CHARITY FOR

自分勝手な人間たちの裏で、翻弄される小さな命。殺処分される犬猫を救え〜NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

今週のテーマは、「動物愛護」、犬猫の殺処分について。
JAMMINでは、これまでも犬猫の殺処分ゼロに向けて活動するNGO/NPO団体をいくつか取り上げてきました。

犬猫の殺処分数は年々減少傾向にはあるものの、それでも15,811頭(犬)、67,091頭(猫)、合わせて82,902頭(平成27年)と、今でも多くの小さな命が奪われています。行政での殺処分数は、この82,902頭に「負傷動物の殺処分数」を加えたものになり、犬がプラス476頭、猫がプラス9,278頭となり、総数は92,656頭(※負傷、保管中死亡含む)にも上ります。
(環境省『動物愛護管理行政事務提要(平成28年度版)』より)

今週、私たちがコラボするのはNPO法人HOKKAIDOしっぽの会。
北海道を拠点に、行き場を失った犬猫を救うために、新しい飼い主を探し、届ける活動を続けています。

人間の都合の良い欲望に付き合わされ、要らなくなったらまるでモノのように捨てられる小さな命…。かわいい犬猫が売買される背景で、悲劇が起きている──。

しっぽの会スタッフの、上家桃子さんにお話をお伺いしました。

(お話をお伺いした上家さん。)

今週のチャリティー

NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

北海道長沼町を拠点に、北海道内の保健所や市役所などの自治体から行政処分される放棄・迷子・保護動物(犬・猫)を引き取り、心身のケアをして新しい飼い主を探し、譲渡を行う活動をしているNPO法人。

「人と動物が共生できる幸せな社会」の実現を目指し、保護活動・啓発活動に尽力しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

「飼えない」、「要らない」…。行き場を失う犬猫たち

──保健所に引き取られた犬猫に、新たな飼い主を探す活動をしていらっしゃいますが、まずお伺いしたいのは、そもそも保健所に犬猫が引き取られる背景にはどういったことがあるのでしょうか?

上家:
最近多いのは、高齢の飼い主さんが病気になったり亡くなったりして、同じく高齢のペットが行き場を失い、保健所に行くケースです。
親族の方も飼えないとなると、残されたペットの行き場はなくなる。殺処分されることがわかって保健所に連れて行かれます。

あとは、多頭飼育しているところから引き取られてくる犬猫もいます。

また、「迷子犬」や「迷子猫」は、「迷子」とは言っていますが、多くは捨てられたペットたちです。もちろん、なかには本当に迷子になってしまった犬猫もいますが…こういった背景から引き取られた犬猫たちを救うために活動しています。

(ケージに閉じ込められた小型犬。HOKKAIDOしっぽの会副代表の上杉さんは「一般の方に1頭でも多く引き取ってもらえるように」と、10年ほど前から札幌市動物管理センターに通い、収容された犬猫の写真と情報をブログにアップする活動を毎週欠かさず続けています。10年前は殺処分数も現在と比べものにならないほど多く、保健所の情報はひた隠しにされていた時代。「許可をくれたセンターに感謝している」と上杉さん。)

 
 
上家:
保健所に保護された犬猫たちの命を救うという活動を、行政から引き受けて私たちがやるのは非常にストレートでわかりやすい活動ではあります。しかしそれでは、目の前の命は救えるけれども、殺処分自体の解決にはならない。

しっぽの会としては、自治体が責任を持って犬猫を管理し、私たちのような保護団体がいなくても新しい飼い主を見つけたり、行政で完結できるようになって欲しいと思っています。

どんなにボロボロの子でも、動物福祉に反しない限り殺すのではなく引き取る。新たな飼い主を探し、新たな人生を生きるお手伝いをする。私たちがそんな活動を続ける中で、自治体の方たちも「こんな子でも生かすんだ」とか「自分たちが何とかしなきゃ」と意識が変わってきていますし、それも活動の一つの目的です。

(行政や他団体と一緒に犬猫の譲渡会を行ったときの様子。)

上家:
保健所に引き取られた犬猫の中には、食事もろくに与えられずやせ細り、弱り切った子たちや、歯がなく毛もボサボサな子、病気を抱えている子たちも多くいます。

北海道の場合は、誰にも目につかないような広い山道なんかに捨てられることもあって、冬だと寒さで凍え死んだり、野生動物の獲物になってしまうというケースもあり、発見されて収容された犬猫たちは、ラッキーな氷山の一角だと言えます。

