CHARITY FOR

科学の力で刑事事件の「えん罪」被害者を救済、公平公正な司法の実現を目指す〜一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン

ある日突然、「犯人はあなたです」と言われて、身に覚えのないことで拘束され、有罪になったら、あなたはどうしますか?

いわゆる「えん罪」。えん罪の被害に苦しんでいる人たちがいることをご存じでしょうか。

「無実を明らかにしてほしい」。そう願うえん罪被害者に対し、弁護士や研究者らが無償で支援し、救済に向けた活動を行う「イノセンス・プロジェクト・ジャパン」が今週のチャリティー先。

「イノセンス・プロジェクト」は1990年代にアメリカで始まった、DNA鑑定などの科学的な証拠によって刑事事件のえん罪を晴らす活動です。アメリカにはロースクールや弁護士事務所を拠点に60以上の団体があります。これらの団体による活動などによって、これまでに3000人以上のえん罪が晴らされているといいます。

「一度罪を疑われると、被疑者や被告人に対して、世間は厳しい目を向けます。でも、本当にそうなのか。この人は犯人ではないかもしれないという視点、つまり無罪として推定するという目で見ない限り、えん罪はなくなりません。
さまざまな権限を持つ検察に対して、一市民である被告人はあまりに無力で、無実を証明するための証拠を集める能力も圧倒的に少ない。私たちが束となり、えん罪被害者の力になれれば」

そう話す、IPJ立ち上げのメンバーであり事務局長、甲南大学法学部教授の笹倉香奈(ささくら・かな)さん、IPJのメンバーで、えん罪事件である「今西事件」の弁護団の一人でもある弁護士の湯浅彩香(ゆあさ・あやか)さんにお話を聞きました。

お話をお伺いした、IPJ事務局長で甲南大学法学部教授の笹倉さん(写真左)、IPJのメンバーで弁護士の湯浅さん(写真右)

今週のチャリティー

一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)

刑事事件の「えん罪」の被害者を支援し救済すること、えん罪事件の再検証を通じて公平公正な司法を実現することを目指して活動しています。アメリカで1990年代に始まった「イノセンス・プロジェクト」を参考に、その日本版として2016年4月に設立されました。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2023/10/30

「科学的根拠で、えん罪を晴らす」

「えん罪を晴らしたい、助けて欲しい、という支援申し込みが毎月たくさん届きます。メンバーの弁護士たちは、科学鑑定によってえん罪を晴らすことができるかをチーム制で審査しています。このような活動は全てボランティアで行っています。2023年春、どのような支援が可能かを検討する会議の風景です」

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

笹倉:
一つめが、えん罪被害者の支援です。実際にえん罪被害に遭っている方から連絡をいただき、我々の方で「科学的証拠でえん罪を晴らせるか」をひとつのポイントとして審査し、支援する活動を行います。これまでに支援した裁判で、無罪が確定した事件が2つあります。

湯浅:
IPJとしてたくさんの科学者の先生とのつながりがあります。ご本人の言い分と矛盾する証拠があった時に、裁判の結論がどういう証拠から導き出されたものなのか、法律家が調べ、DNA鑑定や科学鑑定、供述鑑定などを専門とする分野の先生に協力いただき、科学的根拠でそこを崩せるのではないかという視点です。 

IPJには、複数の大学からおよそ200名の学生ボランティアが参加している。「イベントの運営や、ホームページのリニューアルに向けたアイディア出しなど、IPJにとって不可欠の存在です。夏休みには、刑事施設参観やオープンキャンパスでの模擬裁判などに力を注ぎました。これからの社会を担う若い世代が主体的に関与していることが、IPJの大きな特徴の一つです。写真は、学生ボランティアリーフレットの会議の様子。司会も学生です」

笹倉:
二つめが、日本のえん罪の問題について調査研究を行いながら、海外と情報交換を行うことです。たとえば、「人質司法」をご存知でしょうか。日本ではひとたび逮捕・勾留されると、身体拘束の期間が長く、無実であろうと「自分がやった」と自白しないとなかなか解放してもらえないということがあります。現在、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」さんと共に調査・研究活動を行うなど、人質司法から脱却するための法改正を目指して活動しています。
三つめが、広報活動です。えん罪の問題はまだまだ社会に知られていません。この問題に対する社会の関心を喚起したいと日々情報を発信しています。

