CHARITY FOR

学校や仕事、結婚、子育て…。人生におけるさまざまな変化を経験する「AYA世代」のがんを知って〜AYA week

「AYA世代(15歳〜39歳)のがんを知ってほしい」。
毎年3月に開催される、AYA世代のがんの啓発イベント「AYA week(アヤウィーク)」。
AYA世代のがんは、思春期、学校や進学、就職、仕事、結婚、妊娠、子育て…人生のさまざまな節目を経験する年代であるがゆえの、治療との両立における悩み、孤独を抱えやすい現実があるといいます。

「がんになった時の生きづらさ・生きやすさは、環境によって大きく左右される。当事者の悩みや苦しみは、医療の進歩だけでなく、社会的要因によっても大きく改善できる」と話すのは、AYA week実行委員の一人であり、小児科医の楠木重範(くすき・しげのり)先生(49)。自身も14歳の時に悪性リンパ腫を発症、16歳まで治療をした当事者でもあります。

「がんは確かに、こわい病気です。
しかし医師として子どもや若者たちと関わってきた中で、彼らは、そのこわさを乗り越える強さを持っていると感じました。だからこそ周りの人たちが、そのこわさを少しでも減らして、乗り越えるサポートができれば。いろんな人の関心と行動で、それはかなうはず」と楠木先生。

活動について、お話を聞きました。

お話をお伺いした楠木先生

今週のチャリティー

AYA week(アヤウィーク)

一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」を中心に、「若い世代とがん」の今を、世の中に発信していく1週間。
医師や看護師など医療従事者のだけでなく、職業や年齢、性別を超えた全国のサポーターが集まり、がんの正しい理解や若い当事者の未来を願い、さまざまな企画を通してAYA世代のがんの今を発信するプロジェクトです。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2024/02/12

「AYA世代のがん」啓発のために
全国規模でさまざまな企画が開催される

AYA week期間中、病院内に掲示された応援フラッグ。「こちらの病院では、AYA weekのブースを作ってくださいました」

──今日はよろしくお願いします。最初に、AYA weekについて教えてください。

楠木:
AYA世代(15歳〜39歳)のがんのことを広く知っていただくことを目的に、一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会(AYA研)」を中心に、毎年3月行っているイベントです。

AYA世代のがんについては、十数年前から少しずつ日本でも注目されてきました。「AYA研」自体は、医師や看護師、薬剤師など医療関係者とがん当事者・経験者が一緒になって、がん患者やサバイバーのQOLの向上のための研究や研修を行っていて、少し専門的になるため、一般の方への普及啓発はどうしても難しいところがありました。

AYA研は、 思春期・若年成人(Adolescent and Young Adult, AYA)がん領域の学術活動、教育活動、社会啓発及び人材育成等を行うことにより、思春期・若年成人がん領域における医療と支援の向上に寄与することを目的として、医療者、研究者、患者、家族などが協働して活動する研究会

楠木:
もっと広くたくさんの人にAYA世代のがんを知ってほしいと始まったのがこの「AYA week」のイベントで、2021年にスタートして、今年で4回目の開催となります。各地で活動する団体が手をつないで、ともにAYA世代のがんの啓発のために声を上げていこうよというイベントです、この期間、全国規模でさまざまな企画が開催されます。

──具体的にはどのようなイベントが開催されるのですか?

楠木:
AYA weekに参加する全国の7〜80団体が、各地で患者会の集まりや交流会、チャリティーイベントなどを開催してくださいます。AYA week実行委員会としても、各地の応援メッセージをつなぐ「応援フラッグ企画」や、全国の仲間が集まる大交流会を実施しているほか、SNSで情報発信も行っています。

「AYA week期間中、全国のがん相談支援センターの方にご協力いただき、がん相談支援センターの紹介、がん治療中のAYA世代へのメッセージなどを AYA weekのYouTubeチャンネルで発信しています」

人生のさまざまなイベントや変化を
経験するのが「AYA世代」

AYA week2023では、プロ野球・ソフトバンクホークスのオープン戦で、AYA世代のがんについての啓発画像がホークスビジョンに映し出された

──AYA世代のがんについて、特徴や課題を教えてください。

楠木:
同じがんではありますが、高齢者のがんとはまた違う課題があります。
「小児がん(0歳〜14歳のがん)」の罹患は、がん全体のうち0.2%、「AYA世代のがん」の罹患は、全体のうち2〜3%と圧倒的に少ない(参照:厚生労働省 第82回がん対策推進協議会 参考資料16 大賀委員提出資料より)のですが、そうであるがゆえに、なかなか周囲の理解や支援が得られず、孤独を感じることがあります。

