CHARITY FOR

何かあっても、飼い鳥と人とが共に幸せに暮らせるように。普段から鳥と人と、豊かでオープンな関係性を〜NPO法人TSUBASA

「人、鳥、社会の幸せのために」。
さまざまな理由から飼い主と一緒に暮らすことができなくなった飼い鳥を保護し、新しい里親を探す活動をしているNPO法人「TSUBASA(つばさ)」が今週のチャリティー先。

「縁あって出会った飼い主さんと鳥さんが、手放したり手放されたりすることなく、最後まで共に幸せに暮らしてほしい」と、保護・譲渡活動の傍ら、飼い鳥の適正飼養に関する情報を発信、セミナーや勉強会等を全国各地で開催しているほか、飼い主さんが困ったり悩んだ時に相談できる場所をと、無料の「鳥さん電話相談室」も運営しています。

昨年は90羽の引き取りを行ったというTSUBASA。中でも多頭飼育現場からのレスキューが目立ったといいます。

大きな鳥の場合、40年も50年も長生きします。
鳥さんの、そして飼い主さんの「幸せ」のために、愛鳥家さんはじめ、私たちに何ができるでしょうか。

スタッフの涌井智美(わくい・ともみ)さん、新田莉子(にった・りこ)さん、清水有紀(しみず・ゆき)さん、高橋麻由美(たかはし・まゆみ)さんに、お話を聞きました。

お話をお伺いした、左から涌井さん、新田さん、清水さん、高橋さん

今週のチャリティー

NPO法人TSUBASA

飼い主と一緒に暮らすことができなくなった鳥を保護し、新たな里親を探す活動の傍ら、飼い主と鳥とが終生幸せに、そして健康に暮らせるよう、さまざまな情報の発信も行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2024/09/23

「鳥と人の幸せのために」

施設での放鳥風景。「大型の鳥さんたちの放鳥スペースです。写真は、ウロコボウシインコのCOCOとキホオボウシインコのぽっぽ。鳥さん同士も相性がありますので、様子を見ながら放鳥メンバーを決めています」

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

清水:
鳥と人とが幸せに生きる社会を目指して、鳥さんと暮らすことが難しくなってしまった方から鳥さんを引き受けて、新しい里親を見つける活動を行っています。ただ引き取るだけでなく、ご縁があって飼い主さんと結ばれたわけなので、できれば鳥さんを手放さなくても良いように、ずっと一緒に幸せに暮らせるようにということで、セミナーや勉強会を開催し、普及・教育にも力を入れています。

また、無料の「鳥さん相談室」という電話相談を設け、噛みつきや呼び鳴きといった問題行動(※)、ごはんを食べてくれない、羽をむしってしまう、「今のままだと一緒にいるのが苦しい」という飼い主さんからのご相談も受け付けています。
(※)鳥からすると普通の行動だが、人間が問題に思う行動のこと。

最近は飼い主さんの意識も上がってきていて、自分でいろいろと勉強されて「こういうトレーニングをしたいんだけど、どうしたらいいですか」といったご相談が寄せられることもあります。

セキセイインコのちーくん。「飼い主さまが施設に入居することになり、TSUBASAにやって来ました。ちーくんは飼い主さまが作られたストラップのおもちゃが大好きで、おもちゃをつついて遊んだり、おもちゃに話しかけている姿を見かけます。食欲が安定しないため現在は看護を行っていますが、飼い主さまからのプレゼントが、ちーくんの心の支えになっているのかなと思います」

涌井:
鳥について、さらに学びを得たいという高い意識をお持ちの方が、TSUBASAにアクセスしてくださっていることが多いという印象を受けます。インターネットでもさまざまな情報収集ができるようにはなりましたが、やはり限界もあって、「どれが良いのか」といったご相談をいただくこともあります

たとえば、鳥さんを手に乗せる時に、人間の手はこわくないということから教えることもあれば、ごはんを手に持って誘導することもあります。どれが正しいとか間違いというわけではなく、どの方法が負担がなくてやりやすいかは、鳥さんそれぞれです。
鳥さんの様子や状況を詳しく伺いながらアドバイスをさせていただけるのは、人対人であるからこそなのかなと思います。

