CHARITY FOR

人との「つながり」を提供、貧困家庭の子どもを地域で見守り、一人にしない〜NPO法人アスイク

6人に1人の子どもが貧困といわれる現在。
しかし、一見して「貧困を抱えている」と周囲が気づけることの方が少ないのではないでしょうか。また、貧困は家庭の問題や家族関係など、様々な要因と複雑に絡み合っており、ここを周囲の人たちがサポートしていくのは、そう容易いことではありません。

今週、JAMMINがコラボするのはNPO法人アスイク。
宮城県を拠点に、貧困家庭の子どもへの学習支援やフリースクール、子ども食堂運営を通じ、地域で子どもを見守る活動をしています。

「“貧困”という二文字の中には、お金の問題だけでは済まされない、家族の人間関係や親の雇用、介護、子どもの将来…いろんな問題が潜んでいる。子どもへの支援をきっかけにして、それぞれの家庭にあるこういった目に見えにくい問題をあぶり出し、関係する機関と連携しながら支え合っていくのが、私たちの役割」。

そう語るのは、アスイク代表理事の大橋雄介さん。活動について、詳しいお話をお伺いしました。

お話をお伺いした、アスイク代表理事の大橋さん。

今週のチャリティー

NPO法人アスイク

「子どもたちの明日を育む」をモットーに、東日本大震災の後、生きづらさを抱えた子どもたちがよりよく生きられる社会を築くことを目的に設立されたNPO法人。学習支援のほか、不登校児のためのフリースクール運営や子ども食堂の運営、子ども支援の団体の立ち上げをサポートする活動も行っている。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

生活困窮世帯の子どもたちの学習をサポート

──今日はよろしくお願いします。まずは、アスイクさんのご活動について教えてください。

大橋:
いくつかの事業を行っていますが、一番大きいのは、自治体と協働で生活困窮世帯の子どもを対象にした小・中・高校生への学習支援事業「放課後まなびサポート」です。
現在、宮城県の仙台市、岩沼市、白石市のほか、町村部でも学習支援を行っており、県内33箇所に教室があります。

──教室では具体的にどのようなことを行っているのですか?

大橋:
子どもたちそれぞれの状態に合わせて、居場所型の学習サポートをしています。
教室へは勉強したくて来る子どももいれば、勉強はしたくないけど話をしに来ている子どももいます。こちらが用意したプログラムに従わせるのではなく、一人ひとりの子どもに「何がしたいか」を聞いて、それに沿って一緒に作業を進めていくかたちをとっています。
また、こういった学習支援事業とは別に、不登校の子どものためのフリースクールも運営していますが、生活保護や児童扶養手当を受けている世帯などは無料で通うことができます。

(仙台市と協働で運営している学習支援事業の様子。)

──なぜ、生活困窮世帯の子どもの学習支援をされるのですか。

大橋:
「貧困」自体は近年注目されている課題ではありますが、その背景には社会からの孤立や、親子関係の問題や虐待など、家庭によって複雑な課題が絡み合っています。こういった要素は、将来的に子どもの社会的な自立にも影響を与えます。

生活困窮世帯の子どもへの学習支援を通じて、目に見えにくい家庭の課題に気づき、子どもだけでなくその家族も含めてサポートをしていきたいと思っています。

(アスイクの活動では、子ども一人ひとりと向き合うことを大切にしています。)

東日本大震災の直後に始めた学習支援活動。
子どもの「また来てね」の一言に励まされ

──大橋さんがこういったご活動を始められたきっかけを教えてください。

大橋:
活動のきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災でした。
出身は福島ですが、仙台で地域活性のコンサルティング会社に勤め、フリーターやニートの支援プロジェクトに携わった時期がありました。しかし、行政に報告書を出して終わりで、自分の仕事に意味を見出せなかった。もっと地域社会に役立つ仕事がしたいと思い、力をつけるために東京で3年ほど働いた後、再び仙台へ戻ってきていたんです。

