
さまざまな理由から飼い主と一緒に暮らすことができなくなった鳥を引き取り、新たな里親を探す活動を26年に渡り行ってきたNPO法人「TSUBASA(つばさ)」。
2026年4月には埼玉県新座市にあった保護施設を埼玉県羽生市に移転、現在は約115羽の鳥さんたちをお世話しています。
鳥との暮らしがひと昔前よりもポピュラーになってきているものの、正しい知識や情報にたどりつかないが故に、不幸になってしまう鳥がいるという事実。
最近では、希少種であるということで国際的な規制が入るよりも前に鳥を迎えた飼い主さんたちが、高齢や病気、入院などを理由に鳥を手放す際に、規定の登録票を持たないことから、すぐに引き取りができないということも起きているといいます。
スタッフの髙橋怜未(たかはし・れみ)さん(22)、望月健人(もちづき・けんと)さん(38)、井伊順子(いい・じゅんこ)さん(56)に、お話をお伺いしました。

お話をお伺いした、左から井伊さん、髙橋さん、望月さん。手前にいるのはルリコンゴウインコの【ルリ】
NPO法人TSUBASA
さまざまな理由から飼い主と一緒に暮らすことができなくなったインコやオウム、フィンチを保護し、新たな里親を探す活動を行うNPO法人。
飼い主と鳥とが終生幸せに、そして健康に暮らせるよう、飼い鳥の適正な飼養に関する情報提供や、学びの場を全国で展開しています。
INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2026/11/02

新施設にて、小型鳥のご飯をあげているところ。「はやく、はやく!と言わんばかりの動きや目線で猛烈アピールされるので、急がされます(笑)」
──今日はよろしくお願いします!最初に、TSUBASAさんのご活動について教えてください。
髙橋:
さまざまな理由から飼い主さんと一緒に暮らすことができなくなった鳥を保護し、新たな里親さんを探す活動を行っています。
「人・鳥・社会の幸せのために」という理念を掲げ、鳥について発信していくことはもちろん、飼い主さんや愛鳥家さんだけでなく、多くの方に正しい鳥さんの情報を知ってもらうための啓発活動にも力を入れています。
飼い鳥は、小型でも10年、大型だと50年、おそらく一般的に想像される寿命よりもだいぶ長く生きる生きものです。そのことを皆さんに知ってもらい、鳥さん、飼い主さん、社会全体もよくしていけたらと思っており、幅広いテーマで啓発活動を行ってきました。

「愛鳥祭2026」の無料セミナーの様子。「普段開催しているシンポジウムには、有料であっても学びたいという意欲の高い愛鳥家さんたちが集まります。一方で無料セミナーは、お買い物をメインに来場された愛鳥家さんたちにも、気軽に学びに触れていただける機会となっています。愛鳥さんとの暮らしに役立つ身近なテーマから、社会や業界のこれからを考えるきっかけとなるテーマまで、幅広いジャンルの学びを得られる場となりました」
井伊:
9月には、10回目の開催となる「愛鳥祭」も無事終了しました。
企業・クリエイターによる展示販売の他、会場内では誰でも聴講できる無料セミナーを開催しており、今回は獣医の先生や、動物愛護法に詳しい新聞記者の方、行政書士の方などのお話のほか、近年、自然災害が多いですが、もし鳥さんと被災した際にどうすればいいのかといった話をペット防災の専門団体の方に話していていただくなど、幅広いテーマを扱っています。また別会場では、有料・事前申込制のシンポジウムも開催しました。
社会が幸せでなければ、鳥も人も幸せになれません。私たちの発信を通じて、飼い主さんや愛鳥家の皆さんが、鳥さんとの暮らしの理解をより深めるきっかけになればと思っています。

「愛鳥祭2026」にて、愛鳥祭1日目の最後を締めくくる恒例のおたのしみ企画【大抽選会】。「第1回より司会を務めってくださっている愛鳥家・ぽこさんの軽快なトークも、このイベントの大きな魅力のひとつです。会場全体を明るい雰囲気で包み込み、抽選会では『鳥爺』ことTSUBASAを設立した松本も思わず熱が入り、参加者の皆さんとともに大いに盛り上がります」

