CHARITY FOR

「病気や障がいのある子どもと保護者の拠り所になりたい」。ケアグッズ販売や就労サポートを通して、家族のQOLの向上を目指す〜一般社団法人チャーミングケア

「アピアランスケア」を知っていますか?
国立がん研究センターによると、アピアランスケアとは「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」のこと。
わかりやすくいうと、病気の治療で外見が変化した患者さんが自分らしく元気でいられるよう、化粧品や衣類などを通しておしゃれを楽しんでもらったり、カウンセリングをしたりする取り組みのことです。

このアピアランスケアですが、まだ知名度はあまり高くありません。そこで、もっと浸透させるべく「チャーミングケア」と名付け、活動しているのが、今週JAMMINが1週間限定でコラボする一般社団法人「チャーミングケア」さんです。

代表の石嶋瑞穂(いしじま・みずほ)さん(45)は、長男の壮真(そうま)さん(14)が小児がんを患い、入院したことをきっかけに、この活動をスタートしました。今では、チャーミングケアに関連する医療ケアグッズの販売だけでなく、研修活動や就労支援なども行っています。そして息子の壮真さんも現在、あるプロジェクトに関わっているとのこと。

お二人に、チャーミングケアさんの活動やその背景、今後チャレンジしようとしていることなどについて、お話を伺いました。

石嶋さんと息子の壮真さん

今週のチャリティー

一般社団法人チャーミングケア

「どんな子どもでも子どもらしく、かわいらしく過ごすことができるように」。チャーミングケアでは、病気や障がいのある子どもと家族のQOLの向上のために、さまざまなケアを行っています。

INTERVIEW & TEXT BY TAISUKE KOBAYASHI
RELEASE DATE:2023/6/5

病気の子どもと、子どもに付き添う保護者が
前向きに今を生きられるように

百貨店で開催した「チャーミングケアモール」のポップアップの様子

──今日はよろしくお願いします。最初に、活動内容について教えてください。

石嶋さん:
私たちチャーミングケアは、病気や障がいのある子どもと家族の“QOL向上”につながる活動をしています(QOL=Quality Of Life、生活の質のこと)。具体的な活動として、

・病気や障がいのある子どもたちや、その家族のためのECマーケットプレイス「チャーミングケアモール」の運営
・病気や障がいのある子どもと家族に対する、適切な配慮についての研修の実施
・当事者やそれを支援する人の声など、独自メディアや動画を使った情報発信
・病気や障がいのある保護者さんの就労サポート
・コミュニティ活動

などを行っています。

チャーミングケアモールでは「病気でもおしゃれを楽しんでほしい」「前向きに治療に取り組むきっかけになれば」との想いから、柄にこだわったカテーテルのカバーやケアキャップ、かわいい食器や小物などを販売しています。

チャーミングケアモールのリーフレット

また医療従事者や教育・理美容業界で働く方を対象にした研修も実施しています。研修では専門家や病気を経験した子どもを招き「病気や障がいのある子どもや家族に対する適切な配慮」について考える機会を提供しています。理美容業界の方を対象にしているのはアピアランスケア、私たちがいう「チャーミングケア」に関係するお仕事だからです。

さらに、病気や障がいのあるお子さんを持つ保護者の方が、看病しながらでも働ける環境を作りたいと、就労サポートも行っています。

壮真さん:
僕は今、病気を経験した子どもや闘病中の子どもなど、同じ価値観の人が集まって話せるメタバース(※)の開発に携わっています。

※メタバース‥インターネット上にある仮想世界。アバターを使って自由に移動でき、メタバース内で社会生活を送ることができる

チャーミングケア研修特設サイト。医療・教育・理美容・子どもアドボカシーなどのジャンルの各専門家に、子ども講師も入り、月に一度のオンラインの研修を開催。オンデマンドで学ぶことが可能

塞ぎがちだった我が子の瞳が輝くのを見て
アピアランスケアの重要性に気づいた

入院中、検査を受ける壮真さん

──どうしてこれらの活動を始められたのでしょうか?

