CHARITY FOR

「いつでも、心はそばにいるよ」。「きょうだい」に寄り添い20年、「しぶたね」のお二人が今思うこと〜NPO法人しぶたね

今週、JAMMINがコラボするのは、病気や障がいのある子どもの「きょうだい」を支援するNPO法人「しぶたね」。2003年の活動スタートから、今年で20周年を迎えます。

活動を始めた代表の清田悠代(きよた・ひさよ)さん(47)自身、病気のある弟を持つ「きょうだい」でした。

「病気や障がいのあるお兄ちゃんやお姉ちゃん、妹や弟がいた時に、周りのおとなたちの意識がそちらに集中して、自分は頑張らないと振り向いてもらえない、認めてもらえないというしんどさを抱えたまま大きくなるきょうだいさんたちがいます。生まれてきてくれてありがとう。ただあなたが、あなたとしていてくれるだけで嬉しいということを伝えたい」

そう話す清田さん。清田さんと、清田さんと共にずっと活動を続けてきた「たねまき戦隊シブレンジャー」のエース・シブレッドさんに、お話を聞きました!

お話をお伺いした清田さん(左)とシブレッドさん(右)。JAMMINに足を運んでくださいました!

今週のチャリティー

NPO法人しぶたね

たくさんのおとなのやさしい空気で、子どもたちを包みたい。直接支援や啓発活動を通じ、「きょうだいさん」を応援する活動をしています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2023/10/23

病気のある子どもの「きょうだい」のために活動

「風船サッカー」は、米国の特別なニーズのある子どものきょうだいのためにアメリカで開催されているワークショップ「シブショップ」で行われているアクティビティで、しぶたねの「きょうだいさんの日」でもいちばん人気。「 サッカーですが足は使わず、風船をはたいてゴールまで運びます」

──活動20周年を迎えられるそうですね。おめでとうございます!最初に、ご活動について教えてください。

清田:
病気のある子どもの「きょうだい」のための団体です。きょうだいさんたちと直接関わる場と、支援者の輪を広げ、社会に向けて啓発を行うことの2本の柱で活動しています。

きょうだいさんたちと直接関わる活動では、きょうだいさんに会場に集まってもらい、仲間と過ごす「きょうだいさんの日」を開催しています。小学生向けや中学生以上向け、あるいは親子向け、家族みんなで参加など、子どもたちと保護者の方々に導かれてバリエーションが増えていきました。

コロナ前は、病院を訪問して、きょうだいさんを対象にしたボランティア活動も行ってきました。病院からの指示で、今は訪問することが難しくなっていますが、いつでも復活できるように、みんなで待っています。
また、きょうだいさんのための小冊子等、ツールをつくり、配布もしています。

コロナ前、病院で開催していたきょうだいさんのための活動。「病院のイベントに協力し、病棟に入れないきょうだいさんの代わりに、きょうだいさんが作った人形が探検に行くプログラムを実施しました。人形がプレイルームであそんだり、入院中のきょうだいに会ったりする様子を写真に撮ってアルバムにし、病棟の中の様子を伝えます」

シブレッド:
コロナによってリアルな場を持つことが難しくなったため、オンラインでの活動もスタートしました。今は毎週金曜日の夜に、「シブレッドのへやのとびらあけておくね」という、ゆるい企画を開催しています。

──どのような部屋ですか?