2024年4月に大阪で開催したシンポジウムの様子。「『生まれてくる尊い命を幸せにするために』をテーマに、TSUBASAシンポジウムを開催しました。講演のみならずご参加いただきましたお客さまからの質問について、講師陣がディスカッションを行うのが特徴です。今回は獣医師・トレーニングのインストラクター・ブリーダーのお三方をお招きし、それぞれの視点から、繁殖について、幼齢期の病気や鳥との関わり方について、参加者の皆さまとともに考える貴重な時間となりました」

1日1組限定の「里親会」を
ほぼ毎日開催

里親会(MTB=Meet The Bird)を積極的に開催。「こういう鳥さんがいいという里親さんの希望を元に、鳥さんの性格や相性、寿命や必要な医療面のサポートなど考慮しながら、そのご家庭に合った鳥さんのマッチングを行っています」

──TSUBASAさんとは今回で4度目のコラボになりますが、コロナの数年は、譲渡会などリアルな場の開催が難しかったそうですね。最近はどうですか?

清水:
ここ最近はレスキューが増えていることもあり、保護した鳥さんが家族の一員として迎えられ、愛情を受けて過ごしてほしいという思いから、それまで1ヶ月に1、2回の開催だった「里親会」を、昨年から1日1組限定にはなりますが、ほぼ毎日開催しています。

以前は里親会の参加募集をするとすぐに枠が埋まって参加できない方がいたり、ほとんど土日開催だったので平日休みの方が参加できなかったりということがありましたが、毎日開催によっていろんな方に足を運んでいただきやすくなりました。

1日1組なので、お客さま1組に対して飼育スタッフが1名ついて、鳥さんの性格や、保護した背景や飼育に関することなどをしっかり密にお話できるので、その点からもすごく良かったと思います。

小鳥のアートフェスタで講演。「TSUBASAが主催の勉強会・セミナーだけでなく、鳥イベントのゲスト講師として講演をご依頼いただくこともあります。この数年ではイベントだけでなく、小学校の特別授業としてスタッフが講演することも増えました」

涌井:
コロナ禍ではオンラインで開催していた勉強会も、今年からは全国各地でリアル開催したいとあちこち回っています。愛鳥家さんは全国にいらっしゃるので、代表の松本が「47都道府県を制覇したい」と意気込んでいます。

──TSUBASAには今、どのぐらいの数の保護した鳥さんがいるのですか。

新田:
約150羽の鳥さんがいます。1日3、4名のスタッフとボランティアさんでお世話をしており、順番にお世話をして、1日を通してようやく完了という感じです。

それぞれの鳥さんに合わせ、きめ細かにお世話をする。写真はオオバタンのピンキー。「今年で52歳になるおじいちゃんオオバタンです。白内障の影響で目が見えづらくなってきています。お掃除の際に金網に乗って移動をしてもらっているのですが、見えづらくても安心して乗ってもらえるように、金網を差し出した後にベルを鳴らし誘導しています」

「困った時に相談できる先があることが、
何かあった時に、鳥と飼い主を救う」

名古屋のレスキュー現場から2023年8月に引き取ったコザクラインコたちの放鳥の様子。「相性の良いペアで寄り添ったり集団で飛び回ったりと、レスキュー前はこのような生活を送っていたのかなと思いました。人との接点がより増える施設での生活にも慣れ、粟の穂を受け取りに手に乗ってきてくれる子も」

──2023年、90羽の引き取りをされたそうですが、多頭飼育のレスキューが多かったそうですね。

清水:
はい。8月には愛知県名古屋市でコザクラインコをレスキューしました。
元の飼い主さんがアパートで飼っていたコザクラインコが19羽まで数を増やし、鳴き声や放し飼いによって近隣から苦情が来て強制退去を命じられ、「10日後には部屋を出ないといけない」という状況でした。全羽を連れていてくのは難しいということで相談された知人のAさんが、TSUBASAに連絡をくださいました。

鳥から鳥へ空気を介してうつってしまう病気があり、TSUBASAでは新しく鳥さんを引き受ける場合、すでにTSUBASAの施設で暮らしている鳥さんと新しい鳥さんが空気の交わらないところで過ごす、45日間の検疫期間を設けています。

しかしレスキュー当時、他のレスキューも立て込んでいたこともあって、3部屋ある検疫部屋は満室でした。

検疫室で過ごす鳥たちのお世話をする飼育スタッフ。「お引き取りした家庭ごとに検疫部屋を分けています。感染症の原因となる菌やウイルスが服や髪に付着しないよう、検疫室に入る際は、専用の作業着を着用し対策しています」

