CHARITY FOR

被災地の子ども達を救う!宮城発の本格派ヒーロー『破牙神ライザー龍』の活動背景には、感動の物語があった〜NPO法人HERO

今週のテーマは「被災地の子ども達に笑顔と勇気を与えるヒーロー」。

『破牙神(ばきしん)ライザー龍』。聞きなれない名前を頼りに、インターネット検索でたどり着いたホームページを初めて見たときの衝撃…。
ギラギラと輝くヒーロー。そのクオリティーは、まさにテレビで見るヒーローそのもの。かといって、見覚えのあるキャラクターではないので、「何のキャラクターだろう?」と思いました。

そして、次の瞬間湧いた疑念…「これ、NPOさんのホーページ⁈ 見るページ間違ったかな?」。
…そんな『破牙神ライザー龍』とは一体、何者なのか?突撃インタビューをしてまいりました!

お話を聞かせていただいたのは、NPO法人HERO代表理事の佐藤真実さん。
イベント制作会社で働きながら、ボランティアで『破牙神ライザー龍』(以下『龍』)のショーMCとしても活躍しています。

▲NPO法人HERO代表理事の佐藤さん。

今週のチャリティー

NPO法人HERO(ヒーロー)

東日本大震災で傷ついた子ども達へ笑顔と勇気を届けることを目的に、2011年5月「リュウプロジェクト」を立ち上げ、オリジナルヒーロー『破牙神ライザー龍』を制作、宮城・福島・岩手の被災三県で活動するNPO法人。幼稚園・保育園等での無償公演や一般公開での公演は2017年5月22日現在1,372回を数える。
2016年5月からは、病気や怪我で髪の毛を失った全国の18歳までの子ども達に人毛オリジナルウィッグをプレゼントする「ヘアドネーションプロジェクト」を推進。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

宮城発「本物のヒーロー」が生まれたきっかけは、東日本大震災後の1本の電話

──聞きたいことが山ほどたくさんあるんですが…、まず、龍のクオリティーの高さが圧巻ですよね。このテレビヒーロー並みのクオリティーには、何か意図があるのでしょうか?

佐藤:
ありがとうございます(笑)。
龍はもちろん、他のキャラクターたちもクオリティーにはこだわって制作しています。それは、私たちが楽しむキャラクターではなく「子ども達の力になれるヒーロー」を作りたかったからです。

私たちの活動「リュウプロジェクト」は、2011年3月11日の東日本大震災の後、立ち上げメンバーの1人が勤めていたイベント制作会社にかかってきた1本の電話がきっかけでした。

5月5日の子どもの日に、避難所のお父さん達が中心になって子ども達のためのイベントをやるのだが、どんなことがしたいか子ども達の声を集めたら「テレビヒーローに会いたい」という声が多かった。

テレビヒーローに無償で来てもらうことは可能だろうか?

避難所にいる保護者の方からの電話でした。
メンバーは、テレビヒーローを呼ぶために色々と試みたのですが、様々な事情から、無償訪問は叶いませんでした。

そのときに「だったら、版権にとらわれないヒーローを自分たちで作り、子ども達に会いに行くことはできないか」と考え、「リュウプロジェクト」を立ち上げたのがきっかけです。

▲無償で訪問する幼稚園や保育園では、破牙神ライザー龍の来園に子ども達も大喜び。龍の周りは、いつも子どもたちの笑顔で溢れています。

ショッピングモールやイベントでのショーの傍ら、無償で被災地の幼稚園や保育園を訪問

佐藤:
その後、11人のメンバーが集まってプロジェクトがスタート。キャラクターが完成した9月末にNPO法人に移行し、震災から7カ月後の10月、龍はデビューしました。

当初、無償で訪問していたのは宮城県内の幼稚園や保育園のみでしたが、福島県や岩手県からも問い合わせをいただくようになり、「同じ被災地で頑張っている子どもがいるなら、その子達の心にも寄り添いたい」と、震災の被害が大きかった福島県と岩手県を含む被災三県を回るようになりました。

──無償で訪問されていますが、実際に訪問にかかってくるお金はどうやって捻出しているのですか?

