CHARITY FOR

「正しい生態と、飼い方を知って」。野ざらし、病気を放置…過酷な状況にある「学校飼育のうさぎ」の問題に取り組む〜一般社団法人LIBERTY

どこか「飼いやすい」というイメージがあるうさぎ。そこにはもしかすると、学校飼育の影響があるかもしれません。

「子どもたちに正しいことを教えるはずの学校で、そして『命を大切にする』ということは教科書でも学ぶはずなのに、うさぎの飼育になると、それが全然実践されていないことがある」と話すのは、粗末に扱われるうさぎがいなくなるようにと啓発活動を行う傍ら、うさぎの保護・譲渡を行う一般社団法人「LIBERTY(リバティ)」代表の藤田敦子(ふじた・あつこ)さん(56)。

「教材」として粗末に扱われ、真冬も真夏も、年中外で飼われていたり、休みの日には餌もない、体調が悪くなっても病院にも連れていってもらえないうさぎがいるといいます。

学校飼育の現場について、お話を聞きました。

お話をお伺いした藤田さん

今週のチャリティー

一般社団法人LIBERTY

うさぎの正しい飼育知識と終生飼養の啓発を行いながら、うさぎを保護し、新たな里親探しを行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2024/11/04

うさぎの適正飼育を広めるために活動

2024年3月16日、17日の2日間、東京の表参道で開催した「ウェルフェアオブラビット」のパネル展の様子

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

藤田:
うさぎの適正な飼育を広めるための活動をしており、パネル展などの啓発活動を主に行なっています。その中で、どうしても保護が必要なうさぎの保護・譲渡活動も行っています。

JAMMINさんとは2021年、2023年の2回、同じ関西で活動するSAVE THE RABBITさんとのプロジェクト「WELFARE OF RABBIT」でもコラボしていただきました。
このプロジェクトは卯(うさぎ)年に合わせて、うさぎの正しい飼い方や、捨てられるうさぎがいるという現状を知っていただくために立ち上げたもので、当初は2023年いっぱいの活動予定でしたが、JAMMINさんとのコラボでたくさんのチャリティーをいただき、大阪、名古屋でのパネル展と4回のセミナーを開催しました。

2024年に入ってからも引き続き、東京でのパネル展を開催しました。残すところ、11月23、24日福岡でのパネル展と、12月8日大阪での座談会のみとなりました。たくさんの方に応援いただき、ありがとうございました。

2023年9月13日に大阪市内で開催した、獣医師によるセミナー。「平日にも関わらず、多くの方にご参加いただけました」

──パネル展に来られた方の反応はいかがですか。

藤田:
大阪では梅田、東京では表参道と、あえて繁華街の人通りの多い場所で開催しました。通りがかりで気になって足を運んでくださる方もいて、「捨てられるうさぎがいるなんて知らなかった」という声もいただきました。
中には、将来、獣医師になることを目指して獣医大学で学ぶ学生の方で、「うさぎの現状を知らなかった。将来はうさぎのために活動をしたい」と言ってくださった方もいました。

犬や猫はなんとなく知っていても、まさかうさぎも捨てられているんだということと、もう一つ、リバティが現在力を入れているうさぎの学校飼育の問題に関して、まさか学校でこんなことが起きているんだということを知っていただける、一つのきっかけになったのではないかと思っています。

2024年4月、屋外での動物イベントに参加した際の一枚。「ワンちゃんがメインのイベントでしたが、うさぎを取り巻く問題点を知っていただく良い機会になりました」

年中野ざらし、休みには餌もない…
うさぎが適切に飼われていない、学校飼育の現実

とある学校で飼われていたうさぎ。「土曜日の夕方に撮影。フードもなく、お水もわずか残っているだけで、土の上にニンジンのヘタがたくさん転がっていて、お世話されていない様子が手に取るようにわかります」

──リバティさんとして、学校飼育の問題に力を入れておられるそうですね。

藤田:
はい。学校飼育のうさぎの状況改善に力を入れています。
最近はメディアでも取り上げていただく機会が増えていますが、だからといって学校飼育がすぐになくなるわけではなく、今でも過酷な状況で飼われているうさぎがいます。

──そうなんですね。

藤田:
文部科学省の学習指導要領の中では、教育のために「動植物を育てる」ことが書かれていて、その目的について「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ、それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、大切にしようとしている」と書かれています。