移転した新施設の外観。「元ペットショップ兼住居という珍しい物件を購入し、リフォームを行いました」
──保護施設の方のご活動はいかがですか。
髙橋:
2026年の大きな出来事として、施設の移転がありました。
15年に渡って埼玉県新座市で活動してきましたが、2026年4月、同じ埼玉の羽生市に拠点を移しました。「飼い主さんが飼えなくなった鳥を引き取り、新しいご縁をつなぐ」という活動自体は何ら変わりありませんが、建物が変わったことで普段のお世話の方法が変わってくるところもあり、日々試行錯誤しながら取り組んでいます。

新施設で過ごす鳥さんたち。「保護・譲渡活動のためにつくられた以前の施設に比べ、お家感が強くなったと感じています。ご家庭で大切にお世話をされ育ってきた鳥たちが、家庭の雰囲気を忘れることなく里親さんとご縁を結び巣立っていければと思います」
──たとえばどういったことですか。
髙橋:
以前の建物は、鳥さんたちの生活スペースのすぐそばに、放鳥して日光浴ができる室内のスペースがありました。
新しい建物に放鳥スペースを設けることは難しいと思っていたのですが、ありがたいことにクラウドファンディングで多くの方にご支援いただいて、設置することができました。

2階バルコニーにて、放鳥の様子。「基本的にはケージ内での放鳥ですが、スタッフがつきっきりで見守れるタイミングには、ケージ外で自由に過ごしてもらうこともあります。スタッフの頭の上に乗っているのは、飛ぶのが大好きなヨウムの【むく】。広いバルコニーを気持ちよく飛んだ先が、たまたまスタッフの頭の上でした(笑)。ここではスタッフ=止まり木になりがちです」
髙橋:
ただ、放鳥スペースと鳥さんたちの生活スペースの階が異なる関係で、一羽ずつ階段を上って降りて鳥さんを運ぶのが少し大変だったり、キャリーに入れての施設内移動とはいえ、各部屋のドアの開閉など、人の出入りを確認しながら慎重に運んでいます。
また、新しい建物の放鳥スペースは外に面しているので、天候や気温によって放鳥できない日もあります。
──そうなんですね。
髙橋:
限られた人数の中で、リスクを減らし、いかに鳥さんたちに喜んでもらえるかを考えながら、皆で協力して施設づくりをしています。
スタッフも皆、少しずつ新しい施設での飼育に慣れてきましたが、これから初めて迎える羽生市の冬、予想がつかないこともあるかもしれないので、鳥さんたちを注意深く観察しながら、一つひとつ対応していきたいと思っています。

新施設にて、鳥さんたちの生活スペースの様子。「写真は、セキセイインコやコザクラインコなどの小型鳥が暮らすお部屋です。部屋の一部にパーテーションを設置することで、ヒーターの熱を逃がしにくくし、保温が必要な鳥さんも安心して暮らせる工夫をしています」
──お引越しは、鳥さんたちにとっても大変だったのはないですか。
井伊:
鳥さんたちは車で数回に分けてお引越しをしました。移動途中で緊張したり、移動直後に疲れが出た子はいましたが、体調を崩す子はいなかったので、よかったです。
移転をきっかけに、また新しい方が足を運んでくださったり、ボランティアに参加してくださったり、新たな交流も生まれています。
新しい施設でも、愛鳥塾や施設開放を行っています。
もとペットショップ兼住居だった建物なので、お家のようなリラックスした雰囲気で、鳥さんと触れ合っていただける機会もあります。

施設開放日に、お客様とふれあうキバタンの【メープル】。「我々スタッフに甘えてくれることは嬉しいことではありますが、オンリーワンにならずにどんな人とでも友好的な関係を築いてほしいと思っています。鳥たちの社会化のため、施設開放日にお越しいただいたお客様に協力していただき、ふれあいの時間を設けることもあります」