ペット売買の裏で…繁殖犬の悲しい真実

──酷いですね…。どうしてもやむをえない、という場合もあるのでしょうが、命を「捨てる」という行為が理解できないのですが…、どういったケースがあるのですか。

上家:
過去に犬をレスキューした中で、繁殖業者の廃業に携わったことがあります。30〜50頭の犬たちが、皆小さい檻に入れられっぱなしで、十分な世話もされず、命の尊厳もなく利益を生むためのモノのように扱われていました。

「パピーミル」という言葉をご存知ですか?訳すと、「子犬工場」。その言葉通り、新しい命を育む一方で、親犬は、ただ子犬を生む機械として扱われているんです。
メス犬たちは、度重なる妊娠・出産のせいかカルシウムがとられ、歯がなく、あごが溶けて舌がベローンと出ているような場合もあります。乳腺腫瘍を患っている子たちもいました。

(保健所から保護した雌のマルチーズには、お腹いっぱいに放置された乳腺腫瘍があり、保護から1か月後に亡くなりました。)

──ペットショップは、明るくきらびやかで、愛くるしい姿の動物があふれている一方で、悲惨な事が起きていると思うと…、ただ見えていないだけで身近な出来事ですし、私たちもきちんと事実を知って行動しなければいけないと思いますね。

社会で「犬猫を見守る」体制に

上家:
ペットショップに行って、犬や猫を見るとき「この子たちの親はどうしているのだろう」ということを意識したら、現状がもっと見えてくると思うんです。

犬や猫を買うことは否定しません。ただ、買うのであれば、大切に飼われている親犬猫から買って欲しいと思います。理想としては「予約販売」をして欲しいと思っています。

──「予約販売」ですか?

上家:
5、6頭生まれることがわかっているわけだから、生まれてくる子たちの行き場が生まれて来る前からあって、生まれる前から親を知り、誕生を楽しみにするスタイル。そうすれば、余剰動物の問題もぐっと減ります。

──犬や猫を商売道具にしてどんどん繁殖させるから、不幸な犬や猫も増えるわけですもんね…

上家:
そうなんです。まるで「椅子取りゲーム」なんです。
飼い主(=椅子)は限られているのに、犬や猫がどんどん増える。奪い合いなんです。そうすると、不幸な犬猫が増えてしまいます。私たちは椅子に座れず行き場を無くす犬猫を減らしていきたいと思っています。

(多頭飼育されていたシーズーたちの保健所からの引き取り。)

上家:
あと、高齢者とペットの問題。
ここに関しては、社会が飼い主とペットを支えられるようなしくみができてくれば、高齢者の方でも安心してペットを飼うことができると思います。

お年寄りの方がペットを飼うことで、散歩のために外に出たり、コミュニティーに参加したり、健康寿命が伸びる効果があります。社会全体でお年寄りを見守り孤立させない相乗効果で、ペットともっと上手に付き合っていく方法があると思っています。

──確かに、そうですね。

上家:
活動に関しては、うれしい転換期を迎えています。法律の改正の影響もあり自治体のほうでも意識が変わってきて、札幌市では動物の福祉の向上を目指して条例を策定しました。

現場でも様々な細やかな努力をしてくださり、以前に比べると札幌市から当会で引き取る動物の頭数は格段に減りました。病気を抱えた子がいても、すぐに殺すようなことはせず、飼い主が見つかるまで長期収容してくれるようになったんです。保健所でできる医療行為等はまだまだ限られていますが、長期収容がかなえば、心身が回復しどのような子でも多くは譲渡されるのです。

札幌市に関しては状況が良くなり、おかげで北海道の遠方の保健所の犬猫を助けることが可能になってきました。
しかし北海道は広域で、地域住民や担当の方によりかなり意識に違いがあり、どのように全体的な底上げを図れるかが今後の課題です。

(しっぽの会に保護された犬猫たちは、豚舎を改築した犬舎と新築した犬猫舎で、人馴れ訓練、健康管理をしながら、幸せな出会いを待っています。)

引き取られない事情を抱えた犬猫たちのための「足長基金」

上家:
保健所や自治体から引き取った犬猫に新しい飼い主さんを探し、犬猫が新たな人生を始めるお手伝いをしていますが、純血種の子や、人懐こい子、犬だと小型犬や若い子は、比較的もらわれやすいです。一方で、ミックス(雑種)の子や老齢の子、病気を抱えている子、人になかなか懐かない子は、なかなかもらってくださる方が見つかりません。

