CHARITY FOR

「引退馬はどこへ行く?」。引退後の競走馬をリトレーニングして命を救い、「第二の人生」を花開く〜吉備高原サラブリトレーニング

競馬を知らない人はいないと思いますが、競馬で活躍した後、引退した競走馬たちがどこへ行くのか、皆さんは知っていますか?

今週、JAMMINが取り上げるのは、引退後の競走馬の「その後の人生」。

JAMMINではこれまで、犬や猫をはじめとする動物の保護活動に尽力する団体と多数コラボしてきました。
しかし、命や生活が脅かされているのは、犬や猫だけではありません。

「引退後の馬は、乗馬クラブなどへ引き取られ、JRAの公式ホームページにもその旨の記載がある。しかし、引き取られた後にどうなったのかは、実際のところはわからない」。
そう話すのは、今週私たちがコラボするNPO「吉備高原サラブリトレーニング」理事長の西崎純郎さん。

競走馬となるべく、毎年7,000頭生まれるというサラブレットたち。その一方で、事故やケガにより、年齢に関係なく引退を余儀なくされる馬は、年間5,000頭に上ると言います。

「吉備高原サラブリトレーニング」は、岡山・吉備中央町にて引退後の競走馬が命の危険に脅かされることなく、馬として皆に愛されながら「第二の人生」を送れるよう、リトレーニングする活動をしています。

吉備高原サラブリトレーニングさんのご活動について、そして引退馬の現状について、詳しい話をお伺いしました。

(吉備高原サラブリトレーニング理事長の西崎さん。)

今週のチャリティー

NPO法人吉備高原サラブリトレーニング

引退馬をリトレーニングし、セカンドキャリアをサポートする「サンクスホースプロジェクト」のプロジェクトパートナーとして岡山県吉備中央町にて引退後の競走馬を受け入れ、それぞれの能力にあわせて半年間のリトレーニングを行った後、乗馬クラブや牧場をはじめ行政など必要な場所へ馬を届け、引退後の馬が余生を幸せに暮らせる活動をしているNPO法人。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

3、4歳で引退するケースも。居場所を失った元競走馬の行き先とは…

──今日はよろしくお願いします。
引退後の競走馬をリトレーニング(再調教)するというご活動をされていますが、そもそも「競走馬が引退後どうしているか」ということ自体、考えてみたことがありませんでした。
「引退」と聞くと、人間の場合では年齢やケガなどを連想しますが、馬たちも同じなのでしょうか?

西崎:
年齢というよりは、競走馬として生まれてきたけれども、もともと競走馬に向いていなかった子たちや、事故やケガをきっかけにレースで良い成績を残せなくなって引退するケースがほとんどです。

馬は、25年から長くて30年生きますが、場合によっては、まだまだ子どもである3歳や4歳で引退を余儀なくされる馬もいます。

(こちらの馬・エアソミュールは、父にジャングルポケット・母にエアラグーンを持ち「サンクスホースプロジェクト」の発起人でもあるJRA調教師・角居勝彦氏が育て上げた名馬。2013年大阪城ステークスを皮切りに2014年には毎日王冠を制覇し、獲得賞金は3億を超える。
ところがある日厩舎にて追いきりまで調整していたところ、左前種子骨靭帯に炎症が再発、回復の見込みが難しくなったことから引退し、吉備高原サラブリトレーニングへ。現在は持ち前の気の強さを生かし、障害飛越競技馬の道を進んでいる。)

──そんな若くして引退する場合もあるとなると、なおのこと引退後が気になります。一体どうしているのですか?

西崎:
実は、引退した馬たちは行き先がないのが本当のところです。
毎年5,000頭の引退馬たちが乗馬クラブへ渡っていきますが、多くの命が、実は人知れず失われているという事実があるんです。

全国乗馬倶楽部振興協会に登録されているだけでも、日本全国にはおよそ274の乗馬クラブがあり、乗用馬として登録されている馬は5,000頭(※2010年のデータ)。乗馬クラブだけでは、引退馬の受け口が圧倒的に足りていないんです。
JRAのホームページには、引退後に「○○乗馬クラブへ行った」ということは書かれていても、その後については言及されていません。「あの馬は一体どこへ行ったんだろう?」と調べてみると、乗馬クラブへ行った後、行き先不明ということが多いんです。

──「行き先不明」って、どういうことでしょうか?!