愛知県一宮市のレスキュー現場にて。「現場で保護した鳥たちのお世話をしているところです。翌日には動物病院での健康診断、個体識別のための足環装着、検査のための検体採取を実施しました」
──最近のレスキューはいかがですか。
望月:
2026年7月に愛知県一宮市の多頭飼育崩壊現場で、コザクラインコ21羽、ニワトリ4羽、オカメインコ2羽、キンカチョウ2羽のレスキューがありました。
マンションの一室でコザクラインコが放し飼いされ、どんどん数が増え、近隣から「どうやら飼育崩壊が起きている」「飼いきれない数の鳥がいる」という相談が行政の方に入ったようです。この件では保健所がとても熱心に動いてくださって、TSUBASAは他団体さんと協力してレスキューに入りました。
非常に運の良かったケースで、保健所の方で里親募集をかけてくださり、保護した鳥さんたちは皆、近くで里親さんが決まりました。なので、TSUBASAが引き取った鳥さんはいません。
井伊:
犬や猫の場合は、鳴き声や糞尿のにおいなどによって周囲から気づかれやすいところがありますが、鳥の場合は意外と、近所に知られずに飼えてしまうところがあります。私たちが知らないだけで、鳥の多頭飼育崩壊は、実はすごく身近に起きている可能性があります。

「写真は、2021年に対応した文鳥103羽レスキューの現場です。マンションの一室で文鳥を放し飼いでお世話をしており、掃除はできておらず、糞便は積み重なり、窓も締め切っているため悪臭が部屋中に漂っていました。多頭飼育崩壊は犬や猫だけでなく、鳥でも決して珍しいことではありません。鳥の多頭飼育崩壊という問題もあるということ、そしてその現場で実際にレスキュー活動が行われていることをまずは知っていただきたいです」
井伊:
また相談を受ける保健所も、犬や猫は事例が多いので対応策を打ち出せても、鳥のことはあまり分からず、なかなか解決に向けて進まないということもあります。
相談があっても、実際にレスキューに入っていける道筋ができるまでが実はものすごく大変で、今回の一宮のケースは、その道筋づくりのプロである行政が積極的に関わってくださり、保護した鳥さんたちが皆、近くで里親さんが決まったことも含めて、すごく幸運なことでした。
いちばん良いのは、鳥さんのレスキュー自体が起こらないことです。ですが、もしレスキューが必要となった時、行政とも協力しながら鳥さんたちの命を救えた事例として発信していきたいと思いました。

多頭飼育崩壊現場からレスキューされたうちの一羽【パース】。「飼い主は屋外で4羽から飼育をスタートし、結果的にお引き受け時には45羽という羽数になっていました。この子にも他の子と同様に、過度な発情に起因したと思われるヘルニアがありますが、気質は穏やかで最近は時折手にも乗れるようになってきました。現在も里親さんを募集しています」

看護が必要な鳥さんたちが過ごす部屋。「以前の施設と比べて約2倍の広さになり、飼育管理がしやすくなりました。以前の施設の看護部屋は人通りが多かったのに対し、現在は隔離された空間となっており、スタッフのみがお部屋に入るかたちとなり、鳥さんたちも以前より落ち着いて安静に過ごせる環境になったのではないかと思います」
望月:
最近は、特に高齢の方の手放しに関して、「保護したくても保護できない」ケースが出てきており、課題に感じています。
──どういうことでしょうか。
望月:
ずっとお伝えしてきたように、大型の鳥さんは50年、60年と生きます。
50年、60年前から鳥を飼っている方が高齢になり、病気や入院をきっかけに手放したいという相談をいただくことがあるのですが、その時に登録票(国際希少野生動植物種登録票/以下、登録票)をお持ちでないことから、すぐに保護ができないというケースが立て続けに起きています。
「ワシントン条約(CITES、サイテス)」を皆さんご存じだと思います。
おおむね3年に1度開かれる国際会議で保護の必要性が見直され、1990年代以降、野生個体数の減少が著しい多くの鳥たちがCITES附属書Ⅰに掲載されるようになりました。これにより商業目的の国際取引は禁止され、飼育下にいる個体についても国への登録制度が設けられています。