清水:
飼い主さんの引っ越しの日が迫る中、できるだけ早く引き受けたいですが、急いでいるからといって他の鳥さんたちと一緒にするわけにはいきません。Aさんに相談すると「検疫室が空くまでお世話します」と言ってくださって、一時的に預かっていただき、こちらの準備ができたところで引き取らせていただきました。

さらに、預かっていただいている間に里親募集をしてくださり、TSUBASAでは最終的に残った12羽を引き取りました。TSUBASAでも、少しずつ里親さんが見つかっています。

名古屋のレスキュー現場から保護し、現在は里親さんのもとで幸せに暮らしているポン男ちゃん。「施設で過ごしていた際は人との距離を少し感じる鳥さんでしたが、今では里親さんの肩にとまって甘えたりと、すっかりコンパニオンバードらしい表情です。施設に100羽以上いる鳥の1羽ではなく、誰かの家族として過ごせていることを嬉しく思います」

──幸せになれるといいですね。

高橋:
鳥の場合、犬や猫と違って、定期的に病院に行く、散歩に行くという習慣がありません。やろうと思えば、「ずっと一人で、密室で飼い続ける」ことができてしまうのです。

このレスキューでは鳴き声のトラブルがあって問題が顕在化しましたが、中には、鳥を飼っているということを周りが全く知らず、問題が表に出ないまま、劣悪な環境にいる鳥さんもいるのです。

周りが知らないと、鳥さんのレスキューはもっと難しくなります。
このレスキューでも知人のAさんの存在がカギを握りました。家族や友人、知り合い…、困った時に相談できる先があることが、何かあった時に、鳥さんも飼い主さんも救うのではないでしょうか。

飼い主が緊急入院することになり、TSUBASAが引き取ったアオボウシインコのみどり。「身寄りのない一人暮らしの方が緊急入院された場合、誰にも気づかれることなく、鳥さんが飼い主さま宅に残されることが少なくありません。しかし、みどりは飼い主さまの会社でお世話をされていたため、TSUBASAに迎え入れる準備が整うまで、職場の方がみどりのお世話を代わりにしてくださり、また、みどりの過去のエピソードを教えてくださいました」

屋外飼育は飼い主の目が届きにくく、
把握せずに増えていたり、命を落としているケースも

秩父の45羽レスキューの現場。45羽が過ごしていた屋外の鳥小屋。「鳥小屋の網には大きな穴が開いていました。飼い主さまは食器を網にかけ、穴を塞ごうとしていたようです。穴から外に出てしまった鳥もいるのではないかと想像しました」

清水:
埼玉県秩父市では、43羽のセキセイインコと2羽のジュウシマツをレスキューしました。

こちらは名古屋のケースとは異なり、ご自宅の敷地で野外飼育をされていたケースです。TSUBASAでは、飼っている鳥さんが逃げてしまったり、野鳥から病気をもらったりしないように、屋内飼いを徹底しましょうと発信していますが、特に地方では、ご高齢の方を中心に「鳥は屋外で飼うもの」という古い常識が残っており、屋外で飼われていることがあります。

もとは4羽のセキセイインコと2羽のジュウシマツを飼っておられたのですが、セキセイインコが繁殖を繰り返し、40羽以上に増えていました。年金生活をされているご高齢の飼い主さんより「餌代の負担が大きく、世話を続けることが難しい」とのことでご連絡をいただきました。

屋外の小屋には巣箱がずっと入ったままで、餌はお皿に並々と置かれ、鳥さんたちはいつでも好きなだけ食べられる状況でした。温度を除いて、ただ繁殖するという点では、良い環境が揃っていたのではないかと思います。もっと条件が良ければ、もっと増えてしまっていたかもしれません。

秩父のレスキュー現場の鳥小屋内の様子。「餌と水はほぼ毎日、補充・交換されていたようですが、食器は洗っていなかったのか、水皿にはコケやカビが生えていました」

涌井:
このレスキューの際、鳥さんたち全体を見て、高齢の鳥とメスの鳥があまりおらず、若いオスの鳥ばかりであることに少し疑問に感じました。

秩父は冬場、寒さが厳しい場所ですが、鳥小屋には暖房器具などはありませんでした。あくまで推測ですが、高齢だったりメスの鳥さんたちは、冬を越えるだけの体力がなく、命を落としていったのではないかと思います。これ以上命を落とす鳥さんがないように、寒さが本格化する前にレスキューを行いました。

