CHARITY FOR

「娘が生きた証を見つけるためにも、1日も早い治療法の確立を」〜NPO法人レット症候群支援機構

撮影:東真子

1万人から1.5万人に一人の確率で、女の子に発症する難病「レット症候群」。
遺伝子の突然変異で発症するといわれています。

生後半年から1歳半頃までは普通に成長していたのが、徐々に体を動かせなくなる、覚えた言葉を話せなくなるといった退行現象が起こる難病で、知的障がい、てんかんや睡眠障害、歯ぎしりや息こらえ、側弯症などを併発します。遺伝子の突然変異が原因といわれており、現在、根治する治療法は見つかっていません。

谷岡哲次(たにおか・てつじ)さん(47)の娘の紗帆(さほ)さん(16)は、1歳を過ぎた頃からそれまで普通にできていたお座りやハイハイができなくなり、2歳の時にレット症候群と診断されました。

「自分の命と引き換えに、娘が普通の子になれるなら…、神さま、できるならそうしてくださいと何度も願った」と振り返る谷岡さん。
「身代わりになれないなら、根本的な治療法を見つけるために、できるだけのことをやろう」と、2011年にNPO法人レット症候群支援機構を立ち上げました。

活動について、お話を聞きました。

谷岡さんと、娘の紗帆さん。2024年1月、紗帆さんの16歳の誕生日にて

今週のチャリティー

NPO法人レット症候群支援機構

女の子だけに起こる不治の難疾患「レット症候群」を支援する団体。レット症候群の認知を進めると同時に、根本的な治療法の開発を目指して活動しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2024/06/24

レット症候群の根本的な治療法確立を目指して

昨年、胃ろう造設のために手術入院した紗帆さん。「いろいろな障がいを併発してしまうのも、レット症候群の特徴の一つです。食事をとることが苦手な子も多く、直接胃に栄養を送る胃ろうケアになることも多いです」

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

谷岡:
レット症候群を根治する治療法は、まだ見つかっていません。
患者家族が中心となって日本や世界中の研究者をつなげることで、根本的な治療法の確立に寄与したいと団体を立ち上げました。

──治療法がない中、現在はどのような治療が行われているのですか。

谷岡:
レット症候群を発症すると、てんかんや睡眠障害、自閉傾向や息こらえなどさまざまな症状を併発するのですが、それぞれの症状に対してその都度、投薬や手術などの治療を行います。

「歩くことができない子も多く、無意識の筋肉の緊張から足首の内反や膝の後ろの筋が縮まり、膝がまっすぐにならないなどの症状が出てきます。リハビリで緊張をほぐしたりしています」

谷岡:
最近のトピックとして、海外では昨年にレット症候群の治療薬として「症状の一部改善が見込まれる」という薬が承認され、販売されるようになりました。当初は、その薬が日本でもいち早く導入されるように積極的に動いていましたが、販売から一年が経過し色々なデータが集まってくる中で、おや?という部分も少し出てきましたので、今は若干様子を伺っている状況です。

──そうなんですね。他に進展はありますか。

谷岡:
治療薬に関して、日本でも研究が進んでいます。
遺伝子治療を目指した研究や、現在他の疾患に使用されている薬の適応拡大を目指した研究等、さまざまなアプローチが試されています。

レット症候群の患者が併発する疾患の一つに、側彎(そくわん)症がある。
「背骨が湾曲して内臓を圧迫してしまうこともあるので、進行してしまうと危険な症状の一つです。大きな手術を選択せざるを得ないことも多いです」

──治療法に関してはいかがですか。

谷岡:
レット症候群は、女性のX染色体にある「MeCP2」という遺伝子の変異が原因で発症するとされています。
二つあるX染色体のうち、MeCP2は両方ではなく、どちらか片方が作用しているのですが、その作用した方に何らかの欠損や異常があった場合に、レット症候群のさまざまな症状が出てくると言われています。