シブレッド:
金曜日の夜は、学校の一週間が終わって、ちょっとほっとする夜ですよね。ひとりで不安な気持ちでお布団に入るのではなくて、一週間おつかれさま、おやすみという感じでちょっと心を温めて、ふわっと楽しい気持ちで眠りについてくれたらいいなと思っている会で、時にはお話をしたり、時には簡単なゲームをしたりして過ごしています。

「シブレッドのへやのとびらあけておくね」は、コロナ禍にスタート、現在も継続して開催中。「きょうだいさんたちから『シブレッドのへやがあるから金曜日が楽しみになったよ』『レッドのへやがあると心強いです』といったうれしいお手紙が届くこともあります。コロナ禍で思うように活動できない焦りを感じる時も、毎週愛おしい子どもたちに会えることが私たちの心を支えてくれていました」

コロナでスタートしたオンライン事業。
「日常を聞かせてもらえることは、喜び」

「シブレッドのへやのとびらあけておくねは、金曜の夜だけでは足りなくて、日曜のお昼に公園からオンラインでつながって、みんなでお昼におにぎりを食べたり、お出かけしづらい長期のお休みには、画面の前で一緒に折り紙を楽しむ会や、ビンゴ大会など、特別編も行いました」

清田:
「シブレッドのへやのとびらあけておくね」は、2020年の春、コロナの緊急事態宣言が出た後のゴールデンウィークにスタートしました。
その少し前から学校は一斉休校になり、きょうだいさんたちは病院に出入りすることも難しくなりました。きょうだいさんも、親御さんにも、たくさんの我慢や緊張があったと思います。お友達にも会えず、ゴールデンウィークなのに遊びにもいけず、不安や退屈の中過ごしているきょうだいさんに会いたいと始めました。

シブレッド:
最初は皆で取り組めるゲームやプログラムを用意していましたが、ある時、参加していた一人のきょうだいさんが「最近、話してない」と言ってくれて。そっか、じゃあ話もしようということになって、「今週はどうだった?」と聞くところから始まるようになりました。

ゴールデンウィークに毎日楽しみに来てくれたきょうだいさんもいて、続けてやっていこうということになり、その後も毎週続けています。日常の地続きで、きょうだいさんの日々に入れてもらっているのが嬉しいです。住んでいる地域に関わらず参加できるのも、オンラインの良いところですよね。

清田:
子どもたちは思い思いに部屋の過ごし方を選んでくれている感じがあって、漫画を読んでいる子、アイスを食べている子、寝転んで足だけ写っている子もいたり(笑)。話したいことがあれば話してくれたり、相談してくれたり。そんな部屋です。

──そうなんですね。

オンラインでつながっている子どもたちに、事前に届けている「終わってからあけてねBOX」。「オンラインだと、イベントが終わった時にプツンと切れてしまうことが心配でした。少しでも穏やかに日常に着地できるように、このBOXを事前に送っています。中には小さなお菓子と飲み物、ボランティアでフェルトのおもちゃ等を作って贈ってくださる『チクチク会』さんの優しい手作りコースターが入っています」

シブレッド:
僕らは、「きょうだいさん」という入口で出会ったかもしれないけれど、「きょうだいさんだから」ということだけではないんですよね。
子どもたち一人ひとりに、かけがえのない輝きや個性があって、「きょうだいである」ことは、ひとつの側面に過ぎません。みんなかわいくかっこいい「ただの子ども」なんです。きょうだいとしてだけじゃない、日常の話を聞かせてもらえることは、僕らにとってもすごく嬉しいことなんです。

だから、「きょうだいさんだから」と無理やり話を引き出したり聞いたりということもしなくていいかなと感じています。話すか話さないかは、相手やタイミングを見て一人ひとりが決めること。こちらが用意しないといけないのは、「いつでも話を聞くよ」という姿勢だけ。

実際に話すかは別にして、きょうだいさんにとって、何かあった時に「この人やったら、自分の話を聞いてくれそうやな」「この人に相談したいな」と思える存在があるかどうかが、大事なことなのではないかと思っています。

清田:
そういう意味では、私たちは何か特別なことをしてるわけではなくて「ただ、いるだけ」なんです。でも、それが大事な気がしています。
病気や障がいのあるきょうだいのこと、家族のこと、社会の出来事や事件…、きょうだいさんの周りでも日々、いろんなことが起きています。そんな中で、私たちは変わらず「ここにいるよ」を伝え続けたいなと思っています。

