CHARITY FOR

「動物の命を守っていくことは、私たち人間の責任」。小さな命に、やさしい心で寄り添って〜NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

環境省が公開している情報によると、2024年4月〜2025年3月の犬猫の殺処分数は6,830頭(うち犬が1,964頭、猫が4,866頭)で、過去最小となりました。

しかし一方で、社会には行き場を失っている犬猫がたくさんいます。
飼い主の都合で保健所に持ち込まれる犬猫、飼育放棄により衰弱したり亡くなったりしてしまう犬猫、愛情や温かい家庭を知らないまま、その生涯を終える子たちもいるのです。

「行き場を失う動物というのは、幸せになるのも不幸になるのも、すべて人間側の問題であり、義務と責任。私たち人間が適正に飼育しなければ、問題は解決しません。やさしい心で、小さな命と向き合ってほしい」

そう話すのは、北海道で20年以上にわたり保護・譲渡、啓発活動をしてきたNPO法人「HOKKAIDOしっぽの会」代表の上杉由希子(うえすぎ・ゆきこ)さん。

活動について、お話をお伺いしました。

お話をお伺いした上杉さん

今週のチャリティー

NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

北海道内の行き場を失った野犬や野良猫を保護し、新しい飼い主さんにつなぐ活動ならびに広く社会に動物愛護と福祉の精神が浸透するよう、啓発活動にも尽力しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2026/02/02

行き場のない犬猫を引き取り、命をつなぐ

HOKKAIDOしっぽの会の保護施設。「当会の施設は、廃墟となっていた残存していた豚舎を改築した旧犬舎と2011年に新設した新犬舎、2007年頃にボランティアさんによって建てられたプレハブ犬舎の3棟に犬を収容、2016年にクラウドファンディングのご支援によって猫舎が出来ました。温度や換気などの他、消毒など衛生面に気を付けています。また、犬や猫が脱走しないよう対策をしています」

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

上杉:
北海道内全域を対象に、野犬や野良猫、飼い主が育てられなくなった子や多頭飼育崩壊の子など行き場のない犬猫を引き取り、命をつなぐ活動をしています。

活動を始めた20年ほど前は、本当に殺処分の多い時代でした。
当初は、私たちの活動拠点である北海道夕張郡長沼町周辺の保健所から殺処分になる子たちを引き出すことが精一杯でした。

時代が変わり、徐々に動物愛護の精神が浸透するようになり、また保健所でも犬猫を長く収容してくださるようになったこともあって、活動地域や保護の対象を、少しずつ広げられるようになりました。

2023年7月、HOKKAIDOしっぽの会が北海道空知管内で関わった犬122頭の多頭飼育崩壊事案。「解決に向けて、犬の個体確認を行い、行政機関と協働で現地で不妊手術を行いました。犬は、他団体や保健所などと数回に分けて引き取りし、治療を行い、新しい飼い主へとつなぎました」

上杉:
北海道の面積は日本の国土の5分の1以上を占めていますが、その広さゆえに活動範囲も非常に広大です。だからこそ、広い北海道の中でできるだけ保護の地域を広げ、行き場のない子たちに一つでも多くの出会いのチャンスを届けたいと考えています。

ここ長沼町は札幌市から車で約50分と比較的アクセスしやすい場所にあります。そうしたことからも、新しい飼い主を希望される方に足を運んでいただければ、保護犬猫との出会いの機会が広がります。

もちろん、当会で保護した犬や猫たちも、すぐに新しい家族が見つかるとは限らず、譲渡までに時間を要することが少なくありません。年齢や健康状態、性格など、さまざまな理由からご縁に恵まれにくい子たちも多く、保護後の暮らしが長期化してしまうケースもあります。

──そうなんですね。

譲渡会の様子。「当会の施設での譲渡会の他、札幌市動物愛護管理センターと共催や札幌市内の事務所でも譲渡会を行っています」

上杉:
個人が飼えなくなった犬猫の引き取りも行っています。
多頭飼育崩壊などは、時に行政と連携を取りながら、解決のために試行錯誤しながら行っています。

ベストな解決策は全頭引き上げることですが、飼い主の方が寂しくなってまた猫や犬を引き入れ、不妊去勢手術をせずに数をまた増やしてしまうということも起きてしまいます。それでは本末転倒ですので、不妊去勢手術を施した上で「もう他の猫は迎えない」と約束し、一頭だけ飼っていただいた事案もありました。