一つの可能性として、作用していない方の正常なMeCP2を活性化させることで、理屈的には根本治療が可能ではないかと考えられており、様々な遺伝子治療の研究が進んでいます。
現在海外では2社が治験段階まで進んでおり、それぞれ別の方法ではあるかもしれませんが、根本治療に向けての具体的な治験が進んでいるというのは、僕らにとって非常にインパクトのある話です。

──そうなんですね。

2024年には、新たに厚生労働省の助成金を獲得した研究者のチームが発足。「患者会も研究班の会議に参加し、さまざまな意見交換を行っています」

谷岡:
治験は18歳以上の患者に向けても行われており、6週間で座位が取れなかった子が座位がとれるようになるなど、重症度の改善がが見られたと聞いています。

遺伝子治療に関して、治療を受けるのは早ければ早いほど良いと聞いていたので、18歳以上の患者さんにもそれだけの改善が見られたということについても、希望を持っています。とはいえ、治験はまだ第一段階が始まったばかり。治療法が確立するとしても、まだ時間はかかるでしょう。今後の経過を見守りたいと思っています。

国内では、レット症候群支援機構として2019年10月に自治医科大学と協定書を交わし、遺伝子治療プロジェクトを進めてきました。

「レット症候群の遺伝子治療の開発」というゴールを掲げていますが、ただそこまでの道のりは長いので、5年を目標に基礎応用研究を進めて、国の機関から研究費助成金の採択をしてもらえることを目標に、研究費を助成してきました。そして今年度、目標だった5年を1年前倒しで、国の機関より採択され、より大きな助成金を受けて研究開発を進めることができるようになったんです。団体としては一旦、ミッションをクリアできたと思っています。

──そうだったんですね!よかったですね。

2020年から研究費の支援を行ってきた自治医科大学との遺伝子治療研究助成プロジェクトは、目標としていた「5年後に大きなAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の予算を獲得する」という目標を1年前倒しで達成。「AMEDの予算獲得の一助を担えたのは、ご支援頂いている皆さまのおかげです」

谷岡:
今年度は、自治医科大学以外の2つの研究チームも国の機関から採択され、助成を受けることができました。
レット症候群の治療開発がらみで3つの研究が採択されたことになり、今後さらに研究が進んでいくことが期待されます。

──多方面で研究が進んでいるんですね!

谷岡:
そうですね。紗帆がレット症候群と診断された十何年前は、レット症候群は不治の難病だといわれていました。その頃から考えると、本当に大きな前進です。
数年前は臨床の基礎研究が主だったのが、今は治療を見据えた研究に代わってきています。何も打つ手がない状態ではなく、光が見えてきたと感じています。

レット症候群の患者と家族に特化したアプリ「レッコミ」。「現在、350名ほどの登録があり、アプリ内でさまざまなコミュニケーションが取られています。登録者の症状のデータも蓄積されているので、今後治験等の際には更に役に立つアイテムに成長すると思います」

「育ててみないことには、どんな花が咲くかわからない」。
治療薬を研究する医師の高橋先生

さて、ここでレット症候群の治療に関して、長年にわたりレット症候群を研究してこられた、旭川医科大学教授で小児科医の高橋悟(たかはし・さとる)先生にもお話を聞きました。高橋先生が現在携わっておられる研究は「将来、日本での治験につながる可能性がある」と谷岡さんは話します。

旭川医科大学教授の高橋悟先生

──先生の研究について教えてください。

高橋先生:
レット症候群の治癒を目指したい一心で、他の研究者の先生たちと一緒に、長年研究を行ってきました。これまでの研究成果もあって、いくつか候補になる化合物を見出しています。
とはいえ、研究はまだ「細胞に効果がみられた」というレベルで、実際の患者さんに使ったわけではないし、当然使うことも許されない、まだまだ未熟な段階です。大きく育てて、治療薬にまで育てていきたいと思っています。

──具体的には、どのような効果がある薬なのですか。

高橋先生:
レット症候群の患者さんの脳の大きさは、定型発達のお子さんと比較して小さいことがわかっています。患者さんのiPS細胞から脳組織の一部を再現した脳オルガノイドを作ってみると、その大きさはやはり小さくなります。