医学的な面でいうと、小児がんにも白血病や脳腫瘍、リンパ腫など多種多様ありますが、これは高齢者が発症する、いわゆる「5大がん(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮体がん・子宮頸がん、乳がん)」といわれるようながんとは、また違う系統のがんになります。

これがAYA世代になると、小児がんの系統のがんもあれば、成人がんの系統のがんもあり、両方が混ざっていて、多種多様具合が他の世代のがんよりも複雑になり、組織的にサポートすることが難しくなります。

がん治療中の高校生、藤井大輝さん。「治療しながらでも、学ぶことを諦めたくない。そのことを発信していきたいです」

──どういうことでしょうか?

楠木:
たとえばですが、高校生が胃がんを発症したとして、でも小児科では胃がんを診ていません。成人の科で診ることになりますが、医療現場の方たちが若い世代に慣れておらず、どう接していいかわからないということがあったりします。

社会経験もまだ浅く、非常に繊細な年代でもあって、医療者が大人と同じように接した時に、高校生が傷つくこともあります。たとえば、「あなたの病気はがんで、治癒率70%です」と伝えるとします。高校生は、自分が命に関わる病気になることは全く想定していないと思いますので、抱えきれない恐怖を背負う可能性があります。

その子の年齢や性格などに十分配慮をして病気の説明をする必要がありますが、十分な配慮がなされていないことも多いです。医療の現場から、こういったことを減らしいきたいと思っています。

AYA week2024実行委員長の白石恵子さん(九州がんセンター公認心理士)。「AYA week2024も、さまざまな企画が開催されます。それらが自然な形で誰かの勇気になる、全国でそんなムーブメントが起きると良いなと思います。みなさんそれぞれにできることはあります。ぜひご参加ください」

──日常生活には、どのような影響がありますか。

楠木:
がんになると長期間の治療や通院が必要になりますが、15歳〜39歳のAYA世代は、その間に人生のさまざまなイベントや変化を経験します。

小児がん(〜15歳)の場合は義務教育の中なので、学校に通えなくても、基本的に留年はありません。しかし15歳以上のAYA世代になると、高校は義務教育ではありませんから、治療によって留年や中退を余儀なくされることがあります。

さらにはがんが進学や就職、その後のキャリアにも関わってきますし、プライベートでは恋愛や結婚、妊娠や子育てにも関わってきます。抗がん剤によって、妊娠に影響が出てしまう期間があるし、すでに子どもがいる場合、治療する時に「子育てをどうするのか」という課題も出てきます。

「AYA week2023では、AYA weekのYouTubeチャンネルで、がん治療中の17歳の高校生が、自分の気持ち、みんなに知ってほしいことなどを生配信で伝えました」

──AYA世代ならではの課題があるんですね。

楠木:
そうですね。AYA世代は進学や就学、結婚や子育てなど、人生のイベントや分岐点が盛りだくさんのタイミング。人それぞれではありますが、がんになったことが、その人の人生に何らかの影響を与えるということが言えます。

ただ、がんになった時の生きづらさ・生きやすさは、環境によって大きく左右される部分があります。

たとえば、バリバリ働いていた方が「がんになっても仕事を続けたい、キャリアを諦めたくない」という時に、ある程度フレキシブルな働き方を認めてくれる会社もあれば、雇い続けるのは難しいという会社もあります。
高校生の場合は、入院や治療のために出席日数が足りず留年になってしまうところを、リモート授業を行って出席にするという配慮もできます。こういったことが、それぞれ患者さんが所属している組織の裁量で決まってきます。

──確かに。

楠木:
いずれにしても、AYA世代のがんの発症は、人口10万人あたり15〜19歳で14.2人、20代で31.1人、30代で91.1人と非常に少なく、そうであるがゆえに一般の方に知ってもらいにくいところがあって、当事者の方が「わかってもらえない」「誰にも相談できない」と孤独を抱きがちです。

中学2年生の時に骨肉腫のために左足の大手術を経験し、34歳にして琵琶湖1周をサイクリングで完走した中西俊介さん。「病気をして、初めて自分のために本気になれた。今度は、私が誰かを支えられたら」