各地に広がる、きょうだいをサポートするとりくみ。「岩手、東京、高知など、各地でシブリングサポーター研修を受けてくださった方々が、きょうだいさんのためのイベントの最初の一歩を踏み出しておられます。茨城では『かけはしねっと』『一般社団法人Burano』『重症児デイサービスkokoro』の3団体のネットワークと、しぶたねできょうだいさんイベントを開催しました。工作タイムは『宇宙の瓶詰』!」

どんな時も「そばにいるよ」を伝え続ける

「コロナ前、病院で病気のお子さんに付き添う保護者の方を待っているきょうだいさんたちと過ごす夜の活動では、毎年夏休みに少し豪華な工作を楽しんでもらっていました。宝石シールを貼って作るうちわはスイッチを入れるとピカピカ光ります。帰りの夜道が、少しでも楽しくなるといいなと思っていました」

──リアルな場の方はいかがですか。

清田:
リアルはオンラインとはまた違って、「非日常」を楽しんでもらう場所。コロナ以降は、感染予防について医療関係のボランティアさんに相談しながら、おやつは一緒に食べない、病気のあるお子さんの一時預かりは無しにするなど、やり方を変えつつ、なんとか開催を続けてきました。

──続けたい、という思いがあったのでしょうか。

清田:
よりいっそう大変な状況にあるであろうきょうだいさんに、孤独を感じてほしくなかった。おとなたちがなんとか工夫して、きょうだいさんのために続けるぞ、きょうだいさんのためにあきらめないぞという心が伝わったらいいなと思っていました。

コロナの間、開催できなかったのは一度だけ。募集をかけるとすぐに申し込みがいっぱいなり、親御さんたちも思い切って来てくださっていることも伝わりました。

「毎年、ボランティアさんたちが集まってきょうだいさんたちに送るクリスマスカードを作っていましたが、コロナ禍では集まることが難しくなりました。そこでご自宅でカードを作成してくださるボランティアさんを募ったところ、全国のたくさんの方が手を挙げてくださり、600枚以上を子どもたちに届けることができました」

──それだけ、待ったなしの状況だったんですね。

清田:
コロナ禍で入院すると、入院した子どもも付き添いのお母さんも1か月以上お家に帰れないこともあって、ほとんど会えない中できょうだいを亡くす経験をした子もいました。病院の中でも他のご家族との交流ができなくなっていて、お母さんの孤独感も高まっていました。

そんなご家族のためにと、阪急阪神ホテルズさんが、きょうだいさんと保護者の方々のためにとイベントに素敵なデザートプレートを用意してくださったことがありました。
ホテルからパティシエの方や黒服を着たサーブしてくださる方々が来てくださって、「飲み物はどれになさいますか?コーヒーもありますよ」と尋ねられ「(子どもだけでなく)私も選んでいいんですか?」と思わず涙ぐむお母さんや、「この子と、初めて2人だけでケーキ食べました」「こんなにゆっくりこの子の美味しそうな顔を見るのはいつぶりだろう」という声を聞かせてくださるお母さんもいました。

普段からきっと、自分のために飲み物を選んでゆっくり楽しめるような時間はなく、さらにコロナで緊張感が増した日々を過ごしていたご家族へ、優しい応援がうれしかったです。

「ホテル阪急インターナショナルから来てくださったプロの方々。『スイーツ作ってくださる方のお話聞かせてほしい』『最後の仕上げを子どもたちに見せてあげたい』『一緒に写真を撮ってほしい』…次々のリクエストに快く答えてくださり、解説付きで仕上げの作業を見せてくださいました」

シブレッド:
2021年の夏から、きょうだいを亡くした子どもたちのための「きょうだいさんの日」も始めました。
親御さんを亡くしたお子さんのグリーフサポートに比べて、きょうだいを亡くしたお子さんに特化したグリーフサポートはあまり聞きません。きょうだいを亡くしたお子さんが、親御さんと一緒に遺族会に参加しても、親御さんを亡くしたお子さんのためのグリーフケアに参加しても違和感があって、なかなか自分の居場所と感じられる場がないという話を聞いていたのもあり、なんとかしたいと思って始めたものです。