石嶋さん:
きっかけは2016年のことです。長男の壮真が小学2年生のときに「小児がん(急性リンパ性小児白血病)」になり、入院しました。
入院中、つきっきりで看病していたのですが、抗がん剤治療が始まるタイミングで、病院から「カテーテルカバーを作ってきてください」と言われたんです。子どもの元から離れられないので、布を買う時間も裁縫する時間もありません。ネットでも探しましたが、サイトなどでも売っていませんでした。

結局、友人が手助けして作ってくれたのですが、そのカバーが有名ブランドの柄だったんです。それを手にした息子が、それまで元気がなかったのに、目を輝かせながら、カバーを嬉しそうに看護師さんに見せていました。その姿を見て、入院中であってもかっこいいものやかわいいものを身に付けたいという子どもの気持ち、そこをフォローすることで闘病する本人が前向きになれるということに初めて気付かされました。

入院したばかりの頃。「自分の病気のことをしっかり理解していなかったので、入院することに納得がいかず、毎日がイヤイヤで大変でした」

石嶋さん:
「自分と同じ境遇で困っている保護者もいるのでは」とも考えるようにgなり、ワンコインで買える「カテーテルカバーキット」を作って販売したんです。すると、あっという間に売り切れて。

やっぱり困っている方が多いんだと思い、カテーテルカバーだけでなく、ケアキャップなど、子ども用の医療ケアグッズを制作するようになりました。困っている親御さんたちのニーズに応えたいと規模を大きくしてオンラインモールを立ち上げて販売するようになり、現在もさまざまな医療ケアグッズやお見舞い品を販売しています。

最初に作成したカテーテルカバーキット。ワンコインで販売してみたところ、すぐに売り切れとなった

ケアグッズの販売を通して
いろんな課題が見えてきた

チャーミングケアモールを開始した頃、購入者の方から送られてきた手紙。医療的ケアが必要なお子さんと写った写真と共に、3枚の便箋にびっしりと、お礼と思いが綴られていた。3年経った今、彼女もアンバサダーとして活動に参加し、共にチャーミングケアを広めている

──研修も行っているとのことですが、どういった経緯で始められたのでしょうか?

石嶋さん:
2018年に活動を始め、2020年にオンラインでグッズを販売する「チャーミングケアモール」を始めました。企業さんが親会社となって運営を行っていたのですが、コロナ禍ということもありそもそも外出をしない。そうなると外見のケアがあまり必要ないという点と「価格が高いから」という理由で、事業としてはあまり結果が出ませんでした。

結局親会社さんは撤退することになるのですが、私としてはやめたくありませんでした。
私たちは「子どもが主体的に身につけるものを決めてほしい」と考えているので、実際に子どもたちの声を聞きながら、デザイン性や機能性を重視した、クオリティもしっかり担保したものを選定してきました。百貨店さんで出品することもあるので、品質における厳しい試験や規定をクリアしたものを厳選して扱っています。

チャーミングケアモールのポスター。百貨店などのポップアップの際に啓蒙のため活用している

石嶋さん:
しかしそうすると、どうしても価格が高くなってしまいます。結果として「高いから」と購入いただけないということがありました。今は大手量販店が病児や障がい児が着られる衣服を安く販売していますし、フリマサイトで、ほぼボランティアのようなかたちでハンドメイドされている方から、医療的ケアグッズを安く購入することも可能です。
ですが、私たちとしては物を使う対象者が病気や障がいのある子どもという非常にデリケートな存在なので、ニーズにあったクオリティの高いものをという思いがあります。実際に購入された保護者の方からも、ありがたいことにたくさんのお声をいただき、反響も多くありました。

そこで、まずは「子どものアピアランスケアの重要性」や「なぜ価格が高いか」を知ってもらう必要があると考えるようになりました。まずは目線を合わせた上で理解してもらうことが大切だと。アピアランスケアの重要性や、子どもには子どもの思いがあるんだということを知ってもらうために、研修事業をスタートしました。

セミナーも開催。写真は、病児・障がい児の保護者の働き方に関するセミナー

──そうだったんですね。保護者の方への就労サポートはいかがですか。

石嶋さん:
子どもが入院すると、付き添いをする保護者さんは働けなくなります。息子が入院した際、私はフルリモートで仕事を始め、なんとか働くことができていましたが、それができるのはごく少数です。

かといって仕事をやめてしまうと、経済的負担がのしかかるし、子どもは親をよく見ているので、自分の責任だと思ってしまうこともあります。何より、保護者が一旦仕事から離れてしまうと、なかなかキャリアを再開することが難しいというのは、私自身も強く感じたことでした。だから、とにかく働き続けることが大切だと感じたんです。
そこで、私自身がフルリモートでも成立する仕事を受けて、看病などで子どものもとを離れることが難しい保護者の方、退院されたので復職を考えている方などに仕事を切り出して作業をお願いし、サポートをしながらお仕事をしていただいています。

子どものアピアランスケアに関する小冊子を制作し、全国に発送している。「写真は発送作業の様子です。作業をしてくださっているのは、地元アンバサダーの皆さんです」

「同じ境遇の人が、
悩みを共有できる場所を作りたい」

現在、開発中のメタバースの世界(イメージ)。「7月には本格的に始動します」

──壮真さんはメタバースの開発に携わっていらっしゃるとのことですが、これはどういった経緯からでしょうか?

