CHARITY FOR

「移動の自由をすべての人に」。アジアに暮らす歩行に困難のある子どもたちに車いすを届け、自立を支援〜NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA)

自分の足で、自分の行きたい場所へ行く。
自分の足で、前に進む。

当たり前のことができない環境が、アジアの貧困層が多い農村部や、スラムに暮らす障がい児にあるといいます。

車いすを届けることで子どもたちの自立を支援し、より良い暮らしにつなげてほしい。
24年前に「株式会社デンソー」の社会貢献事業として設立されたNPO法人として、これまでの7,000台を超える車いすを届けてきたNPO法人「アジア車いす交流センター(WAFCA)」が今週のチャリティー先。

「子どもたちに、移動の自由を届けたい」と、タイ、インドネシア、中国の3つの国で活動しています。活動について、スタッフの近藤(こんどう)みなみさんと北村翔一(きたむら・しょういち)さんにお話を聞きました。

お話をお伺いした近藤さん(写真右)、北村さん(写真左)

今週のチャリティー

NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA ワフカ)

アジアの障がい児の尊厳と機会が損なわれないバリアフリー社会を実現することを使命に、車いす支援や奨学金支援を通して一人ひとりに寄り添い、自立に導く実効性のある環境づくりに取り組んでいます。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2023/07/17

7000台を超える車いすを
アジアの子どもたちに提供

タイ、インドネシア各県にある特殊教育センターと連携し、全国各地の車いすを必要とする障がい児に車いすを届けている。写真はWAFCAタイ(通称WAFCAT)でのフィッティングの様子

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

近藤:
「車いすが変える、子どもたちの世界」をキャッチコピーに、車いすを届けることを軸として、アジアの障がい児の自立支援を行う団体です。

今から24年前の1999年に、株式会社デンソーの50周年を記念する社会貢献事業の一環として設立され、その後NPO法人として活動を続けてきました。これまでに届けた車いすの数は7,078台(2023年3月末)になります。

障がい児一人ひとりに合った車いすを提供するために、スタッフが丁寧にフィッティングを行う。写真はWAFCAインドネシア(通称WAFCAI)での様子

近藤:
車いすであればどんなものでもいいというわけではありません。
子どもたち一人ひとり、体の大きさや症状も異なります。本人やご家族をはじめとする介助者にもヒアリングをして、一人ひとりの子どもたちに合った車いすを届けるようにしています。
昨年はタイに170台、インドネシアに240台の車いすを届けました。

──そうすると、新品を届けていらっしゃるのでしょうか?

北村:
車いすのほとんどは、現地で調達しています。たとえば昨年、タイに届けたうち110台は新品、60台は日本から届けた中古のものでした。インドネシアは中古車いすを受け入れていないので、新品のみお届けしています。

一人ひとりに完全オーダーメイドで製造するのは難しいので、ある程度汎用性の高い車いすをオーダーして、そこから補助具をつけることで、一人ひとりに合わせた車いすを提供することが可能になっています。
WAFCAインドネシアが開発した「アダプティブシート」というものがあって、座位を保持するために活用しています。

WAFCAインドネシアが開発したアダプティブシート。「小さな子どもが体に合う車いすを手に入れるのは困難。アダプティブシートは、一人ひとりの体に合う車いす寄贈のため独自に開発したものです」

車いすのほかに、生活の支援も

インドネシアにて、バリアフリー工事の様子。「車いすでも通ることができるように、通路の段差をなくしたり、スロープをつけたりする工事をします」

近藤:
車いすを届けるほかに、子どもたちに奨学金を届ける事業と、バリアフリー事業も行っています。「車いすを届ける」だけでは、子どもたちが直面している問題を解決することは難しいからです。

活動している地域では、たとえば学校に通うための教材費や制服代を障がいのある子どもたちに出すことが難しいという家庭もあるし、県に一つしかない特別支援学校へのアクセスが悪く、通うことができないという家庭もあります。でも、本人に「学びたい」という意欲があれば、奨学金があることで通学できます。

日本のようにコンクリートで道が舗装されていない地域もあって、車いすに乗ること自体、ハードルが高いということがあります。また、学校がバリアフリーに対応しておらず、それが理由で学校側から断られるということもあります。そこで、自宅と学校のバリアフリー支援も行っています。

中国の雲南省でも活動中。「少数民族の学生が多い雲南省。雲南特殊教育職業学院と提携し、障がいのある生徒の自立を、奨学金でサポートしています」

子どもたちのより良い暮らしのために、
継続的に支援する

自宅でテレビを見つめる子ども。「自分の意思で体が動かせない子どもは、きょうだいたちが朝起きて学校へ行く中、一人天井やテレビや見て1日を過ごしています」

──活動されている地域の子どもたちは具体的に、どんな問題と直面しているのでしょうか。

近藤:
日本では福祉制度が充実しており、車いすは原則、価格の1割負担で購入することができます。しかしアジアの貧困層が多い農村部やスラムではそういった福祉的な支援がなく、なかなか車いすを手に入れること自体が難しいということが、まず一つです。

車いすが月収の3倍以上の価格で、手に入れることができず、朝起きてもベッドから起き上がることもなく、1日ずっとテレビや天井を見て過ごすだけ、という子どもたちがいます。
学校にも行かず、就職もせず、そのまま社会から孤立し、自立することのないまま取り残されてしまうということが起きています。

インドネシアにて、支給された車いすに乗る子ども

──国のサポートなどはないのでしょうか?