佐藤:
幼稚園や保育園を無償訪問するのとは別に、企業や自治体から龍のショーを買っていただいたり、龍をパッケージ等に起用していただいてロイヤリティーを得ることで収入を得ています。他に、協賛金収入や、ショー以外にも積極的にイベントに出ることで、なんとか無償訪問を続けています。

昨年は、幼稚園や保育園訪問、一般公開を含め、252公演ありました。

──すごい数ですね!

▲子どもに寄り添う龍。龍の活動を象徴するような一枚です。

こだわったのは「本物のクオリティー」

──この…ものすごいクオリティーのスーツに着目せざるをえないんですが…、これはどうやって作ったのですか?

佐藤:
「リュウプロジェクト」立ち上げメンバーの後輩に、東京でテレビヒーローの造形に携わっていた方がいました。
今はプロの造形師として独立されていますが、その方をリュウプロジェクトのメンバーに引きずり込んで(笑)、キャラクターのラフ案や素材の決定などを担当してもらい、できたラフを携えて、専門の会社にキャラクタースーツ製作を依頼しました。

──そうだったんですね(笑)。わざわざ専門の会社に依頼されたのはどうしてですか?

佐藤:
ラフを作ってくれたメンバーに依頼することもできたんですが、彼一人で製作すると時間的に余裕がないと判断したからです。というのは、1日でも早く避難所の子ども達にヒーローを届けたいと思っていたからです。

▲上のイラストは、制作過程の龍のラフ画。だんだんと本格的な姿に…!下のイラストは、破牙神ライザー龍に登場するキャラクター達。

──これだけのクオリティーとなると、製作資金も相当かかったのではないでしょうか?

佐藤:
そうですね。覚悟していたとはいえ、最初の見積もりはかなりな金額で、みんな相当へこみました(笑)。
キャラクター数を減らしたり素材を変えたりしながら調整し、なんとか「この金額ならどうにか集められる」という額にまで減らすことができたんです。

どうにかお金を調達しようと思っていた矢先、製作を依頼した会社の社長が「被災地の子ども達のために私たちも協力したい」と大幅な値引きをしてくれました。
造形を依頼した会社の社長をはじめ、社員の方達の「被災地の子ども達のために何かしたい」という思いを心強く感じたと同時に、「がんばらなくては」という思いを強くしました。

震災から6年。変わらず子ども達に勇気や希望、笑顔を与えたい

──子ども達は「本物のヒーロー」に会いたがっている。だから「本物のヒーロー」作りにとことんこだわったということなんですね。

東日本大震災から6年が経ち、被災地を取り巻く状況も少しずつ変わってきたのではないかと思うのですが、昨年も250回以上幼稚園や保育園等を訪問されたということで、訪問先で龍はどんなことをしているんですか?

佐藤:
震災から6年が過ぎ、今、幼稚園や保育園にいる子ども達は、震災を直接知らない子ども達です。
それに伴って私たちの活動も変化してきていて、現在は「握手撮影会」や「交通安全教室」、「防犯教室」や「リズム体操教室」などを実施しています。

──教室は、自分たちで企画されているんですか?

▲龍が見守るなか、交通安全について学ぶ子ども達。横断歩道、手を挙げて上手に渡れるかな?

佐藤:
もともとは現場の先生から「龍に教えてもらったら、子ども達も覚えられるかも」と言われたのがきっかけで企画したのがはじまりで、今でも先生たちとコミュニケーションをとりながらいろいろな企画を練っています。

最近は新たなプログラムとして「防災教室」を企画中です。震災のことを子ども達に伝えていくためにも、必要な学びだと思っています。

▲こちらはリズム体操教室。近年肥満児が増えているという背景から、子ども達が楽しく運動できるように企画した教室です。

──子ども達に必要なことを一緒に勉強してくれる。本当に身近なヒーローなんですね(笑)。

佐藤:
そうなんです。幼稚園の先生や親御さんに聞くと、子ども達は「龍とお約束したから」と、その後ルールを守って行動してくれたり、次に会うのを心から楽しみしていてくれたりするみたいです(笑)。私たちも、子ども達の本当に嬉しそうな笑顔に毎回癒されています。

龍だからこそ、子ども達に届けられることがある。そう思っています。

▲事務所には、子ども達や先生等の関係者からたくさんの手紙が届きます。

超有名デザイナーが怪人デザインで参戦。知れば知るほどハンパなかった龍の世界

──いくら子ども達が「ヒーロー」を求めていたからとはいっても、やはり…クオリティーがNPOの域を超えてませんか?(笑)
それぞれのキャラクターの設定や造形としてのクオリティー、歌なんかもそうですが、尋常ではないこだわりというか…(笑)。