小学校の小屋で暮らしていた「チップ」。「お世話中の事故で後ろ左足を脱臼したのですが、1ヶ月近く放置され、ようやく動物病院に連れて行ってもらった時には手遅れで後ろ左足が動かない状態でした。今は歩けるようになりましたが、段差を上がるのが苦手なため、うさぎ用のトイレを使うことが出来ず、犬用のフラットなトイレを使用しています。コンクリートの小屋で暮らしていたので、足の裏の毛が剥げるソアホック(潰瘍性足底皮膚炎)だったため、布の下に柔らかいバスマットを敷いて、足に優しい環境にしています」

藤田:
学校飼育の問題に関して、教育委員会の方などとお話をすると「うさぎは、生きている教材です」とおっしゃられることがあります。
うさぎの命の大切さより、教材の位置付けなんですね。そこがまず、一般の家庭で飼われるのと大きな違いです。はっきり「(うさぎを)命だというふうに考えたことはない」とおっしゃる先生もいました。

では今度、教材なら教材で、たとえば教材のパソコンを、直射日光の当たるグラウンドに放置するでしょうか?しませんよね。でも、うさぎは寒い日も暑い日も、校庭の野ざらしの小屋に放置されていたりします。教材なら教材で、適切に扱わなければなりません。

また最近、小学校から「動物愛護」を学ばせたいので、保護うさぎを飼育したいとの問い合わせが続きました。動物愛護という言葉が浸透してきたからと思いますが、学校でうさぎを飼育しないと「命の大切さ」を教えることができない、学ぶことができないというのは、いささか問題があるのではないかと思います。
動物を飼育しなくても、「命の大切さ」を教えることはできます。以前、獣医師グループのアンケートで、学校飼育をしている学校の生徒は、飼育していない学校の生徒より思いやりがあるという結果が発表されました。「飼育する・しない」で思いやりに違いが出るのだとしたら、それは学校の問題ではないかとも思います。

リバティが保護した「のぞみ」と「ひかり」。「オスメス一緒の小屋だったため、多頭飼育になりお世話が行き届かない状況で、地域の動物ボランティアの方から相談がありました。獣医師にオスとメスを分けてもらったのにも関わらず、間違えていたのか混ざり合ってしまい、出産。ボランティアの方に親子一緒に保護していただき、生後1ヶ月半を過ぎた頃に当方の施設に迎えました。新幹線で迎えにいったので、のぞみとひかりと命名。上側のひかりちゃんは素敵な家族が見つかりましたが、のぞみちゃんと母うさぎのさくらちゃんは、素敵な家族のお迎えを待っています」

──学校飼育で、適切に飼われていない現実があるんですね。

藤田:
はい。数は多くありませんが、ちゃんと温度管理をして、真夏や真冬はエアコンの効いた室内で飼っている学校もありますが、まだまだ、真夏も真冬も、年から年中、屋外の小屋で飼っているようなところが少なくありません。
うさぎの快適温度は20度前後~25度くらいまでと言われていますが、昨今の夏の暑さの中では、毛皮をまとったうさぎにはかなり厳しいと思います。

また土日や年末年始、夏休みなどの長期休みの期間中、うさぎに餌をあげたり、面倒を見たりする人がいない学校もあります。毎日お世話をするからこその、学習指導要領で書かれた「子どもへの教育」が成り立つわけで、命がまるでモノのように扱われていることは、教育の現場として不適切だと感じています。

学校だからダメ、家庭なら良いと言っているわけではなく、家庭であれ学校であれ、適正に飼える環境が揃わないのであれば、飼うべきではないということをお伝えしたいです。

リバティの保護施設の様子。「施設は広くないので、棚2段にケージを置いています。毎日の清掃はもちろんのこと、サークルを設置して、うさぎたちをケージから出し運動をさせたりコミュニケーションを取っています。近々では最も少なくて、現在14匹のうさぎがいますが、掃除や投薬等も含め、お世話は一日仕事のため、ボランティアの方に助けてもらっています」

「教育の現場として
『命の大切さ』を教えてほしい」

保護したうさぎの日々のお世話の様子。「日々のお世話だけでなく、爪切りやブラッシングなどの定期的なケアも必要です。特に季節の変わり目は毛の生え変わりもあり、こまめなブラッシングが必要です。抜けた毛をうさぎがグルーミングの際に食べてしまうことでお腹に毛が溜まり、ひどい場合は手術が必要になったり、死亡することもあります」

藤田:
学校と家庭とではうさぎの飼育環境は異なります。
もし学校でうさぎを飼っているなら、家のようにはいかないなりにできることを模索するべきだと思うのですが、それすら当たり前のようにできていないということが、学校飼育の大きな問題だと思っています。

