CHARITY FOR

「進路未決定のまま卒業する子を一人でも減らしたい」。さまざまな事情を抱えた高校生に伴走、就労を支援〜NPO法人キャリアbase

高校を卒業した後、就職する割合は15.6%(国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集(2022))。

その中には、家庭や本人の事情等によるさまざまな課題を抱える生徒もおり、既存の枠組みでは、本人が本当にやりたいことや、自分に合った就職先をなかなか見つけられないといった課題があるといいます。

今週JAMMINがコラボするのは、NPO法人「キャリアbase」。
「進路未決定のまま卒業する子を一人でも減らしたい」と、高校生を中心とした若者を支援しています。

「通信制の高校生は、不登校経験や発達障がい、グレーゾーン、母子父子家庭や外国籍など、何らかの『生きづらさ』を抱えていることも多く、それらの生きづらさは複雑に絡み合い、未来に希望を持てていない生徒や、一般の高卒求人枠では就職が難しい事例も多く存在しています」と話すのは、キャリアbaseあすリード部の倉持杏子(くらもち・きょうこ)さん(29)。

「その結果、3割弱の生徒が進路未決定のまま卒業していくと言われていて、進路未決定のまま卒業してしまうと次の所属先が見つからず、社会的孤立を深めてしまう要因につながります。高校生のうちにいろいろな体験をして自分への理解を深めたり、安心できるいろいろな大人との出会いの中で将来のヒントをつかみ、“自分らしく”一歩を踏み出していけるよう活動しています」。

活動について、お話を聞きました。

お話をお伺いした倉持さん

今週のチャリティー

NPO法人キャリアbase

「学校と社会の架け橋に」をスローガンに掲げ、高校生を中心とした若者に向けて、社会に出る準備となるキャリア教育・個別就労支援・居場所支援を軸に活動しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2025/06/30

「進路未決定のまま卒業する生徒を一人でも減らす」

通信制高校にて、キャリア支援プログラム「artガイダンス」を実施している様子

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

倉持:
「進路未決定のまま卒業する生徒を一人でも減らす」ことをミッションに、高校生を中心とした生徒を対象に活動しています。

中でも特に、進路未決定のまま卒業する生徒が約3割(文部科学省「令和6年度学校基本調査」)と言われている通信制の高校に通う生徒を対象に、個別の就労支援を行っています。

今、通信制の高校に通う生徒は、10人に1人といわれていいます。
全国的に通信制の学校も生徒の数も増加しており、不登校や引きこもりをはじめとするさまざまな背景を抱え、普通高校から通信制高校に転入・編入する生徒も少なくありません。

──通信制高校は、定時制高校とは違うのですか。

倉持:
違います。通信制高校は毎日の登校は必須ではなく、登校は週や月に数日など生徒が自分の学習スタイルを選択できます。一方で定時制高校は、基本的に毎日登校すること、授業時間が夜間に行われるといった特徴があります。

通信制高校向けのキャリア教育支援。オンラインにてセミナーを実施

「一人一社制」というルールの課題

キャリアbaseの居場所「ふらっぽ北柏」の運営スタッフ「まなてぃ」さん

──高校生の就職活動には、どのような課題があるのですか。

倉持:
全国では、年間約100万人の高校生が卒業していきますが、このうち15.4%(約16万人)は、高卒での就職を希望しています(文部科学省「令和4年度 学校基本調査」より)。つまり卒業生の6~7人に一人は、高校卒業後、就職するという進路選択をしているのです。

高校生の就職活動のルールをご存知でしょうか。独自の文化やルールにより、“選択肢”が極端に狭まってしまう閉鎖的な就職活動になっているんです。

たとえば、特徴的な「一人一社制」というルールがありますが、高校生は原則として、一時応募の段階で一人一社しか応募ができません。

ふらっぽ北柏にて、通信制高校の生徒に向けて特別授業を行った際の一枚

──どういうことでしょうか?詳しく教えてください。

倉持:
毎年7月1日に企業の求人が公開となり、学校で求人内容が見れるようになります。夏休みに職場見学などをして、9月5日以降に、学校を通じて企業に応募します。9月16日以降に選考がスタート、採用結果が伝えられます。

面接に合格すると、その時点で面接を受けた企業への入社(卒業後の4月)が決定しますし、不合格となった場合は、10月以降に改めて他の企業に応募することができます。大学生の就職活動と違い、複数の企業から内定をいただいた中で比較検討して選ぶということができないので、入社後のミスマッチも生まれやすくなっているという現状があります。

──そうなんですね。

倉持:
学校としては、何百と届く求人の中から生徒一人ひとりに寄り添い、企業への職場見学や訪問の連絡をするとなると、時間的に限界が出てきてしまいます。職場への近さや給与面など、生徒の断片的な希望だけでマッチングしてしまうリスクも出てきます。

