今週、JAMMINがコラボするのは、NPO法人love Five(ラブファイブ)。
保護犬猫の新しい里親を探し、譲渡する活動を2011年より続けています。
その譲渡数は、1ヶ月に150頭にも上り、活動開始からこれまでに8,000頭以上の犬猫を、里親に譲渡してきました。一頭でも多くの犬猫を里親さんに引き渡して、幸せにしてあげたい」。そう話すのは、LoveFive代表の吉井純也(よしい・じゅんや)さん(34)。
今回は、LoveFiveが保護犬猫の譲渡を行っている大阪・鶴橋にある「保護犬カフェ」にお邪魔して、ご活動についてお伺いしてきました!
(お話をお伺いした吉井さん。大阪・鶴橋にある「保護犬カフェ」にて)
NPO法人LoveFive(ラブファイブ)
大阪を拠点に、不幸な犬猫を1頭でも救うため、適正飼養や終生飼養の啓発のほか、飼育放棄などで精神的に傷ついた犬猫のケアを行い、「ふれあい譲渡会」や「保護犬カフェ®」を通じて、新しい里親を探す活動を行っているNPO法人。
INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
(鶴橋の「保護犬カフェ」にて。これまでに保護した犬の写真が壁に飾られている)
──まずは、ご活動について教えてください。
吉井:
私たちLoveFiveは、動物愛護譲渡促進団体として、保護した犬猫の譲渡活動に最も力を入れて活動しています。
法人化したのは2012年の8月ですが、その前年に任意団体を立ち上げ、公園などで地道に譲渡活動を続けてきました。活動から6年経ち、譲渡数は、8,000頭に上りました。
──かなり多い数ですね。
吉井:
そうですね。1日でも早く、1頭でも多くの犬猫を譲渡していきたいと考えて活動をしています。
保護の対象は、保健所に収容されている犬猫や一般家庭から飼育放棄された犬猫、ブリーダーの繁殖引退や多頭飼育崩壊の犬猫などです。
命の危険に晒されている仔のほか、「今すぐ助けないと命に危険が及ぶ」という緊迫した状況ではないかもしれませんが、閉ざされたゲージの中で一生を終わりかねない仔、十分に愛されないままに命を終えていく仔たちなどを、家族の一員として可愛がってくれる里親のもとに譲渡したいという思いでやってきました。
(「保護犬カフェ」にて。人懐こく愛らしい無邪気な姿に、こちらまで癒される)
吉井:
現状に対して、「ペット業界が良くない」や「行政が悪い」「生体販売をやめるべき」などの批判の声がありますが、ただ漠然と批判をしても、現状は変わりません。
まずは自分の知識を精査し、問題点がどこにあるのか、それを解決するにはどうしたらいいかなど、具体的かつ理論的に考え、現実的に実行できる対策をとっていくことが大事だと考えています。
「動物愛護」と聞くと、業界や行政との「対立」というかたちをイメージする方が多いかもしれませんが、そうではなく、まずは動物に携わるすべての人が、関わる動物のことを思いやり、少しずつでも「協力」できる関係を築けるような環境を作っていければと思っています。
(Love Fiveが実施している公園での譲渡会の様子)
吉井:
一体自分に何ができるのか。まずは目の前にある命を救い、地道な活動ですが、活動を通じたくさんの人と関わっていく中で、少しずつ意識や考え方を変えてもらうこと。そうすることで、ペットを飼育する飼い主さんやペット業界全体が健全な環境になればいいなと思います。
(保護犬とじゃれ合う吉井さん)
──犬猫を引き取り、譲渡するという活動自体が、無言のメッセージというか、犬猫たちの健全な環境作りのための啓蒙でもあるということですね。
これまでのご活動で、何か周囲の変化を感じていらっしゃいますか?