候補化合物が、患者さんのiPS細胞から作った脳オルガノイドの大きさを回復させる効果があることは確認しています。ただ、これは試験管内で起きていることであって、運動障害やてんかん、呼吸の問題など、さまざまな症状を抱えるレット症候群の患者さんが服用した時、実際にどのような効果や作用をもたらすかということはわかっていません。

「候補化合物は、レット症候群患者さんのiPS細胞から作った脳オルガノイドの大きさを回復しました」

高橋先生:
これからもっと研究していく必要がありますが、さらにこれを治験まで持っていこうと思うと、莫大な研究資金が必要になります。いくつか申請をしてきましたが、競争が激しい世界で、もう一歩というところで大きな研究費の獲得には至っていません。

落ちた理由には、「候補薬に対して特許をとっていない」「製薬企業との連携ができていない」といったことも挙げられています。
審査員から「薬として育てたいなら、もっと力を入れてやらないと」という指摘を受けているということだし、「それは治験をやってみる価値があるね」と説得できるだけの科学的なエビデンスが足りてないということだと、冷静に受け止めています。

種は手に入れています。育ててどんな花が咲くのか、それはやってみないとわかりません。
途中で枯れる可能性もあります。だけど、育ててみないことには、咲く花も咲きません。水をあげるのをやめてしまったら、途端に枯れて、終わってしまうんです。同じ思いを持つ研究者の方たちと協力して、研究を進めています。

──長くレット症候群の研究に携わってこられた、先生のモチベーションを教えてください。

高橋先生:
目の前に患者さんがいるということです。架空の疾患だったらそこまでがんばれないけれど、治療を必要とする患者さんやご家族が目の前にいて、がんばっておられる姿を見ると、我々ががんばらないわけにはいきません。

患者会のメンバーと意見交換。「お互いの情報を、共有できる範囲で共有しています

高橋先生:
30年前、医師になって間もない頃にレット症候群と診断した患者さんがいます。その方は、今でも診察に来てくれています。
その時から、そして今でも、レット症候群の患者さんとご家族に、「治療法はありません」としか説明できません。でも患者さんからしたら、そんな話は聞きたくないんです。

医師として、患者さんが求めていることを提供したい。そのような思いで、研究に取り組んでいます。

谷岡さんたちが以前、レット症候群のご家族に実施されたアンケートの中に、「もし完治したら、何がしたいですか」という項目がありました。回答に、皆さん同じことを書かれているんです。「一緒に手をつないで、おしゃべりしながら、お散歩したい」と。

この回答には、手をつないで、おしゃべりしながら、散歩することができなくなる…、医学の専門用語なんて必要ないぐらい、レット症候群の診断基準が全て入っています。患者さんとご家族が皆、同じ思いだととてもよく理解できるし、全部すぐにはできないかもしれないけど、コミュニケーションが少しでもとれるということは、一番求めたいところです。

レット症候群支援機構として、研究者と患者会の距離を縮めるために、懇親会も開催している。写真は2024年5月、「レット症候群とその周辺疾患の臨床調査研究班」との懇親会。「お互いざっくばらんに、本音で気軽に意見交換ができる貴重な交流の場です」と谷岡さん

「重度の障がいがあっても、社会と関われる場を」。
生活介護事業所をスタート

さて、インタビューを谷岡さんに戻します。2024年春には、生活介護事業所「スマイルキャンパス」をオープンした谷岡さん。どのような場所なのでしょうか。

2024年の4月にオープンした「スマイルキャンパス」。「まだまだ日々勉強中ですが、利用者さんと楽しく過ごせるように頑張ります!」

谷岡:
この4月から、大阪府門真市で「スマイルキャンパス」という生活介護の事業所をスタートしました。
紗帆は現在高校1年生で、あと2年したら学園生活も終わります。障害としては重度で、就労は難しいので、生活介護事業所を利用することになるのですが…、いくつかの事業所を見学した時に、重度障がいのある子でも楽しめるような場所が、あまりないように感じました。