うさぎの飼育はそれぞれの学校に任せられており、校長や園長先生、飼育担当の先生の意識次第というかさじ加減で、ちゃんと飼育するところとしないところがあって、うさぎの生活や命はそこ次第で決定しているという現実があります。

まして災害時には、どのような対策がされているのか。東日本の地震の際は、放置された学校飼育の動物もたくさん餓死しました。災害時は人が優先とはいえ、災害対策が行われている学校があるのか疑問です。

──そうなんですね。

藤田:
たとえばうさぎの餌の話ひとつにしても、これまでたくさんの学校を訪問しましたが、うさぎの主食である牧草を与えている学校がほとんどないんです。
ある幼稚園は、保護者の方が園長さんに「うさぎは牧草が主食だから、牧草を与えてほしい」と伝えたら、「うさぎの餌は税金で購入しているから、贅沢はさせられない」という回答だったそうです。
幼稚園や学校では、いわゆる学校用の備品がたくさん載ったカタログのようなものでまとめて諸々購入される学校が多いのですが、「牧草はカタログに載っていないから」と購入を断られるということもありました。

──ええ…。人間の意識次第では、うさぎに過酷な環境を強いているということですね。

大阪府内の小学校へ、地域住民の方たちと一緒に、飼育されているうさぎの飼育環境改善についての話し合いに訪れた際の1枚

藤田:
そうです。先日見に行った学校では、先生方がうさぎの環境を考えてくださって、うさぎは空調の効いた部屋で快適に過ごしていました。中には一部、そのような学校もあります。しかし一方で、直射日光が当たり、雨が降ると水浸しになるような小屋で、夏は暑く、冬は凍える寒さの中、暮らしているうさぎもいるのです。

もうひとつの問題が、うさぎが病気になったり不調になったりした時です。
明らかにいつもと様子が違っても、ちゃんとお世話をしていないので、そのことに気づかなかったり、あるいは気づいたとしても「病院に連れて行くお金がない」と放置されてしまうことがあるのです。

うさぎは自然界では捕食される側の生きものなので、調子が悪い時に、それを表に出すということをしません。「何かいつもと様子が違うな」と思って放っておくと、あっという間に体調を崩して死んでしまうということがあるのです。

獣医師会と連携している地域としていない地域とで対応がバラバラで、一般の飼い主さんでさえ、うさぎを診察してくれる病院探しに苦労している状況です。とある地方では、増えすぎた学校うさぎのメスの避妊手術をしてくれる獣医師が決まらず、その間に増えてしまったこともあります。

診察をしてくださる動物病院があっても、予算のない状況で、どこまで無料で診察をしてもらえるのでしょうか。実際、学校のうさぎだからと適正な処置をしてもらえなかったこともあります。

地域の方と共に、大阪府内の教育委員会へ「学校ウサギの飼育環境改善を求める要望書」を提出。話し合いを行った

藤田:
うさぎを譲渡する際、飼い主になる方には、うさぎに何かあった時には「様子を見る」ことはせず、すぐに獣医さんを受診してくださいとお伝えしていますが、多くの学校飼育では、このあたりも先生たちのさじ加減なのです。

ある教師の方からお聞きしたのは、生徒から「うさぎの様子がおかしいから、病院に連れて行ってほしい」と言われ、教頭にその旨を伝えると「医療費がないので、生徒たちには病院に連れて行ったと言って小屋に戻すように」と指示されたそうです。「生徒たちには嘘をついてはいけないと教えているのに、教師の私たちが嘘をつくのはおかしい」と話してくれました。

子どもたちに正しいことを教えるはずの学校で、そして「命を大切にする」ということは教科書でも学ぶはずなのに、ことうさぎの飼育になると、それが全然実践されていないというか。文科省もそれぞれの学校に任せたきりで、先生たちの意識だけで、うさぎの運命が決められてしまっているのです。

「大阪府内の小学校で飼育されているうさぎの状態が悪いという連絡が入り、動物愛護推進委員の方を通し、教育委員会へ連絡しました。学校と話し合い、動物病院に連れて行きましたが、手術が必要な病気など継続的な治療が必要で、小学校での飼育は困難と判断し、飼育は廃止してもらいました。現在、私共の施設で通院、投薬しながら暮らしています」