壮真さん:
小さい時からプログラミングが得意なことと、退院してから病気を経験した人や、闘病している人と悩みを共有できる場所を作りたいな、と感じたからです。

──入院されていたのは、どれくらいの期間だったのでしょうか?

壮真さん:
1年間です。小学3年生の時に退院し、学校に戻ったのですが、入院中は治療がほとんどで、他の皆のように九九を毎日やるみたいな生活したことがありません。学校に戻ったら、わからへんことばっかりでした。

壮真さんが退院した日の一枚。「小さい頃から行きつけのお店で退院祝いをしてもらいました」

壮真さん:
学校に戻ってから、自分なりに頑張ってるねんけど、皆が当たり前みたいにわかっていることがわからない。退院したら終わりじゃなくて、退院してしばらくは、抗がん剤治療で髪が生え揃っていないとか、顔が浮腫んで太っていると思われるといった見た目の不安もありました。退院した後も抗がん剤の薬を飲むんですが、飲むとしんどくなったりだるくなったりして、ほかのことは何もできなくなってしまうこともありました。

でも、周りにはそれをなかなか理解してもらえなかった。退院したすぐの時は「入院してたんやから、できへんのは仕方ない」という反応やったのが、時間が経って見た目が普通になっていくと「なんでできへんの」という見方に変わっていく。
やりたくないわけでもやる気がないわけでもないのに、毎日担任の先生に呼び出されて「お前を変えてやる」と言われて、つらい思いをしました。

入院中はさまざまな食事制限があり、食べられるものも限られていた。「退院してようやく食事制限がなくなってきた頃、家族で外食した時の一枚です」

石嶋さん:
ただそれが、本人の中でも言語化できていなかったんです。
計算ができへん、リコーダーが吹けへん…、皆が当たり前のようにできていることができないということがどんどん蓄積されて腹が立ってきて、授業を妨害したり、教室から脱走したり、気付いた時には問題児になっていました。

何が原因なんやろう?と思って。「もしかしたら、勉強についていけへんって思ってるんちゃうん?」と彼に尋ねると、涙をポロポロ流して、「そうや」と言ったんです。「病気はもう治ってるのに、何でできへんのやといわれる。それが、もうしんどい」と。

──そうだったんですね…。壮真さんはお母さんがそうやって言葉にしてくれて、はじめて「そうや」と思ったんですか?

壮真さん:
うすうす理解はしてたけど、勉強もわからんし運動もできへんし、挙句の果てには、先生から毎日「お前を変えてやる」って呪いみたいに言われて、いっぱいいっぱいやったかな。「お前に変えていらん。自分で変わる」って言い返したけど…。

でもこのことがあって、自分が何に困ってるんかわかって、小学5年生の終わりに、初めて声に出して学校に伝えたんです。そこからはいろいろと配慮をしてもらって、少しずつ馴染めるようになりました。声に出すことは大切なんやと、そのときに思いました。

──そうだったんですね。

壮真さん:
伝えないと自分が損するなと身に染みてわかったので、「こういうことを思ってる」とか「こういうことに遭ってる」とか、何らかの方法で伝えたり、手を挙げる場所があることが大事やと思って。それで、メタバースを開発したいと思いました。

特技がプログラミングだという壮真さん。メタバースのチームでは、子どもリーダーとして制作に関わっている

石嶋さん:
私としても、子どもが雑談力を高めるためにも、子どもがおとなに邪魔されずに話せるコミュニティは大切だと思っています。息子が病気になった時、子どものことなのに、当事者である子どもの意見があまり聞いてもらえないことに違和感があったんです。

投薬の際、ほとんどの医療従事者の方は保護者に薬の説明をします。それは大切なことですが、子どもにも説明するべきだと感じました。
実際に抗がん剤治療は薬が多く、副反応もさまざまです。吐いたり、過食になったり、味覚障害になったり、髪の毛が抜けたり…。子どもはなぜそうなっているのか、それが薬のせいであるということさえ、親の説明がないかぎり知ることができません。

