CHARITY FOR

4月2日は「世界自閉症啓発デー」。「自閉症の人たちに、温かい気持ちで接して」〜一般社団法人日本自閉症協会

4月2日は、国連が定めた「世界自閉症啓発デー」。
この日に合わせ、今年も日本自閉症協会さんとコラボします!

自閉症の方が、より豊かに、幸せに生きられる社会のために。
自閉症のこと、その特性やご家族との暮らしを知ってもらうことで、その理解を深めたい。

「どう接していいのかわからないということがあるかもしれません。でも、温かい気持ちで接してもらえたら。ぜひ仲間になって、自閉症の人たちが暮らしやすい社会を応援してもらえたら」。

今回は、自閉症の娘を持つ神戸市自閉症協会会長の日野滋子さん、宮崎県自閉症協会会長の児玉真弥さんのお二方に、お話を聞きました。

世界自閉症啓発デーにあわせ、各地でさまざまなイベントが開催されます。写真は2024年4月、高知県のイメージキャラクター「くろしおくん」との啓発活動(高知県自閉症協会)

今週のチャリティー

一般社団法人日本自閉症協会

自閉スペクトラム症の人たちに対する福祉の増進および社会参加の促進、広く社会に貢献することを目的に、自閉スペクトラム症のある人たちのより良い未来を目指し活動する団体です。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2025/03/10

カラオケが大好きな春香さん。
歌を耳で覚え、ほぼ完璧に歌いこなす

2024年4月、京都駅ビル広場で開催された「世界自閉症啓発デーin京都 京都タワーライトアップイベント」にて、ダンスを披露する青年成人部ダンスサークル「Kirala」の皆さん(京都府自閉症協会)

最初にお話をお伺いしたのは、神戸市自閉症協会会長の日野滋子(ひの・しげこ)さん(65)。
次女の春香(はるか)さん(36)は、重度の知的障がいを伴う自閉症です。
普段はいくつかの単語としぐさで意思疎通をしているという春香さんですが、カラオケが好きで、耳から聴き、覚えるのが得意だそう。お母様の滋子さんと、カラオケや電車に乗って出かけるのを楽しみにされているといいます。

滋子さんと春香さん。「毎年、神戸市自閉症協会と兵庫県自閉症協会と合同でバス旅行に行きます。親子共に楽しみにしています。写真は10年ほど前のもの。『行ってきます!』

滋子さん:
春香は小さい頃、歌が好きで、まだ言葉も出ない時に、彼女の口から聞いたのが、幼稚園で習ったおはようの歌やおかえりの歌でした。
自閉症の特性でこだわりが強く、思い通りにならずにパニック状態になっている時も、テレビから歌が流れると、ピタッとおさまりました。「この子はほんまに歌が好きなんや」と思ったことを覚えています。

カラオケで歌を披露する春香さん。「神戸市自閉症協会のカラオケ大会にて。自信を持って得意そうに歌っています。褒めてもらうと自信につながり「もっとやりたい 」という気持ちになるようです。得意なことを見つけること、褒めて自信を持たせることは大事なことと思います」

滋子さん:
高校生ぐらいの時に、ガイドヘルパーさんが「そんなに歌が好きやったら、カラオケに連れていってあげる」と初めてカラオケに行き、そこでどハマりしました。今、春香にとっては一番のたのしみです。
私もそれまでカラオケに行ったことはありませんでしたが、今では一緒にカラオケに行くのを楽しみにしています。

──どんな歌を歌われるのですか?

滋子さん:
最初は童謡から始まって、サザエさんやドラえもん、アンパンマンなどアニメの歌を歌っていました。私が松田聖子やユーミン、美空ひばりといった昭和の歌謡曲しか知らないので、そういうのを歌っていると春香も覚えて、今はそういう歌も歌います。

──すごい、歌詞も、音程やリズムも覚えて歌われるんですね。

滋子さん:
歌詞の意味までは理解していないと思いますが…、美空ひばりさんの「川の流れのように」などはかなり長い歌だと思いますけど、かなり正確に歌います。音程もいいですよ。
普段の会話は1単語、2単語なので、脳の会話の部分と、歌詞を再現する部分は違うのかもしれないなと思います。

