CHARITY FOR

アートが私たちの生活を豊かにしてくれる。じゃあ、アートに従事するアーティストたちの生活はどうか?〜NPO法人芸術家のくすり箱 

会社などの組織に属して働いている方にとっては、「給料」はもちろん、「健康保険」とか「労災保険」とか「年に一回の健康診断」とか、そういった保障や福利厚生があるのが普通ですよね。

「キャリアアップ制度」とか「リフレッシュ休暇」とか、会社によってはもっと充実した制度がある場合もあります。

職業として成立し、バックアップしてくれる体制があるからこそ、安心して仕事に打ち込むことができるし、安定した生活を送ることができる。

−−しかし、芸術家の場合はどうでしょうか?

「芸術家を生業にしていくこと」はそう簡単ではありません。技術を磨くハードな練習や、不規則なスケジュール、目指す表現を追求するための挑戦など身体を酷使ししやすい活動環境のなか、何かあった場合にも組織的なバックアップがほぼありません。

今週のチャリティー先は、芸術家のくすり箱。アート活動をしているアーティストたちの健康をサポートし、支える活動をしています。

今回は、芸術家のくすり箱事務局の小曽根さんと福井さんにお話をお伺いしました。

今週のチャリティー

NPO法人芸術家のくすり箱

身体を資本として表現活動する芸術家に向けて、身体ケアに関する専門的なセミナーや情報提供を通じて「芸術家のヘルスケア」の啓蒙活動・サポートを行っています。

活動を続けていくために「ヘルスケア」の観点からアーティストをサポート

−—活動の内容を教えてください。

福井さん:

わたしたちは、芸術家の活動をヘルスケアの側面からサポートしています。
具体的な活動内容としては、芸術家の方に向けてヘルスケアのセミナーや、芸術家の活動特性を理解した医療関係者を増やすためのセミナーを開催したり、メディカルチームがリハーサルから公演当日までを通してサポートにつくプログラムを実施したりしています。

スポーツをイメージしていただくとわかりやすいのですが、「スポーツ医学」という言葉がありますよね。

野球のピッチャーが肘を痛めた場合と、一般の方が日常生活で肘を痛めた場合、治療のアプローチや再発防止の方法は異なってきます。だから、競技特性をよく理解した専門のトレーナーや医師の方たちが復帰のために貢献しています。

芸術家の場合も、同じこと。ダンサーの人が足を痛めた場合と、一般の方が足をくじいた場合とでは意味合いは全く異なりますよね。

でも、日本では芸術家の方たちに芸術活動に生かせる医療やトレーニングが普及しておらず、また、芸術家の特性に応じたサポートができる医療従事者などの専門家も少ないというのが現状です。

だからこそ、アーティストの方たちが活動を続け、才能を発揮していくために、活動の基盤のひとつとして、芸術と医科学の分野をつないでヘルスケアを普及すべくサポートをしています。

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医療者・トレーナー等が、バレエの動きのメカニズムを知るための実演付きレクチャー。

−—なるほど…。「芸術家」というときらびやかなイメージをつい浮かべてしまいますが、そういった側面自体考えてみたことがなかったです…。
なかなかニッチな課題ではあるかと思うのですが、活動を続けられるなかで、変化などはありますか?

小曽根さん:

活動を始めて10年、少しずつ変化を感じるようになってきました。

以前は「ケガをしても自分でがんばる」というのが業界としても割と当たり前というか、「体をコンディショニングする」という意識が希薄だったんですね。

「せっかくのチャンスをもらったから、足が痛いけど我慢しよう」、「大役だから、何がなんでも乗り切ろう」と目の前のパフォーマンスに集中するあまり、どうしても身体のことが後回しになってしまう。

バレエ団や劇団など、芸術団体にヘルスケアサポートを提案しても、まだその必要性も認識されていない感じでした。

でもヘルスケアをおろそかにすると、結果としてケガを招いたり、下手をするとその後の芸術家としての人生を左右する事故を招きかねません。

そうなる前に、「自分の体に目を向けること」「専門家の力を借りて能力を引き出すこと」を知って、存分に活躍してほしいと思って活動を続けていましたが、少しずつ芸術家の方たちに「ヘルスケア」の重要性を認知してきてもらっていると感じます。