「2024年2月、千歳市の元ブリーダーの多頭飼育崩壊案件では、大型犬から小型犬まで、25頭の純血種が狭いケージの中で糞尿にまみれ、不適正飼育されていました。犬たちは充分な餌や水も与えられず、衰弱していました。重篤な病気であるにも関わらず治療もされていない子もおり、当会で引取り後に大学病院でも治療を行いましたが、末期がんで亡くなってしまった子もいます」

「人間の身勝手により起きている現実を知って」
情報発信にも力を入れている

「『ピュア』は推定8~10歳のラブラドールで、2024年2月に千歳市の元ブリーダーの多頭飼育崩壊案件から保護しました。保護した子の中で一番衰弱が激しく、立つことさえできませんでした。重度の腫瘍のため大手術を受け、一時は回復しましたが、再発と転移が進み、余命1週間の宣告を受け、引き取りからわずか4か月で静かに旅立ちました。短い期間でしたが、今でも思い出すと胸が熱くなります。名の通り純粋で愛おしい子でした」

上杉:
保護・譲渡活動の傍ら、日々の発信にも力を入れています。

広域の北海道には179の市町村があり、ひとつの自治体や保健所が担当するエリアも非常に広大です。そのため、犬猫に関するさまざまな問題に、すぐに対応することが難しい場面も少なくありません。

私たちは「自分たちが保護した子だけが幸せになれば良い」という考えで活動しているわけではありません。目指しているのは、行き場のないつらい境遇に置かれる犬猫を一頭でも減らすことです。特に地方では情報が届きにくく、譲渡の機会が限られてしまいます。だからこそ、そうした子たちにはできる限り多くの人の目に触れる機会をつくり、幸せになるチャンスを広げたいと考えています。

先日も、当会のホームページでの掲載を通じて、負傷した猫に新しい飼い主さんが決まったという嬉しいニュースがありました。保健所の方も大変喜んでくださり、情報発信の大切さと意義を改めて感じています。

「北海道最北端の稚内市に近い天塩町で発覚した犬の多頭飼育案件は、2023年2月から関わっています。解決に向けて、捕獲、不妊手術、譲渡につなぐなど、行政と協働で活動しました」

──確かに。土地が広い分、保護や譲渡には難しさがありそうですね。

上杉:
「どんな子が、どんな理由で、保健所に収容されているのか」を発信することは、新しい飼い主につなげたいということと同時に、人間の身勝手により起きている現実を知っていただきたいという啓発の意味合いも強くあります。

私たちは、保護した子たちがどのような背景を持ち、どのような経緯で保護に至ったのか、そしてなぜそのような状況になってしまったのか――その子たちが背負ってきたものを、分かる範囲でできる限り丁寧にお伝えするよう努めています。
また譲渡後についても、新しい飼い主さんから寄せられる近況をご紹介し、その子たちが穏やかで安心した日々を送っている様子や、適正な飼育の大切さをお伝えしています。

こうした取り組みを通じて、行き場を失う動物たちの「幸せ」も「厳しい状況」も、その多くが私たち人間の関わりによって生まれていること、そして「命」と向き合う責任の重さを感じていただければと考えています。

「『ロット』は、2021年9月に滝川保健所から引き取りした、当時推定10~12歳のオスのトイプードルです。保護当初は、毛玉の塊で全身がドレッドヘアーのような悲惨な姿でした」(写真提供:滝川保健所)

「ロットは当会で引取り、衰弱した体も健康を取り戻した頃に、温かな飼い主様との出会いがありました。『大吉くん』と命名され、まさに名前の通り、幸運を手にすることができました」

