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「結婚の自由をすべての人に」訴訟、いよいよ大詰めへ。同性婚の実現に向けて〜「結婚の自由をすべての人に」訴訟全国弁護団連絡会


6年前の2019年2月14日、札幌、東京(一次)、名古屋、大阪の各地方裁判所で、そして9月5日には福岡地裁で、2021年3月26日には東京で二次訴訟も提訴された「結婚の自由をすべての人に」訴訟。
2024年、札幌、東京(一次)、福岡の3つの高等裁判所で、「(同性婚を認めないのは)違憲」という判断が下されました。きたる3月7日には名古屋高裁、3月25日には大阪高裁でも判決が出ます。

各地での裁判を経て、この後、同性婚訴訟は最高裁で争われることになります。

今週、JAMMINは「結婚の自由をすべての人に訴訟全国弁護団連絡会」とコラボします。
日本で同性婚は実現するのか。裁判は今、どうなっているのか。
北海道弁護団の皆川洋美さん(札幌弁護士会)、東京弁護団の沢崎敦一さん(第二東京弁護士会)、愛知弁護団の水谷陽子さん(愛知県弁護士会)、関西弁護団の宮本庸弘さん(大阪弁護士会)、九州弁護団の石田光史さん(福岡県弁護士会)、森あいさん(熊本県弁護士会)、鈴木朋絵さん(山口県弁護士会)の7名に、お話を聞きました。

今週のチャリティー

「結婚の自由をすべての人に」訴訟全国弁護団連絡会

法律上の性別が同じ人同士は、日本では結婚できません。
法律上の性別にかかわらず結婚できることを目指し、合計30人以上の原告と約80人の弁護士によって、全国5つの裁判所で6つの訴訟が行われてきました。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2025/02/10

注):
「同性婚」という言葉を使わずに、「結婚の自由をすべての人に」というフレーズを訴訟や弁護団の名称に使っているのは、法律上の性別が同性であれば結婚できず、お互いを「同性」と思っていない人たちにも関わること、「同性婚」という特別なものを求めているのではなく単に結婚を求めていることなどによります。
この記事で、単に「同性」、「同性婚」、「同性カップル」、また「異性」といった言葉を使っていることもありますが、原則として、法律上の性別を基準にして使用しています。

「同性婚を認めないのは、重大な人権侵害」

2024年3月14日、北海道訴訟の判決に向かう弁護団のメンバーと支援者。右端が皆川さん。左端の支援者さんが着用しているのは、婚姻の平等の実現のために活動する公益社団法人「マリッジフォー・オール・ジャパン」と2021年にコラボした際のコラボTシャツ

──今日はよろしくお願いします。最初に、この訴訟について教えてください。

水谷:
今の日本の法律では、法律上の性別が同じカップルだと結婚したくてもすることができません。すごくわかりやすくいうと、「それは間違っているよね、人権侵害だよね」と訴えている裁判です。

人権侵害は、裁判の中では「憲法違反」という言葉で表現されます。
公権力がやってはいけないことや、やらなければならないことを定めているのが「憲法」ですが、平たくいうと、「同性同士が結婚できる法律がないために、国民として守られるべき人権が守られてない。それは憲法違反なんだ!」ということを訴えています。

「法律を作るのは国会ですが、国会は選挙で選ばれた議員さんたちが、最終的には多数決で法律を作っていきます。そうなると、少数者の権利が見落とされがちです。裁判所は、憲法に違反するかどうかを判断することができます。人権を侵害しており憲法に違反するなら、裁判所が憲法違反だと判断することで、違憲の法律や、法律がないことの違憲性を是正することができます。司法には、少数者の人権を守る機能があります」

皆川:
同性同士であるがゆえに結婚できない人たちの人権問題を、裁判所を使って解決しようとする状況にあります。
本当は、立法に属する国会議員の方たちが法律を変えるために動いてくださると良いのですが、国会議員は選挙で選ばれるため、どうしても大多数の人たちの意見を反映する人が当選しやすく、少数派の意見や願いを反映させた議員は相対的に少なくなってしまうのです。