仙台に戻ってきた後は、ご縁があって中間支援組織と呼ばれるNPOを支援するNPOで働いていました。
そんな中、東日本大震災が発生したんです。

避難所を見てまわると、そこには子どもたちの居場所がなかった。学校の再開のめどもたたず、日中やることもなく退屈そうにしたり、勉強したくても勉強できなかったりする子どもを目の当たりにしました。

「このまま避難生活が長くなると、この子たちは周りの子どもたちから学習の面で取り残されてしまうのではないか」という思いが頭をよぎりました。

しかし震災直後、なかなか子どもの学習支援のために動くという人は現れませんでした。「だったら自分でやってみよう」と思って活動を始め、震災から3週間後には、ある避難所にて最初の学習サポートを実施しました。

(2011年4月3日、第1回目の学習サポートにて。周囲の人たちに迷惑がかからないよう、避難所のロビーでの学習でした。子どもの笑顔と、サポーター。この写真がアスイクの団体ロゴの元にもなっています。)

──3週間とは、早いですね。

大橋:
自転車に乗って「子どもはいますか」と避難所を聞いて回りました。しかし、どこにも、誰にも理解されませんでしたね。
「食べるものをどうするか、住む場所をどうするかという大変な時期になんで子どもの学習なんだと」いう非難もあったし、「必要ない」と避難所の入り口で断られ、中にさえ入れてもらえないこともありました。

──心折れませんでしたか?

大橋:
精神的には大変でしたね。必要とされていないかもしれないと感じました。
それでも知り合いを伝って、やっとある避難所で学習サポートを実施させてもらえることになったんです。

最初に集まってくれたのは4人の子どもでした。避難所の他の人たちの邪魔にならないように配慮しながら勉強を教えたんですね。4人とも、勉強が始まった瞬間笑顔になって、帰る時に「また来てね」と言ってくれたんです。

次第に少しずつ周囲の理解を得られるようになり、いろんなところからお声がけいただくようになっていきました。

学習支援を通じて見えてきた「社会の課題」

──避難所での学習サポートから、次第に支援の方向性を変えられていますね。

大橋:
はい。復興が進む中で、私たちの学習サポートを開催する場所も、避難所から仮設住宅へと移っていきました。そんな中で見えてきたのは、被災し、先行きの見えない中で不安を抱える大人たちの姿だったんです。

不安を抱えた大人たちのストレスが、家庭の中で子どもたちにも影響していくのではないか──。
そんな問題意識を抱き、ただ勉強を教えるだけでなく、子どもの声に耳を傾けられる環境づくりをしていきたいと、次第に団体のコンセプトが変わっていきました。

(保護者を対象に、進学費用の勉強会なども開催しています。)

大橋:
現在では、子どもへのアプローチを足がかりに、その子だけでなくその家庭も含めてサポートしていく体制をとっています。

地域で問題への理解を促し、生活困窮に陥っても、人や地域とつながり支え合っていくことで、当事者が困りにくい包摂社会をつくっていきたいと思っています。

子どもを通じて孤立している家庭とつながり、地域で支える

大橋:
私たちの活動は学習支援、フリースクールや子ども食堂と一見多岐にわたるようにも見えますが、言ってしまえば入り口がどれであっても、結局やっていることは、変わりません。

──というのは?

大橋:
「孤立した子どもたちが多様な関係性の中で成長できる環境をつくり、さらに目に見えにくい問題を見つけ、地域で見守っていく」という私たちのコンセプトは、いずれの活動も同じだからです。

最近では、子どもの居場所を新しく立ち上げたいという市民の方たちを発掘し、運営や資金面でのアドバイスを行う間接的な支援事業にも力を入れていますが、これもやはりコンセプトは同じです。

(アスイクでは、新たに子どもたちの居場所を立ち上げる方々への研修も行っています。)

