CHARITY FOR

「うさぎも人も、共に幸せになるために」。うさぎに関する正しい知識を〜WELFARE OF RABBIT

コロナ禍、自宅で過ごす時間が増えた中で、ペットを新たに迎え入れた家庭も増えたといいます。

今週JAMMINがコラボするのは、これまでにうさぎの保護・譲渡を行ってきた二つの団体が一緒になって、うさぎの正しい飼い方や終生飼養の啓発を行うプロジェクト「WELFARE OF RABBIT(ウェルフェア・オブ・ラビット)」。

一般社団法人リバティ代表の藤田敦子(ふじた・あつこ)さん(55)、一般社団法人ウィル&ルイ代表の熊谷彩(くまがや・あや)さん(42)は、それぞれの活動の中で、これまでにたくさんのうさぎを保護してきました。うさぎをただ保護するだけでなく、飼い主さんやこれからうさぎを飼おうとしている人にうさぎに関する正しい知識を身につけてもらいたい、捨てられるうさぎを減らしたいと、WELFARE OF RABBITとして、セミナーやパネル展などを開催してきました。

犬や猫と比べて安価で、またかわいらしくおとなしいイメージがあるうさぎ。よく知らないままに飼い、捨てられてしまうことが少なくないといいます。うさぎをペットとして迎え入れる時に知っていてほしいこと、捨てうさぎや保護うさぎについて、お話を聞きました。

お話をお伺いした熊谷さん(写真左)、藤田さん(写真右)。藤田さんは早速、今回のコラボデザインTシャツを着てくださっています!

今週のチャリティー

WELFARE OF RABBIT(ウェルフェア・オブ・ラビット)

うさぎの福祉向上を目指して、うさぎの適正飼育を広め、うさぎと人の「より良い暮らし」のために、一般社団法人リバティと一般社団法人ウィルアンドルイが行うプロジェクトです。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2023/06/26

「うさぎについて、正しく知って」

2022年12月に名古屋で開催したパネル展の様子。うさぎを取り巻く問題や福祉についてのパネル展示のほか、里親募集中のうさぎたちの写真展示、チャリティーグッズ販売などを行った

──今日はよろしくお願いします。最初に、WELFARE OF RABBITについて教えてください。

藤田:
「イメージと違った」と手放されてしまう不幸なうさぎを減らすために、うさぎの正しい飼い方や終生飼養を啓発するプロジェクトです。私も熊谷さんも、うさぎの保護・譲渡活動を長くにわたりやってきましたが、啓発の大切さを改めて感じ、このプロジェクトに取り組んでいます。

現在、私が代表を務める「リバティ」では18匹の保護うさぎがいます。多頭飼育崩壊のご相談を受けて動くこともありましたし、学校飼育を廃止していただくことを前提に、学校で飼われていたうさぎを引き受けることもありました。特に力を入れているのが、学校飼育の問題です。

「学校で飼育されているうさぎのケアができていないと保護者の方からご相談いただき、ブラッシングやお尻のケアに通いました。その後学校と話し合い、動物飼育は廃止していただき、うさぎは私どものところで暮らしています」

熊谷:
現在、私が代表を務める「ウィル&ルイ」には、28匹の保護うさぎがいます。
ペットとして迎え入れられたはずなのに、なぜ遺棄や飼育放棄、ネグレクトという状態になるのか。うさぎを飼っている方やこれから飼いたいという方に、うさぎについて知ってもらうことで、うさぎとの生活を楽しく幸せに暮らしてもらいたいですし、不幸になるうさぎをなくすため、うさぎという動物について広く啓発活動を行っています。

もうひとつ、WELFARE OF RABBITとして、保護うさぎの認知を広げ、新たに保護動物をペットとして迎え入れるという選択肢を広く知ってもらうことも活動の目的の一つです。

──なるほど。

熊谷:
コロナ禍、また今年は、12年の一度やってくる干支が卯(うさぎ)の年でもあって、巷ではうさぎを迎える方が増え、「(販売店では)子うさぎが足りない」という話も聞きました。一方で保護うさぎについては、興味を持ったり迎え入れたりする方は増えたかというと、体感としてそれはありません。

実は12年前も同様で、卯年ブームでうさぎがペットとして多く迎え入れられましたが、少し経つと捨てられてしまううさぎも増えました。このようなことを繰り返してはならないと活動しています。