2023年6月30日に開催された、ヒューマン・ライツ・ウォッチとの共同プロジェクト「ひとごとじゃないよ!人質司法」の立ち上げイベントにて

被告人が圧倒的に弱い立場にある現実

2023年7月、東京司法記者クラブで会見をする、左からIPJの笹倉さん、赤阪友昭さん、菅家英昭さん。赤阪さん、菅家さんとも、自らあるいは家族が虐待えん罪を疑われた。赤阪さんは長男に虐待をしたとして逮捕、起訴され、5カ月間勾留された。保釈後も4年に及び家族と離れ離れの生活を強いられた。2023年3月に無罪判決が確定。菅家さんは、長男に対する虐待が疑われた妻が、傷害容疑で逮捕された。その後不起訴となるも長男は家庭に戻されず、1年半に及ぶ離れ離れの生活を余儀なくされた

笹倉:
刑事裁判に対して、裁判のドラマなどから「検察官と被告人が争って、どちらが勝つか」というイメージを抱いている方が少なくないと思いますが、日本の刑事裁判の有罪率は99.8%なのをご存じでしょうか。

──ええっ?!ほぼ有罪ですね。

笹倉:
はい。検察庁が扱う事件の6割以上は起訴猶予やその他の不起訴で終わります。公判にいく割合は、全体のたった10%程度です。起訴されるのは、裁判所に行く時点で「検察官によって有罪になると思われている」事件なのです。
警察や検察、裁判所だけを批判したいわけではなく、このような構造の中で「無実の人を見落としている」可能性があるということです。

湯浅:
犯罪の疑いをかけられている被告人が「やっていない」と言えば、根拠を持ってそれを示すのが弁護士の役目ですが、警察や検察という捜査機関に対し、個人で証拠を集める能力は圧倒的に少ないです。
起訴される事件の場合、検察もそれなりに筋の通った証拠を持ってきます。被告人側が、無罪を証明するための専門的な知見を持っている人とつながれず、検察側の示す根拠を否定しきれずに、有罪になってしまうということが起きてしまうのです。その疑いを晴らすのが、私たちの役割です。

2023年8月、IPJの学生ボランティアが一同に集まり、会議を開催

笹倉:
本来、刑事裁判には「疑わしきは被告人の利益に」という、原則があります。検察官は、証拠に基づいて被告人の犯罪を証明する責任を負います。そして、ある事実があったかなかったかがわからないときには、裁判官は、被告人の利益に判断しなければなりません。被告人が犯人であるかがはっきりしないならば、無罪判決を言い渡さなければならないのです。

「有罪判決を受けた場合であっても、本当は無実なのではないか」という視点を持って、科学的な根拠で「疑い」を晴らしていくのが我々の役割ですが、本来は、たとえ被告人の無実を証明できる証拠がなくても、この大原則に則って、有罪にしてはならないはずなんです。

多くのえん罪事件の背景には、複合的な要因が潜んでいます。
警察や検察官は、裁判官が発付する令状によって、人の身体を拘束することもできれば、家に勝手に上がり込み、捜索差押えをすることもできる。つまり、強制捜査の権限も持っています。それと比べて、一市民である被告人は、あまりに無力です。

もちろん、捜査そのものは必要です。ただ日本独特の構造として、被疑者・被告人の身体を何日間も拘束し、1日何時間も取り調べをして、黙秘や否認を続けるとなかなか解放してもらえないなどの「人質司法」や、一度有罪と確定した事件が、なかなか再審(やりなおしの裁判)にいたらないということもあります。
日本の刑事司法は国際司法と照らし合わせてすごく遅れており、諸外国からは「中世のようだ」とさえ批判されています。

──なぜ、日本はそんなに遅れているのですか?