水分補給や食事など、自分で適量を判断するのが難しいといいう春香さん。お茶などは普段から、コップに入れて用意するようにしているのだそう。「写真は、事業所での昼食の様子です。ご飯、おかず、お茶が適量に入れられて、一人分ずつトレーに載せられています」

──春香さんは、カラオケをどんなふうに楽しんでおられるんでしょうか。

滋子さん:
「誰かに聴かせて楽しもう」というよりは、自分で自分の声を聴いて楽しんでいるという感じです。カラオケの時は目がキラキラ輝いて、ニコニコ、嬉しそうにしています。
本人に選択させると毎日行くことになるので(笑)、「今日は行こうか」とか「明日にしようか」と本人にも納得してもらいながら行っています。

──歌のレパートリーはどのぐらいあるのでしょう?

滋子さん:
通っている事業所でもカラオケをやっているので、周りの友達が歌う歌を聴いて、100はゆうに超えていると思います。好きだからでしょうか、新しい歌でも、かなりすぐに覚えます。

自宅のリビングでお出かけの時間を待つ春香さん。「机の上にあるのはタイムタイマーで、時計が読めなくてもタイマーの赤い部分が減っていくことで時間の経過がわかります。我が家で20年近く活躍しています」

地元の小学校では特性に合った支援が難しく、
小6の時に養護学校に転校

2歳の頃の春香さん(写真左)。一歳上のお姉さんと。「赤ちゃんの時はむしろ大人しい子でしたが、この頃から多動が目立つようになり、春香を追いかけて日が暮れる日々が始まりました」

──小さい時はどんなお子さんだったのでしょうか。

滋子さん:
あらゆるものにこだわりがありました。
家でビデオやゲームを見せると、同じシーンを繰り返し、際限なく見たりしていました。家にこもってそればっかりになってしまうといけないと思い、意識して外に連れ出すようにしていました。

子どもの頃はしょっちゅうパニックを起こしていましたが、言葉がないのでコミュニケーションのすべがなく、本人もとてもつらかったと思いますが、親にとってもすごく苦しく、ストレスでした。

多動で、外出してもすぐいなくなったり、スーパーではすぐ迷子になり、警備員さんとも顔馴染みになりました。気になることがあると、そこだけに意識が集中してしまうところがありました。ただ、興味の対象はわかるので、多分お菓子売り場かなとか、おもちゃ売り場かなとか、大体の検討はつきました。

小学生1年生の頃の春香さん。「歌を歌うだけでなく、音楽を聴いたり、楽器を演奏したりするのも好きでした」

──どういったことでパニックになるのですか。

滋子さん:
漠然とした不安が原因だったり、本人が伝えたいことをうまく伝えられずにパニックになることもありました。
地域の小学校の先生が熱心に動いてくださって、地元の小学校に通ったものの、当時、自閉症の特性に合った支援というものはまだあまりなく、本人も学校がどういう場所かわからずにしんどい思いをしたと思います。周りの会話にもついていけないし、意味もわからないし、そのあたりでの苦しさが、かなりあったと思います。

パニックがひどくなり、小学校6年生の時に養護学校(現在の特別支援学校)に転校しました。そこで、視覚支援をしたり構造化して説明するとか、スケジュールを立てるとか、自閉症の特性に合った支援をしていただき、かなり落ち着いて、パニックもおさまりました。

自閉症に合った教育や支援の大切さを理解した一方で、まだ障がいが十分に受け入れられていなかった当時、地域の学校に入れたことは、すごく恵まれていたと思います。

春香が小学校1年生の1995年、阪神淡路大震災を経験しました。
震災後、断水が2週間ほど続き、通っていた小学校が給水場になっていたのですが、春香がひどい多動のため、水をくみにいくことができずに困っていました。

すると、給水場に私たちの姿が見えないことに気づいた先生が「日野さんは、春香さんがいるから給水場に来ることができないんだろう」と察してくださって、水を自宅まで持ってきてくださったんです。本当にありがたかったです。
もし、地域の小学校ではなく養護学校に通っていたら、春香のこと、春香の障がいのことを認識してもらうことはなく、困っていたと思います。