少数派の人権に目を配り、「人権の砦」となるために裁判所が存在します。今回の裁判でも、そこが期待されています。

実はこの一斉提訴の前、2015年7月に、今回の訴訟で原告になってくださっている当事者の方たちを含む「同性婚が法制化された場合、同性婚をすることを希望する可能性があると考える方」が申立人となって、日本弁護士連合会(日弁連)に対し、「同性婚を認めないのは、重大な人権侵害だ」と、同性婚の人権救済の申し立てを行いました。

しかし当時、まだ時勢も追いついていない中で、日弁連の中でもなかなかどう結論づけるかが難しかったようです。日弁連からなかなか結論が出てきませんでした。そこで、法律を変えるためには訴訟に移った方がはやいのではないかということで、2018年より準備をはじめ、2019年2月に訴訟を起こしました。

2022年6月20日、大阪地裁に入廷する原告と弁護団の皆さん。写真の中央、スーツを着ているのが宮本さん

「東京だけの話ではない」。
全国一斉同時訴訟の背景にあった思い

2023年5月30日、名古屋地裁の判決後、名古屋地裁前で旗出しをした時の一枚

森:
当初は東京のみでの訴訟もイメージされていましたが、日弁連への人権救済申し立てによって、同性婚の実現を求める全国の方たち、また、思いを持った弁護士たちのコミュニティが生まれていました。東京以外の地域でもできそうだということで、各地でも訴訟に踏み切りました。

鈴木:
地方でLGBTQの話をすると、「都会だけの話」とか「うちの地域にはそういう人はいないから」という反応が、当時はまだまだありました。
全国各地で訴訟を起こすことで、これが決して都会だけの話ではなく、身近に起きていることなんだと知ってほしいという思いは、私たちとしても持っていました。

水谷:
確かに当時、各地の弁護士会や自治体の方と話した時に、「うちの地域にはLGBTQ はいない」というような声を聞くことが少なくありませんでした。地方では性的マイノリティへの偏見が強く、当事者がそのことを隠して生活していたり、あるいはもう少し人口の多いところに住まいを移したりして、当事者の存在が見えなくなっているということがありました。

地方では、当事者の存在が「見えない」ことが、「=存在しない」とされて、「だから地方で暮らす自分たちには関係のないテーマなんです」と誤解されてきた節がありました。決してそうじゃないんだということをわかってもらいたいという意識は、皆にあったと思います。

2024年9月2日、九州訴訟の高裁判決の日が12月13日と決まった。「判決日が決まったその日に、良い判決になることを願って、原告と弁護団で撮った写真です」。写真前から2段目の右端、黄色いシャツに黒のジャケットを着ているのが森さん、その隣の黒い服を着ているのが鈴木さん、さらにその隣、水色のシャツを着ているのが石田さん

──各地で裁判を起こしたことは、結果として良かったですか。

石田:
個人的に、圧倒的によかったと思います。
結果論かもしれませんが、それぞれの弁護団が、それぞれの地域の原告さんの個性に合った弁論を考え、裁判官に訴えてきたし、各地裁・高裁の裁判官は裁判官で、それぞれ立てる理屈は違いますが、「なんとかしないといけない問題だ」と真摯に取り組んできてくださったと思います。

この訴訟は、日本では初めての試みで、唯一絶対の正解があるというわけではありません。でもだからこそ、各地域の弁護団や原告が、ああだ、こうだと一から訴えられたことは、よかったのではないでしょうか。最終的に、最高裁がどんなふうに考え、判断を下すかですが…。

2024年3月14日、札幌高裁で、最初の高裁判決が出された。「同性間の婚姻は異性間と同様に保障されているとして、各地の地方裁判所の判決よりもさらに進んで、初めて憲法24条1項違反を指摘した判決でもありました」

皆川:
北海道訴訟では、一審(地裁)・二審(高裁)ともに「同性婚を認めないのは違憲」という判断が出されました。今回の集団訴訟に、札幌のような大きすぎず小さすぎない地方の裁判所が入っていたのは良かったと思います。
裁判所と我々弁護団のパワーバランスが良かったというか、対等なコミュニケーションをとりながら裁判を進めることができたと感じています。