「飼う以上は、飼い主としての責任を果たして」

「上記のうさぎと同じ小学校で暮らしていたうさぎです。大きな病気はなかったですが、体の汚れがひどく、柄と思っていた部分は毛玉が固まっていました。同じく、私共の施設で通院、投薬しながら暮らしています」

藤田:
「動物愛護管理法」の中では、虐待を「必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれる」と定義しています。

うさぎが病気になっても病院に連れて行かない、週末は餌もないという状況は、動物愛護管理法が定める虐待にあたるのではないでしょうか。なのに、文科省も教育委員会も、飼育のことはすべて学校任せでノータッチ。ここも、学校飼育の大きな問題だと思います。

──学校によって本当にまちまちということなんですね。

藤田:
現場の先生たちがどうしていいかわからなかったり、とてもやりづらいんだろうなという状況も、わからないわけでもないんです。
たとえば校長先生にしてみたら、自分がその学校に赴任する前からうさぎがいて、よくわからないまま責任を取らされるのは大変だろうと思いますし、赴任してきたばかりの若い先生が、好きでもないのにうさぎの飼育担当になって、学校の業務も忙しいのに面倒を見なければならないということもあります。

あるいは、うさぎのことが気になって一生懸命飼育している先生が、他の先生から「あんたがそんなに飼育がんばったら、私たちもやらないといけなくなるでしょ」と言われて、やりたいように飼育ができないということもあります。

全員が、動物が好きなわけではないし、動物が嫌いな先生もいるでしょう。「なんで私がお世話しないとあかんの」と思う先生もいると思うんです。

──確かに…。

「草食動物であるうさぎの主食は牧草です。チモシー(イネ科)の一番刈りと言われる最初に刈り取られる草が主になりますが、一番刈り以外にも様々な種類の草があり、オーツの甘い草はおやつ代わりにしたり、六カ月未満の子ウサギには栄養価の高いマメ科の草を与えたり、牧草が苦手なうさぎには、三番刈りなどの柔らかい牧草を与えて、たくさん食べるようにしています。うさぎの歯は生涯伸び続ける「常生歯」で、おおよそ月に1㎝伸びると言われています。草を食べることで歯と歯がこすれて削れます。さらに、繊維質が多く含まれる牧草は、うさぎの体にとって重要な消化管の動きを活発にするため、なくてはならないものです」

藤田:
「飼育担当になった1年間だけ、黙って我慢しよう」と思ってお世話している先生もおられます。でも、命とそのような向き合い方をしている大人の姿を子どもたちが見るのは、やはり教育としてどうなのかと疑問を抱いてしまいます。

リバティが最近、学校飼育から引き受けたうさぎも、目から出血が続いているのに「年だからしょうがない」と何も処置をせず放置され、ひどい状態でした。

うさぎは本来、飼うのがとても難しい生きものです。
「本当にうさぎにとって適正な環境」を考えた時に、極論を言えば、日本では飼うこと自体、風土が向いていないのではないかと思いますし、私から「これが適正な飼い方です」と申し上げることも、正直難しいと感じています。

ただ、うさぎを迎え入れる以上、飼い主として、うさぎにとって最低限の環境を用意してあげる必要があります。主食は牧草ですし、暑さ寒さ、また湿度にも弱いので、温度と湿度をしっかり管理することは、飼う上での責任なのです。

譲渡会の様子。「リバティの施設で行っている譲渡会以外にも、犬や猫の譲渡会に参加することがあります。写真は、8月に動物霊園をお借りして開催された譲渡会に参加した際の様子です。里親探しはもちろんのこと、犬や猫を見に来た方にも、保護うさぎの存在を知っていただける機会になります」

「うさぎだけの問題ではなく、人の問題。
『人ありき』で話を進められたら」

大阪府内の小学校で飼育されていたうさぎ。「名前もなく、小屋は掃除もされていませんでした。容姿から考えると、元は家庭で飼われていたのかなと思われます。校内での申し送りもなく、どのような経過で小屋に来たのか、5年ほど前から居たらしいということしかわかりませんでした」

──問題解決のために、学校側とはどのように向き合われるのでしょうか。

藤田:
強引に話を進めることはしません。「そこの学校だけうさぎがいなくなればそれでいい」ということではないからです。
公立学校の場合は、先生は任期を終えるとまた新しい学校に移動します。移られた先でも、もしかしたら過酷な状況で飼われているうさぎがいるかもしれません。それぞれの場所で、環境をより良いものにさせてもらいたいと思っています。