僕らはグリーフケアのスキルをもった専門家ではないですが、いつもどおり目の前にいるその子と楽しく過ごしながら、「いつでもそばにいるよ」と伝え続けることならできるかなと思っています。

「名古屋大学医学部附属病院では4月10日の『きょうだいの日』に合わせ、新人看護師さんにきょうだい支援を伝える研修を毎年開いてくださっています。名大病院にはきょうだいの会があるのですが、コロナ禍もオンラインで継続されていて、シブレッドもゲストに呼んでいただいていました」

「安心して、一緒に揺れられたらいい」

支援者向け研修での一枚。「福岡県地域福祉活動職員連絡会の研修会の枠で、シブリングサポーター研修を開いてくださった時の写真です。手作りのポスター(?)が嬉しかったです。呼びかけてくださった筑後市社会福祉協議会さんはおとなのきょうだいのための会を開いておられます」

清田:
JAMMINさんと2019年に初めてコラボした時に、モビールをモチーフにデザインを作っていただきました。当時、私たちは家族のモビールを揺れないようにしなくてはいけないと思っていました。

でも、ここ数年活動する中で「揺れても大丈夫」の方がよいのではないかと思うことが増えました。モビールを揺らす一つの風は止められても、風はまた違う方向から吹いてきます。全ての風は止められない。だったら、きょうだいさんが安心して揺れられるように、「一緒に」、揺れられたらいいのかもしれないと。

シブレッド:
僕らの力は弱いし、きょうだいさんの抱える日々の悩みや不安を、すべて解決はできません。でも、解決はできへんけど、一緒に悩んで、考えることはできる。僕らにとっての今の最適解は、それかなと感じています。

清田:
同じ立場の仲間がいることで、心のモヤモヤがふわふわに変わったと話してくれたきょうだいさんがいます。解決してあげられないもどかしさはあるのですが、おとなとしてできることのうちの一つを、やらせてもらえたらと思います。

「きょうだいさんが書いてくれるお手紙は宝物です。この子は『シブレッドのへやが楽しかったなーって思いながら描いたんだよ』と教えてくれました」

「病気の人の家族に、温かいお茶を出せる仕事がしたい」
きょうだい支援を始めたきっかけ

1996年、亡くなった弟さんと清田さん。「弟は真面目でまっすぐで、人に愛される子でした。『私の方が病気ならよかったのに』とずっと思っていましたが、弟が亡くなった後、今度は私がたくさんの人との幸運な出会いに恵まれるようになり、天国の弟の支えを感じています」

──今年で活動20年とのことですが、改めて、清田さんがこの活動を始めたきっかけを教えてください。

清田:
きょうだいとしての経験がきっかけです。4つ下の弟が心臓病でした。
日本のほとんどの小児病棟は、感染予防のために中学生以下のきょうだいは病室のある病棟の扉から先に入ることができないので、弟が入院していた病院へ行くと、幼いきょうだいさんが廊下でぽつんと一人、面会が終わるのを待っている姿をたくさん目にしました。

2歳ぐらいの小さな子が「ママー!」と大声で泣きながら、それでも、小さいながらも病室には入ってはいけないとわかっているから、ぐっと堪えて我慢して、ただただ泣いている姿を目にして、胸が締め付けられました。その前をたくさんのおとなたちが通るのに、誰も声をかける余裕がなくて。「自分がおとなになったら、この状況を変えたい」と思ったのが、最初のきっかけです。

──そうだったんですね。

清田:
私の高校入試の2日前に弟が倒れました。
「助からないかもしれない」。集中治療室の前でただ一人、制服姿でぽつんと座って泣いていた私に、これは後になってから父親の知人だとわかったのですが、当時の私にとっては見ず知らずの方が、温かいお茶を出してくれました。