西崎:
引退馬たちがその後人知れず殺され、実は馬肉として食用になっている可能性があります。
また、もとは競走馬として、とにかく少しでも速く走れるようにと生まれた時から調教された馬たちは、乗馬クラブへ行っても競走馬としての習慣が抜けず、乗馬のようにポッカポッカとゆっくり歩いたり、走ったりということが受け付けられないんですね。

結局、乗馬クラブへ行ったとしても、セカンドキャリアを積むことができない。体の大きい馬ですから、食費などの維持費だけがかさんでしまい「必要ない」とみなされ、殺処分されて馬肉として売り渡されてしまうということが、実は普通に起きているんです。

(メイショウコロンボ号(通称:コロちゃん)。父にマンハッタンカフェを持ち、2015年名古屋大賞典で優勝。2017年のマーチS出走に向けて調整していたところ、左前種子骨靭帯炎を発症し、2017年3月に現役を引退、吉備高原サラブリトレーニングへ。重賞勝ち馬だけに少し頑固なところもあるが性格は穏やか。
コロちゃんが来た当初は、脚の具合が良くなるまで馬房でじっとしているのが退屈で、少しブヒブヒしてた時期も。しかし運動が出来てスッキリしてくると、顔も性格も愛らしい本来のコロちゃんの魅力が開花し「この仔はみんなに愛される乗用馬になるだろう」と思ったのがつい最近。2017年9月にリトレーニングを終了し、現在は広島県の乗馬クラブにてセカンドキャリアを歩み始めている。)

競走馬にはなれなくても。一頭一頭の馬には、適正を見極め、愛情を受ける権利がある

西崎:
競馬の世界は「より速く」走れることが命ですから、足の速い親馬同士をかけ合わせ、足の速い遺伝子を持った馬たちを誕生させます。

けれど、両親の遺伝子が足が速いからといって子どもの馬も速いかといえば、必ずしもそうではありません。馬にはそれぞれ性格の違いもあれば、適性も、能力の違いもあります。
競走馬には適していなくても、ジャンプ力があって競技馬として向いている馬もいれば、何をしても動じない、おとなしくて人懐こく、観光牧場などで皆にかわいがられることに向いている馬もいます。

(馬は賢く「この人は僕の世話をしてくれる人なんだ!」と、相手を見てわかるのだという。相手を信頼すると、目や舌がリラックスした状態に…かわいい!)

西崎:
速く走れず、競走馬としては現役中にスポットライトを浴びることはなかったかもしれない。そんな馬でも、何かしら、必ず光を浴びる秘めた能力を持っているんです。

競走馬として生まれてきた彼らが、たとえ競走馬ではなくなったからといってその存在や命自体が否定されるのは、間違っています。
競走馬ではなかっただけで、別のすばらしい可能性を秘めているんです。

──競走馬として生まれてきたというのは、馬の都合というよりは人間の都合。そこで結果がでなかったからといって「じゃあ必要ない」と命自体否定されてしまうのでは、競走馬として本当に優秀で、ケガや事故にも遭わず成績を出し続けられる、幸運な馬しか生き残っていけませんね…。

(馬舎での一コマ。大好物を目の前にすると、馬もやっぱり笑顔に(笑) )

リトレーニングをすることで、馬に「第二の人生」を

西崎:
私たち吉備高原サラブリトレーニングでは、引退した競走馬を受け入れてリトレーニングを行うことで「新しい可能性」を引き出し、彼らのセカンドキャリアを応援する活動をしています。

──セカンドキャリアとして、具体的にはどんな道がありますか?

西崎:
乗用馬のほか、セラピー馬や競技馬としてキャリアを積む馬たちがいます。

馬は、30年ほど生きます。例えば5歳で引退したとして、残りの25年間、一体何をするのか。
誰かの役に立ち、かわいがられながら、それぞれの馬が充実した人生を送って欲しい。競走馬として生まれてきたけれど、競走馬の役目を終えた馬たちにも「当たり前の未来」を与えたい。餌や水道・光熱費、飼育費もかかり、限界はありますが、一人でも多くの人に引退した競走馬たちの現状を知ってもらい、一頭でも多くの馬を救いたい。そんな思いで、活動を続けてきました。

(吉備高原サラブリトレーニングに併設している岡山乗馬倶楽部には、全国から引退した馬に会いにお客さんが訪れるほか、乗馬倶楽部の会員やキッズ会員も引退馬が大好きで、かわいがってくれる。)

元競走馬のリトレーニングは、いばらの道

──競走馬から乗用馬やセラピー馬へのリトレーニングというのは、どんな風にするのですか?どちらも全くイメージの異なる馬なので、大変なのではないですか?