──そうだったんですね。

涌井:
まったく掃除されていない小屋の中は、鳥の羽根や餌、便が積もりに積もった状態でした。不衛生な環境から、「疥癬(かいせん)症」を発症して目の周りがガサガサになっていたり、くちばしや爪に変形がある子も見られました。

ごはんが食べ放題だったのでぽっちゃりさんが多く、健康状態が良くないことは一見して明らかな状態でした。

上嘴がないセキセイインコのエスペランス。「レスキューの1ヶ月ほど前に、秩父の現場の視察をしたのですが、その時には既に上嘴がありませんでした。他にも嘴が上下ともに3cmほどまっすぐ伸びていた子もおり、スコップですくうような感じで食べていました。無制限に食事を与えることは推奨されないことですが、嘴の変形した子たちに関しては、深い食器に並々と餌が入っていたからなんとか食いつなぐことができたのかと思います」

──40羽超ととても多い数ですが、1羽ずつ捕まえてレスキューされたんですね。

高橋:
はい。鳥小屋は大人二人が入るといっぱいの広さで、人馴れしていない鳥さんたちが外に逃げ出さないよう、扉の開閉に配慮しながらレスキューを行いました。

飛ぶのが上手な子が多く、竣敏に移動するので、小さな網などを使いながら、一方で足が悪くて止まり木にいたり床を歩いていたりする子もいて、踏み潰すことがないように細心の注意をはらいながらの捕獲でした。

秩父のレスキューでの捕獲作業の様子。「2人体制で行いました。羽数が多く見分けがつきづらいため、個体識別用の脚環の装着も行いました」

涌井:
このケースに限らず、飼い主さんが「餌と水を置いていたら、勝手に増えた」というふうな表現をされることがあります。
屋外に置きっぱなしで飼っている場合、鳥さんの変化や異常にすぐに気づけず、気づいた時にはすでに取り返しのつかない、次元の違う羽数になっていたということがあります。

レスキューで訪問すると、飼い主さんが把握していた数の1.5倍、2倍の数の鳥さんがいるということも、少なくありません。

「秩父のレスキューから、もう少しで1年が経過します。保護した鳥さんたちは、レスキュー直後は人が近くを通りかかっただけでもケージの中でバタバタと飛び回っていましたが、だんだんと生活に人が介入してくることに慣れたのか、リラックスした表情を見せてくれるようになりました」

「何かあった時のために、普段から備えを」

千葉市川のレスキュー現場にて、不衛生な環境下で飼育されていたカナリア。「放し飼いの鳥たちの中には肥満体型の鳥もいましたが、カナリアたちはみな痩せていました。ケージの中に1羽だけだからなのか、少ししか餌が入っておらず、食べきってしまっても他の場所へ餌を探しに行くことすらできず、相当飢えていたのではないかと思います。巣皿が入っていましたが中は便だらけで、使い物にならない状態でした」

清水:
千葉県市川市では、カナリア3羽、ボタンインコ2羽、オカメインコ2羽、セキセイインコ1羽、コザクラインコ1羽の計9羽をレスキューしました。

高齢の女性から連絡が入り、「入院することになり、鳥のお世話をする人がいないので、引き取りにきてほしい。入院までに鳥を手放せなければ、そのまま自宅に残すしかない」ということで、緊急性の高いレスキューでした。

鳥たちは、2年前に亡くなった旦那さんがご自宅に鳥小屋を建てて、すべて一人でお世話されていたようです。亡くなられて鳥のお世話を引き継がれましたが、鳥の種類なども把握されていなかったので、旦那さんと鳥について話されるような機会もなかったのだと思います。

千葉・市川のレスキュー現場にて。庭先にあった鳥小屋。「ご相談をいただいた際に屋外に鳥たちがいることを聞いておらず、また、飼い主さまのご自宅前に到着しても鳥たちの声が聞こえなかったため、屋内で飼育されているものだと思っていました。庭先の鳥小屋へ案内された時は驚きました」

涌井:
鳥小屋は羽数に対してかなり広く、カナリアに至っては1羽ずつケージに入っていて、亡くなった旦那さんが、とてもかわいがっておられたことが伝わりました。しかし長らく掃除されていない小屋の中はうんちが山積みで、6月末のレスキューだったのですが、小屋の中は非常に暑く、不衛生な状況でした。