生活介護の事業所にて。「写真は、調理実習をしているところです。食べることには興味がありますし、調理は段取りがわかりやすいので真剣に取り組んでいます」

おでかけ好きな春香さん。
休みの日は電車やバスでおでかけ

「休みの日にドライブがてら、兵庫県小野市にある『共進牧場』に出かけました。牛さんとのツーショットです」

──今は生活介護の事業所に通所されているとのこと、毎日どのように過ごしされているのですか。

滋子さん:
今の事業所には、18年通っています。車で10分ぐらいの場所で、毎朝送迎しています。
法人の方針として「重度の人でも、できるお仕事をしよう」というのがあり、生活介護事業所ですが、ゴムのバリ取り、他の人が作った製品を数えるといった軽作業をしています。

午前10時スタートなので、9時過ぎに送迎して、夕方4時ごろまで施設にいます。
その後、日によってはカラオケに行ったり、移動支援を利用してどこかにでかけたりといった毎日を過ごしています。
休みの日は、買い物やお散歩に出かけます。電車やバスに乗るのが好きで、本人の中でも「休みの日=おでかけするもの」となっているようです。

──家ではどんなふうに過ごしておられるのですか。

滋子さん:
家ではやることがないというか、家にいることが好きじゃない人です。
本人にとっても、「家は寝る場所」という認識なのかもしれません。親としては余計に「出かけられる時は出かけよう」と思います(笑)。

以前は車で移動していましたが、年齢とともに遠出がしんどくなってきたので、最近はもっぱら、電車やバスに乗って出かけます。「電車とバスに子守をしてもらっている」と言っているのですが、眺めが良いようで、ずっと外の景色を見ています。
一度見た景色はすぐに覚えて、あそこに何があった、これがある、と教えてくれます。

「コロナ禍でしばらくお出かけができなかったのですが、一段落した時に、神戸市自閉症協会の仲間で淡路島の『ハローキティスマイル』に行きました。久しぶりのお出かけで嬉しそうな笑顔です」

「春香がいてくれて、世界が広がった」

移動支援を利用して、ガイドヘルパーさんとボウリング場へ。「移動支援では、普段家族では連れて行きにくい場所にも連れて行ってくれますし、新しい体験もさせてくれますのでありがたいです。大事な支援サービスだと思います」

──これまでを振り返って、しんどかったことはありますか。

滋子さん:
そうですね…。やっぱり、小さい時がいちばんしんどかったです。
本人がパニックになっていても、何を訴えているかわからないし、こちらが言っていることも伝わらない。こちらもパニックで、泣きたかった。当時は相談できる友人もいなかったし、誰かに相談するという発想自体ができないぐらい、追い詰められていました。

生まれて1、2年の時の医師の診断は「自閉的傾向があります」ということだったのですが、他の子どもとあまりに違い、3歳の時に自閉症だと確信しました。

でも、私の中で「もしかしたら、治るんやないか」というのもあったし、「なんとかして治してやりたい」という思いもありました。でも、あらゆる努力をしてもうまくいかず、相談する相手もおらず、どうして良いかわからずに追い詰められ、夜も眠れませんでした。

知的障がいのある子どもを対象にした通園施設に通った時に、「うちはこうなんよ」と大変さを共有できる仲間のお母さんができて、いろんなアドバイスをもらったし、仲間が大勢いるんだと思えました。それが大きかったですね。「こんなに大勢の仲間がいるんやから、皆で一緒にやっていける」と前を向くことができました。

──そうだったんですね。

思い出深い一枚。春香さんの成人祝賀会にて、滋子さん、夫の幸次郎さん、春香さんのスリーショット。「この時は、養護学校の仲間や先生方が集まって、祝ってくださいました。本当に大勢の方々の支援のお陰で、親子共に成長することができました。支援してくださった方々、陰で支えてくださった方々に感謝いたします」

滋子さん:
今振り返って、春香がいてくれてよかったと思います。
私自身の世界が広がったし、仲間がたくさんできました。この子がいなかったら、つまらない人生やったと思います。