(写真左)キエリボウシインコの【タロ】、(写真右)オオキボウシインコの【オッペン】。「それぞれやってきたご家庭は異なりますが、TSUBASAに来てから運命の出会いを果たしました。普段は別々のケージで過ごしていますが、一緒に放鳥した際にはほとんどの時間を仲良く寄り添って過ごしています。幸運なことに2羽とも登録票を取得しており、里親も絶賛募集中となっています。いずれは再びそれぞれの道を歩むことになるかもしれませんが、いつか2羽が素敵なご縁に恵まれることを願っています」
望月:
インコ・オウムでは50数種類が、CITES附属書Ⅰに掲載されています。
TSUBASAにもよくいるヨウムやキエリボウシインコ、コバタン、オオバタンなどもCITES附属書Ⅰに掲載されていますが、実はこれらの鳥は3、40年前、このような国際的な取り決めができるまでは、日本では何の規制にも引っかからないポピュラーな種類の鳥さんたちでした。
──そうなんですね。
望月:
その時代に鳥さんを迎え、自分の飼っている鳥さんがCITES附属書Ⅰに掲載されたことや、登録が必要になったことを知らないまま、今日まで過ごしてきた飼い主さんもおられて、いざ鳥を手放すという時に、登録の届け出をしていなかったがために、すぐに保護ができないケースが少なくありません。
最近、TSUBASAのもとには、キエリボウシインコ(2003年にCITES附属書Ⅰ掲載)、コバタン(2005年にCITES附属書Ⅰ掲載)の相談が相次ぎました。

オオバタンの【珊瑚】。「飼い主様のご病気により、緊急性の高いお引き受けとなりましたが、登録票がきちんと有効期限内のものであったため、非常にスムーズに移動することができました。
では、もしこのケースで登録票がなかったら……?飼い主様が入院できなかったり、鳥だけを家に残さざるを得なかったり。あるいは、保護団体が助けたくても手を差し伸べられなかったかもしれません。登録票が必要なことは理解しています。それでも、「ルールだから守るべき」とシンプルにまとめるには、あまりにも重い縛りがあると感じています」

オオキボウシインコの【きんとき】。「とにかく男性が大好きな子です。普段は控えめで大人しい性格ですが、びびっときた男性が視界に入るとおしゃべりの猛アピールが止まりません。きんときは飼い主様のご逝去によりお引き取りをしています。奇跡的に登録票取得に協力してくださるご親戚が見つかったため、TSUBASAで引き取ることができ、また里親さんも募集することができています」
──ええ‥登録の届出をしていないから保護ができないとなると、その鳥さんは行き場を失ってしまいますよね?どうなってしまうのですか。
井伊:
「国際希少野生動植物種登録票」がなければ、TSUBASAとしては手が出せません。
では、登録票がないために引き取れない鳥さんはどうなってしまうのか。まずは、登録の専門機関である環境省の関連組織、自然環境研究センターに相談していただき、取得するために努めていただくしかありません。
それでも取得できないとなった場合は、環境省に相談し、適法な引き渡し方法を確認したうえで、受け入れが可能な施設を探すことになると思います。ただ、この「施設を探す」というのは容易ではなく、入院等のために急ぎ手放したい高齢者の方にとってはとても困難です。
──確かに。
望月:
登録申請は、基本的に飼い主本人でないとできません。
なので、本人が認知症だったり病気だったりすると申請自体が難しいし、申請後にすぐに申請が降りるわけはなく、数ヶ月、下手すると半年以上かかることもあります。
手放す時になって初めて、実は登録が必要になっていたという事実を知るケースもあります。
飼い主さんが鳥さんをすぐに手放さなければならない状況でも、申請が降りなければ、こちらは待たざるを得ないのです。

