わたしたちは、どれほど障がい者への知識や理解があるでしょうか? 普段接する機会が少ない人にとって、障がいの程度や、どんなことが出来ないのかは未知の世界。しかし一方で、わたしたちが思っている以上に出来ることもたくさんあります。今週のチャリティーを通じて、皆さんの障がい者に対する見方が、少しでも広がることを願っています。
NPO法人モンキーマジックは、クライミングを通して身体障がい者の人たちの持つ可能性を大きく広げることを目的として設立しました。代表を務めるのは、2014年にスペインで行われたクライミング世界選手権・視覚障害者B1クラス金メダリストの小林幸一郎さん。
現在日本にいる身体障がい者の人は、およそ366万人。その障がいの程度には、それぞれ個人差があります。例えば、視覚障がい者は31万人以上いると言われており、先天的な人もいれば、何らかの理由で途中から失明する人もいます。また、広範囲が見える人から、局所的に見える人もいて、障がいの程度は実に様々です。モンキーマジックでは、そのような身体障がい者への理解を深める交流の場や、スクールを開催しています。
(視覚障がい者と同じ条件でクライミングをする場面。)
モンキーマジックのイベントには、主に視覚障がい者の人をはじめ、聴覚障がいや肢体不自由などの障がいを持つ人へのサポートも行っています。モンキーマジックのクライミングは、身体障がい者の人たちが自らの力だけで、課題を解決することを助け、その過程を通して日常生活力の向上に貢献しています。また、彼らの外出の機会や自然の中で過ごす時間を増やすことへも繋がっています。
健常者の人は登ることだけに集中しますが、障がい者の人はナビゲーターと呼ばれるガイド役の人と、コミュニケーションに集中しながら上っていきます。実際に、障がい者の人が上る現場を見にいったのですが、健常者の人以上に感覚が鍛えられている分、障がいを感じさせないほど上手に登る人も多くいらっしゃいました。
(応援の掛け声が威勢良く飛び交い、その場は温かい一体感が生まれていました)
そもそもクライミングは、「自己効力感」を育てると言われています。「自己効力感」とは、「やれそうな感じ」や「できる自信」を表す専門用語。人は、できそうだと思うことに対しては果敢にチャレンジしますが、できそうもないと思った途端あきらめてしまいます。実際にできることでも、本人ができなさそうと思ってしまっては、それ以上先に進めません。
クライミングには、そのような困難や障害に直面した人が、そのための自信を育てる効果があるという研究結果もあることから、モンキーマジックでは、チャレンジする人の背中を押すきっかけを多く作り出しています。
平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)|厚生労働省
現在は、茨城県つくば市にボルダリングジム「モンキーマジックつくばQ’t」を構え、障がいがあってもなくても一緒に楽しめるクライミングイベントを行っています。また、主に視覚障がい者を対象として、季節を感じながらクライミングが楽しめる、自然の岩場を利用したアウトドアスクールや、海外でのクライミングトリップなども開催しています。
今週のチャリティーは、仮設クライミングウォールを用いた障害者理解プログラムの実施や、より多くの視覚障がい者が参加しやすい環境の整備、スクール開催地等への容易な移動手段の確保、認知度向上のための広報活動などの活動資金として使われます。
フランスでは、多様な人々が暮らす社会において、特性を持つ人とどう向き合っていけば良いかを学ぶ機会として、クライミングが学校教育の過程に入っています。このように、クライミングは単なる運動ではなく、コミュニケーションや関係性を学ぶためのスポーツとも言えます。そうやって自分とは異なる人を理解し世界が広がっていくことが、ここでのクライミング体験を通して得られる楽しさでもあります。
壁を上手に上る障がい者の人を見て、障がいは出来ないことを指す言葉ではなく、その人の持つ1つの個性なのではないかと思いました。今まであまり意識されていなかった「障がい者ができること」。イベントに参加することで、彼らの本来持っている力について考えさせられました。今後、更にモンキーマジックの活躍の場が増えていくことを願っています。
TEXT BY SAORI MATSUO
法人名:特定非営利活動法人モンキーマジック
活 動:クライミングを通して、身体障がい者の人たちの可能性を大きく広げることを目的として活動する非営利法人。
住 所:東京都武蔵野市吉祥寺東町4丁目11番6号
H P:http://www.monkeymagic.or.jp/
GIFTED ¥62,400 CHARITY NPO法人モンキーマジック(6/22〜6/28) JAMMIN | Social Wear Brand