なんていうのかな、それまでは、偏差値に一喜一憂するような人生やったんです。でも春香と過ごす中で、人間の価値というものは、テストの点などではまったく測れないということをすごく感じましたし、今日、こうやって山本さんと話をしていますが、春香がいなかったら、山本さんとも出会えませんでした。

春香は36歳になり、少しずつ、親離れの時期に来ていると思います。
「可能な限り、我が子と過ごすのが幸せ」という親御さんもおられますが、健常の子どもであれば二十歳になると親と離れて当たり前で、重度の知的障がいがあっても、二十歳を過ぎたら親と離れるというのは、いけないことでもわるいことでもないと思います。

事業所にて、仕上がった製品を決まった数ごとに分けていく作業をしていまるところ。「春香は数は数えることはできませんが、マス目を用意すると、それに製品を並べていって、決まった数(35個)ずつ仕分けることができます。ちょっとした工夫で、重度の障害があっても生産活動に参加できます」

滋子さん:
私がまだ元気なうちに、グループホームなど体験させてあげて、親として、改善できることがあれば伝えて、春香が元気に過ごせる環境を作ってあげたいと思っています。ただ、なかなか空きがないのですが…。

──読者の方にメッセージをお願いします。

滋子さん:
独り言を言っていたり、飛んだり跳ねたりしていたりする自閉症の人に対して、こわいとか、どう接していいのかわからないということがあるかもしれません。でも、温かい気持ちで接してもらえたら。決してこわい人でもわけのわからない人でもないということを知ってもらえたらと思います。

自閉症の人は、ちょっと感覚や感じ方が違っていて、たとえば耳を塞いでいるとか、大きい声を出しているとか、変に見えることがあるかもしれません。でもそれには理由があるんだということと、それ以外は、純粋で優しい人なので、そのことを知ってもらえたらなと思います。そして、ぜひ仲間になって、一緒に活動してもらえたら嬉しいです。

2024年、神戸市自閉症協会、兵庫県自閉症協会合同のバス旅行で奈良を訪問。法隆寺の前で、記念撮影!

スーパー戦隊が大好きな朋弥さん。
「本人が心穏やかに過ごせる環境を」

お話を聞いたのは、宮崎県自閉症協会会長の児玉真弥(こだま・しんや)さん(59)。
次男の朋弥(ともや)さん(29)は、中度の知的障がい・強度行動障がいを伴う自閉症です。
知らない人と接するのは緊張するため、普段は家族、主にご両親とコミュニケーションをとっているといいます。

真弥さんと朋弥さん。「2015年7月、鹿児島に日帰りドライブへ。道の駅すえよしにて撮影しました」

──普段はどんな話をされるのでしょうか。

真弥さん:
ドラえもんやクレヨンしんちゃん、大好きなスーパー戦隊の動画の場面を記憶していて、結構長い台詞を言ったりします。スーパー戦隊が大好きで、48戦隊すべての顔と名前がわかります。

日常の会話としては、単語をつなげて自分の意思を伝えることはできますが、人と接することに極度のストレスを感じるため、父親である私か、母親以外の人に伝えるのはなかなか難しいようです。

本人の緊張の度が過ぎると、精神状態が悪くなってしまいます。そういったことが起こらないよう、普段から本人のペースで過ごせるように心がけています。

朋弥さんがコレクションしているソフビ人形。「スーパー戦隊ヒーローのレッドが大好き。顔の違いが全部分かります」

──どんなことを心がけておられるのですか。

真弥さん:
本人がいちばん気にするのが、私たちの表情です。
朋弥は、人の表情をものすごくよく見ます。「表情から読み取る」という力が、ものすごく強いように思います。

私が怒ると朋弥も不安になり、怒ります。母親がドラマを見て感動で泣いたりすると、悲しくて泣いているのか嬉しくて泣いているのか区別がつかず、「涙=嫌なこと」という認識なので、それも不安要素になります。

それが原因でパニックになることもあるので、ネガティブな感情はできるだけ本人の前では出さないようにするなど、失敗もしながら、本人が心穏やかに過ごせる環境を、少しずつ築いてきました。