TSUBASAがイベントにて掲示しているポスター。「自分が飼育している鳥が、まさか移動にハードルがあるとは思っていない飼い主さんが多いので、こうしたビジュアルでわかる掲示物を貼りだすことで、『うちの鳥に似ているのですが…』と、相談いただけるきっかけになっています」
──元の飼い主から引き取った方が、後から申請することはできないのですか。
井伊:
引き取った方が後から、はできません。
譲渡にあたって、法的に「代理人であること」が認められた人が、本人に代わって申請することは可能かもしれませんが、基本的には本人の申請で、さらにTSUBASAが対応するケースにおいては「法律で制限がかかる前から飼っていた」ということを証明しなければなりません。
50年も60年も前、鳥さんを迎えた時のレシートや領収証を残していることの方が稀で、そうすると、全て個別に自然環境研究センターに相談することになるわけですが、今日明日に入院しなければいけないという高齢の方の場合、ハードルが非常に高くなってしまいます。
──確かに…。
望月:
もう一つ大変なのが、登録票は一度の申請でずっと有効なわけではなく、「5年おきの更新」が必要なことです。
たとえばヨウムは、2016年にCITES附属書Ⅰに掲載され、登録票が必要になりました。TSUBASAもさまざまな機会に「鳥さんと飼い主さんのために、必ず登録を」と啓発してきました。
ただ、その時にせっかく申請して登録票を取得したのに、5年後の更新をしていなかったことで失効になり、すぐ保護できないというケースも最近、起きています。免許の更新のようなお知らせが届くなど、「人間側の工夫で、鳥さんの不幸をいくらでも防げるのに…」と、残念な気持ちになります。

キエリボウシインコの【はなび】。「飼い主様のご高齢に伴うお引越しがきっかけでTSUBASAへとやってきたはなび。推定年齢は、なんと63歳!TSUBASAで暮らす鳥たちの中でも最高齢となります。しかし年齢とは裏腹に、見た目は若々しく飼い主様からかわいがられてきたことがよく分かります。はなびの引き取りの際に全面的に協力してくださったのは、飼い主様の親族の方でした。おかげで今、はなびはTSUBASAの施設で毎日穏やかに過ごせています。この一件から、周囲との『つながり』の大切さを改めて考えさせられました」

ペットショップの一角を借りて行った、鳥たちのお世話に関するミニセミナーの様子。「TSUBASAをご存じない方、鳥さんを飼っていてお困りごとがある方などたくさんの方にご参加いただきました」
望月:
登録申請の際には、足環が付いていない鳥の場合は個体識別のため、鳥にマイクロチップを挿入することも義務付けられています。
飼育が難しくなった高齢の飼い主さんからの相談で、やはり登録をされたことがないキエリボウシインコのケースだったのですが、マイクロチップ挿入のために動物病院に連れて行くお手伝いのために、関西まで出向いたこともあります。

キエリボウシインコの【しょうりん】。「高齢の飼い主様が、ぎりぎりまでお世話を続けてこられました。ご家族による手厚いサポートはあったものの、大型鳥であるしょうりんを家族が引き継いでお世話を続けることは困難でした。TSUBASAに託すことを決心された後も、しょうりんには登録票がなく、取得には個体識別のためのマイクロチップの挿入が必要でした。しかし、獣医師による処置を受けるために動物病院へ連れて行こうにも、大きなしょうりんを移動させるのは困難で、手続きは簡単には進みませんでした。登録票の取得は、単に書類に情報を書き込めば済むものではないと、改めて痛感させられるケースでした。現在は、マイクロチップの挿入と登録票の取得を無事に終え、施設で新たな出会いを待っています」
望月:
高齢の飼い主さんの場合、鳥が大きいことや車の運転が難しいという理由で、鳥を動物病院に連れて行くハードルが非常に高くなることもあります。TSUBASAとしてもできる限りのことをしたいと思っていますが、スタッフが一人、丸一日抜けてしまうと、施設の鳥さんのお世話の方もあるので、スタッフのやりくりには苦労しています。
登録に関するありとあらゆる手続きのハードルの高さを感じる一方で、飼い主さんには、お互いの幸せのためにも、常に新しい情報のキャッチアップと、登録・更新を徹底してもらえたらと思います。
──本当ですね。
井伊:
普段から定期検診に通っていれば、動物病院でも新しい情報を得ることができますし、あとは環境省、ペットショップさんの方でも、「こういう登録票が必要です」という掲示をもっともっと積極的にしていただけたら、また違ってくるのかなと思います。
──鳥さんは何も悪くないわけで…、人間側の事情や都合で路頭に迷う鳥さんが出てほしくないですね。