「病気で大変な人の家族に、温かいお茶を淹れるような仕事がしたい」、そう思い、最初は病院のソーシャルワーカーになりたいと思いました。

──その時は「きょうだいを支援をする」と思われていたわけではないんですか。

清田:
きょうだいのことは、ずっと心の中にありました。でも「きょうだい支援をやりたい」という自分の素直な気持ちに対して、弟に申し訳なさを感じて、心に蓋をしていました。

弟が亡くなった時、「同じ立場のきょうだいに会いたい」と思い、アメリカで活動する、きょうだい支援の第一人者であるドナルド・マイヤーさんのメーリングリストに辿り着きました。

「きょうだい支援の会」の有馬靖子さん(写真左)、ドナルド・マイヤーさん(写真中央)と。「2019年、「よみうり子育て応援団大賞」の大賞に選んでいただいた賞金で米国からマイヤーさんを招聘し、東京・仙台・大阪で、講演会やファシリテーター養成講座を開催することができました。マイヤーさんと靖子さんを見送る空港で撮った写真です」

清田:
きょうだいたちのためにマイヤーさんのプログラムを日本でも広めたいと活動されていたのが「きょうだい支援の会」の有馬靖子さんです。靖子さんを通して日本のきょうだいたちと出会い、話をした時に、自分がしんどかったこと、つらかったこと、モヤモヤ感じてきたこと‥それを言葉にしている方たちと初めて出会いました。

「ああ、そんな気持ちが自分にもあった」「声に出していいんだ」とカルチャーショックを受けました。2001年、マイヤーさんが講演ときょうだい児のためのワークショップ(Sibshops)のファシリテーター養成トレーニング開催のために初来日されるタイミングで、靖子さんが「トレーニングを受けてみる?」と尋ねてくださって。そこでマイヤーさんのプログラムを学びました。

きょうだいとしての自分の苦しさに気づいたことと、マイヤーさんから学び、子ども向けのプログラムのやり方がわかったこと。この二つがカチッと合って、2003年にきょうだい支援の活動をスタートしました。

しぶたねの講演資料の1ページ。「親御さんが何か足りないからきょうだい支援が必要というわけではなくて、子どもが大事にされる場は、いくつあってもいいと思っています。子どもたちのすてきなところはお家の中だけで完成するわけではないので、いろんなおとなに会えるといいなと思っています」

「きょうだいを大切に思う気持ち、
自分の人生を大切に思う気持ち、そのどちらもあって良い」

「感染症のリスクが高かったり、車いすやバギーでの移動が難しく、人が多い夏祭りには行きづらい子どもたちが、安心して遊べる縁日があればいいなあとつぶやいたら、フリーアナウンサーの清水健さん、日本アラジール症候群の会さんが賛同してくださり、2022年に『ちょこっと縁日』を開くことができました。浴衣であそびに来てくれる子、おかわりし放題のゲームで楽しんでくれる子…、嬉しかったです」

──きょうだいとして、初めて自分の感じていたことを言葉にしている方たちと出会ったということですが、具体的には、どんな気持ちがあるのでしょうか。

清田:
誰かがわるいとか、否定したいということではないんです。ただ、私の場合だと両親の意識がすべて病気の弟に集中していて、自分のことも、もうちょっと見てほしい気持ちがありました。家の中に自分の居場所がないような不安や違和感があって、自分の人生なのに軸が自分の中にないようなしんどさを感じていました。

高校生になって進路や将来の話を友人とした時に、周りの人たちの将来には選択できる自由がたくさんあって、キラキラと輝いているように見えました。私はこの先、病気の弟と一緒に暮らしていくから、結婚はできないし、家庭も持てないだろう。キラキラした世界は自分にはないんだと思い込んでいました。

弟のことは大事で大好きで、まさかそんなことを思うはずがないと気持ちに蓋をしていたけれど、そこにつらさを感じていたということに、後になって振り返ってから気づきました。