…ただ、本音を言えば、学校飼育に関しては、間違っていることだらけで、文句しか出てこないです。
こちらが頭ごなしに「間違っています」と言ったとしても、相手からすると嫌な気分になりますし、こちらの話を聞いてみようという気持ちも失って、何も生みません。全てのうさぎを保護することも難しいので、感情は一旦おいて、論理的に「うさぎはこういう生きものなんです」とか、「お手伝いできることがあったらさせてください」というふうにお話しするように心がけています。

文科省は「学校飼育動物の適正な飼育や管理を行うには、学校、自治体、獣医師会、地域ボランティア等が一体となって、それぞれの役割を分担し、有機的な連携のできるネットワークを作ることが望まれる」と言っていますが、保護者がお世話の申し出をしても受け入れてもらえなかったり、うさぎのお世話に熱心な保護者を出入り禁止にした幼稚園や、PTAの要望すら聞いてもらえない小学校もありました。

「学校の小屋で10年以上暮らしていたチョコちゃん。初めて見たときは、お尻にたくさんの軟便が固まって付いていました。気にかけてくださった保護者の方が、寒さ対策の木箱を入れてくれたり、学校に飼育環境の改善を話してくださいましたが、取り合ってもらえないとのことでした。飼育担当の先生とお話をさせていただき、年度末に飼育廃止を決めてもらい当方の施設に来ました。画像は当方に来るまでの間、小屋にビニールを張り、床には麦わらを敷き詰めて寒さ対策を行った後です。ここでも、人参の皮が山盛りの残念なエサでした。残念ながら先月末に寿命を全うしましたが、12歳以上と長生きしてくれました」

藤田:
「うさぎはニンジンを食べる生きもの」と信じ込んで、うさぎにニンジンの皮を山盛りにあげている学校があったんですが、「ニンジンは糖分が高いので、あまりあげない方が良いですよ」と事実と理由をお伝えすると、「あっ、そうなんだ」と分かっていただけたこともありました。知識として知らないだけということも多くて、「悪気のない虐待」が行われているなと感じます。

学校は教育の現場です。間違った方法で飼っているにも関わらず、「学校でこうやって飼っているんだから間違いない。うさぎはかわいそうな思いをしていない」と子どもや親御さんが知らずに思い込んでしまうこともあるので、やはり間違った飼育はしてほしくないと思っています。

──確かに…。

飼育廃止が決まった学校の小屋に掲示している看板。「うさぎがいなくなったことを知らない生徒や保護者の方にもお伝えできればと思いますし、小屋が空いているからとまたうさぎの飼育が再開されるのを防ぐためです。本当は小屋をつぶしてもらうのが良いのですが、予算の関係ですぐに実行していただくのは難しいようです」

藤田:
リバティが保護した「ねいろ」ちゃんは、学校では名前すらなく、週末は餌ももらえず、ニンジンのへたが土の上に散らばっているような環境で飼われていたうさぎでした。

地域住民の方から「かわいそうだ」とご相談をいただき、「飼育のサポートをさせてほしい」と教育委員会を通じて学校側に打診しましたが、断られました。その後も他の保護者から地元の動物ボランティアさんに「あまりにも環境が悪いが、誰に相談したらいいかわからない」とご相談があったので、教育委員会を通じて再度打診し、日程を決めて伺いました。

どう考えてもうさぎを飼えるような環境ではなかったので、うさぎの生態についてお伝えし、「先生方にとっても、子どもたちにとっても、継続して飼育するのは難しいのではないか」というお話をさせていただきました。
その上で「飼育を廃止するのであれば引き取るし、継続するのであればできるだけのサポートをさせてほしい」とお伝えして、先生と児童の皆さんで一度、どうするかを話し合っていただくようお願いしました。

飼育継続を決めた学校をサポート。「今年の冬に寒さ対策で、小屋の周囲にわらこもとビニールを巻き、小屋の環境改善を飼育委員会の生徒たちや、地元の議員さんにもお手伝いいただきました。右の写真は、うさぎたちの簡単な健康チェックをしているところです。夏は、室内に入れるのが難しいとのことだったので、地域の動物ボランティアさんが、遮熱シートを天井と周囲に設置してくれました」

──すぐに引き取るということはされないんですね。

藤田:
学校飼育にもちろん反対ですが、だからと言ってうさぎだけ助かったらそれで終わり、というわけではありません。

学校の子どもたちは日々、うさぎを目にしているわけで、中にはうさぎをかわいがっていたり、会えることを楽しみにしたりしている子もいます。子どもたちもうさぎに何があったのか、何が正しいのかを知る権利があるし、納得してもらいたいと思っているので、「突然、学校からうさぎがいなくなった」ということは、避けたいと思っています。