湯浅:
「警察や捜査機関は正義の味方」「警察や検察が言うんだから正しい」という意識から、なかなか抜け出せないのだと思います。

笹倉:
外国と比べて治安が良いといわれ、「今の日本の刑事司法はうまくいっている」という自負があるから、「これを変えてしまうと、崩れていくんじゃないか」という恐怖感があるのかもしれません。「今のやり方を変えて、犯罪が増えたらどうなるんだ」と。国民も刑事司法に対して大きな関心を持たないので、変えないことに比重が置かれているというか。改革も進まないのだと思います。

メンバーが一堂に会して、支援している事件について議論する会議の様子

現在も戦い続けている「神戸質店事件」「今西事件」

──えん罪事件の実例を教えてください。

湯浅:
「神戸質店事件」は、2005年10月に起きた強盗殺人事件です。神戸のある質店にて店主が殺害され、質店から現金がなくなるという事件が起こりました。

現場には指紋や足跡が発見されたのですが、その一部が緒方秀彦さんのものと一致したと言われています。もっとも、緒方さんはその質店に行ったことがあったので、当然のことだと弁護人は主張していました。

一審では無罪判決が下されましたが、控訴審では無期懲役刑の有罪判決が下されました。その後無期懲役刑は確定しています。
刑が確定してから10年以上がたちますが、緒方さんは今でも無実を主張し続けています。IPJは2022年12月13日に支援決定を行い、再審請求に向けた準備を進めています。

──他の事例も教えてください。

湯浅:
今、争っている「今西事件」は、2017年12月に、当時2歳4ヶ月だったA子ちゃんが亡くなり、虐待を疑われた義理の父親である今西貴大さんが逮捕され、有罪判決を受けた事件です。

A子ちゃんの頭の内に出血があったとされましたが、その出血に見合うような傷跡は、頭皮から見つかりませんでした。しかし検察は「何らかの方法で、頭部に強度の衝撃を与える暴行」をしたと主張しました。

「今西事件」の今西貴大さんと、亡くなったA子ちゃん

湯浅:
私たちの方で検証を行い、専門医に話を聞くと「A子ちゃんにはほかに病気があったのではないか」という可能性が出てきました。

医師も裁判官も、事実を客観的に分析していると思いがちですが、そうとは言い切れない場合もあります。A子ちゃんは心臓に病気があった痕跡が見つかり、頭蓋内からは暴力をふるったという痕跡は見つかりませんでした。

──とはいえ、検察側は「暴力を振るった」という証拠、根拠を持っていて、今西さんはその上で有罪とされているということになりますよね?

湯浅:
検察官は、ほとんどすべての証拠を裁判中、そして裁判後も握っています。それを開示させるということが難しく、さらに被告側は自腹を切って専門家にアクセスし、意見を求めなければならなりません。

「2023年10月26日、今西事件の控訴審第3回の公判がありました。傍聴にも報告会にも支援者が集まりました。学生が持っているのは今西事件リーフレットです。今西さんの優しい人柄が伝わる写真を表紙にしました」

──検察と被告側、どちらも同じだけの情報量を持っていないというのは、かなり違和感を覚えます。情報の非対称性がある上で、人の一生を決める裁判が行われているというのは、どうなんでしょうか。

湯浅:
捜査機関が収集した証拠の一部は開示されますが、すべてではありません。弁護人は検察官にしか証拠の開示を求めることができないのですが、検察側も「手元にはない、どこにあるかわからない。警察が持っているかもしれない」などと言って、それだけで1ヶ月かかったりすることもあります。

──ええ…。

笹倉:
おっしゃる通り、司法の場では、本来であればすべての証拠をお互い見せ合ってから裁判すべきです。まさに非対称な力関係が最初から出来上がっていて、被告人、弁護人は、初めから不利な立場に置かれています。我々が束となり、大きな力になれればと思っています。

2023年3月3日に開催された「今西事件」に関するシンポジウム。弁護団と学生によるパネルディスカッションが行われた

「真実を明らかにするためには、世論も重要」

2023年3月3日に開催された、今西事件に関するシンポジウムでの一枚。「およそ100人が参加しました。学生ボランティアはパネルディスカッションの司会、受付、設営など大活躍でした」

湯浅:
A子ちゃんの頭の中の出血だけでは、「今西さんが暴力を振るった」という根拠にはなりません。お伝えしたように検察側は「暴力を振るわれた時にできる痕跡がある」と主張していましたが、そのような痕跡はありませんでした。