生徒が企業と直接、職場見学や応募のやりとりをすることもNGで、学校側の窓口はすべて先生となっていることも、高校生の就職活動ルールの課題の一つだと考えます。

春遠足に参加した高校生と、キャリアbase事務局長の福本さん

事情を抱えた生徒に特化して、個別支援を行う

学校の先生とキャリアbaseのスタッフ。「学校の先生と連携しながら校内キャリアサロンを運営しています」

倉持:
私たちは、通信制高校に向けた活動の中で、何らかのハンディキャップを持ち、18歳にして“生きづらさ”を抱えている生徒に数多く出会ってきました。

発達障がいの生徒もいれば、自傷経験のある生徒、若くして妊娠をした生徒、ヤングケアラーとして踏ん張っている生徒、外国籍でまだ日本語が流暢ではない生徒、施設育ちで18歳で住処を失う生徒など、彼らの抱える課題はさまざまです。
自分の力だけではどうすることもできない事情を抱え、それでも誰に相談して良いか分からず、頼り先がない中で悩む生徒もいました。

──なるほど。さまざまな背景のある生徒と次の所属先をつないでおられるんですね。

倉持:
はい。キャリアbaseでは学校の先生と連携しながら生徒の面談を行い、関係のある企業さんやリファー先の皆様にご協力いただきながら伴走支援を行っています。

たとえば、生徒の状態に合わせた雇用形態の検討や職場見学の受け入れ相談などです。
現在、生徒たちを受け入れていただいている企業さんが20社ほど、相談先なども合わせると50以上の関係各所にご協力いただいています。

「千葉県立松戸六実高等学校にて『わくWAKUデパートへようこそ』のガイダンス実施にあたり、サポートしてくださったミナトリー(ボランティア)の皆さまと」

生徒や卒業生が、社会とつながる居場所を

居場所「ふらっぽ北柏」での一コマ。「だれでも自由に過ごせる空間。トランプやUNO、ものづくり、昼寝、おしゃべりなど何をしてもOKです!」

──キャリアbaseさんの関係者人口のネットワークと、生徒一人ひとりへの寄り添いがあってこそなんですね。居場所支援もされていますが、これらはいかがですか。

倉持:
千葉県柏市の北柏にて、「ふらっぽ北柏」という居場所空間を週に一度、オープンしています。生徒や卒業生が社会とつながる場所として、安心して立ち寄れる第3の居場所になれたらという思いで、2023年4月から始めました。

──個別支援とはまた少し異なると思うのですが、どのようにリーチされているのですか。

倉持:
キャリアbaseがサポートしている生徒や卒業生に加え、関わりのある高校にポスターを貼っていただいたり、通信制高校では卒業前に紹介資料を配布していただいたりしています。
月に3~4回の開所と年5~6回の季節に合わせたイベントや、生徒からリクエストのあったイベントを企画、実施しています。

2024年12月、ふらっぽ北柏で実施したクリスマス会の様子

倉持:
居場所で生徒は自由に過ごしています。トランプやUNOをしたり、ものづくりをしたり、新しいことに挑戦してみたり、様々な体験をすることができます。また、居場所のスタッフ、地域の大人、他校の生徒などたくさん出会いがあることも生徒にとってポジティブな影響があると考えています。

高校を卒業した後、卒業生は学校と疎遠になります。そうすると、たとえば就職先や進学先で悩みを抱えても相談できる場がないケースがあります。
そんな時に「ふらっぽ」を思い出していただき頼っていただけたらと思っています。

ふらっぽのイベントは季節に合わせたクリスマス会や卒業イベントに加え、たこ焼きパーティや映画鑑賞会など、生徒に「これなら行ってみたい!」と思ってもらえたらと想いをこめて幅広く実施しています。
学年や学校、年齢や性別を超えた出会いや関わりも大切にしていて、ここでの出会いを通じて、自分がやりたいことを見つけた子もいます。

2025年2月に開催したキャリアbase主催のフットサル大会『キャリアbaseカップ』

──キャリア支援はいかがですか。

倉持:
東京都、神奈川、埼玉、千葉の高校を中心に、キャリアに関わる授業を行っています。
3年生向けの授業はオリジナル教材である「じぶんnote」を活用し、進路選択の準備を行っています。1~2年生向けには自己他己理解や自己肯定感、コミュニケーションなどをテーマに将来の視野を広げたり、ヒントにつながったりするような設計をしています。

通信制高校にて、『自分を好きになるガイダンス』を実施しているところ

生徒ひとりひとりにストーリーがある

「ふらっぽ流山おおたかの森」で開催したたこ焼きパーティの様子

──ご活動の中で、今の高校生たちをどのようにご覧になっていますか。

倉持:
出会う生徒にはそれぞれにストーリーがあって、当然ですが同じ子は一人もいません。これまでの時間でいろんなものを抱えたり、我慢したり、乗り越えたりしながら、一生懸命に生きています。