飼育の廃止を決定された場合には、引き取りまで少し時間を設けて、「子どもたちが納得できるように、ぜひお別れ会をしてください」とお伝えしています。全校集会で生徒の皆さんに向けて事情を話し、飼育係の皆さんにも説明してもらって、「皆に納得してもらえた」ということで引き取ったこともあります。その学校では、こちらで引き取った後、そのうさぎさんが元気に暮らしていますよとお送りした写真付きのパネルを、校門のところに飾ってくださっています。

すごく難しいですが、これはうさぎの問題だけではなくて、やはり人の問題なので、「うさぎだけが助かればそれでいい」という姿勢ではなく、「人ありき」で話を進められたらいいなと私は思っています。

「ウェルフェアオブラビット」を共催している、SAVE THE RABBITSさんと。「東京でのパネル展の際に撮影しました。共催は今年で終了しますが、これからも情報共有し、共にうさぎを取り巻く環境をより良いものにしていければと思います」

「正しい生態と、飼い方を知って」

8月に保護した「たつお」くん。「一般家庭での飼育崩壊でした。他のうさぎから耳を齧られていて、右耳が半分しかありません。保護直後は不安からか、体を触られるのを嫌がり、噛み癖がありましたが、今は落ち着きました。牧草を与えていなかったため、牧草が苦手で試行錯誤中です。他のうさぎたちは、現地で里親探しをしたり、他の保護活動家の方に引き受けていただけました」

──藤田さんのご活動のモチベーションを教えてください。

藤田:
「正しいことを知ってもらいたい」というのがすごく強いです。
うさぎはまだまだ、犬猫に比べて飼うのが簡単そうだとか、餌ひとつにしても、飼い方が正しく知られていません。そうやって間違ったまま飼われてしまい、虐待される命があるのが嫌だし、「動物の福祉」については、強く訴えていきたいところでもあります。

動物を飼うということは、ただかわいいということだけではありません。本当にその動物を生涯、最後まで飼うことができるのか、まずは生態をよく学んでもらいたいと思っています。

同じ犬でも、犬種によって飼い方が違うのと同じように、うさぎも、種類によって飼い方は違いますし、個体差も大きいです。ご自身の生活環境を踏まえると、飼いたい動物と、実際に飼える動物は違うかもしれません。その辺りも含めて、まずはその動物の生態を正しく知り、理解することがスタートだと思います。

「今年の春に、とある大きな公園に捨てられていたうさぎです。地域猫活動がしっかり根付いていた公園だったので、猫のボランティアさんの発見、誘導で、現場到着から5分経たずに捕獲。捕獲後すぐに警察に届け出をしましたが、迷子ではなく遺棄でした。現在は、新しい家族の元で幸せに暮らしています」

──読者の方にメッセージをお願いします。

藤田:
誰かが頑張るのではなく、皆がそれぞれ出来ることを頑張れば解決出来ることはあると思います。1人の100歩ではなく、100人の1歩が大事なんじゃないかなと思っています。

本当に全ての命を助けることは難しいかもしれませんが、目の前の子の命を助けることはできるかもしれません。状況を変えていくために、「おかしい」と感じることがあれば、声をあげていただけたらと思います。

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

藤田:
チャリティーは、保護したうさぎの医療費・飼育費として活用させていただく予定です。学校で飼育されていたうさぎの保護が増えており、特に医療費が必要です。十分な治療をしてあげられるよう、ぜひチャリティーで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

ボランティアの皆さんと。「うさぎのためだけでなく、地域や人にも貢献できる出来る活動を目指し、施設近隣の方々に受け入れていただけるよう心掛けています。写真は、こども食堂さんのイベントに参加した際の1枚です。暑い時も寒い時も頑張ってくれる、頼もしいボランティアさんたちです」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

子どもの頃、通っていた幼稚園にも小学校にもうさぎがいました。
もう30年以上前の話ですが、それから時代は変わり、動物に対する意識や一般の家庭のペットの飼い方も変わってきている中で、情報や環境がアップデートされることなく、同じように飼われ続けているうさぎがいるという事実。これは、変わっていかなければならないことだと思います。
動物を飼うということ、動物を迎え入れるとはどういうことなのかということを、いつも自分に問い直したり、周囲と話し合ったりする必要があると思いました。

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