重度の子は何かを強く主張したりアピールしたりできるわけではないので、逆に手がかからないというか、放ったらかしというと語弊がありますが、職員さんの対応が、どうしても後回しになってしまうようなことが多いのかなという印象を受けました。

使える体の機能がたとえわずかであっても、その子ができることで社会と関われる場所を作りたいと思い、「スマイルキャンパス」をスタートしました。

スマイルキャンパスにて、お誕生日会を開催。「フェルトで作ったイチゴとケーキでお祝い。本物でないことに怒りを爆発して、イチゴをぶちまけた瞬間(笑)」

──どのような事業所ですか。

谷岡:
まだまだ試行錯誤中ですが、できない部分や足りない部分は、周りの人たちにサポートしてもらいながらも、「誰かがやってくれる」のではなく、本人が意思をもって参加できることを大事にしています。
ひとつの目標に向かって、一人ひとりが役割を持ち、やりがいを感じられる場所にしたいと思っています。

──たとえば、どのようなことでしょうか?

谷岡:
家庭用のきのこ栽培キットをご存知ですか?
水をあげて1週間ぐらいするときのこができるキットなのですが、スマイルキャンパスで「農園部」を立ち上げて、このキットを使ってきのこを作っています。

農園部のきのこ作り。「視線入力を活用し、重度であっても野菜を育てる作業に本人が参加できるようにしました。パソコンのモニターに映されたキノコ菌を見て、信号を元に霧吹きから水が出るしくみです。水やりという、作物の命を守る重要な任務を任せています」

谷岡:
よくあるパターンで言うと、たとえば植物に水をあげる時、本人ではなく支援員さんがじょうろを持っていて、本人はただ近くに居るだけで、ほぼ支援員さんのタイミングや加減でやってしまう。…それは何だかなあ、と思って。

テクノロジーを活用して、もっと本人が自分の意志で参加できるようにできないかなと思い、視線入力による意思伝達装置を活用し、視線入力で水をあげる方法を考えました。画面のジョウロを見たら電源がオンになって水が出て、もう一度見たらオフになって水が止まるしくみです。

──そのやり方だと、自分のタイミングや目分量で水をあげられるし、「自分がやっている」と感じられますね!

谷岡:
そうなんですよね。このやり方を応用できれば、たとえば視線入力でミキサーをオン/オフにして、ごはん作りに参加できたりもするんじゃないかなとか、夢はいろいろと広がっています。

レット症候群の周知活動の一環として、主に小学生に向けた紙芝居のプロジェクトをスタート。「イラストを公募し、選ばれた方は応募者の中で最年少の18歳の方でした。素敵なイラストで、完成が楽しみです」

「仲間たちと、青春を謳歌してほしい」

視線の動きで遊べるゲームに挑戦。「自分の目線でキャラクターが動くことが嬉しくて、笑顔でドヤ顔をしてくれました」

谷岡:
摂南大学さんと、「サイミス」というバリアフリー電子楽器の研究協力も始めました。システムの中にいろいろな楽曲が入っていて、音符をボタンでタッチしていくとその音が出るしくみです。
体が全く動かないと難しいですが、手や足、顎…、体のどこか一部が動き、パネルやボタンを押すことができれば、寝たきりでも演奏できる可能性があります。

他にもeスポーツの分野では、今は視線ひとつでボタンを押して技が出せます。今後、eスポーツの大会に出たり、重度障がいのある人が音を奏でるコンサートを開いたりもできるんじゃないかなあと思っています。

バリアフリー電子楽器「サイミス」による演奏の様子

──「自分の意思で参加する」という部分を大事にされているのはなぜですか。

谷岡:
普通であれば、多くの人は高校を卒業した後、大学に入ってキャンパスライフや青春を楽しみますよね。紗帆の場合は、それが高校を卒業した途端、プツンと途切れてしまうというか、終わってしまうような気がして。何かできないかと考えた時に「一緒に楽しめる仲間がいたらいいな」と思いました。

ここに集う、スタッフも含めた皆が、たとえばきのこを育てる、eスポーツの大会に出場するといった同じ一つの目標を掲げて、障がいの有無や重さに関わらず、それぞれができることで参加して、やったことを評価してもらったり、皆と目標を達成したりする喜びを感じてほしい。そうやって、青春を謳歌してほしいと思っています。