検察は「CTから読み取れる」と言っていますが、「CT画像から読み取るにはそもそも無理がある」という脳外科の専門医の証言も得ています。つまり検察側の主張は、科学的な根拠のない、全くのデタラメです。

笹倉:
実は2017年度に、大阪府は全国に先駆けて「児童虐待対策室」を設置しました。「揺さぶられっ子症候群(SBS)」「虐待による頭部外傷(AHT)」などによる虐待を疑われる刑事事件が、大阪府で急増しました。

今西さんの事件もこの流れの中にありました。子どもへの虐待を見逃すことはよくないし、徹底的に追求しようという意気込みや熱意はすばらしいことです。しかし非科学的な根拠で一方的に虐待したとされ、えん罪となるのはどうでしょうか。えん罪によって家族が離れ離れになり、一緒に暮らせなくなってしまうこともあるのです。

同様の事件では、誤った虐待判断があったことを理由に、2018年以降に10件以上で無罪判決が確定しています。このことを重く受け止めるべきです。

「ようやく始まった控訴審。傍聴には多くの支援者が駆けつけました。控訴審の第一回公判の後に行われた記者レクで、湯浅が報告をしています。会場の支援者からは『無罪を確信した』『今西さんを応援したい』との感想が出されました」

湯浅:
今西さんは一旦保釈されたのですが、そのことに強い反発を抱いた警察がA子ちゃんのお尻の外側にあった1cmほどの小さな傷を根拠に「性的な暴行があった」と主張し、再逮捕に至りました。

1cmの傷を性的な暴行の根拠であるとするならば、この傷以外にもそれを証明する証拠があるはずですが、一切見つかっていません。逆に、弁護人が肛門科の医師に意見を聞いたところ、皮膚が弱くて少しの刺激で生じた傷としておかしくないとのことでした。
また、弁護人が意見を聞いた別の医師は、診察でよくみるような傷だとも言っていました。検察側の主張は、どう考えても無理のあるものです。

私をはじめ、IPJのメンバーが主任弁護人として今西さんの弁護に関わっています。
今、控訴審で、次の裁判に向けて、検察官と書面による論点整理をしているところですが、無罪になる可能性のある事件だと思っています。さまざまな証拠を集めて挑み、世論も巻き込みながら、真実を明らかにしたいです。

「今西貴大さんを支援する会」が主催した「今西事件を語る夕べ」にて、今西事件の弁護団が参加し、事件について初めて知ったという人たちとも語らう場を持った。会場のカウンターには今西さんの写真と並んで、この8月に逝去した、えん罪救済に尽力されていた桜井昌司さんの写真が並んだ

──世論は重要なのですか。

湯浅:
裁判所が、世論を気にしている側面はあると思います。傍聴席が埋まっていると、それだけ世間の注目が集まっていることも伝わります。あとは何よりも、ご本人の力になります。

えん罪被害者の中には、精神的に疲弊し「自分は無実だけど、もうどうしようもないので、自分がやったことにします。だから早く終わらせてください」とおっしゃる方もいます。弁護士として真実を明らかにしたいと思いつつ、ご本人の気持ちを維持することの難しさを痛感しています。

笹倉:
今西さんは、かれこれ5年近くも拘置所の中にいます。彼がしんどいのは今もかわりませんが、全国のご支援者や学生ボランティアたちにも支えられながら、無罪を訴えて闘い続けています。

「IPJのホームページには、『今西事件』のページがあります。今西貴大さんが拘置所から送って下さった自筆のお手紙も掲載されています。現在、控訴審がどのように進んでいるかもこちらでご覧いただけます」

IPJが支援し、無罪が確定した2つの実例

2022年10月に開催したウェブシンポジウムにて。集合写真の中央右側、緑のトレーナーを着ているのが、服役後に無罪が確定した西山美香さん

──これまでの裁判で、無罪を勝ち取ったケースを教えてください。

笹倉:
「大阪AHT事件」は、1歳11ヶ月の女児に対して外力を加えて虐待したとして男性が逮捕・起訴された事件です。今西さんの事件と同様、各地で無罪判決が相次いでいる「虐待による頭部外傷(AHT)」が問題になった事件でした。