きょうだいのことを大切に思う気持ちと、それでも自分の人生は自分のものだと思う気持ち。そのどちらもあって良いのだということに、きょうだいとして生きてこられた先輩方を見て、初めて気づいたんです。

──そうだったんですね。

「コロナ禍でも『鬼ごっこしたい』『みんなで体を動かしてあそびたい』と言ってくれるきょうだいさんたちのために、イベントを開き続けました。いつも惜しみない愛情できょうだいさんたちを包んでくれるシブレンジャー(ボランティアさん)たちがいなければできなかったことです。写真は、距離をとってあそべるように工夫した『人間野球盤』の様子です」

シブレッド:
「生きていてくれるだけでいい」という病気のお子さんに対して、きょうだいさんは「がんばらないと見てもらえない、認めてもらえない」というしんどさも聞きます。「家の中で、病気のきょうだいは加点式、自分は減点式。親のきょうだいに対する扱い方のギャップがつらい」と話してくれた高校生もいます。

「あなたは健康なんだから、病気のきょうだいの面倒は見て当たり前」という見方も、残念ながらまだあります。そんな中で人知れず傷ついたり、あきらめたりするきょうだいさんがいることがとてもつらい。「大変な人のそばにいる人もまた大変なんだ」ということが、もっと社会に広く知ってもらえるといいなと思っています。

清田:
マイヤーさんが来日された時、きょうだいさんと遊ぶ姿を少し離れたところから見ていたのですが、マイヤーさんは一人ひとりの子どもたちに「君はひとりじゃないよ」と伝えていらっしゃいました。その姿を見て、なぜか自分に言ってもらったように感じて、涙があふれました。

──きっと清田さんが、ずっとかけてもらいたかった言葉でもあったんですね。

清田:
私たちはありがたいことに子どもたちと関わらせてもらう立場にいるので、きょうだいさんが「大事にされた」と感じる経験を積んでもらう、その部分をお手伝いできたらいいなと思っています。

シブレッド:
目の前の子に、出し惜しみせず伝えるのが僕らの役割。
でも、僕たちだけでは伝えられる子が限られています。仲間がどんどん増えて、それぞれの言い方ややり方で「一人じゃないよ」と伝えてくださる方たちが、これからもどんどん増えていってくれたらいいなと思っています。

「コロナ禍で、きょうだいさんたちに商品をご寄付くださる企業さんもいらっしゃいました。企業の方々の優しいお気持ちを、私たちを通してきょうだいさんたちに届けられることがうれしかったです。こうして私たちの中に優しさが積もっていきます」

「ここにいてくれてありがとう」を伝えたい

4月10日の「きょうだいの日」は、アメリカ発祥の記念日で、「父の日」や「母の日」のきょうだい版の日。「きょうだいや、きょうだいみたいなあの人、天国のきょうだい、いろんなきょうだいのかたちが尊重され、病気や障害のあるひとのきょうだいの支援にもつながる優しい記念日になるようにと、この日を広げています」

シブレッド:
僕らのわがままかもしれないけど、きょうだいさんたちと過ごす時間があるからこそ、他のいろんな活動もがんばれる。きょうだいさんたちとの時間は、僕らにとってもそれだけパワーになっているんです。

20年前、活動を初めた頃に関わったきょうだいさんは、今もう30歳ぐらいになっています。今は偉そうに喋っていますけど(笑)、子どもや親御さんから多くを学び、教えてもらってきました。

──これまでを振り返って、印象に残っている出来事はありますか。

清田:
これまで出会った一人ひとりが本当に印象に残っているので難しいですが…、小学校の時にしぶたねのイベントに来てくれていたある女の子が、おとなになったある時、「お母さんが倒れちゃった」と連絡をくれました。病院へ行くと、彼女は「やっと私のための人が来てくれた!」と私に駆け寄り、抱きついて、泣いてくれました。