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世界の先端を走る芸術家が多く取り入れているコンディショニング方法を体験(ジャイロキネシス)。

−−なるほど。

福井さん:

あとは、この10年の間にSNSが発達し、少しずつ情報共有が広がったことも、大きな変化です。

身体を動かしてパフォーマンスする芸術家たちにとっては「ケガをした」という事実は、キャリア的にマイナスイメージになるので、人に言わずに隠してしまい、ケガをしたときどうすればいいか、ケガを防止するためにはどうしたらいいかといった情報が表出って共有されることがありませんでした。

情報が明るみに出てこないと状況も改善されないままになってしまいますが、今はネットを通じて、個人レベルで情報を交換したり、体験や学びをシェアできたりする。その影響は大きいです。

「芸術家が活動を続けていくためには、まずは体が資本」。芸術家の活動を支えていくために「ヘルスケア」に着手

−—活動を始められた背景をお伺いしてもよろしいでしょうか?

福井さん:

私たちはどちらもダンス畑の出身なんですが、当時周りにケガをする人たちが多かったり、ケガをしたときにどうしたらいいか、そういう情報が全然なかったりということがありました。

私は日本で一番大きな芸術系団体の職員を10年ほどしていました。

そこでとっていた統計調査で、芸能実演家の活動と生活実態調査というものがあるのですが、その数字をみると、25年前から芸術家(この調査では音楽・演劇・舞踊・演芸などの実演家)の活動環境や抱える状況が、あまり変わっていないということがわかりました。
これだけ社会が変わっているのに。

芸術家のくすり箱を始める前、半年ほどニューヨークに滞在したのですが、アーティストたちを支えるNPO団体がたくさんあったんですね。

単純に「アメリカが進んでいる」ということではなく、現地で活動する人たちが自ら声を上げ、一つずつ一生懸命問題に向き合って、情報を発信し、周囲を説得して闘ってきたからこそ、結果として環境が整ってきている。

その事実を目の当たりにしたとき、日本のアーティストを取り巻く現状を変えるためには、誰かが具体的な行動を起こさなければ何も変わらないと感じ、活動を始めたという経緯があります。

小曽根さん:

アーティストたちが困っているから助ける、というよりは、素晴らしい活動をしているのにもかかわらず、まだまだ活動基盤が整っておらず、労災などの保障も他の職業に比べて整っていません。

そういった厳しい環境下で芸術家が活動を続けていくためには、課題はいろいろありますが、その中でもやはり身体は資本。
そこで「ヘルスケア」に着手したんです。

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テーピングテクニックをセルフケアとして演習するセミナー。

「ケガがターニングポイントになり、前よりも良い踊りができる知識を得た」。バレエダンサー・山田さんの場合

では、ここで実際に芸術家のくすり箱でヘルスケア助成を受けた芸術家の方の声を聞いてみましょう。

6歳でバレエを始めた山田美友さんは、新鋭の若手ダンサーとして注目されていた矢先、公演中に左足のスネを骨折しました。芸術家のくすり箱でヘルスケア助成を受け、治療・リハビリ・身体機能回復の向上とケガ再発予防に向けたコンディショニングを行いました。

その後、本格復帰を果たし、初めて主役の座も射止めたのだそうです。

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PNFによる施術。ケガの部位だけでなく衰えた筋力、神経系などにアプローチ。ケガの原因になった弱点の改善も図っています。

(助成終了時のインタビューより)

芸術家のくすり箱のトレーニングを受けて、考え方ややり方、感覚もすごく変わりました。

ケガをしたことがタイムロスではなく、バレエ人生においてのターニングポイントになったと思います。きっと前より良い踊りができると確信しています。

まずはケガをしないこと!そして主役で踊ること。私が踊ることで、夢や幸せを与えること。それが今まで助けていただいた皆様への一番の恩返しになると思います。

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ケガから復帰後、はじめて主役に抜擢される大活躍する山田さん。