──確かに、相手の表情が強く読み取れてしまうと、緊張したり、不安になったりしますね。

真弥さん:
朋弥にとって「たくさんの人と接すること」は、最も苦手なことです。
知っている人がいると少しは安心できるようですが、現在通っている生活介護の施設でも、一人で過ごす時間が多いです。

自宅にて、クリスマスにロールケーキを食べる朋弥さん。「クリスマスはロールケーキと決まっています」

本人が理解できるよう、目でわかるように伝える

本人が理解して納得できるよう、日常生活の中ではさまざまな工夫をしている。写真は「サンタさんからの手紙」。「パパがプレゼントの準備が遅れて…」

──朋弥さんは、どんなお子さんだったのですか。

真弥さん:
小さい頃は、手のかからない子だと思っていました。
幼稚園の年長の時、お泊まり保育があったのですが、それがものすごく嫌だったようです。10年以上後の支援学校高等部の時、突然お泊まり保育の記憶がフラッシュバックし、パニックになりました。そして「パパとママはよくも、僕をお泊まり保育に行かせたな!」と何度もわめき散らしました。

彼らの脳は私たちの脳とは違っていて、記憶が映像として鮮明に残っているようで、一度フラッシュバックが始まると、嫌な記憶がどんどん連鎖して出現するようなんです。

今は本人も、嫌なことは嫌だと言葉で伝えることができるようになってきましたが、当時、朋弥がお泊まり保育を嫌がっていることに親として気づけなかったし、朋弥も、それが嫌だと伝えることができなかった。
多分、お泊まり保育の予定を、事前にしっかり伝えてあげられたらよかったんだと思います。お泊まり保育がどういうものか「わからない」ままだったため、嫌な記憶になっていしまったのだと思います。

──そうだったんですね。

小学校5年生(10歳)の頃の朋弥さん(写真左上)。「弟の誕生日に、顔を引きつらせてグーサインをしています」

真弥さん:
今、朋弥が行っている事業所では、彼のそのような特性を理解してくださって、普段のスケジュールをしっかり組み、先の予定を目に見えるかたちにしてくださっています。
「目に見える」ということが、本人はいちばん安心するみたいです。給食の献立表を家にも貼っているのですが、時々見に行って確認しています。

いろんな経験を積み重ねてわかったことは、朋弥にとって、「わからない」ということが、何より不安になるのだろうということです。私が彼の質問に「わからない」と答えると、不穏になってくる。なので「わからない」という言葉自体がNGワードになっています。
うまく伝えること、目に見えるもので伝えて、彼自身が理解できるということが、非常に重要なことなんだろうと思います。

3歳の頃の朋弥さん。「毎日、ポケモンのサトシの格好をしていました。私たちが、朋弥のこだわりの強さに気付き始めた頃です」

一時は強制入院を勧められたことも。
それでも、家族で穏やかに過ごせる道を模索

2015年に訪れた、京都の東映太秦映画村にて。大好きなレッドに囲まれてVサイン

真弥さん:
家でも、できるだけスケジュール表に予定を書き込み、普段から目に見えるかたちで共有するようにしています。

朋弥は精神科に通っており、年に1度は必ず、病院での受診が必要です。ちょうど先月、施設を休んで受診してきました。しかしこの時は、あえて病院に行くことはスケジュール表に書かず、直前に本人に告げました。
というのは、スケジュール表で本人が緊張する予定を事前に告げていたことで、不安や緊張が続き、精神状態が悪くなってしまったことがあったからです。

「年に一度の病院受診、どう伝えるか悩みました…。試行錯誤の日々です」

真弥さん:
病院は彼にとって、とても高いハードルです。
受診の際は、お医者さんに無理をお願いして、病院の駐車場に車を停め、車内で診察をしていただいています。今回は「パパが病院に薬をもらいに行くから、病院が終わったらソフトクリームを食べよう」と玄関を出ました。すると普段は後部座席に座るのに、自分から助手席に乗りました。自分が受診することを理解していたのだと思います。

家を出てから病院に着くまでの間、一言も話さず、ものすごいストレスを感じていることが伝わりました。ただ、実際に診察が始まると、先生の問いに対してきちんと答えますし、毎回極度の緊張なのに、先生の名前はしっかり覚えているんです。
診察を終えると穏やかな状態に戻り、ほっとしました。

