「福祉」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
「人のためにやっていて、すごい」、「たいへんそう」、「重労働」…ほかにもあると思いますが、「楽しそう」というイメージは、なかなかそう簡単には出てこないのではないでしょうか。
今週のチャリティー先は、東京を拠点に活動する「医療福祉エンターテイメント集団」、NPO法人Ubdobe。
クラブイベントやトークイベント、体験型イベントを主催し、これらを通じて、医療福祉従事者だけでなく、福祉に興味がない人たちにも福祉を楽しく、かっこよく身近に感じられる活動を精力的に行っています。
人を扱う仕事なだけに「まじめ」、「固い」といった印象もある医療福祉業界。
そんななかで旋風を巻き起こし続ける代表理事の岡さんにUbdobe立ち上げの経緯や思いを、また副事務局長兼中国支部長の近井さんに具体的な活動内容についてお話をお伺いしました。
▲Ubdobe代表理事の岡勇樹さん。
NPO法人Ubdobe(ウブドべ)
「音楽×アート×医療福祉」というキーワードでクラブイベントやアートフェス、一般の人や医療福祉従事者に向けて数多くのイベントのプロデュースを行い、「あらゆる人々が積極的に社会参加できる世界」を目指しています。
当時の自分は、音楽が好きで夜DJバーで働いたりクラブ通いで毎日朝帰り。夕方に起きてきてまた仕事や遊びに行くという昼夜逆転生活を送っていました。
そんな中、母親がガンで入院することになったんです。
母親が入院してからの半年の間、心配も特にしていなかったし、それまで通りの生活をしていました。普通に元気になって退院するだろうと当然のように思っていました。
まさか亡くなるなんて、思いもしなかったんですよね。
母親は7月に亡くなったんですが、死ぬ3日前になって病院から「そろそろ危ない」と連絡があって。
3日間しかなかったんです。最期、母親が亡くなるとわかって、一緒に過ごす時間が…。
あまりにも唐突で、何を伝えたらいいかわからないという感じでした。
だって、死ぬなんて思ってなかったから。ガンがどんな病気か、わかっていなかったから。
僕のことが心配で、なかなか自分の体を治す段階に入れない、入院に踏み切れないというようなことが書いてありました。
さらに、日記から、母親が2年間、家族にだまって闘病生活をしていた事実を知りました。
もし自分がまともな人間だったら、闘病を始めた最初の半年ぐらいで母親の変化に気づいてあげられて、母親は治療に専念できたかもしれない。
そしたら、残りの1年半でガンを治療できていたかもしれない。
自分がこんな生活を送っていたせいで、母がガン治療に専念できなかった。
遠回りかもしれないけれど、母親の命を縮めることに自分が関わっていた。
何も知らなかったことを、本当に後悔しました。
▲Ubdobeが主催する医療福祉系トークイベント【Well CON】。経営者、医療福祉従事者、学生などが参加し、ドリンクやフードを片手に交流を深めます。
ガンって実際になるんだよっていうこともそうだし、もしガンになったらこういう対処やサポートが必要なんだよっていうことを、友人たちに知ってほしいと思ったのが、活動の最初です。
▲障がいや病気の有無に関係なくすべての子どもたちが主役になる【Kodomo Music & Art Festival】。
単純にそれだけなんです。
僕自身「福祉」とか「介護」に最初からものすごく興味があったわけじゃないんです。
ただ、小さい頃から戦争だったり差別だったり、同じ人類なのに不当に扱われる人たちがいることにはいつも腹が立っていました。
僕は訪問介護と障がい児移動支援を6年間やっていたんですが、そのなかで出会った人たちが、みんなほんとにファンキーで面白い人たちばっかりだったんですよ(笑)。
でも、世間ではただ障がいがあるという理由で、行きたいお店に入れなかったり、やりたいことができなかったり、外出自体できなかったり、制限が多い。
「何だよこれ、クソだな」って思うことを、彼らと一緒に変えていきたいんです。
音楽やアートを通じて、一般市民の方に対しても国に対しても、現状を変えるために発信していきたいし、闘っていきたいと思っています。
▲島根県にある離島、海士町の福祉人材確保プロジェクト【LOVE AMA】第1弾イベント。まずは海士町を知ってもらおうと、海士町からゲストを呼んでのトークあり、特産の牡蠣あり、音楽ライブありの船上パーティーを東京・お台場で開催しました!
たとえば「健常者」が足の骨を折る。松葉杖生活になって、その間は「障がい者」になるわけですよね。治ったらまた「健常者」に戻る。
昨日まで「健常者」だった人が、今日交通事故に遭って一生「障がい者」になるかもしれない。
脳性麻痺で「まったく歩けない」という人もいれば、「まったく歩けないわけじゃないけど、歩きづらい」という人もいる。
障がいって、スケールの差でしかないと思っていて、そこにどうのこうのと線を引く必要ってないと思うんです。
その辺はどうですか?