西崎:
競走馬というのは、生まれたときから、とにかく速く走るように訓練されます。
乗用馬にせよセラピー馬にせよ、もっと人間の生活と近い場所での活躍を目指すには、かなりの難関が待ち受けています。

例えば散歩がそうです。側から見るととても簡単に見えますが、競走馬だった時代は「走れ走れ」と訓練されてきたから、「のんびりゆっくりお散歩しよう」が受け入れられない。馬の気質にもよりますが、最初は荒ぶったり走り出したりして、人間が手綱を引きながら一緒に歩く、ということができません。

(リトレーニングの一コマ。こちらは調馬索(ちょうばさく)運動。人間が調馬索リンクの中央に立っている状態で、歩かせたり速く走らせたり、調教スタッフの指示をきちんと聞けるように訓練中。)

西崎:
また、ジャンプなんかも彼らにとってはとても難しい。競走馬だった頃は何の障害物もなくだだっ広い場所でとにかく速く走る訓練をしていたから、横木(横に渡した木)や、地面に倒れている木さえも怖いんです。ジャンプしてまたぐ訓練をするのですが、最初はなかなかうまくいきません。

(リトレーニングが進んでくると、障害を飛び越える調教に入る。「速く走れ」と言われていた競走馬時代から、今度は「上に飛び上れ」という指示に困惑を隠し切れない馬も少なくない。)

──そんなところから、本当に1からリトレーニングされるんですね。

西崎:
吉備高原サラブリトレーニングでは、馬によって体調や気質が異なるので、それぞれの馬に合わせたプログラムを組み、約半年をかけてトレーニングを積みます。

最初は「ここはどこだ?!」と緊張感と恐怖感を抱いていた馬たちも、吉備中央町の大自然に囲まれた施設に徐々に慣れ、心を開いてくれる瞬間が、ふっとあるんですよね。
ニンジンをあげたりしていると「いい人だ」と思ってくれたり(笑)。

(ケガや故障によって引退した競走馬を引き取った後、リトレーニングにあたって彼らの手術やリハビリにも付き添う。写真の手術は片側性陰睾の馬の去勢手術。全国でも実績ある鹿児島大学共同獣医学部にて行われた。)

「馬づくり」から「人づくり」へ。
今以上に「馬が活躍できる社会」を作りたい

西崎:
馬って、馬を触れた人間にしかわからない、とても不思議な、強いパワーを持っていると思うんです。穏やかで、優しく、温かくて、すべてを受け入れてくれるような癒しのパワーとでもいいますか…。
馬には、人を元気にする力があると思うんです。

うつ病の方が、馬との触れ合いを通じて元気になったり、自閉症の子どもが、馬と接する中で心を開いたりする様子を目にしてきました。

競走馬として生まれ、「使えない」と引退を余儀なくされた馬が、疲れた人たちや子どもたちを癒したり、元気にすることができたら、そんな社会を作っていけたら、どんなにいいだろうかと思っています。
私たちが引退馬をリトレーニングすること、つまり『馬づくり』を通じて『人づくり』に貢献できるような馬を、世に送り出していきたいですね。

(馬はホースセラピーとして人間の癒しにも役立つと注目されている。馬に触れると、皆自然と笑みがこぼれる。 )

西崎:
引退馬の可能性や活躍の場所の拡大は、まだまだ未開拓の分野ではありますが、全国のいろんな場所に馬を普及させ、今以上に「馬が活躍できる社会」を作っていきたいと思います。
あとは、引退後に元競走馬がどこへ行ったかわからず、最悪殺されてしまっていたという現在の不透明な状況から、誰しもが「引退馬に会いに行ける」環境づくりもしていきたいです。

──昔、応援していた馬に会えたらいいですね!