多様性を育み、子どもたちが「明日への一歩」を踏み出せる場所を

──どのご活動にしても「生活困窮家庭の子どもたちを見守りながら、その家庭をも支えていく」ということなんですね。

大橋:
日々の生活に追われ、親子で行き詰まってしまった時や生きづらさを感じた時、そのまま誰にも SOSを出せずに孤立するのではなく、私たちがいることで、気軽に相談できて、問題解決への糸口をつかめる場でありたいと思っています。簡単には解決しないこともあるかもしれません。それでも、一緒に考えること、一緒に考える人がいることに一つ大きな意味があると思っています。

また、私たちの活動を通じて、子どもたちはそれまで関わらなかった大人たちと関わることになります。親以外の大人と出会うことで、それぞれの気づきがあると思います。「こんな生き方もあるんだ」と視野を広げてくれる大人と出会うかもしれません。

ここでの「出会い」を通じ、子どもたちが何かを感じ、学び、自分の力で一歩を踏み出すための場所を作りたいと思っています。

(フリースクールの子どもたちと手作りのクリスマスパーティを実施しました!)

チャリティーは子どもたちとその家族を定期的に見守る
「多賀城子ども食堂」の食材費になります!

──チャリティーの使途を教えてください。

大橋:
私たちは現在、多賀城市で「多賀城こども食堂」を毎週金曜日に運営しています。「こども食堂」の名の通り、子どもたちと一緒にご飯を食べることが活動の中心ですが、もう一つの重要な目的として「子どもたちとその家族を定期的に見守る」ということがあります。

地域のコミュニティーづくりを目的にしているわけではないので、誰でも参加できるオープンな子ども食堂ではありません。
対象者は生活保護、児童扶養手当、就学援助などを受けている生活困窮世帯の小学生から高校生までの子どもとその保護者で、参加には事前の申し込みが必要です。毎回、親御さんも含め20名ほどの参加があります。

(「多賀城子ども食堂」にて、子どもたちのリクエストでつくったひな祭りメニュー。)

(子どもたちと一緒に食事をつくることも。共同作業をすることで、子どもたちとの距離が縮まります。)

──対象者を限定している分、しっかりケアができるということですね。

大橋:
そうですね。対象者を限定しているので、その分より一人ひとりへの関わりを大事にしたこども食堂でありたいと思います。地域の関係機関とも連携しつつ、必要があれば適切な行政機関や制度を紹介しながら、参加する家庭と向き合っています。

当団体のこども食堂では、より大変な状況の家庭も参加しやすいように、参加費は一切いただいていません。現在は寄付でこの運営をまかなっていますが、運営を続けていくには資金が必要です。今回のチャリティーで、この「多賀城こども食堂」の食材費を集めたいと思っています。
食材費は1食あたり300円で、今回のチャリティーで参加者20人の20週分の食材費・12万円を集めたいと思います。

──今回のコラボでお手伝いができれば幸いです。ありがとうございました!

(2017年度のキックオフミーティングにて、スタッフ・ボランティアスタッフの皆さんと。たくさんの大人が子どもたちとつながる場をこれからもつくっていきます!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

子どもの貧困問題は、決してそれ単体で語れるものでも、それ単体で解決するものでもないのだということを改めて感じました。

「子ども」の「貧困」というとき、それは「子ども」だけのものではなく、その子の家庭環境を含むものです。また「貧困」に陥る理由は、決して経済的な要素だけではなく、つながりや関係の貧困も含まれます。

地域で子どもを見守り、弱い立場にある子どもが「当たり前の未来」を描いていけるよう、地域で子どもたちを見守る目と、支え合っていく人間関係が必要だと改めて感じました。

NPO法人アスイク ホームページはこちら

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ハンバーガーの中、レタスやトマトなどの食材に混ざってサンドしてあるのは、ペンや本。
アスイクの活動のひとつである、生活困窮世帯の子どもへの「教育支援」と「子ども食堂」を表現しました。

“Smile today!”というメッセージには、「たくさん学び、たくさん食べ、共に目の前の問題を解決しながら、より良い明日を築いていってほしい」というアスイクの思いが込められています。

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【THANKS】NPO法人アスイクより御礼とメッセージをいただきました!- 2018/3/6

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