酪農地帯では、野犬の問題も深刻

2021年、道東浜中町の牧場に住み着いている野犬を視察した時の一枚。「野犬はおおよそ10頭ほどで群れになって暮らしていました。牧場で働く人が動物好きであったため、人に対しても悪い印象は持っていないようで、触ることはできませんが、近くに寄ってきました。その後も何度か視察していますが、同じ個体が何頭か確認できました」

──他に、北海道ならではの課題はありますか。

上杉:
特に道東の酪農地帯には、野犬がまだまだたくさんいます。
酪農家さんとしても、野犬を害獣避けにしているようなところもあって、野犬たちは牛乳をもらったり、牛の飼料を食べることもあるようです。

ある意味、悪いことさえしなければ、野犬が家畜を守っている側面もあります。だからといって、酪農家さんが犬たちの繁殖のコントロールまでしてくださるかというと、そうではありません。人馴れしておらず近づくことさえ難しい野犬を捕まえて、遠くの動物病院まで連れていき、自費で不妊去勢手術を受けさせようというふうにはなかなか、ならないですよね。

不妊去勢を行わないままでは、野犬たちが自由に交配して子犬を産んで、野犬がどんどん増えてしまいます。北海道の冬の厳しさは皆さんがご存知の通りですが、最近は夏も暑くなってきていて、犬たちが外で生きていく大変さというのは、想像していただけると思います。

──確かに…。

上杉:
HOKKAIDOしっぽの会でも、これまでに何頭もの野犬を保護してきました。野犬としての生活が長い子の中には、人間社会の暮らしに少しずつ適応できる子もいますが、どうしても馴染めない子もいます。
それまでずっと外で生きてきた彼らにとって、首輪やリードをつけられ、人と散歩することは簡単なことではありません。ドッグランで自由に走るといっても、人の都合でその時間は限られてしまいます。

「道東・厚岸町床潭(あっけしちょうとこたん)では、野犬による昆布干場の被害が問題となり、推定1歳のオスの『ポン吉』は、2021年5月に箱檻で捕獲され、釧路保健所へ搬送されました。攻撃性はないものの怯えが強く、一般譲渡が難しいため当会で引き取りました。リードの付け替えや抱っこには口が出そうになることもありましたが、時間をかけて接するうちに、外に出る楽しさを理解し、ハーネス装着や抱っこも我慢できるようになるなど、大きな成長を見せてくれました。見学に来られた飼い主様はポン吉に惹かれ、面会でも吠えることない落ち着いた様子に運命を感じてくださったようでした。その後も連日通ってくださり、ポン吉も心を開いて尻尾を振って喜ぶように。2025年1月、ついに大切な家族の一員として迎えられました」

上杉:
こうした姿を目の当たりにするたび、野犬問題の根深さを痛感します。そして同時に、「命」が本来持っている尊厳や、その子らしく生き生きと暮らすことの難しさにも向き合わざるを得ません。

人と動物が共に生きる社会を目指す上で、保護した野犬たちが抱える生きづらさをどう解消していくのか──。
その問いは、私たちにとって避けて通れない大切なテーマだと感じています。

──これ以上数を増やさない、ということなんですね。

上杉:
野犬を野放しにしたままでは、春に子犬が生まれ、秋にもまた子犬が生まれ…という状況が繰り返され、子犬の保護を続けているだけでは根本的な問題の解決にはつながりません。

今いる野犬たちの未来のためにも、野犬専用の施設を設立できないかと考えています。道東では、野犬対策に真剣に向き合い「野犬リハビリセンター」の設立を強く願いながら活動されている方々がいらっしゃいます。昨年末には釧路管内の行政担当者や動物に関わる関係者が集まり、野犬対策会議が開かれました。

私もその場で意見を述べさせていただき、改めてこの課題の大きさと必要性を実感しました。時間はかかるかもしれませんが、行政とも力を合わせながら「人と動物が共生する幸せな社会」を実現するために、野犬たちが安心して生きられる場所をつくり、やがては野犬問題が過去のものとなるよう、向き合っていきたいと考えています。

2024年10月、道東の管轄官庁が開催された「市町村野犬対策会議」では、野犬を減らしていくための対策が話し合われ、2025年3月、2025年12月にも開催、継続的に話し合いがもたれています。