水谷:
愛知訴訟では、地裁で「同性婚を認めないのは違憲」という判決が出ていますが(二審判決は2025年3月7日)、この翌日、地元のコンビニの新聞コーナーには「同性婚を認めないのは違憲」という見出しが並びました。地域でセクシャルマイノリティであることを隠して暮らしている人たちが見て、少し安心してくれていたら嬉しいなと思いました。

各地で裁判を起こしたことで、ローカル番組や新聞などで取り上げられてもらい、セクシャルマイノリティが「なかったこと」にされずに認識してもらえたのは、とてもよかったことでした。
また、私もセクシャルマイノリティの当事者ですが、今回の訴訟で、同じエリアで暮らす当事者や関心のある方たちと交流が生まれました。セクシャルマイノリティの社会的な居場所を作るという点からも、地方での提訴にはすごく意義があったと思います。

2024年10月30日、東京高等裁判所でも、憲法14条1項、24条2項違反という明快な違憲判決を獲得!

沢崎:
東京では一次訴訟と二次訴訟の2つの訴訟が提起されています。
「同性婚」といった時、同性愛者だけの問題だととらえられがちなのですが、実はこれは正しくありません。結婚したい相手が法律上同性となるのは、同性愛者のカップルだけではないからです。例えば、二次訴訟の原告の一人である一橋さんはトランスジェンダー男性ですが、法律上の性別は女性のままであるため、パートナーである武田さんと結婚ができません。

いわゆる「同性婚」は同性愛者だけの問題ではないということを訴えるため、様々なセクシュアリティを持つ当事者の方が原告となり、提起されたのが東京二次訴訟です。複数訴訟を提起する意義はこういった見落とされがちな点をきちんと拾うという点にもあると実感しています。

2024年12月13日、札幌、東京一次に続き、福岡高等裁判所でも違憲判決。「福岡高裁判決は、憲法13条、14条1項、24条2項違反とし、さらに、婚姻とは別の制度では不平等は解消されず法の下の平等に反することまで明確に判示しました」

「裁判が進むにつれ、
前進を勝ち取っている」

札幌訴訟の判決後、囲み取材を受ける、弁護団の加藤丈晴さんと原告の中谷衣里さん

──札幌は一審・二審とも違憲判決、また名古屋は一審で違憲判決とのことですが、それ以外の地域の裁判の進捗と、各地の訴訟の判決を踏まえ、ポイントや流れを教えてください。

水谷:
各地の違憲判決の内容をよく見ると、単純に「何条に違反している」ということだけでなく、なぜ憲法違反なのか、どういう性質が憲法違反なのかといったところまで深掘りして述べられていて、司法判断の到達点として、前進を勝ち取り続けていると感じます。

同性婚を認めないのは「合憲である」と判断した大阪地裁でさえ、「現状が続いたら、いずれ憲法違反となる」ということを言及しているんです。つまり全体として、「このまま放置したらいかんよね」という認識であることは明らかな事実です。

札幌・東京一次・福岡の高裁の判決では、さらに突っ込んで「同性カップルが婚姻制度から排除されているのは違憲」というところに触れていて、これは今後において、非常に重要な意味を持ちます。

2024年6月、静岡・浜松で開催されたトークイベント「結婚の自由をすべての人に~同性婚の未来と現在~」で、東京1次訴訟の原告である小野春さんとともに登壇した愛知弁護団の水谷さん(写真中央)

──なぜですか。

森:
今ある人権侵害の状況を改善するために、今後どういう法律をつくろうかという動きが出てきた時に、「同性カップルに関する制度が何もないのが憲法違反」というだけであれば、「同性用に、新しい制度を作ればいいじゃん」というふうになることも考えられます。

しかし、「異性の結婚と同じ制度で、同じ選択肢が持てる」ことで初めて対等であり、人権侵害は解消されるわけです。そのあたりの問題意識を明確に打ち出し、各地で主張を続けてきました。
福岡高裁の判決では、「同性のカップルに対し、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と書かれていて、「同性にも異性と同じ婚姻制度の利用を認めなければならない」ということが、明確に述べられています。