まだ始まったばかりですが、ゆくゆくは地域に根付いた場所になればと思っています。

コロナが明けてからの家族旅行。プールで楽しそうに笑う紗帆さん

「娘のためにも、次の世代のためにも。
1日でも早く、治療法を見つけたい」

2023年6月、コロナが明けて久しぶりのNPO総会&懇親会を横浜にて開催

──新たに事業所を始められたり、治療も進化していたり、活動の中で変化がたくさんあられたと思います。振り返っていかがですか。

谷岡:
そうですね…。14年を振り返って、やっぱりまずはあっという間でしたね。
紗帆が2歳でレット症候群と診断され、この団体を立ち上げた時は漠然と「10年経てばある程度、治療薬や治療法ができていたりするんじゃないか」と思って、勝手に10年後ぐらいをゴールだと思っていました。だけどそんなに甘い世界ではなくて。

でもそこから、症状緩和の薬が出たり、治療法に関する研究が進んだり、1歩進んでは1歩下がるようなことも少なくありませんでしたが、全体として少しずつ前に進んできたと思います。それらに対して、僕らが患者家族としてどれだけ関われたかと問われると、もしかしたら僕らがいてもいなくても、研究は進んでいたのかもしれないと考えることもあります。

ただ、いざ日本で治療薬や治療法を今後やっていくとなった時に、これまでの本当に地道な14年の草の根の活動で積み上げてきたこと、人とのつながりや、蒔いてきたいろんな種が、きっと役に立つと信じています。

2017年に開催した国際シンポジウムでは、海外から招待する研究者とのコンタクト、会場周辺の宿泊の段取りや同時通訳、会場選び…、大変なことが多かったですが、多くの出会いや学びを得ました」

──紗帆さんに対しては、今はどんな思いでおられますか。

谷岡:
14年前、「紗帆が15年後には治っていたら」というのが一番の願いではありました。
現実ではそうはいかなくて。それでも変わらず、紗帆から相変わらずもらっているものがたくさんあって、その分、恩返しをしないといけない。1日でも早く治療法を見つけたいと思っています。

それがもし、紗帆には間に合わなかったとしても…、紗帆が生きた証を見つけるためにも、また次の世代へと、つなげられるようにしたいと思っています。

学校行事のスポーツ大会にて、先生と楽しく準備体操をする紗帆さん。「毎度のことですが、この後いざ本番になると爆睡してやり過ごす技を身につけています」

──紗帆さんから、どんなものをもらっておられるのですか。

谷岡:
一番は、癒しです。活動の中で壁にぶち当たったり、難しいことはたくさんあるけど、紗帆にニコっと笑われると、疲れも全部吹っ飛びます。小さいお子さんがおられるご家庭ならあるあるかもしれませんが、16歳になった今でも変わらず、純粋な目でニコッと笑ってくれます。表情はすごく豊かで、昔と比べても、今の方が豊かになっていると感じます。

くっついて寝る時に、紗帆がほほえみながらこちらを見て眠りに落ちていく瞬間などは、たまらないですね。

「夢の中では走ったり、楽しくおしゃべりしたりしているのかな?穏やかに微笑みながら、寝落ちする紗帆です」

「今、幸せなの?と聞きたい」

2023年には胃ろうの手術を受けたものの、普段は口からごはんを食べることにも力を入れているそう。「固形の物は難しいので、ペースト状にしたものを食べています。誤嚥(ごえん)の心配もあるので、形状には気を使います。スイーツは別腹で食べてくれます」

──紗帆さんの最近の体調はいかがですか。

谷岡:
体調は比較的安定していますが、昨年の10月には胃ろうの手術を受けました。
風邪を引いた時に3キロぐらい体重が落ちてしまい、病気をした時にどうしても食べなくなってしまうので、今後のことを考え、周りにもたくさんアドバイスをもらって決めました。
結果として良かったと思っているのですが、手術を受けるまでは、不安や葛藤も大きかったです。