2022年に開催されたセミナーの様子。獣医師の講師を招き、高齢うさぎの飼育、病気や介護について学んだ

藤田:
ペットショップやうさぎ専門店では、コロナ禍において、また卯年ブームで、売り場を拡大したり大々的にアピールをして販売したということはあると思います。でも熊谷さんが言うように、保護うさぎに注目が集まったかというと、それはありませんでした。

まだまだ保護うさぎの存在が知られていないし、知っていたとしても、「保護うさぎを迎えたい」というふうにはなかなか思っていただけないのが現実だと感じています。

──なぜ、迎えたいと思われないのでしょうか?

藤田:
うさぎに限らず、保護動物のお迎えについて相談いただく機会が多いのですが、「(保護動物を迎えるのは)手続きが複雑なのでしょう」とか「しょっちゅう保護団体のスタッフが様子を見に来るんでしょう」というようなことを聞かれます。
「そんなに暇なボランティアさんはいないよ」とお伝えはするのですが、「保護動物を引き取る」ということに対して、いろいろと面倒なのではないかという過度なイメージがまだまだ存在していると感じます。

多頭飼育現場から保護した「ラナちゃん」。「当初は預かりボランティアとしてお願いしましたが、すぐにキュートなラナちゃんを気にいってくださり、正式に家族として迎えていただきました」

──そうなんですね。一方で、ペットショップや専門店で迎え入れたものの、「飼えない」ということも少なからずあるとのことですが。

藤田:
今年の年始は、この近辺だけでも4匹、うさぎの保護届が行政にありました。
SNSなどで頻繁に捨てうさぎや迷子うさぎの情報を目にします。飼われるうさぎが増えると、残念ながらそれに比例して、捨てられるうさぎも増えていると感じます。

熊谷:
「飼えなくなったけれど、どうしたらいいか」といった問い合わせは、昨年末あたりからかなり増えています。

年末と新学期を迎える春、何かしら生活環境が変わる節目や切り替わりの時期は、うさぎに限らず、捨てられる動物・収容される動物が増えると言われています。自分の生活が変わったからという理由で、ペットを手放す人がいるということです。

2019年9月、兵庫県内のお店の駐車場に兄弟と思われる3匹で捨てられていた「カヌレくん」。「駐車場やお店の周りをうろついていました。行政機関での保管中は栄養失調になり痩せ細ったり兄弟での喧嘩により怪我もしており、保護しました。怖がりな性格でもありますが現在は新しい家族を探しつつ、施設ではリラックスできるように配慮しています」

「かわいい」「おとなしそう」
イメージとのギャップ

1歳になったばかりの「バニラくん」。「いわゆるネグレクトですが、飼い主に愛情がなかったわけではなく、飼いかたがわからず間違った飼育をしていたことで、多頭飼育となり環境が悪化していました。他のうさぎさんに噛まれた傷が10か所以上あったりと現在治療中ではありますが、食欲旺盛で、今ではお腹を見せて気持ちよさそうに寝るようになりました」

藤田:
うさぎの場合、まだまだ正しい知識が広がっておらず、「かわいくておとなしそう」というイメージが先行し、「飼ってみたらイメージと違った」ということがかなりあると感じています。

私たちの譲渡会にお越しくださった方から、「抱っこできるうさぎを飼いたい。どの子だったら抱っこできますか」と尋ねられたことがありました。飼ったことがない方からすると、小型犬のように簡単に抱っこできるように思うのかもしれませんが、うさぎは簡単に抱っこできる動物ではありません。
「基本抱っこはできないですよ」と伝えると、「じゃあ、やめます」と帰られる姿を見ると、まだまだうさぎのことが正しく知られていないのだと痛感します。

──そうなんですね。

2020年11月、奈良県内で人目につかぬよう遺棄されたと思われるロップイヤーの「ケイティちゃん」。「一週間以上も外でうろついていたところを保護されました。出産した後の可能性が高いと獣医師さんから教えていただきましたが、見つかったのはケイティちゃんだけでした。保護当時は興奮状態で人に襲いかかるようなそぶりが見られましたが、本来は人が好きでいつも自分を見ていてほしい、そして自由に過ごしたいという思いがあふれ出ています」