お話を聞くと、奥さまはご自身の体調のこともあって、餌と水の交換は1週間に1、2回だったそうで、鳥さんたちにとってはなかなか過酷な状況だったと思います。繁殖して数が増えなかったのもそのためではないかと思いますし、亡くなった鳥も何羽かいたようです。

市川のレスキューで保護し、TSUBASAを卒業したバンクシアちゃん。「市川のレスキューは残念ながら亡くなってしまった子たちが少なくありませんでしたが、命をつなぐことができた子たちは全羽、里親さんのもとで幸せに暮らしています。バンクシアちゃんは現在、里親さんと一緒にトレーニングに取り組んでいるそうです。新しい環境にも慣れ、手に乗ってくれるようになったとご報告をいただき、とても嬉しかったです」

涌井:
入院するご本人から連絡をいただいてレスキューにつながり、生き残った鳥さんたちの命をつなぐことができましたが、TSUBASAのような保護団体があると知らなければ、「もう置いていくしかない」「逃すしかない」と、「外部を頼る」という発想自体がありません。

顕在化しないので数はわかりませんが、実際、そうやって一生を終えている鳥たちもいるはずです。困った時に頼る先があるかないか、それを知っているか知らないかだけで、「鳥を救い出せるか」に大きな差が出るのだということを感じたレスキューでした。

──確かに。

撫でてもらい嬉しそうなオオバタンのとっきー。「ご高齢の飼い主さまが入院することになり、引き取りました。触れられたりおもちゃで一緒に遊ぶことが好きで、飼い主さまからたくさんの愛情を注いでもらっていたことが伝わる鳥さんです」

高橋:
今、飼っている鳥さんが増える様子を、楽しく見ている方もおられると思うんです。
今は元気にお世話できても、何かをきっかけに、ご自身と鳥さんたちに同じことが起こるかもしれない。そのことを考えるきっかけにしていただけたらと思いますし、何かあった時のために、鳥のことを相談できる先を一つでも多く持っておいていただきたいと思います。

涌井:
鳥を最初に飼った飼い主さんとしては「最期まで一緒にいたい」という気持ちでも、のこされた家族はあまり鳥が好きではなかったり、大型の鳥さんの場合は何十年も生きますが、「この人は好きだけど、この人は苦手」と相手を選ぶので、相性の問題も出てきます。

「家族だからなんでも受け入れてくれるから大丈夫」ではなく、日頃から何かあった時の鳥さんの扱いについて話をしておくこと、もしご家族がお世話するのが難しいのであれば、責任を持って命をつなげられる先に任せるという手段もあるということも、知っておいていただければと思います。

体重測定のためのトレーニングに取り組む、クルマサカオウムのクルトン。「クルトンは、TSUBASAイチこわがりな鳥さんです。健康管理の一環として体重測定や触診を行うために、どうしても捕まえなければならない時がありますが、捕まえようとすると、出血をしてしまうほどケージ内でパニックになってしまうため、クルトンの負担が少なくなるようにトレーニングを行っています」

涌井:
この記事を見てくださった皆さんには、「これ以上飼い続けることが難しい」という飼い主さんの鳥を引き取ることは難しくても、ぜひ情報をつなぐ役割を担っていただけたら嬉しいです。

また、飼い主の皆さんも、普段から飼っている鳥さんの社会化を進め、「飼い主さんだけが好き」というより「この人も、あの人も大丈夫」というようにしておいていただくと、何かあった際、たとえ鳥さんが別の場所に行くことになっても、鳥さん自身、負担なく過ごせるようになります。

6月15日の「オウム・インコの日」にちなみ、毎年慰霊祭を開催。写真は2024年の慰霊祭の法話の様子。「TSUBASAで亡くなってしまった鳥さんのみならず。愛鳥家の皆さまの愛鳥さんや世界中の鳥たちの供養を行いました。読経と法話をしてくださり、ご参列者の方からの質問やお悩みに答えていただきました」

「いつからでも、鳥は変われる」

スタッフに甘えるアオボウシインコの沖。「沖は飼い主さまのご病気のためTSUBASAへ来ました。沖は写真のスタッフに触れてもらうことが好きです。スタッフと一緒に金網に乗ってケージから出る・移動するトレーニングを行っています」