九州訴訟の原告、こうすけさんとまさひろさんの結婚式。「福岡では珍しく大雪でしたが、弁護団もお祝いに集まりました。『式だけでなく、婚姻届も受け付けられるように』。これからも頑張ります」

──そうなんですね。追い風のように見えますが、となると関西訴訟の一審の合憲判決が逆に異質にも見えます。これはどういうものだったのでしょうか。

宮本:
関西訴訟の弁護団の宮本です。
大阪地方裁判所は、同性婚を認める法制度が存在していないことで、同性カップルには、社会の中でカップルとして公に認知されて共同生活を営む利益(大阪地裁はこの利益を「公認に係る利益」と定義しました)が認められていないと認定しました。

しかし、大阪地裁は公認に係る利益が個人の尊厳に関わる重要な利益であるとしつつも、同性カップルの公認に係る利益を実現するために今後どういった制度をつくるべきかは国会がその裁量により選ぶべきであり、そのような議論が尽くされていない現段階では、憲法に違反するとはいえないと判断しました。

大阪地裁判決後、弁護団メンバーで横断幕を掲げた。「まだまだこれから!次は3月の大阪高裁!」

宮本:
裁判所としては「これから国がどう動くのか、見ていきましょう」という姿勢ですが、現時点で、同性カップルの関係性を公証する法制度が存在しておらず、国はそのことを長年認識しながら、何らの対応もしていません。残念ながら、そのような状況でも大阪地裁は性的少数者の権利を救済しようとせず、人権保障の観点から極めて不十分な判決だったと思っています。

裁判所がいうように今後、国が制度を是正するとしても、一体どれだけ待てばいいのでしょうか。
同性婚が法律で認められる日を迎えられないまま、死別してしまうカップルもいるのです。一体、誰がその人たちを救うというのでしょうか。

関西訴訟では、この3月に大阪高裁による判決が下されます。違憲判決が下される材料はすべて揃っており、一審の合憲判決が覆されると信じています。

水谷:
大阪地裁の判決には、「(当事者の)不利益は解消・緩和されている」という前提が書かれていました。しかし、そんなわけありません。全国の支援者が当事者の声をアンケートで寄せてくれました。
関西訴訟だけでなく、他の地域の裁判でもアンケート結果を活用しています。3月の大阪高裁での判決も、1審の判断を十分に覆せると、他の地域の弁護団も信じています。

愛知訴訟の原告さん家族の手形アート。「愛知の原告さんが、養育里親として子育てを始めました。それを機に、法律上のふうふでない二人が少しでもスムーズに子育てできるように氏の変更許可審判を申立て、原告カップルの氏が同じになりました。写真の手形アートは、三人家族の生活が始まったことを記念して作られたものです」

「2025年は、最高裁で戦う年になる」

ここが最高裁。「最高裁には、判決の前に1度、判決の時にもう1度の2度、全国から原告と弁護団が集まる見込みです」

──札幌、東京一次、福岡では二審ともに終了、3月には大阪高裁・名古屋高裁で二審判決が出るとのことですが、今後の動きとしてはどうなっていくのでしょうか。

皆川:
東京の二次訴訟の日程がまだ決まっていませんが、今年度内には、東京二次訴訟を除く5つの訴訟につい高裁の判決が出揃うことになります。最高裁判所に上告する場合、二審の判決が出てから2週間以内に行わなければなりません。札幌と東京一次、福岡はすでに最高裁に上告し、最高裁からの連絡を待っている状態です。

──すべての地域の二審判決が出てから最高裁にいくというかたちではないのですか。

鈴木:
そういうわけではありません。ただ、少なくとも年度内に出る他の地域の判決を待って、まとめて審理されるのではないかと予想しています。
2025年が、最高裁で戦おうという年になることは間違いないと思います。

──もしそこで認められれば、すぐに同性婚は実現しますか。

森:
婚姻ができるようになるためには、民法や戸籍法の改正が必要で、そのために立法府が動かなければいけません。本当は、立法府がやる気になってさえくれれば、違憲判断を待たずにやれるはずなんですが…。このままいけば、最高裁の判断が出てから、立法府が動き、ようやく同性婚が実現することになるでしょう。