ご本人からIPJに直接連絡があり、IPJは一審段階からこの事件を支援し、IPJのメンバーである弁護士が弁護人になりました。脳外科の先生方に専門的な意見を伺いながら、諸外国で医学的観点から議論されている状況をふまえて科学的な根拠を示し、一審で無罪が言い渡され、控訴審でも無罪が確定しました。

「湖東記念病院事件」は、IPJのメンバ―の池田良太弁護士が関わってえん罪を晴らしたケースです。2003年5月、滋賀の湖東記念病院に入院していた患者の人工呼吸器のチューブを引き抜いて殺害したとして、看護助手だった当時23歳の西山美香さんが逮捕され、懲役12年が確定しました。

西山さんは取り調べの中で自白、それが有罪判決の大きな決め手になったわけですが、彼女には軽度の知的障害や発達障害があり、取り調べでは誘導されるままに発言が二転三転し、「自分が殺した」と言ってしまったのでした。

和歌山刑務所で服役中から無罪を訴えて再審を申し立て、2017年に再審開始が決定。IPJは2018年1月からこの事件を支援し、2020年3月、再審による無罪判決が確定しました。

──人生のうちの12年という長い長い歳月を、えん罪によって服役された後の再審だったんですね…。無罪であると証明されてよかったですね。

甲南大学の学生ボランティアらが、系列の甲南高校で高校生と一緒に、「今西事件」を題材にえん罪について考えるワークショップを開催した際の一枚

「間違いあれば見直し、正していく。
日本の司法の営みを、変えていきたい」

「IPJは、日本の刑事司法の改善のために活躍している方々からも応援をいただき、メッセージをホームページに掲載しています」。こちらは、ジャーナリストの江川紹子さんからの応援メッセージ

──IPJでは無償でえん罪事件の支援をされているとのことですが、お二人のモチベーションを教えてください。

湯浅:
被告人という立場の方に対して、世間は厳しい目を向けます。一度疑いをかけられると、多くの人は「どうせ犯人なんでしょう」という目を向けます。場合によっては、弁護するはずの弁護士ですら、同じ目を向ける人もいます。

でも、本当にそうなのか。この人が本当に犯人なのか、同じ目線に立って考えてくれるのがIPJのメンバーです。そういう意味では同志であり、IPJの存在があるから、私もがんばり続けられています。

笹倉:
私は10年ほど前に1年間、アメリカでイノセンス・プロジェクトの活動に参加しました。専門家や学生が一緒になって無償で事件を調査し、えん罪を晴らすということにも驚きましたが、この取り組みが全米に広がって、たくさんのえん罪で苦しんでいた方たちが救われ、さらにそれが国の司法にも反映され、えん罪を晴らす技術や司法改革がどんどん進んでいる状況を、目の当たりにしました。

日本にも同じように、えん罪で苦しむ方がいます。一人ではなく皆で闘った方が大きなものが得られますし、私たちがこの活動をやめてしまったら、後に続いてくれる方がいるのかなという思いもあり…使命感があります。

映画監督で、「再審法改正をめざす市民の会」共同代表の周防正行さんからの応援メッセージ

──活動をやっていてよかったと思う時はどんな時ですか。

湯浅:
えん罪被害者のために活動できているという実感は日々あって、そのことは私の誇りです。「IPJの弁護士です」と名乗るだけでも、私がなりたかった弁護士になれていると感じます。

──湯浅さんがなりたかった弁護士とは?

