
てんかんは誰でも発症することのある脳神経の慢性疾患で、てんかんのある人は日本では全国100万人にいると推定されています。これは100人に1人の割合で、もしかしたら皆さんの周りにも、てんかんのある人がおられるかもしれません。
医療の進歩に伴って、7〜8割のてんかんは発作をコントロールできるようになってきました。しかし、てんかんへの社会の理解が進んでおらず、当事者や家族がてんかんのことを周囲に安心して話せず、未だに隠している人たちがたくさんいるといいます。
「てんかんは、決してこわい病気ではありません。てんかんのある人たちは、なりたくててんかんになったわけでもありません。原因や症状や予後などは一人ひとり異なります。
てんかんがあるというだけで、さまざまな制限をするのではなく、どういうサポートができるか、一緒に考えてもらえると嬉しいです」
そう話すのは、今週JAMMINがコラボする公益社団法人「日本てんかん協会」会長の梅本里美(うめもと・さとみ)さん。
活動について、お話を伺いました。

お話をお伺いした梅本さん
公益社団法人日本てんかん協会
てんかんの正しい理解の促進、てんかんのある人とその家族の社会援護活動、てんかん施策の充実を目指すための調査研究や提言を全国で行っています。
INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2026/9/28

「毎年10月に、全国大会を全国各地の支部の持ち回りで開催しています」
──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。
梅本:
1973年に誕生した「小児てんかんの子どもをもつ親の会」と「てんかん患者を守る会」が統合し、1976年に設立したてんかんのある人とその家族を支援する会です。以後、50年にわたって活動しています。
当事者家族の生活の質の向上を目的に、国などへの要望活動、社会に対しててんかんの正しい情報を届ける啓発活動、てんかんのことでの困りごとを解消するための相談活動などに日々取り組んでいます。
──それぞれの活動について詳しく教えてください。
梅本:
てんかんのある人とその家族の生活の中での困りごとというのは、すごく幅が広いです。治療を進めるための薬の治験の充実や新薬の承認、就労や福祉面の充実といった要望を、これまで国に向けて行ってきました。

「ドラベ症候群患者家族会(黒岩ルビー代表)、公益社団法人日本てんかん協会(梅本里美会長)、一般社団法人日本小児神経学会(岡明理事長)、一般社団法人日本てんかん学会(池田昭夫理事長)の4団体は、難治性てんかん治療に効果が期待されるカンナビジオール医薬品(CBD)の国内使用を求めており、2019年9月5日、厚生労働大臣に「カンナビジオール(CBD)医薬品承認」に関する要書を共同で提出しました」
梅本:
協会では長らく、てんかんのある人も福祉の対象となるように国に働きかけてきました。
他の障害を併せもつ人は、知的であれば療育手帳、身体であれば身体障害手帳を取得が対象となりますが、てんかんだけの症状では、福祉制度の対象にならず、何の支援も受けられない状況だったのです。1995年に精神障害を対象とする手帳制度の創設に合わせてやっと対象になりました。
また、2013年からは国が全国でてんかん地域診療の整備事業を始め、各都道府県にてんかんケアの拠点が設けられるようになってきました。
──啓発活動についてはいかがですか。
梅本:
ちょっと自慢できることとして、『波』というてんかん専門の情報誌を毎月発行しています。協会の会員はもちろん、全国の関係者に広く届けています。
協会が立ち上がった1976年の12月から毎月欠かさず発行していて、2026年9月で685号になります。

月刊誌『波』。「『波』は、日本てんかん協会の情報誌で、日本で唯一の情報・指導誌として、てんかんについての情報満載でお届けします。毎月の特集では、医療や教育、福祉、労働など、社会情勢やみなさんのニーズにあわせた問題について取り上げています。また、人気コーナー『フリートーク』『まいすぺーす』では、てんかんのある人やご家族の体験談や声を紹介しています。是非ご購読ください」
──すごいですね!
梅本:
協会ができた当時は、今のようにインターネットもなく、てんかんに関する情報を集めることがとても困難でしたし、社会からの誤解や偏見が強くあった時代でした。『波』が届き、治療研究のことや全国の仲間を知ることが、当事者とその家族にとって「一人じゃない」という希望になっていました。
誤解や偏見から、当時は「近所の人にてんかんが知られたら困る」という背景があり、「波の会」という協会の別称や、協会会長の個人名の封筒で発送してきました。50年経った今でも、残念ながら同じように送付しています。