佐藤:
リュウプロジェクト立ち上げメンバーのほとんどが、過去20年以上、東北地区でのキャラクターショーにプロとして関わっていた人たちです。
数々の現場を経て、キャラクターショー制作のノウハウがあるので、高いクオリティーのショーを作ることができるというのはあると思います。

あとは、メンバーそれぞれの本業で、各分野のプロフェッショナルの方たちと、お付き合いがあるということも関係しているかもしれません。

キャラクターデザイナーの韮沢靖さん(※1)がまさにそうで、一緒になったイベントでたまたま龍の話をしたら共感してくださり「ぜひ、やらせてくれ」と、3体の怪人のデザインを提供してくださいました。

そのほかにも歌では声優の山寺宏一さんや特撮番組ではおなじみの宮内タカユキさん、石原慎一さん、そして俳優の柏原収史さん達にもご協力いただいています。

※1)韮沢靖(にらさわ・やすし)
『仮面ライダーカブト』、『仮面ライダー電王』などの仮面ライダーシリーズや『海賊戦隊ゴーカイジャー』、『ゴジラ FINAL WARS』などのクリーチャーデザインで知られる世界的に著名なクリーチャーデザイナー。2016年2月、腎不全により急逝。

▲韮沢靖さんの怪人デザイン画。

──私は存じ上げなかったんですが、韮沢さんはその世界では、ものすごいカリスマ的存在の方みたいですね。うちのデザイナーのDLOPが「すごい!」と興奮していました。

佐藤:
韮沢さんは、実際にスーパーライブ(年に1度、石巻市で行われる龍の会館ライブ)にも足を運んでくださいました。龍のライブを見て涙する姿が印象に残っています。
また、韮沢さんのトークライブに龍を呼んでもらったり、韮沢さん関連のイベントで自ら龍のグッズ販売に立たれたり、本当に被災地の子ども達を想い、龍を大切にしてくださいました。

──龍が伝えたいことや、世界観や活動に共感されていたんですね。子ども達だけでなく大人も巻き込む、何か「信念」のような世界観があるのだと思います。

▲韮沢靖さんと龍。固い絆によって結ばれていました。

活動を通じて、子どもたちに勇気を与え続ける

佐藤:
幼稚園や保育園への無償訪問、イベントでのショーのほかに、2014年からは毎年、大きな津波被害を受けた宮城県石巻市にて『破牙神ライザー龍 スーパーライブ』を開催し、全席指定で、毎年1,608人の子ども達とその家族を無料で招待しています(※2016年からは、1公演増やし2,010人を招待)。

▲昨年のスーパーライブ2016のポスター。

佐藤:
私たちがスーパーライブ開催に至ったのは、気仙沼市の幼稚園へ公演に行ったときに、親御さんからこんな話をきいたことがきっかけです。

テレビヒーローのライブツアーが毎年仙台にやってきて、テレビで盛んに宣伝するので、子ども達は見に行きたがる。でも、ライブの観覧料は3,800円。

片道3時間近くかかる気仙沼から親子4人でいけば、高速代やガソリン代、昼夜の食事代も含めると3〜4万円の出費になる。本当は見せてやりたいけれど、仮設住宅に住み、仕事も再開できずにいる身としては、1日に使える金額じゃない。
仮設住宅では大きな笑い声も出せず、遊び場所もなくなり、たまには大きな声でヒーローを応援させてあげたいのだけれど…。

この話をメンバーとした時、一人のメンバーが発した「俺たちがやらなきゃ、その家族の夢は、夢で終わってしまう」という一言で、スーパーライブの開催が決まりました。

▲スーパーライブの様子。迫力満点のショーは、子ども達だけでなく大人まで引き込まれます。

▲先ほど紹介した、韮沢さんがデザインした怪人キャラクター達。

佐藤:
また、リュウプロジェクトメンバーの1人が、ステージ4のガンになったことをきっかけに、2016年5月から全国の18歳までの子ども達を対象にした「ヘアードネーションプロジェクト」も始動しました。