皆川:
婚姻法に関しては、「男性と女性」という前提で条文が書かれているので、その部分をドミノ倒し的に修正していかなければ、制度が追いつきません。
同性婚が司法の場で認められたにも関わらず、法律が追いつかずにその権利を実現できなければ、立法不作為が違法となる事が確実になりますから、二次訴訟、三次訴訟が起きてくる可能性があり、カップルが賠償請求をした場合、国はそれを支払わなければならなくなるので、立法府もそこは頑張って動くのではないかと思います。

東京一次訴訟原告の小野春さん、西川麻実さん。「わが家は、同性のパートナーとお互いの連れ子3人の5人家族です。ひとり親同士だった私たちがかぞくになってもうすぐ20年。幼かった子どもたちはみな成人しました。毎年、誕生日にはみんなで集まってケーキを食べたりゲームをしたり。こんな私たちですが、法的にはかぞくじゃありません。1日も早く法律上もかぞくになりたいと思っています」

「愛する人と家族になりたい」という思いは皆同じ

九州訴訟原告のこうすけさん、まさひろさん。「僕たちは福岡在住の男性同士のカップルで、付き合って8年目です。2021年には、親族や友人、職場の人達100名を超えるゲストに囲まれ挙式もしました。福岡高裁は『もはや同性カップルの婚姻を認めない理由はない』との判断を示しましたが、残念ながら国会で法律を作る動きはありません。日本でも、法的に好きな人と結婚できるようになってほしいです」

──今日は、各地の弁護団の皆さんに集まっていただいています。皆さんがどんな思いでこの訴訟に関わっておられるかをお伺いできますか。

宮本:
私は一斉提訴から1年ほど経ったタイミングで、関西弁護団の一員となりました。そこから数えて5年、少しずつ、確実にいろんなことが変わってきていると感じます。社会全体で同性間の婚姻を認めるべきという意見が増え続けています。企業からも同性婚に賛成の声が増えているし、地方自治体のパートナーシップ制度導入も全国で広がっています。

そんな流れの中、国だけが全く変わらない。訴訟提起の時から「婚姻制度は生殖のための制度である」、「男女が子を産み育てるための制度である」と言い続けていることに対して、忸怩(じくじ)たる思いがあります。

一審では、大阪地裁だけが唯一、合憲判断を下しました。私は弁護士になって8年目となりますが、あの日ほど悔しい思いをした日はありません。一生忘れないと思います。

しかしその後、各地で違憲判決が出るたびに勇気をもらい、ここまで戦ってくることができました。東京二次を除いて、3月25日の大阪高裁での判決は、高裁判決の締めくくりとなります。今度こそは大阪から全国に希望を届けることができる判決を勝ち取りたいと思います。ぜひ見守っていてください。

──宮本さんは途中から弁護団に参加されたとのことですが、なぜ加わろうと思われたのですか。

宮本:
「同性婚が認めらないことはどう考えてもおかしい」と思って、学生の頃から関心がありました。社会の大多数の人が、将来は結婚して子供を産んで…ということを当然のこととして人生設計を描いています。

しかし「愛する人と家族になりたい」というごくありふれた幸せの形が、同性愛者などの性的少数者には認められていないのです。個人の尊重と法の下の平等を基本原理とする日本国憲法の下で、そんな理不尽な不平等が認められていいのでしょうか。
一人の法律家として、この状況を放置することはできないと思い、弁護団への加入を志願しました。

関西訴訟の期日後の支援者向け報告会にて。報告会の最後に、原告(写真前列)と弁護団(写真後列)の皆さんで記念撮影

石田:
社会がこれだけ変わってきているにも関わらず、現実として法律は何も変わっていないことへのウンザリ感、そしてそのことを当事者の方たちがどう感じているかを考えると、虚しいです。
ただ、そこをなんとかするために、この裁判を戦ってきました。先日、福岡高裁で違憲判決が出ましたが、その時は「やっとここまで来たか」という、感慨のようなものを感じました。

この訴訟が始まる前は皆、「(訴訟は)相当大変なことだな」と思っていたと思います。
同性婚が認められないのはどう考えてもおかしいけれど、それを憲法や論法、立論を載せて戦うとなると、それがいかに難しいかということは、皆思っていたと思うんです。