2013年11月、新宿駅西口地下イベント広場にてイベントを開催。「中央イベントとして啓発活動を行い、クイズラリー・相談コーナーなどを設置して多くの方にてんかんを知ってもらいました」

2023年のてんかん月間に開催した、てんかんをめぐるアート展の準備の様子。「開催期間中、多くの方々に来場いただきました」
──てんかんに対する誤解や偏見は、今もあるのですか。
梅本:
一昔前と比べると理解が進んできましたが、まだまだ「てんかんであることを外で言ってはいけない」「近所であの子はてんかんだという噂が広がっては困る」という家族の声を聞くことがあります。メディアによる事故報道なども、一因ですね。
そのような誤解や偏見を取り除くために50年間活動をしてきましたが、まだ無くなっていません。本当はこの協会自体がなくなって、当事者も家族も、生活しやすい社会になるのが理想です。

2014年、第41回全国大会(高知大会)懇親会で披露された河童おどり。「この後、大会参加者も一緒になってみんなで踊りました」
──どのような誤解や偏見があるのですか。
梅本:
「突然けいれんして、バタンと倒れて泡を吹く」というようなイメージを、多くの人が抱いておられるかもしれませんが、それは大発作と呼ばれる症状の一つに過ぎません。
てんかんは過去に、この大発作のあまりにも強烈な様子から「悪魔が憑いた」「キツネが憑いた」などと言われ、迫害されてきた歴史があります。
しかし今、てんかんや治療に関する研究も非常に進んでおり、発生原因の解明もされてきていますし、多くの患者さんが、適切な治療により発作をコントロールできるようになってきています。「こわい病気でも、周りに隠さなければならない病気でもない」ということを、周りの人に伝えて、知ってもらえるようにしていきたいと思っています。

1973年10月24日、オリンピック記念青少年総合センター(東京・代々木)で開催された設立大会の様子。「朝からの強い雨にもかかわらず、350名以上が参加し大会を盛り上げました」
──世代によっても、てんかんへのイメージは異なるのかなと思いました。
梅本:
そうですね。医療の発展に伴って、当事者の人たちが発作をコントロールできるようになってきたことで、若い世代の方であれば、そもそもてんかん自体を知らない、見たことがないという方もおられます。
そのような場合は誤解や偏見もありませんが、たとえばわが子がてんかんだと診断されて、検索してあれこれと情報に触れていくうちに「隠した方が良いのかな」というふうに感じてしまうこともあります。つまり、今の世の中のてんかんのイメージ自体を取り払わないことには、永遠に誤解や偏見はなくならないのです。
──確かに。
梅本:
高齢の方は、一昔前の「こわい病気」「他人に言ってはいけない」というようなイメージが強く、それがなかなか拭えないように思います。
てんかんは、いつでも、誰でも発症する可能性があります。私もそうですし、皆さんもそうです。最近は、高齢で発症するてんかんも増えています。しかし、てんかんへの誤解や偏見があると、それを受容することはとても難しくなります。

毎年、夏に開催される「てんかん基礎講座」の様子。「てんかんについての基礎から専門テーマまで、幅広く学んでいただけるプログラムになっています。コロナ禍以降はオンデマンドで開催しています」

2月の「世界てんかんの日」に、東京タワーでイベントブース設置。「2015年5月のWHO総会にて、医療、教育、福祉、労働、地域社会、司法、マスコミなど社会のあらゆる面で、てんかんに関する理解の向上と啓発活動を重視し、てんかんのある人の社会への受け入れ促進を世界に発し、2月の第2月曜日が『世界てんかんの日(International Epilepsy Day:IED)』に定められました。この時は、マスコットキャラクターのあかりちゃんも皆さんと交流しました」
梅本:
てんかんは脳の慢性疾患で、脳の神経細胞の異常な興奮によって起こることがわかっています。1回起きただけではてんかんと呼びませんが、何度も繰り返し、同じような症状が出る場合はてんかんと診断されます。
先天的なものもあれば、事故などで脳が傷ついたことにより、後天的に発症することもあります。薬での治療が主になりますが、薬では抑えることが難しい場合に、原因を取り除いたり抑えたりするような外科治療や食事療法が検討されることもあります。
現在、てんかんのある人の7〜8割は、治療によって発作をコントロールし、比較的安定した日常生活を送ることができています。残る2〜3割は、「薬剤抵抗性(難治性)てんかん」と言って、今ある薬では発作をコントロールすることが難しいてんかんです。薬剤抵抗性(難治性)てんかんの中には、発作が止まり難くなる重責状態になる人もあって、特別の薬を処方されることもあります。