セキセイインコの【ミモザ】と【マロン】。「お一人暮らしで身寄りのない飼い主様ご本人より『病気で自分の命が危ない』とお電話をいただいたのがきっかけで、切迫した状況の中での緊急レスキューとなりました。驚いたことに、飼い主様は私たちがレスキューに伺った翌日、ご自宅で息を引き取られたそうです。少しでも対応が遅れていたら、この子たちの命は助からなかったかもしれません。飼い主様が最後の力を振り絞ってTSUBASAへ連絡してくださったおかげで、無事に命のバトンを繋ぐことができました。レスキューされた2羽は、現在も施設で元気に暮らしながら、新しいご家族との出会いを待っています」

オカメインコの【しろすけ】。「しろすけの飼い主様は、ご病気により余命宣告を受けられ、お世話を続けることが困難な状況となりました。ご自身の体調も優れない中、ご自宅にお伺いした際には、お引き取りに向けた準備にもご対応くださいました。飼い主様からは『自分が生きているうちに、どうにか引き取ってほしい』という願いを直接伺っていました。ですが、お引き取り当日、対応してくださったヘルパーさんから、飼い主様がその前日に息を引き取られたことを聞きました。ご自身も大変な状況にありながら、最後まで大切な愛鳥のこれからを案じ、懸命に命をつなごうとしてくださっていたのだと、改めて痛感したお引き取りとなりました」
──TSUBASAの皆さまは日々、さまざまな背景を抱えた鳥さんたちと接しておられます。髙橋さん、望月さん、井伊さん、それぞれに印象に残っている鳥さんを教えてください。
髙橋:
2年前、私がTSUBASAに入った時にいたセキセイインコの「セージ」が特に印象に残っています。
セージは2021年の夏、血がつながった15羽でTSUBASAにやってきました。人馴れしておらず怖がりだったので、他の子たちがどんどん卒業して行く中、最後まで里親さんが見つからず、1羽だけTSUBASAに残っていた子でした。

キセキセイインコの【セージ】。「セージは、自家繁殖で増えすぎてしまったという理由から、血の繋がった15羽でやってきたセキセイインコたちの中の1羽でした。人よりも鳥と関わる時間の方が長かったこともあり、初めのうちは人が近くに行くだけでもケージの後ろへと逃げていってしまいました。そこで大好物であるオーツ麦を使って距離を詰めていくことにした結果、最終的にはほんの一瞬ではあるものの手にも乗ってくれるようになりました。今では新たな飼い主様のもとでたくさんの愛情を注がれて暮らしています」
髙橋:
「セージにも、素敵な家族が見つかってほしい」。
そんな思いで人馴れトレーニングを始めて、最初は怖がってすぐケージの後ろへ隠れていましたが、食いしん坊だったので(笑)、おやつで距離を縮める作戦を取りました。好きなおやつが見つかり、徐々に手からおやつを食べてくれるようになり、おやつがあれば手にも乗ってくれるようになりました。
私が初めて深く関わった鳥で、鳥は大人になってからでも、人との距離を縮めることができるということをはじめ、たくさんのことを学びました。時間はかかりましたが、2025年に新しい家族が決まり、そこでの元気な暮らしぶりを聞いた時は、とても嬉しかったです。
──望月さんはいかがですか。
望月:
1羽を選ぶのがすごく難しいですが…、特に印象に残っている鳥さんというと、今から20年ほど前、私がTSUBASAに入って初めて里親さんの対応をしたヨウムの「ねむ」でしょうか。
その昔、5歳児並の知能を持つという「アレックス」という有名なヨウムがいました。当時、その影響もあってか、ヨウムに対して「いつか飼って、いろいろとおしゃべりしたい」というイメージを持って里親希望に来られる方が少なくありませんでした。
ですが、ねむは全然おしゃべりをしない子だったんです。
ヨウムの里親を希望する方たちは、おしゃべりの能力を求めておられると思うので、まず最初に「この子は全然おしゃべりをしないんですよ」と説明していました。