医師として、経験者として。
「社会が変わっていくことで、孤独は大きく減らせる」

琵琶湖一周を目指す中西さんと、練習のために小豆島を自転車で一周した時の一枚。「自信を無くしていた中西さんが、がんを経験した友人や主治医、がん相談員、心理士など、たくさんの方々との関わりの中で、自分の身体と向き合い、前に進んでいく姿に感動しました」

──楠木先生は医師として、また自身もがんの経験者として、どのような思いでこの活動と関わっておられるのでしょうか。

楠木:
「病気を治す」ことと「その人が幸せに生活する」ということは、また別のことかもしれません。でも医師として、がんになって、しんどい経験をたくさんして、それでも一生懸命がんばる子どもや若者たちの日々を見ていると、病気だけでなく社会もよくなってほしい、しあわせに暮らしてほしいと思うのは、ごく自然な気持ちです。

がんは突然やってくる、そして命に関わる病気であることは確かです。とんでもない病気だと思う一方で、医療の進歩がめざましい分野でもあって、小児がんの場合は8割ほどが治るようになりましたし、AYA世代のがんの生存率も向上しています。

こわい病気ではあるけれど、でもしっかりと皆が正しい知識を身につけてサポートができたら、もっともっとより良くできる。当事者の悩みや苦しみは、医療の進歩だけでなく、社会的要因によっても大きく改善できます。社会が変わっていくことで、当事者のがんによる悩みや苦しみ、孤独は大きく減らせるはずです。

昨年のAYA week2023では、実行委員長を務めた楠木先生。「全国のたくさんの実行委員の方々に助けていただきました。実行委員全員で作った応援フラッグです」

──当事者としての体験を通しては、どのように感じていらっしゃいますか。

楠木:
僕は恵まれていたと思っています。ただ、そうですね。いろんな意見があると思いますが、僕自身でいうと、周りから「かわいそうな存在」と見られることが多くて、それがつらかった。

10代の思春期の時って、まだ「生意気だな」と見られる方が良くて、「かわいそう」って思われるのって嫌じゃないですか。前途明るい、可能性にあふれた、本来であればキラキラして「うらやましいね」っていう存在であるはずが、がんになって「かわいそう」と、腫れ物に触るような存在だったことが嫌でした。

抗がん剤の後遺症で髪の毛が抜けているのですが、学校では同級生の誰も、そのことに触れてこない。もしかしたら、触れられても僕も困ったんかもしれません。だけど、誰も何も言わないことで、雰囲気がもっと「触れたらアカン」みたいになっていくというか。

「髪どうしたん?」とか「入院どうやったん?」っていう最初の一歩が話せたら、そこから自然といろんな会話ができるけど、誰も最初のそこに触れないので、全く進展がないんですよね。

AYA week2023では、46都道府県から合計113枚の応援フラッグが集まった

楠木:
同年代はそんな感じで、年配の方になってくると「かわいそう、かわいそう」と。
ものすごく強く経験したわけじゃないんですが、「かわいそう」=「期待されていない」ということだと僕は感じて、かなしかったというか…、「かわいそう」は嫌やなと思いました。

──そうだったんですね。

楠木:
「かわいそうじゃないねんで」っていうことを、周りの人はもちろん、若くしてがんになった本人にも知ってほしい。僕の気持ちとしては、そこが強いです。

とはいえ本人からすると、人生の一大事件が起きているわけであって、そこには配慮が必要と思います。触れてほしい、触れてほしくない、それも人によってさまざまで、非常に繊細なことではあるんですが、本人の意図を汲みながら、いろんな人が協力して、過ごしやすい環境を作っていくべきだと思います。

「AYA week2023では、近大病院さんが応援フラッグやVoicyでAYA世代がんの配信、栄養士さんが啓発クッキーを作ってくださるなど、たくさんの活動をしてくださいました」

「優しい声が大きくなれば、
心無い声はかき消される」

AYA week2024副実行委員長の二宮みさきさん(株式会社ZINE、乳がん経験者)。「今年のテーマは『誰かが、誰かの勇気になる』。AYA weekの活動の中で、たくさんの勇気をもらっています。わたしも誰か一人のロールモデルになれるよう、今後も活動を広げていきます」

楠木:
がんの当事者の生きづらさ、悩みや苦しみは、社会の受け止め方が変わっていくことで減らすことができます。だから、AYA世代のがんのことをもっと知っていただきたいと思っています。
今はSNSなどを通じて、当事者が気軽に発信できる時代です。ひとくくりに「AYA世代のがん」といっても、一人ひとりの状況も思うことも違う。多様性を尊重しながら、さまざまな声を届けていけたらと思っています。