「芸術家」が職業として成立し、最大限のパフォーマンスを発揮できる社会になるのが理想

さて、芸術家のくすり箱の小曽根さんと福井さんにインタビューを戻しましょう。

−−目指している最終ゴールというか、理想の姿を教えてください。

小曽根さん:

芸術を生業にする個人や団体が、専門的な医療やコンディショニングを気兼ねなく受けられる環境が理想です。
たとえば、団体には専門家が必ずついていて、いつでも相談できるとか。

…つまり、芸術家のくすり箱が必要なくなるということですね(笑)。

福井さん:

それが究極の理想ですね。

小曽根さん:

ただ、現状としては「専門家の人が欲しいけれど手が回らない」というカンパニーの声も多いので、私たちが集中的に体制を作り、利用してもらうことで少しずつ芸術家のヘルスケアに着手するハードルを低くしていきたいと思っています。

あとは、芸術家の方からいろんなニーズを寄せてもらい、実績をどんどん貯めて、「芸術家にとってヘルスケアは役に立つ」というエビデンスを築いていきたいですね。

福井さん:

芸術家が職業として成立し、彼らが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境が提供される社会になればと思っています。

チャリティーは、アーティストの方々の公演サポートのための資金としてお使いいただきます

−−最後に、今回のチャリティーの使途をお伺いしてもよろしいでしょうか。

小曽根さん:

私たちは、昨年「公演救急ガイド」というものを作りました。

公演の現場においては、怪我はあってはならないものですが、リスクがあるのは確かなことです。でも、その万が一に備えることが業界のなかで共有されておらず、経験値だけが頼みのつなとなっていました。

そこで、芸術家や制作者、スタッフなどの舞台に関係する方々が、知っておきたいこと、あるいは万が一のときの行動ガイドとなるようまとめたものです。

応急処置のために必要なもののチェックリストや対処法、問題発生時の関係者連絡先リストアップなど、“あったらいいな”を形にしたもので、芸術家のくすり箱のホームページからもダウンロードいただけます。

これをより多くの芸術家の方に知っていただくと同時に、現場のフィードバックをもとに改良を重ね、より良いものにしていきたいと思っているのですが、今回のチャリティーはこの公演救急ガイドバージョンアップのための資金として使わせていただきます。

福井さん:

例えばどんな現場にいても、とっさの時に使えるように、スマートフォンに適したフォーマット作りにも取り組みたいと思っていますし、より使いやすいウェブサイト作りにも生かしたいと思っています。

−−ありがとうございます。今後の活躍も期待しています!

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事務局スタッフ。左から2番目が福井さん、3番目が小曽根さん。

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜編集後記〜

カフェでちょっと目にする絵に心癒されたり、かかっている音楽にホッとしたり。
「芸術家」というと遠い存在のようにも感じるのですが、私たちの生活は、実は芸術に溢れているように思います。

そして、その芸術の裏には必ず、それを生み出した「芸術家」が存在します。

正直、今回お話をお伺いするまで、「芸術家の方たちの生活の裏側」を深く考えてみたことはありませんでした。小曽根さんと福井さんのお話をお伺いし、「なるほど…」と考えさせられることが多々ありました。

舞台の上だけにスポットライトを当てるのではなく、芸術に従事する一人ひとりの方の生活という側面にスポットライトを当て、サポートを続ける芸術家のくすり箱の活動はすばらしいと思います。

芸術家の方が、もっと自由にのびのびと活動できたとき、芸術の持つポテンシャルがもっと引き出され、もっともっと豊かな世の中になるような気がするのは、私だけでしょうか?

芸術家のくすり箱へのチャリティーに、どうぞご協力ください!
芸術家のくすり箱ホームページはこちら

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“Imagination is the beginning of Creation”. 「想像は、創造の始まり」、つまり、想像できることは、創ることもできること。

ひとつのインスピレーションが、活動や作品の大きな原動力となるアートの世界を表現すると同時に、私たちがアーティストの環境を想像することで、彼らの生活を少しでもよくする環境を創るお手伝いができるのではないか、という思いを込めました。

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