ヨウムの【ねむ】。「TSUBASAにいた頃のねむは、人やほかの鳥を寄せ付けない、一匹狼のような子でした。無口な性格だったこともあり、どう接するのが正解なのか分からず、困った思い出があります。鋭い目つきも印象的な子でした。そんなねむですが、里親さんのもとにお迎えされてからはたくさん甘えるようになり、目つきもとても穏やかになりました」
望月:
ある時、ねむのことが気になったというご夫婦が来られて、いつものように「全然しゃべらないんですよ」とお伝えすると「全然気にしないです」とおっしゃって。
ねむはスタッフにも懐かず、手にも乗らない子だったんですが、このご夫婦とは初めて会ったにも関わらず、すぐに手に乗ったんですね。
TSUBASAがずっと開催してきた里親会「MTB(Meet The Bird)のコンセプトが「人が鳥を選ぶのではなく、鳥が人を選ぶ」なのですが、ねむと里親さんの出会いは、まさにそれを体現するかのような出来事だったと思います。ねむが飼い主を選んだ瞬間だったんだろうなと、振り返って思います。
譲渡から1年ぐらい経って、里親さんから近況報告をいただいた時に、「最近、ねむがすごくおしゃべりをするようになったんです」と聞きました。心から安心できる環境で、ねむの本来の姿が出てきたんだなと嬉しくなりました。とても印象に残っています。

現在のねむ。里親さんと。「お迎えしてくださって18年。ねむは35歳になった今も、里親さんのもとで元気に暮らしています。おしゃべりも健在で、先住のセキセイさんから覚えた『バンザーイ』を、今でも時々その子の声色で披露してくれるそうです。ねむのように、鳥と人が素敵な出会いを重ね、幸せに暮らせる子が一羽でも増えていくことを願っています」

アオボウシインコの【沖】。「沖は、16歳のときにTSUBASAにやってきました。当初は手やパーチに乗ることが難しく、体重測定もひと苦労。そこで、仲良しのスタッフがスタンドパーチを使った体重測定の練習を始めたのですが……なんと思いのほかあっさりと乗れるように。少しでも里親が見つかりやすくなるようにと始めた練習でしたが、結局そのままスタッフの家の鳥になりました。19歳となった今も、毎朝の体重測定は欠かさず続けているそうです」
──井伊さんはいかがですか。
井伊:
2011年ごろに里親募集をしていた、6、7歳ぐらいのセキセイインコ「そらちゃん」でしょうか。私はそらちゃんを引き取ったことがきっかけで、TSUBASAでボランティアをするようになり、今はスタッフとして働いています。
1羽がきっかけで人生が変わることってあるんだなと思います。
そらちゃんは、引き取って3ヶ月ほどはケージから出てこないし、とてもじゃないけど懐いてくれるような雰囲気はありませんでした。それでも「家で元気に過ごしてくれているなら」と、自然に任せて一緒に生活していました。半年ほど経った頃、ケージから出てくるようになり、肩や頭に乗ってくれるようになりました。積極的な人馴れトレーニングをしなくても、半年も経てば家族として認めてくれるんだなと嬉しかったです。