がんという病気は、こわい病気です。
でも僕がこれまでに子どもや若者たちと出会った中で感じたことは、彼らには、そのこわさを乗り越える強さがあるということ。だから、できるだけ周りの皆が、そのこわさを乗り越えたり、少なくとも減らすということをしてあげたい。それは、いろんな人が関心を持って行動してもらうことによって、かなうはずなんです。

「AYA week2022では、株式会社ファミリーマート代表取締役社長の細見研介さんがメッセージボードにご協力くださり、SNSなどで発信させていただきました」

楠木:
逆にがんを知らないことで、誰かが、あるいは自分ががんになった時、「もうあかんわ」とか「人生詰んだ」などと平気で言ってしまう。当事者にはそれが心に刺さるし、強く残るんです。心無い声は、実際は少なくても、その言葉の強さがゆえに目立ちます。その強さを弱めたい。

「応援している人がたくさんいるよ」「一人じゃないよ」という声がもっと大きくなれば、心無い声はかき消されます。しんどい思いをしている人が叩き潰されるのではなく、しんどい時でも誰かがサポートしてくれる、と思える世の中になることを願っています。

──私たち一人ひとりに、できることはありますか。

楠木:
もし身近にがんの方、がんを経験した方がおられたら、「大変やったね」「がんばらはったんやね」と、がんばりを言葉にして労ってもらえたらありがたいです。

多くの当事者は「病気なんだから、がんばって当たり前」と思って、そのがんばりを評価してほしいとは思っていないし、わかってもらえるとも思っていないと思います。でも冷静に考えたら、がんと付き合うって、すごいことだと思います。

そんなすごいことをしている当事者に対して、上から目線ではなく、相手を称える気持ちを伝えることが、本人の大きな力になると思います。
僕も自分が結婚した時、高校の同級生が「あの時大変やったから、しあわせになってくれて嬉しいわ」と言ってくれて、それがすごく嬉しかった。自分の頑張りを知ってくれる人がいることは、すごく心強いんです。

「お国言葉でAYA week」企画。「ミニフラッグを持って、あなたの街の風景や名産品と一緒にひとこと!AYA week2024のフレーズ『誰かが誰かの勇気になる』を、あなたの言葉(方言)で読み上げて、動画投稿してください!」

楠木:
あとはそれこそ、今回のJAMMINさんとのキャンペーンもそうですが、服を着て応援するなどして「応援してるよ!」っていうことを見える形で表明してもらえるだけでも、社会の空気って変わります。ぜひ、仲間に加わってもらえたら嬉しいです。

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

楠木:
チャリティーは、3月に開催されるAYA week2024の応援フラッグ企画やAYA世代の交流会、AYA研のAYA世代がん支援者・団体の支援のための費用などに活用させていただく予定です。

応援フラッグは、一枚あたり送料込で約2500円がかかります。各地の皆さんの応援の声をつなぎ、可視化してたくさんの方に届けるために、ぜひチャリティーで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

AYA weekを支えるAYA研の皆さん。学術集会の際に、記念撮影!

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

楠木先生へのインタビューは、神戸のチャイルド・ケモ・ハウスにいらっしゃった2017年以来、2度目です。お話をお伺いするたび、先生のまっすぐな思いに胸を打たれます。
がんは、もしかしたらその時は、その人の人生の大きな割合を占めるかもしれない。だけどひとつの側面に過ぎません。がんになっても笑顔の瞬間があるし、好きなことや大切な人がいて、豊かに生きてきた、あるいは生きているということには、何ら変わりがないのだということ、それを守るためにできることがあるということを、これまでのコラボで出会った当事者の方たちから教えてもらいました。そんなポジティブな声が、もっともっと広まっていくといいなと思います。

・AYA week ホームページはこちらから

09design

【2024/2/12~18の1週間限定販売】
“Be brlight, be you”、「あなたはすでに輝いている。あなた自身でいて」というメッセージを、力強く美しいタイポグラフィで表現しました。
文字の周りに描いたのは、タンポポ(花言葉は「しあわせ」)、ジャスミン(「やさしい」)、ムラサキケマン(「あなたの助けになる」)。当事者を取り巻く環境が、つながりの中で豊かに、穏やかに広がり、安心が得られる社会への願いを込めました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

logo-pckk                

SNSでシェアするだけで、10円が今週のチャリティー先団体へ届けられます!
Let’s 拡散でチャリティーを盛り上げよう!
(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)