──皆さんは普段から保護した鳥さんたちと接しておられるわけですが、日々、どのようなことを感じておられますか。

清水:
どういう環境を幸せに感じるかは、鳥さんによっても違います。人と接するのが好きな子は人と関わりたいだろうし、過去に人で怖い思いをした子は、人が近づくのが苦手かもしれません。あるいは、人との関わりは好きではなくても、もともとは群れで生きる動物なので、ほかの鳥さんと過ごすのが幸せと感じるという鳥さんもいるでしょう。

いずれにしても、飼い鳥であって、野鳥ではありません。人の元から離れると野生で生きてはいけない存在であるということを理解し、最後までしっかりとお世話をしてほしいと思います。

仲良しのコザクラコンビ・はるみ&くるみ。「名古屋のレスキューで引き取った2羽です。お互い羽繕いをし合ったり、自身の体よりも大きいおもちゃを協力して破壊したりなど、一緒に何かをすることが好きなようです」

高橋:
「鳥なんだから、飛ぶのが幸せでしょう」「自由にさせてあげるのが幸せでしょう」とおっしゃって、ケージを否定される方もいます。しかし鳥さんにとって、ケージは安心な「おうち」になり得ます。
「家の中でケージに閉じ込めている」という発想ではなく、鳥さんに、ケージを「大好きなお家」と認識してもらうことが、実は鳥さんにとっても大切で、鳥さんがその認識ができていると、たとえ他のお家に行くことになっても「ここは安心」と思えて、その子の幸せのベースは守られていくのかなと思います。

──なるほど。だから、普段からケージに慣れるようなトレーニングも大切なんですね。

キャリーに入るトレーニングに取り組む、アオメキバタンのシロ。「キャリーに入るとおやつがもらえたり、スタッフやボランティアさんにたくさん褒めてもらえたことがシロにとって良い経験になったのか、すんなり入ってもらえるようになりました。放鳥スペースへ移動するためのツールとして、体重測定をする際にも役立っています」

新田:
私もセキセイインコを飼っていますが、何かあれば自分からケージに入って、「ここにいれば大丈夫なんだ」という安心感を得ているようです。
これが放し飼いになると、お気に入りの場所はあっても、その場所が安全で、ずっとあるとは限りません。鳥さんにとって、変わらず落ち着ける場所があるといいのかなと思います。

高橋:
放し飼いだった子をケージに入れるのは、すぐは難しいです。「今日から、すぐにでもケージに入れたい」となんとか押し込めようというところから始めてしまうと、鳥さんにとって「ここは嫌だな」という印象を強めてしまうこともあります。ある程度時間はかかりますが、たとえば普段から放鳥している部屋にケージを置いて、鳥さんに「何か新しいものがきたぞ」とまずは興味を持ってもらうことが大事です。

離れたところから「これは安心なのか」を見てもらったり、鳥さんにお気に入りのものがあれば、それを近くに置いたりケージの中に入れたりして誘いつつ、鳥さんが近づいたりツンツン突いたりした時に、無理に押し込めたりせず、まずはゆっくり、慣れてもらうところから始めていただけたらなと思います。

ケージ生活に慣れたアオボウシインコの桃蘭。「前のご家庭では、放し飼いにされていました。ケージで過ごす習慣がないと、放鳥後にケージに戻ってもらえなかったり、以前の環境との落差が大きいあまり、ストレスから自身の羽をむしってしまう鳥さんもいます。しかし桃蘭はケージの中でご機嫌に口笛を吹いたり、ケージに抵抗感なく入ってくれたりと、あまり窮屈感を感じない鳥さんです」

涌井:
今日お話した多頭飼育崩壊現場もそうですが、ごはんや水をあげること以外に人の介在がないと、鳥さんたちも、人と距離を縮める必要性を感じていないことが多いです。しかし「コンパニオンバード」と呼ばれる通り、飼い鳥は野生に戻れない以上、人と切り離して生きていくということは不可能で、鳥たちが過ごしやすく、どこに行っても幸せに生きられるという意味で、彼らが「人の介在を受け入れられる」というのは必要不可欠です。

私たちのところに来てくれる限りは、どんな鳥さんも幸せになってほしいと思ってお世話をしますが、人に馴れている方が、譲渡率も上がります。少なくとも、人に対して好印象は持ってもらいたいと思っています。