「『あかりちゃん』は、運動15周年を記念し新たに作成したキャラクターです。全国に名付け親募集をし222通の応募の中から選ばれました。ちなみに設定は5歳の女の子です。設定された1988年には、全国の幼稚園や保育所の子どもたちを中心に、ぬりえコンクールを行い、社会啓発活動にも大いに貢献しました。Tシャツ、テレホンカード、シールなどにもなり、“てんかんにもっとあかりを!”がキャッチフレーズの皆さんのマスコットです。2010年からは、着ぐるみとして「てんかん月間」などの街頭活動でも、多くの市民との交流に活躍しています」

「てんかん学会学術集会」でのブース出展の様子
梅本:
多くの方がイメージされる「突然けいれんをおこして、バタンと倒れる」ような発作の場合は、比較的薬でコントロールできることが多く、きちんと薬を飲んでいれば、実はそんなに起こりません。
一方で症状がわかりにくく、見過ごされてしまうようなてんかんもあります。
──どのようなてんかんですか。
梅本:
発作がおきて意識が遠のき、居眠りをしているようにカクン、カクンと首の力が抜けたり、目がチカチカする、体をもぞもぞと触る、口をぺちゃぺちゃと動かすといった症状や、体が固まってしまうような症状もあります。
高齢者の場合は認知症と間違われたり、学齢期の子どもの場合は、発達障害と間違われたりすることもあるようです。
──そうなんですね。

協会として、書籍やDVDでも情報発信を行っている。「てんかんに関する書籍・DVDなどを販売、注文は協会ホームページ(https://www.jea-net.jp/publish)からもお受けしています」
梅本:
学校の授業中に発作がおき、ぼーっとして意識が途切れることを繰り返し、だんだん勉強についていけなくなって成績が下がり、「おかしいな」と病院を受診して脳を検査したところ、てんかんがわかったということもありました。
倒れるような発作の場合は、周りからもてんかんの症状がはっきり目に見えてわかりますが、症状が周りからはあまり見えないような発作の場合は、本人にも自覚がなく「夜更かししていたから眠いのかな」「疲れているのかな」と、なかなか病気と結びつかず、見過ごされてしまうことがあるのです。
何でもかんでも「てんかんかもしれない」と結びつけて考えるのは良くないかもしれませんが、少しでもてんかんの知識があれば、「もしかしたらそうかもしれない。病院の先生に聞いてみよう」という選択肢を持つことができます。
早い段階で適切な治療につながることができれば、発作をコントロールしながら、いきいきとした生活を送ることができます。

「1982年に国会請願署名活動を開始し、全国各地で街頭での署名を呼びかけ続けています。写真は1991年11月、新宿駅西口で署名活動を行った際の一枚です」

第50回全国大会ワークショップでの一枚。「ハンドスタンプ(参加者の手形)で、あかりちゃんを彩りました」
──皆さんに知ってほしいことはありますか。
梅本:
協会の全国大会を毎年各地で開催していますが、行く先々で「日本てんかん協会です」と言うと、「あっ、てんかんってあれでしょ。泡を吹いて倒れるやつでしょ」と返されることが、今でもすごく多いです。
「てんかん=けいれんをおこして倒れる」というイメージが、未だ強く残っているんだと感じます。

10月のてんかん月間に、新宿駅(西口)でのてんかん啓発活動の様子。「あかりちゃんも参加し、てんかんへの理解を求め、市民のみなさんと交流しました」
梅本:
てんかんを周囲にカミングアウトするかしないかは、その方の症状やおかれている環境そして個人の考え方にもよりますが、中には、過去にてんかんを伝えた時の周りの反応に傷つき、もう言うのをやめたという方も少なからずおられます。
あるいは、周りから「てんかんだから、これはしない方がいんじゃないの?」「あれはダメだよ」などと制限をかけられた経験があって、だからもう言わないという方もいます。
もちろん、医師からの指導や注意事項は守り、気をつけて生活を送る必要がありますが、周りの人たちが、ただ「てんかん」という言葉を聞いただけで、「危ない」「あれはやっちゃダメ」と決めつけたり制限をしたりするのは、違うのではないでしょうか。
一人ひとりの症状や状況にあわせてできることがあって、「てんかん」と聞いて、すべてひとくくりにはしないでほしい。そう思っています。