稀な病気を抱えながら
幸せになった「リッコ」

「『リッコ』は、長沼町内の某施設に住み着いた多頭野良の卒業猫アタリが生んだ子で、過酷な環境から2024年8月に保護した推定1歳の女の子です。保護当初から体調不良が続き、大学動物病院で検査を受けた結果、キサンチン尿症という稀な遺伝性疾患を患っていることが判明しました。右の尿管に結石が詰まり、命の危険性があったため、2024年10月尿管の一部を切除する緊急手術を行い、推定5か月の小さな身体で懸命に乗り越えてくれました」

──これまで保護された子で、印象に残っている子を教えてください。

上杉:
猫の「リッコ」は2024年、長沼町の某施設の過酷な環境から保護した子です。

保護当時、生後5ヶ月ほどでしたが、その時から体重の減少や食欲不振、白い泡を頻繁に吐くといったことがあり、病院で診察してもらうと腎炎の疑いがあるということで投薬を開始しました。しかし腎臓の数値は安定せず、大学病院で詳しい検査を受けました。

すると「キサンチン尿症」という、猫ではほぼ症例のない、珍しい遺伝疾患の可能性が高いことがわかりました。腎臓内や尿管に石のようなものが詰まっていて、右側の腎臓の尿管については、そのままにしておくと命を脅かす危険があったために緊急で切除手術を受けました。小さな体で手術を乗り越え、スタッフのサポートのもと、治療をがんばっていました。

「引き取った当初より、夜はスタッフがリッコを自宅に連れて帰ってくれ、定期的な検査と投薬をしながらも、元気に過ごしてこれました。スタッフ宅では、オモチャで遊び子猫らしい生活を送ることができました」

上杉:
リッコは人が大好きで、撫でるとゴロゴロ喉をならしたり、嬉しそうにしっぽをピンと立てたり、とにかく甘えるのが大好きなかわいい子です。しかし病気というハンデがあるため、ご縁がないまま1年3ヶ月をしっぽの会で過ごしました。

しかし2025年11月、見学にいらしてくださった方がりっこの前で足を止めてくださって、翌月の「保護猫お見合い会」にも再度足を運んでくださり、病気や治療のこともすべてご理解いただいた上で「家族に迎えたい」と仰ってくださいました。とても嬉しかったです。
現在、リッコは新しい飼い主さんのもとで幸せに暮らしています。

「りっこ(旧:リッコ)は現在、飼い主様のお宅で、毎日お家の中を自由に遊んで楽しい時間を過ごしているそうです。ハンデのある子なので今後もケアなど必要になりますが、激しく遊ぶほど、まだ若く元気いっぱいなりっこちゃんです。ご家族にも思う存分甘えられて、幸せな日々を満喫しています」

凍死や衰弱死した犬もいる中、保護された
「コロッケ」と「くうり」

「天塩町の犬の多頭飼育崩壊の案件では、2023年2月の現地調査後、3月に行政・獣医師と協働で不妊手術を行いました。この案件では、人慣れしていない犬の捕獲に苦戦し、捕獲後も、犬は興奮状態のため鎮静剤もなかなか効いてくれず、労力と時間が思っていた以上にかかりました。放たれている犬のうち、数頭は捕獲することができずに終わってしまったので、今後も捕獲檻を設置し、飼い主には捕獲に努め、必ず残りの犬の不妊手術を行うことを約束してもらいました。また、行政機関で定期的に、現地の確認を行ってくださることになりました。ですが、広い土地で係留されていない警戒心の強い犬を捕獲するのは予想以上に大変で、時間がかかっています」

上杉:
2023年2月、道北・天塩町の40頭以上の多頭飼育崩壊の現場から保護した「コロッケ」「くうり」も印象に残っています。

飼い主が不妊去勢手術を怠ったことで数が増え、行政に相談があった時点では、老犬から子犬まで70頭余りの犬がいたようです。しかし首輪もリードもつけられていない子もたくさんおり、道路に出て交通事故に遭って死んでしまったり、凍死や衰弱死してしまった子もいたと思われます。