惑星と惑星どうしがぶつかって、新しい宇宙が生まれる。
自分のことと、自分以外のこと。その二つがぶつかることで摩擦が生まれて、カオスが生まれる。
カオスは複雑でその瞬間は理解不能な状態なんだけど、摩擦があるからこそ、そこに理解が生まれる可能性も見えてくるわけじゃないですか。
カオス自体がLOVEに変化するかどうかはわからない。でも、まずはカオスがないと、何の可能性も生まれてこない。
▲心臓病の子どもたちとのワークショップ【Challenging Heart Day】では、当日参加した子どもたちの声を録音し、アーティストUQiYO氏がMix。曲として創り上げ、最後は親御さんたちに披露しました。
でも現状は、障がいのある人たちとそうではない人たちと、ぶつかって摩擦するような機会が圧倒的に少ない。
それは環境であったり、制度であったりするんですが、障がいのある人たちと一緒になって取り組むことで、多くの人たちと摩擦を生み出すきっかけを作りたい。
摩擦を避ける人の方が多い社会ですが、自分ではなかなか動くことができない人たちと、「摩擦の渦」を作っていきたいですね。
あと…個人的にビジョンっていうのはあまり持たないんですが、自分にとって違和感のない社会にしていきたいですね。
僕「天一(『天下一品』…JAMMINと同じく京都が本店のラーメン屋)」のラーメンが大好きなんですよ。
週に2回か3回は天一のラーメン食べるくらい大好きなんですよ(笑)
京都最高!
寝たきりだったり、施設にいたりすると、そういうことってできないですよね。
「今日ラーメン食いたいなあ」と思っても、施設でうどんが出たら、うどん食うしかないですよね。外出するのに誰かの介護が必要だったら、介護の人が来る日にしか外出できない。
僕が天一のラーメンを好きなときに食べられるように、障がいとか年齢とかに関係なく、どんな人でもそれぞれ自分の好きなことができ、積極的に社会参加できるような世の中になってほしいと思っています。
ここからは、Ubdobe副事務局長の近井さんに活動の詳細や今回のチャリティーの使途についてお伺いしました。
▲近井さんは広島県在住。左からUbdobe中国支部のメンバー、近井さん、WellCON広島のゲストの方と。
「SOCiAL FUNK!」という医療福祉をテーマにしたクラブイベントや、「Well CON」と呼ばれる医療従事者や学生対象のトークイベント、行政と一緒になって「THE Six SENSE」という医療福祉系シュミレーションゲームのプロデュースなども全国各地で行っています。
今回のチャリティーは、Ubdobeが主催するクラブイベント「SOCiAL FUNK!」の開催費の一部として使わせていただきます。
▲過去に開催された「SOCiAL FUNK!」のフライヤー。この回のテーマは~Organ Donor~、「臓器移植」について。
都内で開催する場合、日程等の条件にもよりますが、会場費だけでも数十万円という金額がかかります。その半分程度、20万円を今回のチャリティーで集めたいと思っています。
医療福祉に興味がなくても、出演するアーティスト目当てに足を運んでもらって、音楽を楽しみがてら「今まで知らなかったこと」を知ってもらって家に帰ってほしい。そんな思いで活動を続けています。
でも、逆にいえば、重くなった空気も、次に始まるアーティストのライブが消してくれる、そんなところが良さだったりもします。
「臓器移植」や「ガン」は個人にとって、決して遠くはない話です。
たとえば、自分や友人がガンになったとき。
イベントで少しでも話を聞いていたら、「こういうサポートがあるんだ」とか「こういうところに行けばいいんだ」とか、そういうことがわかりますよね。
▲初開催のテーマが「KNOW(≠NO) MORE CANCER」、がんでした。がんにまつわるトークに加え、ライブも盛り上がります!ステージにはデコレーションで啓発マークであるリボンも表現。
知っているだけで、その後のアクションって変わってくる。
まずは「知ることから」だと思っています。
すばらしいご活動についていろいろ教えていただきありがとうございました!
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「SOCiAL FUNK!」は、医療や福祉に興味がない若者たちにきっかけと気づきを与え「摩擦」を生むプロジェクト。
皆さん、ぜひチャリティーにご協力ください!
▲先日3/4に開催した、NPO法人設立6周年パーティーでの一枚。会場はUbdobeが経営する医療福祉系セレクトショップ【HALU~Unique&Universal~】。医療福祉の情報やプロダクト、相談窓口などを設置。ヒトもモノも集まる場所を目指しています。
インタビューを終えて〜編集後記〜
文字数の関係でインタビューには掲載できなかったのですが、岡さんがおっしゃっていた次の言葉が印象に残りました。
「その立場になってみない限り、当事者意識を持つことはなかなか難しい。
けど、いつも言っていることは「ただいま」とか「いただきます」とか、顔を合わせてそんなさりげない会話をちゃんとしようよ、っていうことをまず伝えています。」
相手が誰であれ、相手をちゃんと見て、思いやりや関心を持って話しかける。
そんな小さな心がけの先に、世の中が良くなっていくカギが隠されているのかもしれません。
あと、京都出身ながら、カロリーにビビって天一へ行ったことが一度もなかったんですが、岡さんの話を聞いてこれは行くしかないと思いました(笑)
「クラブでやっている福祉イベントってどんなだろう?」と思われた方、以下の動画をぜひチェックしてみてください!
▼SOCiAL FUNK動画
––We keep on spinnin’ THE UNIVERSE with our Six SENSE to create the world of SOCiAL FUNK!––
“THE UNIVERSE”、“Six SENSE”、“SOCiAL FUNK!”、いずれもUbdobe主催のイベント名。医療福祉を身近に、社会をもっとファンクに、楽しく。そんなUbdobeの活動メッセージを込めました。
チョークアートのようなタイポグラフィデザインに落とし込み、カジュアルな雰囲気に仕上げています。
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