「日本てんかん協会のホームページでは、てんかんについて公表し、さまざまな分野で活躍されている当事者・元当事者・ご家族をご紹介します。紹介している方々の活動は、多くの当事者に希望を与えるものとなっています。協会としても、ご紹介した皆さんの活動・活躍を応援しています」
梅本:
症状も課題もそれぞれで、一概に「てんかんだからこうしないといけない」とは言えません。
社会で、てんかんを特別視せず、あたり前に捉えてもらえるように、てんかんのことをもう少し理解してくれたら、てんかんの当事者やご家族の生きづらさや言いにくさは、減っていくのではないでしょうか。
──確かに。
梅本:
中には「薬でてんかんをコントロールできているけど、カミングアウトしていないことが、何か周りの人に隠し事をしているようで、ずっと心にひっかかっている」というふうに言う人もいます。
協会としてはこれからも、てんかんを正しく認知してもらい、偏見や誤解を打ち破る力になれたらと思っています。

毎年、国会への請願書提出の際にあわせて開催している「てんかんのある人と家族の生活を支える会議」の様子

毎年開催している全国大会。「全国大会は、てんかんのある人々とその家族、医療・福祉・教育等の分野の専門職や関係者、市民が広く集い、相互に交流を深めててんかんに関する問題を学びかつ語り合うことによって、てんかんについての正しい知識の普及をともに推進し、てんかんのある人々やその家族の保健・医療・福祉・教育などの向上を図ること、地元におけるてんかんへの啓発運動を盛り上げるとともに他の障害者団体等との親睦・連帯を深めることを主な目的として開催されています」
──もし親しい友人や職場の同僚などからてんかんをカミングアウトされたら、どんなふうに応えれば良いでしょうか。
梅本:
深刻に受け止めるよりは、特別扱いしすぎず、「そうなんだ。何か困ったことや、手伝えることがあったら言ってね」って対応してもらえたらと思います。
学校や職場で発作がおきた時に、大事になって自分に注目が集まることがストレスという方もおられます。私たちの会の仲間の集まりは、誰かが発作を起こしても、全員で群がったりすることはありません。危ないものでなければ、会議はそのまま続きます。

「日本てんかん協会のYouTubeチャンネルでは、てんかんに関するさまざまな動画を制作して紹介しています。てんかんについてもっと知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください」
──読者の方へ、メッセージをお願いします。
梅本:
てんかんは、決してこわい病気ではありません。てんかんの当事者は、なりたくててんかんになったわけではないし、てんかんはその人の個性の一つです。
てんかんがあるというだけで、さまざまな制限をするのではなく、どういうサポートができるか一緒に考えてもらえると嬉しいです。
──最後に、チャリティーの使途を教えてください。
梅本:
インターネットで、てんかんに関するさまざまな情報を手にすることができるようになりましたが、中には間違った情報も紛れ込んでいることがあります。
私たちは今後も、偏見や誤解を取り払っていくために、正しい情報を発信していきたいと思っていて、今回のチャリティーは、てんかんの情報のデジタル化のために活用させていただく予定です。ぜひ応援いただけたら嬉しいです。
──貴重なお話をありがとうございました!

2025年6月、総会にて、協会理事・監事の皆さんと
インタビューを終えて〜山本の編集後記〜
てんかんを持つ人の割合は100人に一人ほどとのこと、「自分の周りにてんかんの人はいない」「出会ったことがない」と思われている皆さんも、もしかしたら実はてんかんを持っている方と出会っている可能性は低くないのではないかと思います。
てんかんを正しく知ることで、もし周りの人から打ち明けられた時、あるいは自分や身近な人がてんかんになった時やてんかんがわかった時、関わり方、反応の仕方はまた変わってきます。「てんかんを正しく知る」ことが、自分にとっても、周りの人たちにとっても、安心な社会につながるんだなと感じるインタビューでした。

【2026/9/28-10/4の1週間限定販売】
「てんかんにもっとあかりを」という日本てんかん協会さんのキャッチコピーからヒントを得て、キャンドル、ランタン、懐中電灯、電球、ホタル…さまざまな「あかり」を描きました。てんかんが一つの「個性」として受け止められ、一人ひとりが自分らしさを発揮しながら生きられる社会への思いを込めています。
“A place where you can be yourself(あなたらしくいられる場所)”というメッセージを添えました。
JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!