カキカキが大好きなキエリボウシインコのチロリン。「チロリンの近くを通りかかるとケージに頭を押し当て、『カキカキしてほしい』と猛アピール。チロリンのかわいらしいおねだりに抗えず、スタッフもボランティアさんも、作業の手を止めてカキカキしてしまいます」

涌井:
もう一つ、じゃあ人馴れしていなければダメなのかというとそうではなくて、レスキューした時は人馴れしていなくても、少しずつ人に馴れ、新しい家庭で、幸せいっぱいに暮らしている鳥さんたちがたくさんいます。

「いつからでも、鳥は変われる」ということも、付け加えてお伝えしたいと思います。

人との距離がぐんと近づいたウェイパー。「秩父レスキューのセキセイさんです。当初は人の視線があると緊張でご飯すら食べられませんでしたが、トレーニングによって手渡しのおやつを食べたり、手に乗れる子も少しずつ増えてきました。どんなバックグラウンドがあったとしても、真剣に向き合えば応えてくれるということを教えてくれます」

チャリティーは、保護した鳥さんたちの医療費や光熱費として活用されます!

TSUBASA代表・松本さんからのメッセージ。「JAMMINさまとのコラボは今回で4回目になりました。おかげさまで鳥のイベント等でJAMMINさまとのコラボ商品を着用&持参されていらっしゃる方を多くお見かけするようになりました。このコラボ商品をきっかけにTSUBASAの理念である『人・鳥・社会の幸せのため』の実現につなげていきたいと思います」

──今日のお話をお伺いして、鳥さんを幸せにできるのは飼い主さんであり人なんだということがよくわかりました。最後に、チャリティーの使途を教えてください。

清水:
行き場のない鳥さんたちを引き取って終わりではなく、必要な治療や訓練をして、次のご家庭に命をつなげるまでが私たちのレスキューです。

しかし今日お伝えしたように、レスキューでTSUBASAにやってくる鳥さんたちは、健康状態が良好ではなかったり、人に馴れていないことも少なくなく、施設で暮らす期間が長くなる傾向にあります。

今年も愛鳥祭が開催されます!2024年11月16日・17日の2日間、埼玉県産業文化センターにて。「今年は『SAVE THE BIRDS~知ることで守れる命~』をテーマに、豪華講師陣による講演や企画を展開していきます。イベントの詳細は随時更新しますので、ご興味のある方はこちら(愛鳥祭 第20回TSUBASAシンポジウム – 認定NPO法人TSUBASAで開催される愛鳥祭)をご覧ください!」

清水:
健康状態の良くない鳥さんたちの治療や検査費用として、年間およそ200万円がかかります。また、体調の悪い鳥さんたちも快適に過ごせるよう、施設では24時間の保温と、鳥さんたちが食事をとることができる時間をできるだけ長く確保するために照明をつけたままにしており、年間およそ100万円の光熱費がかかっています。
今回のチャリティーは、保護した鳥さんたちが、次の幸せな家庭に行くまで、安心して過ごせるよう、鳥さんたちの医療費・光熱費として活用させていただく予定です。ぜひ、応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

TSUBASAの皆さん。過去4回、コラボしていただいた際のアイテムを着用して撮影。「写真の鳥さんはコウロコボウシインコのトネと、タイハクオウムのレオナです」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

4回目となるTSUBASAさんとのコラボ!
毎回鳥さんたちのエピソードを聞かせていただく度、鳥さんたちがいかにハートフルで愛らしく、人間のことを本当によく見ていて、本来、人と一緒に暮らすことにいかに幸せや喜びを感じるいきものであるかを感じます。コンパニオンバードと呼ばれる鳥さんたちが、人のそばで、ずっと幸せに暮らせるように。鳥を飼っている人だけでなく鳥を飼っていない人も、その魅力や特徴を知り、温かく見守れる社会があると良いなと思います。

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【2024/9/23~29の1週間限定販売】
4回目となるTSUBASAさんとのコラボ。今回のモデルの鳥さんは、コザクラインコです!
飛び立つ準備「スサー」を、かっこいい雰囲気で描きました。

“Family where life begins and love never ends(家族とは、命が始まり、愛が永遠に続く場所)”というメッセージには、愛らしい鳥さんたちが家族の一員として迎えられ、幸せな命を全うしてほしいという願いを込めました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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