西崎:
「あの日応援していた馬が、今はどこどこの牧場にいるらしいから、会いに行こう!」そんなことを気軽に思ってもらえるようにしていきたい。全国のどこに行けばこの馬に会えるよ、というような「引退馬マップ」も作りたいですね。

「3年前は武豊騎手が乗っていた馬に、今はうちの息子が乗っているんだ!」みたいな感動や触れ合いの場所を増やしていきたい。リトレーニングを通じて、馬たちがもっと愛される環境を作っていきたいと思っています!

(2017年8月4日に東京GateJ.新橋で行われた引退馬フォーラム。競馬ジャーナリストの鈴木淑子さんを迎え、プロジェクトの活動意義を発信。吉備高原サラブリトレーニングでは毎月このような活動を行い、啓発活動にも力を入れている。 )

チャリティーで、リトレーニング中の馬たちのヒヅメを守る「装蹄」の資金を集めます!

──今回のチャリティーの使途を教えてください。

西崎:
リトレーニング中の引退馬たちが元気で安全にリトレーニングを受けるためには「装蹄(そうてい)」が必要で、このための資金を集めたいと思っています。

──「装蹄」とは何ですか?

西崎:
馬は「蹄鉄(ていてつ)」という人間でいう靴のようなものを履くことで、繊細なヒヅメを保護しています。ヒヅメは人間の爪と同様に伸びてくるので、1ヶ月から1ヶ月半に一度、ヒヅメを削る「削蹄」をしてきれいに整えてから、ヒヅメに合った新しい蹄鉄を付ける作業を行います。これが「装蹄」です。

馬たちがリトレーニングを受けながら健やかで元気に暮らすためにも、この「装蹄」は非常に大切な要素です。

──人間の足でイメージすると、伸びた爪をきれいに切った後、足の形に沿った新しい靴を履く、というイメージですね。

(蹄鉄を装着した馬の足裏。蹄鉄は土を踏んで次第に削れてくるため、装蹄のたびに新しいものを装着する必要がある。)

西崎:
そうですね。
この「装蹄」費は1頭につき15,000円かかります。吉備高原サラブリトレーニングで現在リトレーニングに励む引退馬は16頭いますが、今回のチャリティーで、彼らの1ヶ月の装蹄費・24万円を集めたいと思います!

2016年には、33頭の引退馬をリトレーニングし、第二の人生のスタートを見守りました。
2017年は40頭の受け入れを目指していて、多くの方からの支援を必要としています。ぜひ、チャリティーにご協力いただけたら嬉しいです!

──リトレーニングを受けることは、引退馬にとっては新たな人生へのステップであり、すごく大きな意味と価値を持つんですね。今回のコラボで、ぜひそのお手伝いができれば幸いです。
ありがとうございました!

(乗馬の競技会に挑戦したエアソミュール。競技を終え、西崎さんがよくやった!と褒めているところ。
エアソミュール:「俺、これからも頑張る!」 。エアソミュールのように、新たな場所で活躍し、周囲の人たちに愛されながら生きる元競走馬が増えますように!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

吉備高原サラブリトレーニングさんと企画を進めていた時に、ちょうど別件で農林水産省が発表している屠畜頭数のデータを目にしていました。平成28年のデータでは、一万頭を超える馬が屠殺されています(農林水産省『畜産物流通調査 平成28年』 より)。

「牛」「鶏」「豚」に混ざって「馬」の欄があり、もちろんすべてが引退馬という訳ではないと思いますが、一般的に牛肉や豚肉と比べて馴染みの薄い馬の屠畜数がこんなに?なぜ?と思っていたのですが、西崎さんのお話を聞いて合点がいきました。

馬にも人間と同じように個性があり、それぞれに得意なことがあります。たまたま速く走ることが得意でなかったからといって、たまたまケガしてしまったからといって、その存在が脅かされる必要が、どこにあるでしょうか。

競馬という華やかな舞台の裏で、私たちが目に向けなければいけない現実があります。
ぜひ、引退馬の可能性を応援する今回のチャリティーにご協力ください!

吉備高原サラブリトレーニング ホームページはこちら

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“With every rising of the sun, think of your life as just begun”、「毎日陽が昇るたび、あなたの人生は新しく始まる」。

このメッセージには「引退が決して終わりじゃない、新たな可能性に満ちた日々を、必ず送ることができるんだ」という吉備高原サラブリトレーニングの思いが込められています。

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