北村:
全くないわけではありません。ただ、車いすの現物支給もあるのですが、標準サイズの車いすであることが多いのです。
障がいや手足の欠損のために自分で体を動かすことが難しい子どもたちの体には合っておらず、もらっても使えないまま無駄になってしまうということがあるようです。
サポートが受けられない部分を、WAFCAが支援しようということで活動しています。

イベント出店時の一枚。「私たちの活動は、たくさんのボランティアメンバーさんに支えられています。写真は、イベントのお手伝いに来てくださった皆さんと撮影した一枚。この時は車いす乗車体験を行い、車いすユーザーの方が先生となって、子どもたちに車いすの乗り方をレクチャーしました」

──支給するにあたって、条件を設けていらっしゃるのですか。

北村:
車いす寄贈に関しては申請が必要で、その際に年齢制限があります。
奨学金に関しては、教育に対して本人が前向きで、学校に通っていること、あるいは通う学校があること、車いすや手押し車、杖などの補助器具を使っていること、経済的に困難な状況に置かれていることなどの条件があります。

一度支援をして終わりではなく、学校はどうか、進学はどうするのか、継続して関わりを持ちながら、支援を進めています。

WAFCAでは、タイ、インドネシアの障がい者が作成したグッズの販売も行っている。「愛知県の地域のお祭りや企業のイベントなどでPRの機会をいただいています」

北村:
ずっと家の中で過ごし、12歳になってはじめて小学校に入るという子や、20歳を超えて中学生という子もいます。
私たちは学校へ通うことが障がい児の自立にとても大切だととらえているので、学業に励んでいる方であれば、30歳を超えて支援をしている方もいますし、卒業までを支援します。

──そうなんですね。

近藤:
「自立」といっても、重度の障がいのある方が、自分の力だけで生きていくのは容易ではありません。
周りの人たちのサポートも受けながら、本人の中でより良い、より豊かな、楽しみが増える生活を目指してもらえたらと思っています。

車いすを得たことで、子どもたちの世界が一気に広がる

現地スタッフと連携して支援を届ける

WAFACI(インドネシア)の職員の皆さん。「左から、アグースさん、レオさん、エフィさん、リヤさん。支援現場の活動に加え、若くフレッシュなアイデア満載のチーム。YouTubeやInstagramなどでの発信力があります」

──子どもたち一人ひとりの状況に合わせたサポートをされていますが、それはどのように実現されていらっしゃるのでしょうか。

近藤:
タイとインドネシアに関しては、現地に事務局を構えて活動しています。中国の雲南省でも活動していますが、こちらに関しては、障がいのある方の職業支援学校と連携し、コーディネーターさんと密にやりとりしながら、必要な方に車いすや奨学金を届けています。

タイの事務所は、バンコク近郊にあるデンソーの工場の敷地内にあります。その事務所から35キロほど離れた場所にサービスセンターがあって、子どもや親御さんにはここでヒアリングやフィッティングを行います。

WAFCAT(タイ)の職員の皆さん。「左からウィングさん、プレーさん、イウさん、オートさんです。一番右は、奨学生でありWAFCATの元インターン生でもあるオームさん。現在はタイのIT企業に就職し、仕事に励んでいます」

近藤:
また、最近はコロナのこともありましたし、誰でもバンコクに来ることができるわけではないので、教育省と連携し、各県にある特別教育支援センターの先生やスタッフの方たちと連絡を取り合いながら、必要な支援を届けています。必要に応じて、タイ事務所のスタッフが現地を訪れることもあります。

──スタッフは、現地の方なのですか?

北村:
設立からしばらくは事務局長が日本人でしたが、今はWAFCAT・WAFCAIそれぞれ現地人スタッフ4人で運営しています。

車いすを寄贈した直後、笑顔があふれる。「You can go wherever you want. 車いすで希望と勇気を届けます」

「また、自分の力で前に進むことができる」

WAFCAが支援した、タイのカリンさん。「笑顔がとても素敵な女の子で、WAFCAの広報誌や会員募集チラシに、彼女の笑顔を掲載することが多いです」

──これまでにご支援された事例を教えてください。

近藤:
タイで暮らす21歳のカリンさんは、脳性麻痺があります。
小さなお店を開いているお母さんと二人暮らしで、彼女が中学校に入る年齢の時に初めて学校に通っていないことがわかり、WAFCAとつながって支援をスタートしました。

親御さんが出稼ぎのために出て行ったり、子どもに障がいがあることを理由に離婚したりするケースも少なくありません。
WAFCAとして車いすを届けるだけでなく、自宅のバリアフリーと奨学金の支援も行い、留年したりお休みしたりということもありましたが、今も頑張って学校に通っています。