湯浅:
弁護士といっても、企業を相手にしたり紛争を予防したりと、その中にもいろいろと種類があります。その中でも私がなりたかったのは、「周りは全員あなたのことを疑っても、私だけは信じます」という弁護士でした。

「本当はあなたが犯人なんでしょう」と、被告人のことを信じないまま、仕事として弁護をする弁護士もいます。だけど私は、とことん信じて弁護したい。えん罪被害者のために活動し続けられる弁護士になりたいと思っています。

2023年4月にアメリカ・アリゾナ州で開催されたイノセンス・ネットワーク大会。「世界各国からえん罪救済に関わる人々が集まりました。写真は、国際部会の後に撮った一枚です」

──笹倉さんはいかがですか。

笹倉:
小学校に上がる前、広島の原爆を題材にした漫画「はだしのゲン」を読んで衝撃を受けました。人が人として大切にされない社会はいやだ、法で人を助けられるようになりたいと思い、法学者になりました。
私はやりたかったことをやれているのだろうかとモヤモヤしていた時にアメリカでイノセンス・プロジェクトと出会い、これだと思いました。

えん罪は不正義の最たるものですが、この社会に存在しているのは紛れもない事実です。
何が問題なのか、その原因を明らかにして、間違いが起きた時には見直し、反省し、改善していく。日本の司法の営みをそのように変えていく必要があります。一人ひとりを大切にする刑事司法を作っていけたら。この活動が、日本の司法を変える起爆剤になってくれたらと思います。

2023年4月にアメリカ・アリゾナ州で開催されたイノセンス・ネットワーク大会での一枚。「ネットワーク設立20周年を記念して、雪冤者たちが舞台上に並びました」

──読者の方に向けて、メッセージをお願いします。

湯浅:
えん罪がなぜ生まれるのか。えん罪はなぜなくならないのか。
どこまでいっても、「これはえん罪かもしれない」「この人は無実かもしれない」という視点で審理されていない事実があるのではないしょうか。

それは裁判官に限った話でなく、社会にいる私たち一人ひとりが考えていかなければならないことだと思います。実際にえん罪ってあるんだよということを、まず知っていただけたら。もしかすると、明日は我が身に降りかかるかもしれない。この問題について、考えてみてもらえたらと思います。

「学生ボランティアは月に一回、対面とオンラインで行われる広報会議に参加しています。大学も地域も学年も様々ですが、『えん罪のない社会に向けて』という問題意識が学生をつないでいます」。会議後、リラックスした雰囲気での一枚

チャリティーは、えん罪被害者の救済支援のために活用されます!

2023年11月10日には、永田町の参議院議員会館にて「人質司法サバイバー国会」が開催される。「勇気ある人質司法サバイバーたちが初めて集まり、その苦しい経験を国会議員の前で語り、制度改正を求める声を伝えるイベントです。参加は無料。ご興味のある方はぜひ詳細をチェックしてください」→詳細はこちらのページから

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

笹倉:
えん罪支援にかかる費用は、すべてIPJが持ち出しで行っています。たとえば、科学鑑定によって雪冤(えん罪が晴らされること)が可能か否かについて意見書を専門家に書いていただく際に、1件につき30万円が必要となります。
今回のチャリティーは、えん罪被害者救済のための支援を充実させるため、こういった支援に必要な資金として活用させていただく予定です。ぜひ、アイテムで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

「2022年春、IPJのホームページをリニューアルした後の全体会議で撮影した写真です。IPJの前身である『冤罪救済センター』の立ち上げメンバー、新たに加わったメンバー、そして学生ボランティアが集まり自然と笑顔になりました」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

えん罪がもし、自分の身に降りかかったら?家族の身に降りかかったら?根拠のない、全く身に覚えのないことを「間違いない。これはあなたが犯人だ」と言われて、生活が一変してしまったら?いわれのないことで家族や故郷、大事にしているものから離れなければならなくなったら‥?!考えただけでゾッとします。悪夢です。でも、その悪夢が、現実に起きているのです。

これは人権の問題です。”正義“を振りかざすことは、誰かのことを好き勝手に侵害してもいいということではありません。しかしどうでしょう。私たちの周囲を見回してみると、必要以上に悪を謳い、個人を袋叩きにするような構図が当たり前のように存在しているように思います。えん罪の一端は、私たちが担っているのではないでしょうか。

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【2023/10/30~11/5の1週間限定販売】
太陽を背景に、天秤をかかげました。
力強く雲を突き抜けて掲げる天秤は平等性と、そのためにポジティブに立ち上がる人々の思いを表現しています。

“The enemy of truth is blind acceptance”、「真実の敵とは、盲目的に受け入れることだ」というメッセージを添えました。

コラボアイテム一覧はこちらから

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)