行政の方たちと一緒に現場に入り、妊娠の可能性のある犬や衰弱した犬から順番に引き取りを開始しました。
保護のために訪れたある日は、マイナス7度ほどの寒さに加えて海からの冷たい風もあり、寒さが体に堪えました。そんな中、野ざらしの状態で、十分な食べものも、暖を取れるものもなく、寒さに震え、耐えながら過ごしていた犬たち。寒さの中、体力のない子や衰弱した子は凍死してしまったこともあったそうです。

「天塩町の多頭飼育崩壊の現場に視察に行った際、風当たりが強い場所でつながれていた犬たちは、とても寒そうに寒さをしのいでいました。外での飼育には逸走防止の義務がありますが、短い鎖で係留されている犬たちは、寒さや冷たい雨風を凌ぐ手段が限られているため、より一層、かわいそうでなりませんでした」

上杉:
つながれたまま、ただ食事を与えられるだけの暮らしを“家庭犬”と呼べるのでしょうか。
人の愛情に触れることも、お散歩の楽しさを知ることもないまま過ごしてきたこの子たちの姿を見ると、翻弄され続けた命のことを思い、胸が締めつけられるようでした。

──つらいですね‥。

上杉:
オスの「コロッケ」は、保護時点で背骨が飛び出るほどに痩せこけており、かなり衰弱している様子でした。健康診断をしたところ、ひどい貧血がわかりました。
かかりつけの獣医師さんと相談しながら投薬や点滴など治療を行っていましたが、2025年7月、保護して2年半経たずして亡くなりました。

保護されてから亡くなるまでのわずかな間、穏やかな時間を過ごしたコロッケ。「スタッフと一緒にお散歩を楽しんでいるところです。お散歩が大好きでした」

上杉:
コロッケは自己免疫疾患を患っており、血液を作るための血液細胞がほとんどなく、輸血をしたり増血剤を打ったりと本当に様々な治療を試みました。一時的な効果は見られるものの長くは続かず、最期は皆で話し合い、無理な給餌や薬の投与はやめて、その時を見守ることに決めました。

好きなごはんやおやつを置いても口をつけることはなく、日に日にどんどん小さくなるコロッケ。寝たきりで立つことができず、食べることができない状況でも、人の気配がすると顔を上げて姿を探し、ふわふわのしっぽをそっと揺らし、嬉しそうな様子を見せてくれる、本当にやさしい子でした。
旅立つための準備をしているコロッケのために、ずっとそばにいて、声をかけたり撫でたりしてあげることが、私たちができる精一杯の愛情でした。

「2025年7月、コロッケが呼吸困難になった時は、もうコロッケが天に召されるのかと胸が張り裂ける思いでした。しかし危篤に近い状態から持ち直してくれて、その一歩に心から安堵しました。夕方、カートに乗ってお散歩しながら、外の空気や風の匂いを感じ、スタッフと過ごすことは、コロッケにとって何よりの生きる活力になったと思います。明るい表情に、胸が熱くなりました。一瞬一瞬を懸命に生きるコロッケに、私たちも寄り添いました」

上杉:
2025年7月23日、朝、自分でお水を飲むこともしなくなっていたコロッケが、久しぶりにお水を飲みました。
その日の夕方、朝と変わらず穏やかな様子のコロッケを、大好きだったドッグランが眺められるようにと外に張ったテントに寝かせ、顔を拭いたその時――呼吸が突然、不安定になりました。

慌ててスタッフが集まり、皆が見守る中、コロッケはまるで眠るかのように穏やかに、静かに旅立っていきました。

保護時の年齢は推定1〜3歳、過酷な環境から抜け出し、やっと幸せに向かって進みはじめたばかりでした。まだまだやりたいことがたくさんあっただろうし、おいしいおやつやごはんをもっと食べさせてあげたかった。
家族がいる幸せ、家庭で過ごす幸せ、大好きな飼い主さんと散歩できる幸せをかなえてあげられなかったこと、本当に申し訳なく思っています。

ジャガイモ畑の前で微笑む「ガナッシュ」。「コロッケが大好きだったドッグランの風景や、楽しそうに散歩していた頃を思い出します。もし今もコロッケがそばにいたなら…、きっとこのガナッシュと同じように、畑を眺めながら、嬉しそうにしっぽを振っていたことでしょう」