吉井:
感じますね。
この活動に賛同してくれるブリーダーさんも増えてきてくれたと思います。
私たちが引き取って保護し、里親さんに引き渡すという活動を見てもらうことによって、ブリーダーさんに「ペットとして愛されて過ごすことができる」という事を感じてもらえているんだと思います。
そうすると、「はやく引退させて楽にしてあげたい」という意識にもつながっていくようで、より負担がない環境を整えてくれたり、以前は高齢になっても無理をして妊娠・出産をさせていたようなケースでも、早い段階で引退させるという判断をしてもらうようになってきています。
──「対立」ではなく「歩み寄る」ことで、少しずつ変わってきた…ということなんですね。
吉井:
そうですね。一度信頼関係が築けると、こちらからも「ワクチンをお願いしますね」「お手入れをお願いしますね」「引退時期を早めてくださいね」という風に、何かあるごとに様子を聞き、飼育環境改善のための声がけができるようになります。
そして、これに対応してくださるケースも増えてきていると感じています。
少しずつ今できることをやっていきながら、状況改善のために動いていきたいと思っています。
(街頭での募金活動にも力を入れているLove Five。街ゆく人に保護犬猫を知ってもらうことで、啓発を行いたいという意図がある)
吉井:
決して良いことではありませんが、「もう飼えないから」という理由でそのまま保健所に送られていたようなケースで、保健所ではなく私たちのところに問い合せる飼い主の方も増えました。
それは、「殺すのではなく、できるならば安心して任せらえるところに引き取ってもらいたい」という飼い主の思いの表れではあるし、「活動実績から判断して、ここだったら大丈夫」という風に考えた結果なのかもしれません。
しかし、私たちは、ただやみくもに引き取ることはしません。
本当に飼育できないのか。飼育できないのなら、ご近所やお知り合いで飼ってくれる人はいないのか。その仔のためにより良い策がないか考えてもらい、飼い主の方にはできる限りの行動を起こしてもらっています。それが、一つの命を迎え入れた責任だからと思うからです。
(「保護犬カフェ」にて、リラックスした表情を浮かべる保護犬の「ヴァイ」。保護犬/保護猫カフェは人間も犬猫もより家に近い場所でリラックスした状態で出会えるため、マッチ度が高いのだそう)
──「ふれあい譲渡会」を始めとする各地での譲渡会や「保護犬カフェ」「保護猫カフェ」での里親探しに力を入れていらっしゃいます。
吉井:
保護犬猫の里親を探すためには、まずはたくさんの人に彼らと触れ合う機会を設けることが重要だと思っています。
「犬猫を迎える際、ペットショップから購入するという選択肢のほかに、保健所に収容されている犬猫や、愛護団体で保護されている犬猫を引き取るという手段もあるんだ」ということを知ってほしいですね。
まず身近なところで彼らの存在を知ってもらいたいし、触れ合って欲しいと思っています。
大阪市内の公園(長居公園や鶴見緑地など)や、商業施設の前などでも譲渡会を行ってきました。
野外での活動は、たくさんの人に保護犬猫のことを知ってもらうことができる反面、天候に左右される上、真夏と真冬は、暑さや寒さのため開催は難しく、時期が限られてしまいます。
公の場での譲渡活動は、役割としては啓蒙の方が強いかもしれません。
(元保護犬の「メリー」。里親の元で、自然に囲まれた生活を送っている)
吉井:
「ペット博」など大きなイベントでも譲渡活動を行っていますが、こういったイベントも年に数回と機会が限られます。
そこで、現在は街ナカの「保護犬カフェ」「保護猫カフェ」での譲渡に力を入れています。
駅の近くなど訪れやすい場所にあるので立ち寄りやすいですし、保護犬猫のことを知ってもらうひとつの「きっかけ」になればと思っています。
また、こういった場所は、犬猫にとっても季節や天候に関係なく快適な環境で過ごすことができるので負担が少なく、よりリラックスした状態でお客さんと触れ合うことで、譲渡の後のミスマッチも防ぐことができると考えています。
活動を始めた頃、1年間ほどはずっと、公園での譲渡会のみでした。
人間が保護犬猫と落ち着いて触れ合うことができるカフェの存在で、一歩前進したように思います。
(こちらは保護犬の「たく」。売り上げの一部がLove Fiveの活動へチャリティーとなる自販機の前で)
──これまでのご活動で印象に残っている仔はいますか。
吉井:
たくさんの仔を見てきましたが…。