きょうだいとして、きっと大変なことや不安なこともたくさんあったと思います。その時に、「あなたのための人」でいられてよかった。抱きついてくれた時のほっぺたの感触を、一生忘れないだろうと思います。

NPO法人になって3期目の総会後に。「皆で『3』のポーズをしています。しぶたねにとっての総会は、大好きな人に会って、大切なきょうだいさんたちのことを話せる宝物の場です」

──読者の方へ、メッセージをお願いします。

シブレッド:
きょうだいさんのことを知ってくださった方には、ありがとうとお伝えしたいです。
知ってくださったことで、次にきょうだいさんを見かけた時に、投げかける目線や言葉も変わってくるからです。もし周りにきょうだいの立場の方がおられたら、変わらずあたたかく接してもらえたら嬉しいです。

清田:
何の支援もなくおとなになり、しんどい思いを抱えて生きているきょうだいさんもたくさんいます。まだ全然できていない、手が届かなくて本当に申し訳ないと感じることも多いですが、応援したいと言ってくださるたくさんの方たちもいます。

子どもたちには、やさしい社会を伝えていきたい。
私たちは、きょうだいさんに対して、いつも「ここにいてくれてありがとう」なんです。「ここにいてくれてありがとう。あなたに会えてうれしい」ということを、これからも伝えていきたいと思っています。

「20周年を迎えるにあたり、『青心貫徹成人楽団わさび』の皆さまがシブレンジャーのテーマソングを作ってくださいました!この歌にのせて、PVを作りたいと画策しています。やはりヒーローと言えば爆破の前で決めポーズ!ということで、もうすぐ爆破シーンの撮影を決行予定です」

チャリティーは、きょうだいさんたちのために、また啓発のために活用されます!

ぬいぐるみの「ゴリさん」。「ゴリさんは、病院の倉庫で眠っていたゴリラのぬいぐるみです。口からおままごとの食材を食べることができるので、いつもきょうだいさんのお料理を食べたり、取り出されたり…破れては繕われ、ずっときょうだいさんたちのお友達でいてくれました。ゴリさんと一緒に写っているのは、子どもからゴリさんへのお手紙です。コロナ禍で病院に入れない今、またロッカーで眠っているゴリさん。早く子どもたちに会わせてあげたいです」。今回のコラボデザインにはゴリさんらしき動物が…?!探してみてくださいね!

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

清田:
チャリティーは、私たちの活動を楽しみにしてくれているきょうだいさんたちのために活用させていただく予定です。具体的には、きょうだいさんにプレゼントするシールを作成して全国の病院に送る費用や、オンライン事業に必要な資金、また来年の「きょうだいの日」に向けて、啓発活動に必要な資金として活用させていただく予定です。

20周年をみんなで楽しく迎えられたらしあわせです。ぜひ、今回のチャリティーアイテムで一緒にお祝いしていただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー後、清田さんとシブレッドさんを囲んで。20周年、おめでとうございます!

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

3年ぶりのしぶたねさんとのコラボ。久々にお会いする二人はいつも通りとてもやさしい雰囲気で、シブレッドさんのコスチュームもキラキラのキレキレで、楽しい時間を過ごさせていただきました。
「自分でいいんだ」と思える空間があること。そのことの大切さを、いつもしぶたねのお二人が教えてくださいます。きょうだいさんはもちろん、人知れず不安を抱えている子ども、そしておとなにも、必要な視点であり、支援であると改めて感じました。

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【2023/10/23~29の1週間限定販売】

シーソーに乗って遊ぶどうぶつたち。よく見るとシブレッドと、ゴリさんも!一緒に遊んでいます。
左側のどうぶつたちはきょうだいさんを見守るおとなたちを、右側のうさぎさんはきょうだいさんをイメージして描いたもの。共に時間を過ごすことが、互いの力になる様子を表現しました。
“Being near you makes me happy”、「君の近くにいることが、私をしあわせにしてくれるよ」というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)