藤田:
SNS上に、うさぎにリードをつけてお散歩したり抱っこしたり…という投稿がたくさんあります。それはごく一部だし、切り取られたものに過ぎませんが、「うさぎはこういうことができるんだ」と思い、「自分もこれがしたい」という憧れで飼いたいという方も少なくないのかなと思います。
ただ、それだとイメージとの違いが発生します。飼い主としてうさぎの正しい知識を身につけることは、うさぎにとっても飼い主さんにとっても、非常に大切なことです。

熊谷:
「もう飼えないから引き取ってほしい」と連絡したてきた方に理由を伺うと、「手に追えない」「世話する人がいない」といった、無責任な理由が少なくありません。

2023年2月にリバティが開催した勉強会「どうぶつボランティア入門vol.3」の様子。「動物愛護活動に興味のある方が始める前に知っておいていただきたいこと、どのような活動があるのかなどをお話ししました」

熊谷:
たとえば最近あったケースでは、「子どもがうさぎを飼いたいというので、お世話をするという約束で迎え入れたけれど、お世話をしないので引き取ってほしい」というものがありました。それは、お世話をすると約束したのにお世話しない子どもの責任なのでしょうか。
命を引き受ける以上、飼う際に十分な情報を得て、十分な想像をしなかった、保護者にも責任はあるのではないでしょうか。

藤田:
うさぎは小さな生き物ではあるかもしれませんが、だからといって命を雑に扱っていいということではありません。飼うとなれば、日々のお世話はもちろん、そのためのスペース、時間、お金も必要です。

うさぎがどんな生き物で、飼うにあたってどんな覚悟が必要か、どんな生活が待っているのかということをあらかじめしっかり知る必要があるし、私たちはそこをきちんとお伝えしたいと思っています。

熊谷さんが代表を務めるウィルアンドルイの保護施設での様子。「施設のうさぎたちの爪切りは約2ヶ月に一度、私が行います。うさぎにできるだけ負担がかからないように、その子に合わせたスタイルで行うよう心がけています。写真のスピカちゃんは立ち姿が落ち着くようでしっかり腕と体でホールドしながらカットします。どうしても一人で切るのが難しい場合は、無理をせず、2人がかりで行ったりもします」

熊谷:
「飼えなくなった」という理由は飼い主さんによってそれぞれなので、一概にどうとはいえません。ただ私たちとしては、うさぎの命を守ることができなければ元も子もないので、常にひとつひとつのご相談の先にうさぎがいるということ、うさぎの命があるということを意識して、話を聞くようにしています。

藤田:
手放すつもりで相談に来られても、たとえば金銭的なことやお世話のことなど、本人が手放せなければならないと感じる理由をサポートすることで、結果飼い続けている方もいらっしゃいます。

私たちがすぐにでもうさぎを引き取った方が話は早いかもしれないし、その方が幸せになるうさぎもいるかもしれません。
ただ、もちろんうさぎの置かれている状況に応じてではありますが、自分の意思で迎え入れたのであれば、できる範囲で行動に移していただきたいし、そのためのアドバイスやサポートをしっかりしたいとも思っています。

藤田さんが代表を務めるリバティの保護施設での様子。「うさぎたちの環境を整えるため、毎日のお世話は欠かせません。ケージ掃除もパーツを取り外して丁寧に掃除をしています。掃除の邪魔をしてくる姿も可愛いです」

犬や猫と比べて安価、手軽に飼えてしまう

里親さん家族に愛されるうさぎさん。「前回、JAMMINさんとのコラボの記事で紹介していただいた際、1枚目に掲載してもらったベガくんです。うさぎさんの写真は皆さんたくさん撮られますが、里親さんご家族と一緒に映った写真はなかなかありません。うさぎは抱っこが嫌いな子が多く、必要がなければ抱き抱える機会がないからです。自由に動き回るので一緒に撮るのは難しく、必然的に一緒に写ることは少なくなってしまいますが、それでもたくさん一緒の思い出を残して欲しいなと思っていて、今回、撮ってくださった家族写真をお借りしました」