子ども講師によるオンラインイベントも開催している

石嶋さん:
息子が質問すると、薬剤師さんが投薬する薬の効果と副反応などを表にして丁寧に教えてくれました。
でも中には、知りたくても聞けない子がいると思うんです。あるいは親御さんが「うちの子は大丈夫」とか「子どものことは親が知っていれば大丈夫」と思っていることもあります。子どもが自分の気持ちを大切にして、声を上げられるようになるためには、本音で語れる場所があること。メタバース空間で雑談力を磨くことができれば、それはきっと必ず、その後の人生で活きていくのではないかと考えています。

──壮真さんはメタバース以外にも、ご自身で発信などを行い公開されているんですね。

壮真さん:
最初は「病気は快方に向かっているし、子どもなんだから、顔や名前・病名を公表してまでしなくてもいいんじゃないか」という周りの配慮もあって、顔や名前を伏せてたんです。でも、それは自分の意見じゃないと思ってました。「自分の経験を、自分の声で発信したい」と思って、小6からは石嶋壮真として発信しています。

チャーミングケア啓発のためのトークイベントで、登壇する壮真さん。写真は阪急うめだ本店で開催された「H2Oフェスティバル」での一枚

「より多くの方の心の拠り所になりたい」。
リアル店舗をオープン予定

百貨店での啓発イベントにて、チャーミングケアオリジナルのあみぐるみを制作

──チャーミングケアさんの今後の展望について教えてください。

石嶋さん:
今後の大きな動きは2つあります。
ひとつめは、7月のメタバースの本格的なスタートです。保護者の方に理解してもらえるよう、説明会なども行っていく予定です。
ふたつめが、チャーミングケアのリアル店舗のオープンです。オンラインのチャーミングケアモールで販売している商品を実際に手にとることができたり、パソコンを置いて、メタバースを体験できる場所をつくる予定です。さらにミシンも置いて、就労支援にもつなげられたらと思っています。

改装前の店舗予定地

石嶋さん:
wifi環境も整っているので、入院や闘病で学習がストップしたお子さんが、自分のペースでオンラインで学べたりとか、親御さんが来てここで働けるようなコワーキングスペースを行う予定です。多くの方の拠り所になれるような場所にしたいですね。
新しいことにもチャレンジしながら、病気の子どもたち、その保護者のQOLの向上に繋げる活動を続けていきたいです。

壮真さん:
メタバースを完成させて、いっぱい人を呼びたいな。出会いの場になって、大人だけではなく、自分たちのリアルな声が集まる場所になったらと思います。

チャーミングケアのシンボルマークは、「どんぐり」がモチーフになっている。「ヨーロッパでは、どんぐりを一粒持っていると、病魔から身を守り、長生きすることができるお守りとされているそうです」

チャリティーのお金は
店舗の内装のために使われます!

「子どもの社会は学校です。学校でご機嫌に過ごすために、身だしなみは大切なこと。子どもにも外見ケアは必要です」と壮真さん

──記事を読んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。

石嶋さん:
大人は大人であって、子どもは子ども。たとえ親子でも、親には親の、子には子の人生があります。親も子も、自分の人生を生きていかなければならない。親には親の意見、子どもには子どもの意見があるので、それぞれ適切な場所に、その声を届けていきたいと思います。

壮真さん:
声を上げたら、周りの人がサポートしてくれました。だから、「一緒に声を上げていこう」と言いたいです。

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

石嶋さん:
チャリティーは、大阪府池田市にオープン予定の店舗の改装のために使わせていただきます。多くの人の居場所になるためにも、ぜひご協力いただけたらと思います。

──貴重なお話をありがとうございました!

福岡にて、メタバース開発チームの皆さんと

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜小林の編集後記〜

退院後、いかに日常の生活に戻るかがとても大変だった、という壮真さんのお話が印象的でした。
「病気は治れば終わり」というイメージがありますが、がんは退院後も厳しい治療が続きます。見た目は元に戻っても、見えないところで傷を抱えているかもしれない。そういった思いやりを多くの人が持ち続けられるよう、チャーミングケアさんの活動が、少しでも多くの方に届くことを願っています。

・チャーミングケア ホームページはこちらから

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【2023/6/5~11の1週間限定販売】
楽しい雰囲気で、どんぐりの中から飛び出す、いろいろな格好をした動物たちを描きました!
病気や育つ環境に左右されず、子どもたちがなりたい自分の姿や夢に向かって、自分らしさや自信を失うことなく進んでほしいという思いを表現しています。

“You can be whatever you want to be“、「望めば、なりたい自分になれるんだ!」という言葉を添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
今週コラボ中のアイテムはこちらから、過去のコラボ団体一覧はこちらからご覧いただけます!

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