──確かに、なるべく長く一緒に過ごしたいし、なついてほしいし、できるだけそんな犬や猫がいいなと思いますね…。

上家:
しっぽの会には「足長基金支援」という制度があります。高齢や持病のために新しい飼い主さんが決まらず、余生をしっぽの会で過ごす犬猫の中には、通院が必要で、目が離せない子たちもいます。こういった子たちが安心して暮らせるように、会員の方に月々ご支援いただきながら環境を整えています。

──どんな子たちがいるのでしょうか。

上家:
足長組の一頭を紹介します。シーズー犬の「想望(そみ)」です。推定年齢は3歳。70頭もの多頭飼育の現場から引き取った子で、近親交配が進んでいたこともあってか、先天性の疾患を多数持って生まれてきました。

股関節、膝蓋骨脱臼・肋骨の変形や水頭症等を患っています。他の兄妹たちは良いご縁があって卒業しましたが、想望は生まれつきの脳や身体の障がいのため、しっぽの会のスタッフが預かり、24時間体制で看護しています。

獣医師からは安楽死も勧められましたが、本人が苦しんでいるような状況ではないため、今はスタッフの愛情のもと、元気に生活しています。

(こちらが想望ちゃん。「脳の病気の影響で月に10日位は一日中怒って吠える時期があったり、何をしてもされるがままの時期があったりと日々体調が変わりますが、様子を見ながら過ごしています」と看護しているスタッフさん。)

上家:
「一太朗」と「二朗左衛門」は、繁殖業者の元からきた老犬です。一太朗には腫瘍がありましたが、治療もされず放置されていました。当会で睾丸と脾臓にあった腫瘍を摘出し、健康に配慮しながら足長組の子として良いご縁を待っています。

(ラブラドールの一太朗とスタッフ。穏やかな時を過ごしています。)

──人間のエゴが、いかに彼らを苦しめているのか…心が痛みます。足長組には、猫もいるのですか?

上家:
はい。外で暮らしていた猫たちは感染症をもらう確率が高く、猫エイズ感染症や、白血病の猫たちがいます。皆スタッフの愛情と、獣医師による適切な治療を受けながら、元気に暮らしています。

(猫エイズ感染症陽性で足長組の「シロ」。他の猫にとっても優しいいい子です。)

チャリティーは、足長基金の犬猫たちが安心して生きるための資金になります!

──今回のチャリティーの使途を教えてください。

上家:
今回は足長組にいる犬猫たちの医療費を集めたいと思います。昨年の実績で言えば、足長基金の犬猫の頭数は、毎月卒業や死亡・加入等で出入りがありますが、常に40頭ほどが在籍しています。
足長組の犬猫の年間にかかった医療費はおよそ300万円、月に換算すると25万円でした。

今回のチャリティーで、足長組の犬猫たちの1ヶ月分の医療費を集めたいと思っています。ご参加くださった方へは、毎月発行の足長通信を1部送付させていただく予定です!(なくなり次第終了。)
継続支援や年3万円のお支払いでなくても、足長組の子の様子をお知らせいたします。

──人間に振り回された命。せめて、人間の愛情が感じられる環境で安心して生きられるように、チャリティーに協力できればと思います。
ありがとうございました。

(HOKKAIDOしっぽの会のスタッフの皆さんで集合写真!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

「知ってはいるけど、知りたくない…」。動物の殺処分や虐待の問題を見るとき、どこかそんな心理がつきまとうのは、私だけでしょうか。良い面だけを見れば「かわいいね」で済みますが、その裏で、いかに悲惨なことが起きているか。犬や猫の生きる権利を無視した残酷な扱いは、酷くて、つらくて、目もあてられないようなケースもあります。

でも、それが現実として起きている。今も怯える命があります。保護された彼らが、せめて愛情を受け、安心して生きられるように。今回のチャリティーにご協力ください。

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肩を並べた三頭の犬猫たち。後ろ姿を描いたのは、私たち人間には犬猫を見守る役目があるんだよ、ということを伝えたかったから。

“Your life is precious”、「あなたの命は、尊い」。しっぽの会の、すべての犬猫たちへの思いを込めました。

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チャリティー入金報告

【THANKS】HOKKAIDOしっぽの会より、御礼とメッセージをいただきました!- 2017/11/24

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