そこに当事者の方たち、原告さんたちが加わってくださったというのが本当に大きくて、あとは世の動きですね、そこに裁判所も押されるかたちで、立て続けに違憲判決が出たのだと思います。私は弁護士としてこの裁判に関わっていますが、「司法って保守的だな」と感じるところがある反面、一方で社会を動かす「てこ」にもなり得るんだということを、今回改めて感じているところです。

──裁判の中で、石田さんが印象に残っていることはありますか。

石田:
九州訴訟の原告に、お子さんのいる女性のカップルがおられます。
お子さんがおられると、さらに一段上のつらさがあって、意見陳述の際、「同性婚を認める法律がないことは、『自分たちは他の家族とは違う』というメッセージを送り続けられていることになるんだ」と涙ながらに話された姿が、とても印象に残っています。

「原告さんカップルのおそろいの靴。これから進んでいく、ふたりがおそろいのものを身に着けて外を歩ける未来」

「日本のどこに暮らしていても、
同じように結婚が認められる社会を」

2022年の名古屋レインボープライドの際に、参加者から寄せられた賛同・応援のメッセージ

皆川:
札幌訴訟の意見陳述にも書いたのですが、私は異性の夫と法律的に認められて結婚をしていますが、子どもがいません。数年間にわたって不妊治療をしましたが、子宝に恵まれませんでした。
結婚制度が、国が主張するように「男女が子を産み育てるための制度」であるとするならば、子どもができない体質の私たち夫婦は、この制度で認められる範囲の外にいて、本来は利用者として認められないはずです。それなのに、ただ異性同士であったというだけで、結婚ができたということになってしまいます。

自然生殖ができない私たちは法律婚を認められたのに、どうして同性のカップルの法律婚は認められないのでしょうか。そこに何か、合理的な理由があるのでしょうか。

子どもができなくても、自分の好きな人と法律上も家族になりたいと願うのは同じです。異性のカップルなら結婚が認められるのに、同性のカップルであれば認められない。それがすごく違うよなって思いながら、うしろめたさを感じながら活動しています。

鈴木:
私は山口県の下関在住ですが、この訴訟が始まってから、山口の皆さんの同性婚やLGBTQへの情報の解像度が上がり、理解も広がったと感じます。以前は話題に出すことすらできなかったし、できたとしても間違った認識や差別的なことを言われることもあって、緊張していました。

それがだんだんと、自分の娘や息子が学校で学んできたり、海外に留学した友達が情報を持ち帰ってきたり、訴訟に関しても皆キャッチアップも早くなって、「違憲判決が出てよかったね!」って声をかけてもらったりして、今では緊張しなくて良くなりました。
わかってくれる人が、どんどん増えていると感じています。国も、もう動いていいんじゃないかな。

2024年3月14日、札幌高裁判決後の旗出しの様子

水谷:
私は三重県で生まれました。田舎なので、一生懸命、シスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性自認が一致していること)で異性愛者という「普通」の人のふりをしようと生活していましたが、「自分みたいな普通ではない人間は、ここでは生きていけない」と、故郷を離れて東京に出ました。
東京で弁護士になり、提訴時は東京訴訟の弁護団でした。その後、東海地域に戻ることになり、今は愛知の弁護団にも在籍しています。

愛知での訴訟を通して、愛知で暮らす原告カップル、また支援して傍聴に集まってくれる人たちと出会えました。
一度は生活を諦めた場所ですが、「自分もここで生きていけるかもしれない」という希望を持てるようになったし、「東海にも自分の居場所がある」と思えるようになりました。
まだ立法解決にはつながっていないのがもどかしいですが、今回の訴訟を通じて、生まれ育った故郷で暮らす性的マイノリティの方たちの存在や暮らしが見えたこと、そのような方たちとつながる機会を得られたことは、弁護士としても性的マイノリティ当事者としても、すごく嬉しく、よかったことだと思っています。