上杉:
「くうり」も、同じ天塩町の多頭飼育崩壊現場から保護した子です。
人馴れしておらず、知らない人を見ると一目散にどこかに逃げてしまうような子で、「人馴れには時間がかかるだろうな」と思っていました。しかしその心配をよそに、控えめですがちょっとずつ心を開いて、人に寄ってきてくれるようになりました。

現在は新しい飼い主さんのもと、とっても甘えん坊になり、幸せに暮らしています。

「『くうりちゃん(旧:クラム)』は、2023年12月、留萌振興局の案件で多頭飼育現場から引き取りした当時推定2~4歳の女の子です。多頭現場にいた時は、知らない人が来るとすぐさま逃げて姿を消していたので、 警戒心の強い子なのかなと思っていましたが、 当会で引き取って接していくうちに、わりと怖いもの知らずで、 人に対しても友好的な面が見られるようになりました」

現在、里親さんのもとで幸せに暮らすくうりちゃん。「ご家族とのコミュニケーションや信頼関係を通して、初めて会う人との関わり方もたくさん学んで成長しているくうりちゃん。外出や遠出のドライブにも慣れ、新しい世界も広がっています。お散歩が大好きで、飼い主さまご家族もくうりちゃんとの時間をとても大切に過ごしてくださっています」

「与えられた場所で精一杯生きる彼らだからこそ
できるだけ良い環境を作ってあげたい」

2025年9月に開催された「第6回しっぽの会 卒業わん同窓会」にて。「2日間で51頭の卒業わんと同居わんが集まりました。懐かしい再会や新たな交流が生まれ、幸せに暮らす姿を一堂に見られることは、私たちにとっても大きな喜びでした」

──上杉さんが活動を始められたきっかけを教えてください。

上杉:
HOKKAIDOしっぽの会に関わる前から、私は犬を飼育していました。そうしたことから、ご近所から行き場を失った犬の相談を受けるようになり、散歩仲間と新しい飼い主さん探しをしたりしていました。

少し離れたご近所で、充分なごはんも水も与えられず、虐待を受けていると噂されていた犬がいました。その子のことがどうしても気になって、胸がざわつき、「いつからかご近所にこんな子がいたなんて」と胸がひどく苦しくなりました。
何不自由なく暮らす犬がいる一方で、水もごはんも十分ではなく、猛暑の日も極寒の日も外で過ごさなければならない犬がいる──。その理不尽さが、ただただ悲しかったのです。

HOKKAIDOしっぽの会の前身団体でのボランティアを始める前、上杉さんが最初に保護した犬。「当時、推定3~4歳ほどの女の子でした。家の中での暮らしもほとんど知らず、生活音にも驚き、どこか遠慮がちな子でしたが、少しずつ、安心したように自分らしさを見せてくれるようになりました。その心がほどけていく過程が本当に愛おしく、寄り添った時間のひとつひとつが今も大切な思い出です。写真は、13~14歳頃の高齢期の姿です。穏やかな優しい子で、見返すたびに温かい想いがこみ上げてきます」

上杉:
その子のために、まずは飼い主さんに「お散歩をさせてほしい」とお願いし、少しずつ関係性を築きながら、お世話させていただきました。
やがて1年ほど経った頃のタイミングで、私の家で引き取らせていただくことができました。
その子は、その後10年、私たちの大事な家族として一緒に穏やかな時間を過ごしました。

──そうだったんですね。

上杉:
振り返ってみると、あの頃から本当に多くの方に助けていただいていたのだと感じます。
保護した子のお隣の方とは自然と仲良くなり、さまざまな情報を教えてくださったり、お散歩仲間も散歩を手伝ってくれたり、飼い主さんの許可を得てその子の住環境も整えてあげたりしました。