もう一人、インドネシアで暮らす7歳のシャーナズさんは、先天性の障がいで両足が欠損しており、手の指も両手で3本しかありません。車いすは高くて買うことができず、2歳の頃からお母さんが買い与えたスケートボードに乗って移動していたそうです。

シャーナズさんとお母さん。「絵を描くことが好きなシャーナズさん。学校に通いながら絵も楽しく取り組んでいます」

近藤:
7歳でWAFCAと出会い、車いすを届けると泣いて喜んでくれました。
本人の学習意欲も、またお母さんの教育への思いも強く、今はスケートボードから車いすに乗り換えて、元気いっぱいに学校に通っています。

もう一人、タイで暮らす20歳のファーストさんは、小学生の時に筋ジストロフィーを発症し、徐々に筋力が衰え、立つことや歩行が困難になりました。国から支給された標準の自走式(自分の手で車輪を動かして進む)車いすに乗っていましたが、徐々に手の筋力も衰え、自分で前に進むことが困難になりました。

ファーストさん。現在は大学生になり、親元を離れての寮生活に挑戦中

近藤:
学校では「障がいがあるんだから、勉強しても意味ないじゃん」「なんで学校に来るの?」と言われたりといじめに遭い、つらい思いをしたそうです。たった一人、親身になってくれる友達に、毎日「ごめんね」と言いながら過ごしていたそうです。

彼女が中学生の時、指先だけで動かせられる電動車いすをWAFCAからお届けしました。
「また、自分の力で前に進むことができる」。それは彼女の中でも大きな力になったようで、その後、WAFCAの奨学金も受けながら、数々の困難を乗り越えて大学まで進んだ、数少ない方です。

──そうだったんですね。素敵ですね。

近藤:
今年、支援してきた方の中で初めて、就職する方が出ました。私は日本事務局として、普段は広報や寄付の活動をメインに行っていますが、一人ひとりの成長を見守らせていただけることが、すごく嬉しいです。

WAFCAの支援を得たオームさん。バンコクのIT企業に就職した

「自分の望む場所に、自分の力で」

日本・タイ・インドネシアをオンラインでつなげて開催した車いすダンス・グローバル・フェスティバル。「障がい者と健常者がペアになって楽しみます。健康効果をもたらすだけでなく、障がい児の社会参加のきっかけ作りになっています」

近藤:
現地の子どもたちだけでなく、日本でご支援してくださる方たちからも「今まで知らなかったことを知ることで視野が広がった」や「役に立てて嬉しい」という喜びの声をいただきます。

自分で移動できること、自分が望む場所に自分の力で行けるということは、人として当たり前のことだということを、活動をしていて感じます。まだまだ車いすを待つ子どもたちはたくさんいます。さらに多くの障がい児の笑顔のために、私たちは活動を続けていきたいと思います。

国内の車いすメーカー「日進医療器株式会社」さんへ、ボランティアの皆さんとへ見学に行った際の一枚

──記事を見ている方へ、メッセージをお願いします。

近藤:
国際協力の分野に興味がある方は少なくないと思いますし、また障がいのある方のサポートが必要だと感じている方も少なくないと思います。WAFCAはその両方のサポートを行っています。

学校に通う、好きなところへ行くという基本的なことが日常の中でかなえられていない子どもたちがいるということを知ってほしいと思いますし、ぜひ仲間に加わってもらえたら嬉しいです。

デンソーのアスリート15名で構成されたチーム「WAFCAthlete」の皆さんが、早速今回のコラボアイテムを着て、メッセージを寄せてくださいました!「WAFCAthleteは、デンソーのトップアスリートのチームです。知名度や人間性、その方の魅力を活かしてWAFCAの新たな層への認知度を高め、WAFCAに共感する仲間を集めてくださっています」

チャリティーは、子どもたちに届ける車いす購入資金として活用されます!

WAFCAの収益事業として運営している「車いす病院」。「スタッフは全員ボランティアで、地域の車いすのメンテナンスを行っています。現在高校生からシニアボランティアまで24名が活躍中です」

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

近藤:
チャリティーは、子どもたちに車いすを届けるための資金として活用させていただきます。
タイ、インドネシアで車いすを、できるだけ多くの子どもたちに届けたいと思っています。ぜひ、チャリティーで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

日本の事務局メンバーの皆さん。「愛知県刈谷市に事務所を構え、WAFCAグループ運営、広報やファンドレイジング事業を行っています」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

外に出ていくことで、新しい知見を広めたり、人に出会ったりすることができます。車いすは移動手段でもありながら、同時に社会参加のためのとても重要なツールなのだと感じました。外に出ていくことで世界が広がり、学びを深め、自信を得ていくことができる。車いすはまさに、自分の分身や、相棒のような存在なのではないでしょうか。WAFCAさんのご活動は、子どもたちに車いすだけでなく、楽しい今や明るい未来、希望を届けていらっしゃるのだなと思いました!

・アジア車いす交流センター ホームページはこちらから

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【2023/7/17~23の1週間限定販売】
車いすの上に、たくさんの花が元気に咲いています。
必要としている人に車いすを届けることで、その人の可能性が花開いていく様子を表現しました。

“You can go wherever you want”、「行きたいところ、どこにでも行けるよ」というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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