──毎日いろんな言葉をかけておられると思いますが、改めて、紗帆さんに聞きたいことやかけてあげたい言葉はありますか。

谷岡:
昨晩、紗帆が夜中の3時ごろに発作を起こしました。痙攣に近いような感じで、体にすごく力が入るのですが、その時に彼女が発した言葉が「パパ!」と聞こえた気がして。飛び起きました。妻も「今の、パパって聞こえたな」って。

前からそうなんだけど、「今、幸せなの?」と聞きたい。紗帆が今どう思ってくれてるのか、わかったらいいなとは思いますね。

2024年1月29日、16歳の誕生日にて。バースデーソングに笑顔を見せる紗帆さん

チャリティーの使途

2歳の誕生日の紗帆さん。「この頃には、それまでできていたことが徐々にできなくなってきていました」

──谷岡さんのモチベーションを教えてください。

谷岡:
「娘のために」とスタートした活動ですが、今は娘だけでなく、全国にいる患者さんご家族からいろんな声を聞くので、その方たちのためにも未来につなげていきたい。そしてまた、活動を応援してくださる方たちへの感謝の気持ちを、私たちの行動と結果で示し、恩返ししたいというのがモチベーションです。

この14年間、皆さまからのご寄付だけで活動を続けてきました。こんなに続けられるものなのかというのは自分でも驚くのですが、その都度誰かに助けられ、支えられてきました。

見ず知らずの方も、支援してくださるんです。そこに応えていかないといけないと思っています。

「2023年末にご連絡いただき、それから継続的にご支援いただいている株式会社アクセアさま。自社運営されているYouTubeにも出演させていただきました。本当に親身に寄り添ってくださる会社さんです」

──読者の方に、メッセージをお願いします。

谷岡:
まずはレット症候群という難病があることを知っていただきたいです。そして、ホームページを見るなり友人に伝えるなり、何かひとつアクションにつなげてもらえたら嬉しいです。

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

谷岡:
チャリティーは、今回お話を聞かせてくださった旭川医科大学の高橋先生たちの研究を治験までもっていくため、研究助成の資金として活用させていただく予定です。JAMMINさんとのコラボで集まったチャリティーと同額を、レット症候群支援機構からも寄付させていただきます。
たとえば、今回のコラボで30万円集まった場合、私たちが同額の30万をプラスして、合計60万円を研究資金として活用いただきたいと思っています。

1日も早い治療法や治療薬開発に向けて、ぜひ応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

前回、2023年にコラボしていただいた際のコラボデザインを身につけて記念撮影。「多くの反響をありがとうございました!今回もぜひよろしくお願いいたします」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

レット症候群支援機構さんと初めてコラボしていただいたのは、JAMMINが毎週のコラボをスタートした2ヶ月後の2014年6月。
10年という月日が流れたわけですが、レット症候群の治療に関する研究が少しずつ前に進んでいるのはとても素晴らしいことだと思いました。紗帆さんのために父として、そしてまた患者家族会の代表として、地道なご活動を休むことなく、真摯に、積極的に続けてこられた谷岡さん。その姿に、いつも胸を打たれます。
治療法が見つかり、本人とご家族にもっともっと笑顔が生まれるように。ぜひ、チャリティーを応援いただけたら嬉しいです。

・レット症候群支援機構 ホームページはこちらから

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【2024/6/24~30の1週間限定販売】
刺繍のようなタッチで描いたデザインです。
谷岡さん、娘の紗帆さんとご家族、また患者家族会の仲間の皆さんや研究者の皆さん、支援する皆さんとの関わり。
それはまるで針と糸のように、「治療法確立」という未来に向け、二人三脚で過去から現在、未来へと希望を紡ぐ様子を、船に積んだたくさん花や、過去のコラボデザインからのモチーフ(望遠鏡、ランプ等)で表現しました。

船に隠しメッセージとして、レット症候群が根治する未来を表現した「逆さRETT」を入れています。

“Care today, cure tomorrow(今日できるケアをしながら、明日は完治を目指そう)”というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)