日本のどこに暮らしていても、同じ法律婚制度が使えて、同じように認められたら、それがたとえ都会であれ田舎であれ、生まれ育った大切な、大好きな場所を離れずに済んだ人も、きっといたはずです。それが、実現してほしいなと改めて思っています。

愛知訴訟で、高裁判決前最後の期日に実施した傍聴ツアーにて、弁護団と、参加した皆さんとで記念撮影

森:
私は正直、「なんでこの程度のことができへんのや」っていう怒りを感じています。
不公平で不公正な社会がおかしいと思いますが、一方で、原告さん、弁護団、そして訴訟を応援してくださる方たち、この状況を変えていこうという皆さんと、こうやって一緒に活動できて、一緒に前に進んでいけているということが、大きな励みであり、エネルギーになっています。

沢崎:
裁判で一番印象に残っているのは、原告の皆さんの裁判所での意見陳述です。毎回、ずしんと心を打たれます。
皆さんいろいろなお話をされますが、共通しているのは、法律上異性同士であれば当然に認められる制度の利用が法律上同性同士であることを理由に認められず、自身の尊厳が害されていると感じること、そのことへのくやしさや怒りです。

東京の裁判官は他の地域よりも保守的だと言われますが、それでも違憲判断が出ているのは、原告の皆さんの言葉が裁判官にもきちんと届いているからだと思っています。

2024年3月14日の一審判決後の報告集会にて、東京二次訴訟の原告の皆さんの集合写真。「より明確な違憲判決を目指して、控訴審も頑張るぞ!」

「結婚の自由をすべての人に」。
最高裁での戦いを、応援してください!

「一足先に最高裁に上告した北海道弁護団が、支援者向けに上告後の手続きの流れなどを説明する動画を作成しました。写真はその際の撮影風景です。動画は、北海道弁護団のYouTubeチャンネルで公開しています」

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

鈴木:
これから、同性婚訴訟は最高裁で争われることになります。
最高裁での口頭弁論に、今回の訴訟の原告と弁護団員を一人でも多く送り、裁判官に「結婚の自由をすべての人に」という私たちの訴えを伝えたいと思っています。

今回のチャリティーは、全国の原告と弁護団が、東京都千代田区にある最高裁に足を運ぶための交通費として活用させていただきたいと思っています。
同性婚の実現を目指して、私たちの声を届けるために、ぜひ応援よろしくお願いします!

──貴重なお話をありがとうございました!

「この記事が公開される時点で、一番新しい判決である福岡高裁判決(2024年12月13日)での一枚です。九州訴訟の原告、弁護団(九州以外の地域の原告さんや弁護団員も来てくれました)、そして、応援してくださった方々と、報告会の最後に、撮影しました。喜びの一日でした。しかし、違憲の判決が続いているのに国会はまだ法律案を審議すらしていません。一日でも早く、法律上の性別が同じ者どうしも結婚ができるように、応援をお願いします。『国会、まだ立法せんと!?』」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

偶然、私は異性が恋愛対象でした。同じように偶然、同性が恋愛対象だった人は、日本では結婚ができません。そこに何の違いがあるというのでしょうか。なぜ受け入れられないのでしょうか。
同性婚に関するあるアンケート調査では、8割以上の人が「賛成・やや賛成」と回答しています。「一緒に人生を歩みたい」と思った相手と結婚できる自由が、誰しもにあるように。裁判の今後の行方を見守り、応援いただけたら嬉しいです。

各弁護団Xアカウント(北海道はXアカウントなし)
・東京弁護団:https://x.com/KejisubeTokyo
・愛知弁護団:https://x.com/mfajaichibengo
・関西弁護団:https://x.com/kejisubeKansai
・九州弁護団:https://x.com/KejisubeKyushu
・判決など裁判に関する書類は、以下のサイト(結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟) CALL4)より:
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000031

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一人ひとりの思いが連なって社会が構成されている様子を、ひとつなぎに描いたモチーフで表現しました。
多種多様な生き方が尊重され、一人ひとりがその人らしく、幸せに生きられるように。指輪をはめた手や、パートナーや家族との何気ない幸せな日々を表す日用品を描き、二人の性別に関係なく、結婚という制度が平等に適用される社会になってほしいという願いを込めています。

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