最近保護したシーズー犬の「いのり」は、ある店舗の前でリードにつながれた状態で捨てられてるところを、朝出勤したスタッフによって発見されました。
新しい里親が見つかって、幸せそうに余生を過ごす犬猫を見て嬉しくなる反面、私たちの活動を知ってか、カフェの周辺に黙って犬が捨てられていることがあり、本当に人のことが信じられないような気持ちになります。
「いのり」は発見された時、片方の眼球は膨張し、皮膚もボロボロ。「この子をお願いします」というメモ書きと一緒に、道の標識にリードをくくりつけられていたんです。
(保護された当時の「いのり」。ボロボロな姿で、車の多い通りに放置されていた)
きっと、飼い主に捨てられてから一晩そこで過ごしたのでしょう。
交通量も多く、いつ轢かれてもおかしくない危険な状況でした。幸い「いのり」は無事でしたが、暑い時期だと脱水症状を起こすことも考えられます。
保護した後、警察と連携しながら対応しました。私たちが引き取っても問題ないということになり、眼球と皮膚にも獣医師による適切な処置を施しました。
少しずつ元気を取り戻した後、良いご縁と巡り合うことができましたが…。本当に憤りを隠せません。
(Love Fiveを通じて新しい里親と巡り会った「いのり」は現在、ほかの犬猫と一緒に幸せな日々を送っている(写真中央が「いのり」)
吉井:
猫を巾着袋に入れ、ガムテープでぐるぐる巻きにして捨てられていたケースもありました。
どんな事情があるにしろ、捨てるということがあってはならない。
解決できる方法を一緒に探すので、捨てるのではなく、せめてその仔と一緒に来て、正直に状況を話して欲しいと思います。そうでないと、捨てられた仔たちの状況、健康状態なども何もわからないですから。
(元保護犬の「りいや」。「ティノ」という新たな名をもらい、里親家族と共に第二の人生を送っている)
──胸が痛みます…。
ご活動の中で、何か課題を感じていることはありますか?
吉井:
全てを含めての課題といえばたくさんありすぎて、中々お伝えしづらいのですが、里親探しの課題ということでいえば、人慣れしている犬猫は人懐こく、里親が比較的すぐに見つかりやすい傾向にありますが、人慣れしていない仔たちは、なかなか里親が見つかりづらいという現状もあります。
私たちはこういった仔たちも保護していますが、人慣れしていないので、もちろんカフェや譲渡会で人と接することはしません。けれど、現段階では人と上手に接することはできないかもしれないけれど、彼らにも、同じように幸せに生きる権利があります。
こういった仔たちもしっかりとサポートする体制を今後も整えていきたいと思っています。
──最後に、チャリティーの使途を教えてください。
吉井:
保護犬猫譲渡活動のための資金として使わせていただきたいと思います。犬猫を保護するための交通費や、彼らの医療費、譲渡活動にも資金が必要です。
ありがたいことに、ドッグフードや犬用オムツなどの備品は、企業や一般の方などから支援としていただく事があるのですが、活動の全てがご支援でまかなえるわけではありません。
今回のチャリティーで、犬猫たちの譲渡を進める活動を応援してくださるとうれしいです。
──貴重なお話をありがとうございました!
(スタッフの稲野辺さんと、先日卒業した保護犬の「アデリ」。ぜひ、この仔たちに会いにきてあげてください!)
インタビューを終えて〜山本の編集後記〜
「現状を批判するだけでは、何も変わらない。まずは目の前にある命を1日でも早く、1頭でも多く救いたい」。吉井さんのその言葉が、とても印象に残りました。
もし犬や猫が口を開いたら、話すことができたら、なんと言うでしょう?
人間のようには自分の意思を伝えることができない犬や猫たち。だからこそ、共に生きる以上、彼らの命、彼らの日々を思いやっていくことが、動物からたくさんの愛情を感じている私たちの責任ではないでしょうか。
一つひとつのいのちが、愛されながら自分らしく輝くために。ぜひ今回のチャリティーアイテムで、共に応援してください!
…ちなみに、「Love Five」の由来をお伺いすると、「愛護」→「愛5」から、「Love Five」なのだそう!納得です。
“Everyone deserves a chance to live”、
「みんな、生きる価値がある」というメッセージと共に、
焚き火の前でくつろぐ犬猫を描きました。
焚き火はLove Fiveさんの活動を表し、その周りでリラックスする犬猫のように、
すべての犬猫が自分らしく幸せに生きられるようにという思いを込めました。