──無事終わって、よかったですね。

2015年8月、妹さんも一緒に、2021年に閉館した「かしいかえんシルバニアガーデン」(福岡)を訪れた際の1枚

真弥さん:
10年ほど前、支援学校高等部の3年生の時にかなり状態が悪くなり、一時期、学校にはほぼ行かなくなりました。支援学校といっても、全ての先生が自閉症の特性をよく知ってくださっているわけではありません。詳しいことはよくわかりませんが、先生と行き違いのようなことがあったのかもしれません。

学校に行かずに家に引きこもるようになりましたが、ほかに兄弟もいて、日々の生活で朋弥一人だけに配慮するということはほぼ不可能です。親として学校に行かせたいという思いもあって、ぶつかることが増え、朋弥は弟や妹にも暴力を振るったり、ものを壊したりするようになりました。本当に苦しい時期でした。

その頃、初めて精神科を受診しました。強度行動障害による問題行動の程度が激しく、専門医からは「他人に危害を加える可能性があるので、行動がおさまるまでの数ヶ月間、閉鎖病棟に入れた方が良いのではないか」と提案を受けました。医師として、適切な判断をしていただいたのだと思います。

幼い頃、きょうだいの皆さんと。写真右、スプーンを持っているのが朋弥さん

真弥さん:
ただ朋弥には、良いことも悪いことも、抜群の記憶力があります。
これまでのお泊まり保育や修学旅行での記憶が、フラッシュバックで鮮明に出てきていたので、「これ以上、彼の悪い記憶を増やしたくない」と思いました。

妻とも話し合い「強制入院はせずに、家でなんとかやっていこう」と決めました。
そこからは処方していただいた薬を服用し、さまざまな福祉サービスを利用しつつ、家族全員が心穏やかに過ごせる方法を、試行錯誤しながらも皆で模索してきました。今は、比較的落ちついた生活を送っています。

平日は毎日生活介護の事業所へ。「車から降りて、行ってきます!」

楽しみな予定があると、
心穏やかに過ごせる

「5人の子どもたち、みんな宝物です」

真弥さん:
朋弥はたくさんの人と会うことが苦手ですが、家族以外の人に会いたくないかというと、そういうわけではないんです。年に数回、正月やお盆に、祖母の実家に親戚一同で集まるのですが、それをすごく楽しみにしています。

今朝も聞かれました。「集まり、いつ?」って。精神状態が良い時は、それが結構先でも問題ないようで、楽しみな予定がわかれば、そこを目標にして、日々を穏やかに過ごせるようです。ただ状態が悪い時は、楽しみな予定が近くにないと不穏になります。それでも、本人が納得できる理由を示してあげると、落ち着きます。

とにかく「わかるように伝える」こと。紙に書くのもそうだし、言葉で説明するのもそうですが、本人が理解し、納得できるとのが大事なようです。

──そうなんですね。

真弥さん:
それだけ楽しみにしている集まりですが、実際に集まって、親戚たちと食卓を囲むと、楽しみにしていた当の本人は数分で食事を終え、別の部屋に行って一人で過ごしています。
皆でわいわい談笑するのではなく、一緒の空間にいることを楽しんで、あとは一人で過ごすというのが、朋弥のペースなのかなと思います。

でも、友達の少ない朋弥にとって、「集まり」は、心穏やかに過ごせる、数少ない場所なのかなと思います。

毎年出る新しい戦隊ヒーローの情報を、インターネットなどで必ずチェックしている朋弥さん。雑誌の掲載も欠かさずチェック

親の会の交流が力に。
朋弥さんと、これからも

生後3ヶ月の頃の朋弥さんと真弥さん

                
──普段、家ではどのように過ごしておられるのでしょうか。

真弥さん:
絵を描いたり、パソコンで戦隊ヒーローや好きなアニメのDVDを見ていることが多いです。のび太くんの絵を、果てしなく描き続けています。1日3枚とか4枚とか、これまでにかなりの数を描いていますね。

時間にもこだわりがあって、常に目覚まし時計を持ち歩き、秒針までしっかり見ています。夕食は夕方6時と決まっていますが、秒針も6時ちょうどになってから食べます。

──すごいですね!