小児がんなどの理由で髪の毛を失った子ども達に一目でカツラだとわかる安価なウィッグではなく、人毛を使用した完全オリジナルウィッグを届けて、笑顔を取り戻してもらいたい——。
破牙神ライザー龍の活動で度々訪れている東北大学病院小児腫瘍センターと連携しながら、このプロジェクトを進めています。今春、福岡県に住む女子高生にオリジナルウィッグの提供が決まりました。

▲東北大学病院小児腫瘍センターのスタッフの皆さんと。

──震災後に始まったリュウプロジェクトも、ヘアドネーションプロジェクトも、子ども達に笑顔を取り戻してほしい」という思いは、同じなのですね。

佐藤:
はい。その通りです。

大人の本気が子ども達を笑顔にする。龍は本当に「本物のヒーロー」だった

──最初に龍をみたとき、そのクオリティーに本当に驚いたんです。そこばかりが気になったんですけど、龍のブログを拝見していると、どの写真も本当に子ども達が嬉しそうで。みんな龍に触ろう!触りたい!って小さな手を前に差し出して、全身で龍を感じようとしていて。

なんかそんなお写真をいくつも拝見しているうち、龍の存在意義みたいなものが、伝わったというか…。

言葉でうまく表現できないんですけど、子ども達をここまで夢中にできるのは、このクオリティーがあってこそで、じゃあこれだけのクオリティーを何故作れたのか?ということを考えてみると、HEROのスタッフの皆さんが、プロ意識を持って本気で取り組んでいらっしゃるからこそなのではないかと。

龍の本気は、つまりスタッフの方たちの本気で、それがきっと子ども達に伝わっているんだと思うんです。
「子ども達のために」という強い思いが、龍を通じて子ども達を笑顔にする。

だからこそ、ヒーローなのだと。それが「本物のヒーロー」なんだと思ったんです。龍は「本物のヒーロー」なんだと。

佐藤:
ありがとうございます。

もっと多くの子どもたちに、夢や希望を与えていきたい!しかしかさむ交通費がネックに…

──熱くなってしまいましたが、最後にチャリティーの使途を聞かせてください。

佐藤:
NPO法人HEROの決算書は、仙台市のホームページで誰でも閲覧できます。
改めて見ると驚いてしまうのですが、昨年度の年間の交通費は実に160万円超。月平均すると約13万円になります。

年間200回を越す無償公演や、全国の病気や怪我で髪の毛を失った子ども達のもとに採寸に行ったりする私たちにとって、とりわけ交通費の確保は切実な問題です。
今回のチャリティーで、1ヶ月分の交通費を集めることを目標にしたいと思います。

──震災から時が経ち、支援が減っている中で、ペースを落とさず活動を続けているのは本当に素晴らしいことだと思います。ぜひ子どもたちに夢を与え、笑顔にするお手伝いができればうれしいです。ありがとうございました!

▲Tシャツを通じて、子ども達に笑顔を届けるヒーローのお手伝い!

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜編集後記 by山本〜

今回のNPO法人HEROさんとのコラボ。「キャラクター」という新しい切り口に、まずは知るところから始めたのですが、知れば知るほど、龍のことがどんどん好きになっていく自分がいました。
ヒーローって、どこか「強さ」を象徴する存在であると思うのですが、龍の強さは、間違いなく「子ども達のために」とプロフェッショナルに徹する、裏方のスタッフ達の思いだと感じます。

本当にかっこいいヒーローの後ろには、本当にかっこいい大人達の熱い物語が潜んでいました。

NPO法人HERO RYU PROJECT(リュウプロジェクト)ホームページはこちら
NPO法人HERO HAIR DONATION PROJECT(ヘアドネーションプロジェクト)ホームページはこちら

▼山寺宏一氏歌唱『Action For The Future』

09design

今回のデザインは、JAMMINのキャラクターと龍がコラボ!一緒に肩を組んで何かを企み中。
…なになに?「次はアイツを笑顔にしてやろうよ」?

“Be the person that makes someone smile”. 
龍のように「誰かを笑顔にできる人になろう」。そんなメッセージを添えました。
ゆるいタッチで、男女問わずカジュアルに着ていただけます◎

Design by DLOP

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【THANKS】NPO法人HEROより御礼とメッセージをいただきました! – 2017/8/23

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