今も多くの方に支えていただいていますが、思えばあの時すでに、地域の中で「助け合う気持ち」をみんなで共有できていたのかもしれません。

「保護時の状態はさまざまで、衰弱が激しく治療が必要な子や、人に慣れておらず社会化から始めなければならない子も少なくありません。そのためにお世話の時間や医療費も多くかかりますが、それでも一頭一頭の命をつないでいくために、できる限りのケアとサポートを続けています」

──上杉さんにとって、犬猫のどんなところが魅力的でしょうか。

上杉:
犬や猫の魅力は、何よりその純粋さと、今この瞬間を一生懸命に生きる姿だと思います。
食べること、散歩すること、遊ぶこと…その時々を全力で楽しみ、精一杯生きている姿に、私はいつも心を動かされますし、動物から教えてもらうことは本当にたくさんあります。

人間はつい「どうしてできないんだろう」「なんでこうなんだろう」と比較したり落ち込んだりしてしまいますが、動物にはそうした迷いがありません。良い環境でも悪い環境でも、不平を言うことなく、与えられた状況の中で懸命に生きています。

だからこそ、彼らが少しでも安心して過ごせるように、できる限り本来の生体にも配慮した良い環境を整えてあげたいと思います。そして、私たちが関わったことで命が救われたり、厳しい環境から抜け出して幸せへの一歩を踏み出せた時には、心から喜びを感じます。

「当会から2頭の犬をお迎えくださった飼い主さま。ぶんちゃん(旧:タンタン)&ロシェちゃんは、同じ現場で餌やりされながら暮らしていた、半野犬で保護された子たちです。ご家族の一員としてのびのびと安心した表情で過ごしている姿を拝見し、私たちも胸がいっぱいになります。こうして笑顔あふれる日々を送っていることが何より嬉しく、幸せのおすそわけをいただいているような気持ちです」

──読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

上杉:
動物の命を守っていくことは、私たち人間の義務と責任だと思います。
とはいえ、一人の力だけではできることに限りがあり、社会全体が変わっていかなければ、この問題は本当の意味で解決しません。

動物も自然も、守ることも破壊することもすべては人間の在り方にかかっています。人間の「心のあり方」が、行動を変え、社会を変えます。私たちの活動が、誰かの気づきとなり、気づいた時に一歩を踏み出すきっかけにもなれたらと願っています。

皆、同じ社会を生きる仲間です。どうか温かい心で動物たちに向き合っていただけたら嬉しいです。

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

上杉:
現在、HOKKAIDOしっぽの会には100頭余りの保護犬猫が暮らしており、医療費やフード代など、日々の維持費に多くの費用がかかる状況です。
チャリティーは、保護犬猫たちの医療費(不妊手術・検査・治療など)、フードや消耗品の購入費として、大切に責任を持って活用させていただきたいと思っています。ぜひ、応援よろしくお願いします。

──貴重なお話をありがとうございました!

2025年3月、スタッフの皆さんと。「当会では、代表・スタッフ合わせて15名に加え、多くのボランティアさんが力を合わせ、それぞれが役割を担いながら、行き場を失った命を守り、新しい未来へつなぐために日々活動を続けています。ぜひ応援よろしくお願いします!」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

3匹の猫たちを迎え、日々一緒に暮らしていて思うことなのですが、言葉こそ持たないものの、それぞれがとっても感情豊かで、個性があり、やさしさがあり、ユーモアがあります。
それは行き場のない動物たちも全く同じであるはずで、寒さの中凍えていたり、お腹を減らしてひもじい思いをしていたり、暗くて冷たい場所で恐怖に怯えていたり…、深い孤独の中、今も誰かの愛情を待っている小さないのちがあるということ、その状況を私たち人間社会が生み出しているということを、我々は心に留め、覚えておかなければならないと思います。

この世に生を受けた以上、幸せになるいのちがひとつでも多くあるようにということと、不幸なまま一生を終えるいのちをこれ以上増やさないようにということを考えていく必要があると、上杉さんのお話をお伺いして改めて感じました。

・HOKKAIDOしっぽの会 ホームページはこちらから

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こちらに背中を見せる姿は、人間への強い信頼も表現しています。

“Happiness is a wagging tail(しっぽを振る彼らを見ることこそ、幸せ)”というメッセージを添えました。

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JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
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