真弥さん:
夕食の前後に、自分の部屋かリビングでDVDを見て、9時には就寝しています。
施設がお休みの土日も、平日の夜と同じように自分のペースで過ごしています。休日のお昼ご飯はカップ焼きそばのUFOと決まっています。

「食後には、必ず麦茶を飲みます。カメラを向けるとVサインをしてくれます」

──朋弥さんは現在29歳とのこと、頼もしく感じられることはありますか。

真弥さん:
朋弥は5人きょうだいなのですが、他の子どもは皆、成人して家を出ました。
今は私と妻、朋弥の3人暮らしですが、夜、仕事から帰ってきてくつろいでいる時の定番のやりとりで、私が時々、ふざけて演技をするんです。

「もう疲れた!倒れるー」などといって倒れたフリをすると、「僕がパパを助ける!」と言って、起こそうとしてくれるんです。今年、私は還暦で、いろんな衰えを感じていますが、本当に弱ってしまった時、きっと朋弥が頼りになるなあと思っています。

私も妻も、元気なうちはできるかぎり一緒に過ごせたらと思いますが、いつか、というのがありますから、親亡き後、本人がペースを崩さずに生活できる環境を整えてあげられたらと思っています。

パソコンで調べ物をしている朋弥さん。「何かを調べています。…◯◯レッドかなあ」

──読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

真弥さん:
23年前、朋弥が6歳の時に宮崎県自閉症協会に入会し、会長になって20年になります。
全国の同じ自閉症のある子を育てる親御さんたちと出会い、先輩方の意見や取り組みを聞いて、自分が子育てをする上でも非常に力になりましたし、「一人じゃない。仲間がいる」と思えました。

九州各県の自閉症協会の皆さんとも集まる機会がありますが、親の会の交流が、いつの間にか自分にとってライフワークとなり、とても大きな存在となっていました。そうやって20年があっという間に過ぎていったのかなと思います。

今はインターネットやSNSで情報収集ができる時代です。でも、一緒に過ごして伝わること、伝えられることもあると思っています。親の会に入ることを検討している方がおられたら、ぜひ仲間になってもらえたらと思っています。
何か負担しないといけないということは全然なくて、やりたいことやできることがあればやってもいいし、だけどまずは、自分の子どもを一番大事にして、一緒にいろんな話ができるといいですね、ってお伝えしたいです。
いつでもどうぞ!お待ちしています。

九州協議会50周年in佐賀にて、九州の自閉症協会の皆さんと。「仲間たちとともに、幸せを求めていきたいです」

チャリティーは、自閉症啓発のために活用されます!

「2024年世界自閉症啓発デー Light It Up Blue 金沢」。シンボルカラーであるブルーにライトアップされた金沢城址公園石川門(石川県自閉症協会)

今回のコラボアイテムをご購入いただくと、1アイテムにつき700円が日本自閉症協会さんへとチャリティーされ、自閉スペクトラム症の正しい理解や啓発を促進するためのパンフレットを制作・配布するための資金として活用されます。

「世界自閉症啓発デー」に向けて、ぜひ、チャリティーアイテムで応援していただけたら嬉しいです!

・日本自閉症協会 ホームページ 
・世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト

日本自閉症協会のスタッフの皆さんが、一足お先に今回のコラボTを身につけてくださいました!「今年も応援よろしくお願いします!」

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【2025/3/10~16の1週間限定販売】
自閉症の人たちが持つ個性や輝き、これまでの大切な思い出を、蓋の開いた瓶で表現しました。
キラキラした世界が広がり、そこに鳥や蝶が集まる様子は、自閉症の人と触れ合うことで、その感性の豊かさや魅力を知り、尊重が生まれる様子を表現しています。

”Fill your life with happiness”(人生を、幸せで埋め尽くそう)というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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SNSでシェアするだけで、10円が今週のチャリティー先団体へ届けられます!
Let’s 拡散でチャリティーを盛り上げよう!
(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)