しかし高校生に限らず、小中学生も含めて、今は「いろんな大人と関わる機会」が圧倒的に少なく、生きづらさを感じている子が増えているように思います。

今の高校生は、小中学生の時にコロナ禍を経験していて、楽しみにしていた学校行事の経験がなかったり、人との関わりが途絶えてしまったりした経験をしていて、自分に自信を持てない生徒が少なくないと感じています。
一方でSNSは発達し、人と話さなくてもオンライン上でコミュニケーションが取れるなど、社会の変化も影響していますが、リアルな人との関わりやぬくもりを感じるということが減っているのも事実だと思います。

ふらっぽ北柏にて、生徒と話すキャリアbaseスタッフ

倉持:
だからこそ今、いろんな大人がいることを知ってほしい。
誰でも何かしら失敗をしてきていると思うし、話してみると実は過去に似たような悩みや状況にいたこともあるかもしれない。大人になってから何かを始めてもいい。同じ目線でフラットに関わってくれる大人の存在が生徒たちにとって、希望につながると思うんです。

「キャリアbaseの活動は、たくさんの方々に支えていただいています」

倉持:
「こんな人になりたい」「あそこだったら行ってみたい」という気持ちが生まれたら、生徒たちは自主的に進んでいけると思います。自分がどんな人になりたくて、どこに行きたいのか?それを考える、知る、機会を与えるのも私たちの役目だと思います。

大切なのは失敗や成功の結果ではなく、いろいろなことを「やってみる」ことだと考えています。その挑戦した事実や、過程で得たことが、本人の自信に繋がったり、知らなかった自分に出会ったりするきっかけにもなり、未来につながっていきます。

「過去に生徒の受け入れ相談に応じてくださった企業さまと。生徒を受け入れてくださった企業さまから入社後の様子を共有いただく度に嬉しい気持ちになりますし、企業さまには感謝の気持ちでいっぱいです」

「温かい『港』を、皆さんとつくりたい」

フットサルチーム「バルドラール浦安」の選手としても活躍する倉持さん。「キャリアbaseとフットサルチームのハブとして、何ができるかをいつも考えています。キャリアbaseの活動にフットサルを応援してくださる方々が参画し、生徒とコミュニケーションをとったり、いろいろな形で活動を支えてくださっていることがありがたいですし、キャリアbaseで関わっている生徒や一緒に働いているメンバー、ボランティアさんがフットサルの試合を観に来てくれることもあります。私が両方の活動をやりがいをもって全力で取り組んめているのは、皆さんの存在あってこそ。心から感謝しています」。(写真提供:バルドラール浦安)

──読者の皆さんに、メッセージをお願いします。

倉持:
私たちの活動は「港」をイメージしています。
いつ帰ってきてもいいし、いつ出発してもいい。
「ただいま」「おかえり」と言える温かい港を作っていきたいという想いがあります。

「特に得意なことや資格があるわけでもないから、自分に何ができるのかわからない」という声も伺うのですが、高校生にとって、話を真剣に聞いてくれたり、前向きな言葉をかけてくれたりする大人の存在ってすごく貴重で、救われることもあります。

ぜひ「港で生まれるみんなのストーリー」を応援する仲間になっていただけたら嬉しいです!

──最後に、チャリティーの使徒を教えてください。

倉持:
チャリティーは、関わっている生徒たちにさまざまな体験機会を届けるための資金として活用させていただきたいと思っています。
2024年度の居場所イベント実施における費用合計が、およそ30万円でした。

今年もキャリアbaseの居場所「ふらっぽ」で生徒にたくさんの体験・機会を作りたいと思っているので、ぜひ応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

2025年6月、千葉県立柏の葉高等学校にて実施した総合的な探究のプログラム「ハレかしゼミ」。「地域社会と連携しながら生徒の挑戦の機会を生み出し、考える力や問題解決能力など“生きる力”を育みます」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

親や学校、塾や習い事の先生だけではなく、いろんな大人と出会い、考え方や生き方を知ること。自分の高校生時代を振り返っても、これはとても大きな経験だったように思います。「そんな考え方もあるんだ」と励まされることもあったし、「私はこうかもしれない」と自分自身を知るきっかけにもなりました。
キャリアbaseさんがおっしゃる「港」のような、温かい社会が広がっていくことを願っています。

・キャリアbase ホームページはこちらから

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【2025/6/30~7/6の1週間限定販売】
一人ひとりの選択や生き方が尊重され、いつでも挑戦や失敗ができる温かな社会。
キャリアbaseさんのご活動の象徴として、人が豊かに行き交う港を描きました。

“Fill your life with colors”、「あなたの人生を、彩りで満たして」という言葉を添えています。

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JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)