──ペットショップや専門店の実態はいかがですか。

藤田:
犬猫に関しては、販売価格が上がっているように感じますが、うさぎの価格は変わっていません。血統書つきのうさぎが5〜10万ほどで売られていることもありますが、子うさぎでも2万円前後や数千円のうさぎもいたり、やはり犬や猫と比べて、手軽に購入できてしまうということがあります。

私たちは里親募集をしているので、言うのはおかしな話なのですが、「うさぎの飼育は大変ですよ、飼うのはよく考えて」と思います。ただ、飼うと決めた以上は、ちゃんと最後まで、責任を持って飼うということを心がけて、守ってほしい。

熊谷:
「ペットを飼う」ということ自体が、ある意味人間のエゴかもしれません。
うさぎに限らず、私たち人間側が、命を好きに迎えるわけですから、お迎えした動物に対して、学び、人とは違うことを認め、環境を整えてその子の人生を幸せにする、責任と義務があるのではないかなと私は思います。

リバティでは、1月と8月を除く毎月第1日曜日に、施設をオープンにして里親譲渡会を開催している。「まずはお話を聞くだけでも、ご都合の悪い方は平日や夜間の個別面会も可能です」

声を出せないうさぎ。
問題が表面化しづらいという課題も

学校の飼育現場。「掃除が終わった後の写真ではありますが、床の汚れもそのままで、簡単に水を替えて、エサはお皿を洗わずに残ったラビットフードの上に足しているだけです。野菜は給食で使う人参の皮を数日おきにもらうので、夏場は腐っていることもありました。うさぎの主食である牧草はありません」

──他に、うさぎ独特の課題はあるのでしょうか。

藤田:
うさぎだけということではないと思いますが、暴力という積極的な行動ではなくても、適正なエサや水を与えない、トイレ掃除もしないなどといったいわゆるネグレクトや、ケージから出さず閉じ込めたまま、雨風にさらされるような屋外での飼育など、グレーな状況が多々あるのではと感じています。

熊谷:
うさぎは基本的に受け身の動物です。「声を出して鳴く」ということができず、犬のように大きな声で吠えることが出来ません。
恐怖を感じてもその場に固まってしまったり、最悪ショック死することもあります。
犬猫のように表に出ることはあまりありませんが、うさぎの虐待や放置してそのまま死なせてしまうということが、実はあります。

過去に保護したうさぎの中には、すべての肋骨が数カ所ずつ骨が折れていたり、目に何か刺されたような痕があるうさぎもいました。
「うさぎにどうしても暴力を振ってしまう。このままでは危ないから引き取ってほしい」という連絡がきたこともありました。

「2017年8月に16匹のうさぎたちを保護しました。私(熊谷さん)が初めて捨てられているうさぎの現場をこの目で見て、そして自分の手で捕獲しました。痩せ細ってガリガリで傷がないうさぎは1匹もいないほど酷く、またそれによって感染症を起こしていたりと見た目にしても状態が悪いうさぎたちを見てひどくショックを受けました。この事件によって色んな角度から遺棄されたうさぎ、そして保護されたうさぎについて考えるきっかけにもなったと思います」

──声を上げたり外に出て行ったりできない分、問題が表面化しませんね。

藤田:
うさぎ独特の課題という点では、学校飼育の問題も避けて通れません。
多くの教育機関では、1年365日、暑い夏も寒い冬も、屋外の小屋で劣悪な環境で飼われていたり、病気になっても治療もされないまま放置されるうさぎが少なくありません。

まだまだ家畜のイメージが強いし、学校で飼育しているのというのがまたやっかいで、それを見て育った子どもたちは、それがうさぎの生態であり正しい飼い方なのだと、無意識に思ってしまうでしょう。

──確かに。

写真は、先に紹介した学校の飼育小屋の写真に写っている「チップちゃん」。不慮の事故で左後足を脱臼、保護者の依頼で教師が動物病院に連れて行ったものの、帰り道で自転車に入れていたキャリーバッグから落ちて行方不明になった。年末だったため探されることもなく、保護者から相談を受けた藤田さんたちが、大晦日も元旦も返上で10日間探したという。「どこで行方不明になったかもわからず、配布したチラシは12300枚。1件の目撃情報が入ったのは年を超えてからでした。最後の手段で、チップの写真を大きく引き伸ばして、目撃情報があった交差点の近くに立ち続けると、保護されたことが判明し、見つかりました。チップはもともとあるご家庭で飼われていたのに、手に負えないという理由で学校の小屋に入れられたそうです。当該小学校での動物飼育は廃止していただき、一緒に暮らしていた、こちらももともと家庭で飼われていた10歳を超えるシニアうさぎと共に、私たちのもとで元気に暮らしています」

