかしして、ピカピカの靴を履いて、たくさんの人から拍手をもらい、本当に嬉しそうにしています。

「楽しいこと」や「やりがい」があれば、辛い時を乗り越えられる。音楽に限らず、何かに打ち込んだ経験は、必ずその後の人生で成長と自信へとつながります。スラムに生きる子どもたちにそんな機会を提供するセブンスピリットさんの活動は、本当に素晴らしいなと感じました。

音楽好きな方、セブ島好きな方、楽器を演奏している方…!是非、今回のチャリティーで子どもたちの楽団と、そして彼らの未来を応援してください!

NPO法人セブンスピリット ホームページはこちら

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子どもたちが演奏する楽器をヴィンテージ調のタッチで描き、子どもたちに大人にも劣らない未来への可能性があることを表現しました。

“Play your own music, it makes your neighbors happy”、「あなただけの音楽を奏でて。それは周囲の人たちをハッピーにするよ!」という文言には、音楽だけでなく、自分だけの人生を自ら切り拓くことで、周囲の人をも幸せにできるんだ、という思いを込めています。

Design by DLOP

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「未来をつくるプロデューサー」パシフィックコンサルタンツ株式会社。
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