セキセイインコの【そら】(写真左)と【サニー】(写真右)。 「2011年、TSUBASAの里親会に初めて参加した時に見かけ、お迎えしました。そらは鳥仲間のことが大好きで、友人のセキセイさんと遊ぶ時間が一番楽しそうでしたが、私自身が複数羽のお世話をする余裕がなく、1羽飼いの時期が長く続きました。写真は、2018年にTSUBASAからお迎えしたサニーとのツーショットです。ようやくできた相棒のサニーにカキカキして、とてもうれしそう。我が家で暮らしてきたセキセイの中でもダントツで『イケメン・優男』。一方で、薬もペレットも嫌な時は断固拒否する頑固さもあるセキセイさんでした」
井伊:
鳴き声がとてもかわいい子で、いつも話しかけていたら、ある日突然「かわいいね、そらちゃんね」と話すようになりましたし、お友達のセキセイインコが人の手に乗る姿を見て、人間との距離を縮められるようにもなりました。
「鳥は大人になってからは人馴れしない、しゃべらない」と思われることも多いですが、そらちゃんの変貌は、そうではないこと、大人になってからでも鳥さんは変われるということを、まざまざと感じさせてくれました。TSUBASAでは「インコやオウムなどの鳥さんは、大人になってからも人馴れできる」と発信していますが、まさにその通りだということを体現してくれた鳥さんです。
何がきっかけで鳥さんが変わるかはわかりません。人間側が諦めちゃいけないんだなって思います。

触診の様子。「鳥は『病気を隠す生き物』と言われています。ご飯を食べているように見えて食べているフリをする子、限界まで元気そうに装う子もなかにはいます。食欲や糞便、体重など基本的な項目の確認に加え、些細な変化にも気が付きやすくするために、健康チェックの一環としてTSUBASAでは触診も行っています」
──読者の皆さまへ、メッセージをお願いします。
髙橋:
鳥さんの飼育や鳥さんとの暮らし、鳥さん自体のことも知ってくださっている方が増えてきましたが、ねこちゃんやわんちゃんと同じぐらいメジャーとはいえません。
TSUBASAの活動を通じて、これからも鳥のすばらしさを伝えられたらいいなと思います。
──最後に、チャリティーの使途を教えてください。
髙橋:
チャリティーは、保護した鳥たちが健康的な日常を送るために必要な生活費として活用させていただきます。
レスキューした鳥さんの中には、高齢や病気を抱えている子も少なくありません。治療やケアが必要な鳥さんに対する医療費や処方食(獣医師の指導のもとで与える特別な療法食)費はもちろん、健康な鳥さんを「健康なまま」次のご家庭へとつないでいくための、施設内での感染症検査費も大切な費用です。
ぜひ、チャリティーで応援いただけたら嬉しいです。
──貴重なお話をありがとうございました!

TSUBASAスタッフの皆さん。「過去にコラボさせていただいた際のアイテムを着用して撮影しました!羽生に移転したことでスタッフ全員が集合する機会は減ってしまいましたが、これからも鳥たちのために、スタッフ一丸となって日々精進してまいりたいと思います。今後とも、TSUBASAをどうぞよろしくお願いいたします」
インタビューを終えて〜山本の編集後記〜
鳥さん愛にあふれるTSUBASAさん!今回もコラボをご一緒いただき、愛くるしい鳥さんたちのお話を聞かせていただきました。
CITES附属書Ⅰに掲載されている鳥に関して、登録をしていなかったり、あるいは更新をしていなかったために無効になり、依頼があってもすぐに保護できないケースがあるとのこと。人間の都合に鳥さんたちが振り回され、行き場を失ったりしんどい思いをしたりするようなことがないようにと願います。
…そのようなことを考えていると、TSUBASAさんがいつも発信しておられる「人・鳥・社会の幸せのために」という言葉の深さを、改めて感じました。今回のコラボも、ぜひ応援よろしくお願いいたします!

【2026/11/2-8の1週間限定販売】
今回のコラボデザインは、5種類の鳥さんが登場!右上から時計回りに、キンカチョウ、オカメインコ、ゴシキセイガイインコ、サザナミインコ、タイハクオウムを描きました。鳥さんのおもちゃや止まり木も描くことで、鳥さんとの飼い主との幸せな暮らしが守られる社会への願いを込めています。”A future with birds(鳥との未来)”というメッセージを添えました。
<ワンポイントデザイン>
メインデザインの中からオカメインコ、ゴシキセイガイインコ、キンカチョウを描きました。
JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!