「うさぎを飼うにあたり、知っていてほしいこと」

うさぎの主食は牧草。「主に一番刈りを与えていますが、牧草が苦手なうさぎやシニアうさぎには二番、三番やソフトといった柔らかな種類や、おやつとして味の異なる牧草を食べてもらっています。一番刈りではあまり食べないといううさぎでも、柔らかい牧草ならたくさん食べるということもあります」

──これからうさぎを飼う方に、あるいは飼っていらっしゃる方に向けて、アドバイスをお願いします。

熊谷:
うさぎを「ケージの中で飼っていれば良い」と思っている方がいらっしゃるのですが、ケージはあくまでもうさぎが寝たり食べたりするお部屋であって、外に出て運動したり遊んだり、飼い主さんとコミュニケーションをとったりということが必要です。
ケージの外に出してコミュニケーションをとることで、うさぎさんの不調や病気が見つかることもあります。なので、毎日ケージから出して、室内で遊ぶ時間を作ってださいね。

うさぎをケージの外に出す際、うさぎが遊ぶスペースには絨毯などを敷いて走りやすいよう対策が必要。「写真のモントリオールくんはよく走ったりジャンプしたりします。爪がひっかからない素材を選び、足裏を保護するためにも施設の遊び場ではマットを敷いています」

熊谷:
室内で遊ばせる際、うさぎの手足には肉球がないので、絨毯などを敷いたりして、滑らないよう環境を整えてあげること。「(ビニール素材の)パズルマットでも良いのですか?」と聞かれることがありますが、うさぎがかじって誤飲する可能性があるので、おすすめしていません。


また、部屋の柱やコードを噛みちぎって感電する危険性があるので、噛まれたくないものや危険なものは、事前にカバーして対策が必要です。「うさぎを囲う」というよりは「うさぎに行ってほしくない場所をガードする」という考えです。

迎え入れたうさぎさんのために環境をしっかり整えて、ケージの外に出してあげること。
それをちゃんと毎日できるか、と自分に問うていただけたらと思います。お部屋でうんちをばら撒くということもあまり想像がつかない方が多いのでお迎えしたあとにびっくりされる方もいます。

「充電器なども含めコードは配線保護カバーなどで保護してから、できればうさぎの目にあまり入らないよう隠してあげた方が確実にかじられません。カバーをしていてもかじってしまうと、カバーはすぐ穴が開きます。そして感電は命とりになります。スマホなどの充電をする場所は、このようにコンセント付近を囲います。これは角度が変えられる木のトンネルで本来はうさぎのおもちゃでしたが、おもちゃとしては使ったことがありません(笑)」

──しっかりとした準備が必要なんですね。

熊谷:
そうですね。温度管理も大切で、24時間365日、留守の間も季節や地域によってはエアコンが必要で、光熱費もかかってきます。

もう一つ、私たちが譲渡にあたり、一番時間をとってお話をしているのは、体調管理や病院についてです。
うさぎは常に消化器官が動いている生き物です。草食動物のうさぎさんは常に消化器官を動かしているので、たとえば体に大きく負担がかかる手術をしても、術後どれくらいの時間で食べ始めるか、ということも回復の大きなポイントになってきます。場合によって食べないことが致命傷になるのです。

──そうなんですか?!

ウィルアンドルイの施設にて。「施設のうさぎも毎日ケージから出て運動する時間を作ります。5匹同時にケージから出して、それぞれにサークルで遊びます。1人〜2人で毎日お世話をしています」

熊谷:
消化器官の動きが滞ると、胃腸のみならず他の臓器の機能が低下し、最悪の場合は死に至ります。それはすなわち、ごはんを食べない、うんちが出ていないといった目に見えてわかる不調があった時、時間を置かずにすぐ病院に連れて行かなければならないということです。症状として見える頃には、だいぶ症状が進行していることが多いです。

すぐに病院という時に、人間の予定をキャンセルしたり後回しにしなければならないことも出てきます。それが可能かということと、あとはうさぎを専門的に診られる動物病院さんも限られているので、そこまで行くことができるのかという点は、必ず確認させていただいています。

また「うさぎは食べなければいけない」という情報から、強制的に流動食などを食べさせる強制給餌することで、逆にうさぎに大きな負担をかけてしまうことがあります。症状によっては食べてはいけない場合もあるので、獣医さんの診断を受けてもらえたらと思います。

藤田:
うさぎは平均して10年ほど生きますが、最近は長生きするうさぎさんも増えてきました。かわいくてふわふわで、いつも元気に走り回っているようなイメージが強いかもしれませんが、いつかは寝たきりになり、介護が必要になることもあるかもしれません。
そのことも頭の片隅に置いて、お世話の喜びを感じていただけたらいいなと思います。

うさぎは縄張り意識が強く、たとえ一緒に生まれた兄妹でさえも思春期を迎える頃には喧嘩になったり優位性を示すためにマウンティングやおしっこを飛ばし、興奮状態が続いてストレスになってしまうという。「うさぎを複数で飼育する場合は、別々のケージが必要です。お部屋で遊ばせるときは個々の時間を作ったり、一緒に出す際はサークルなどで接触しないようにします。稀に仲良く一緒に遊べるうさぎさんたちもいますが、あくまで「稀」なので注意が必要です」。(写真左)未去勢のオスと不妊済メスのうさぎ。網のサークルで仕切って遊ばせている。(写真右)未去勢のオスの兄弟。接触を避けるために透明のペットサークル

「うさぎも人も、共に幸せになるために」

多頭飼育の環境から来た「ミントちゃん」。「まだ生後5カ月にも関わらず、妊娠していました。ミントちゃん自身も近親交配で生まれているためか、二つの腎臓のうち一つが石灰化しており、機能していません。ペットのうさぎは季節を選ばず年中ほとんどの日で繁殖が可能です。交尾排卵のため妊娠率も高く、交尾も数十秒とわずかな時間で終わるので、短時間でもオスメス一緒にしていると飼い主さんが知らない間に妊娠・出産ということもあり、飼えないので引き取ってほしいという相談もあります。1匹だけなら増える心配はありませんが、避妊去勢手術は望まない妊娠を防ぐだけでなく、病気の予防や攻撃性の低下に繋がり、特にメスは偽妊娠によるストレス、年齢とともに高くなる子宮の病気を防ぐこともできます」

──最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

藤田:
保護したうさぎを里親さんに送り出す時、「飼い主さんを幸せにしてね」と言って送り出しています。「うさぎさんを幸せにします」といって迎えていただくのですが、飼い主さんにも幸せになってほしい。だからこそ、常にうさぎのことを学び続ける姿勢が大切だし、そのような場所を、これからも作っていきたいと思っています。

保護うさぎに限らず、うさぎを迎え入れた方に、「うさぎなんて飼うんじゃなかった」と思ってほしくない。うさぎさんと飼い主さん、両方が一緒に幸せになってほしいと思うので、10年先15年先を見据え、しっかり検討してから迎えてほしいと思います。

──チャリティーの使途を教えてください。

熊谷:
WELFARE OF RABBITとして、今後も勉強会やセミナー、パネル展を各地で開催予定です。大阪や名古屋で過去に開催してきましたが、今後は関東をはじめとして、別の地域でも開催できたらと思っています。

今回のチャリティーは、こういった啓発活動のための資金として使わせていただく予定です。ぜひアイテムで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

6月、SAVE THE RABBITSの施設を訪れていたボランティアの皆さん。「いつも活動を支えてくれる頼もしいスタッフです」

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

愛らしい見た目や、学校でいとも簡単に飼育されているのとは裏腹に、うさぎは実は飼うのがとても難しい動物だということを改めて感じるインタビューでした。いや、それはうさぎに限らず、ほかのすべての動物にも言えることだと思います。
飼うのであればしっかりと、知識と責任を持って、「なぜ、この動物を迎え入れるのか」ということと、向き合い続けなければなりません。

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【2023/6/26~7/2の1週間限定販売】
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中央にシンボルとしてうさぎを描き、うさぎの福祉向上を目指して活動する人や応援する人たちが、意思を表明する目印として活用してほしいという思いを込めました。

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