CHARITY FOR

セルフケアで自己肯定感を高め、多様性を祝福できる社会へ〜NPO法人シングルマザーズシスターフッド

今週、JAMMINがコラボするのは、シングルマザーのセルフケアを支援するNPO法人「シングルマザーズシスターフッド」。

団体を立ち上げた吉岡(よしおか)マコさん(49)は、産後ケアのNPO法人「マドレボニータ」を立ち上げ、22年に渡り、産後ケアの普及と啓発に取り組んできました。

コロナ禍において、マドレボニータでシングルマザー向けに開発したセルフケア講座を開催したところ、大きな反響があり、シングルマザーのからだと心に特化した支援を行う団体が必要だと感じた吉岡さん。マドレボニータの代表を退き、2020年末に新たに「シングルマザーズシスターフッド」を立ち上げました。

自身も、シングルマザーとして子育てをした経験がある吉岡さん。

「『自分を大切にして、自分らしく生きていくために、まずは体力を回復していこう』という基本のコンセプトは、(産前ケアを普及啓発していた)マドレボニータで活動していた時から全く変わっていません」と話します。

活動について、お話を聞きました。

(お話をお伺いした吉岡さん)

今週のチャリティー

NPO法人シングルマザーズシスターフッド

シングルマザーが自分のからだと心をケアする時間、シングルマザー同士が互いに励まし合う機会を提供し、シングルマザーのエンパワメントに尽力しています。生き方や家族の多様性が受容され、一人ひとりが自分らしく、誇りを持って生きられる社会を目指しています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2022/12/19

「シングルマザーが互いに励まし合ったり
助け合ったりできる場になれば」

(セルフケア講座は、オンラインで30分。「忙しいシングルマザーが参加しやすいように工夫しています」)

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体の活動について教えてください。

吉岡:
団体名にある「シスターフッド」は、「女性同士の連帯」という意味です。シングルマザーが集まって、互いに励まし合ったり助け合ったりできる場になればという思いでこの名前をつけました。

シングルマザーが心身ともに健康に過ごせるように、オンラインのセルフケア講座を定期開催しています。ひとり親の女性、あるいは、離婚の調停/裁判中の方、これからシングルになる方、ひとりで子育てを担う女性はどなたもウェルカムで、無料で参加できます。

火曜日と木曜日のランチタイムと、平日の参加が難しい方のために、土曜日の朝7時からのレッスンがあります。定員は10名。オンライン開催なので、全国各地からの参加があります。

──どのような内容ですか。

吉岡:
簡単なストレッチ、深呼吸、瞑想も取り入れた30分間の講座です。ひとり親という共通点を持つ女性同士が、なぐさめ合うというよりは、それぞれのポジティブで前向きなエネルギーをシェアできる場でありたいと思っています。

ストレッチで全身を丁寧に動かすので、血のめぐりがよくなって気持ちよく感じられることはもちろん、講座の最後に数分だけですが、参加者同士が言葉を交わす時間も大切にしています。

「からだがポカポカしています」とか「自分の体がどれだけ固かったか気づきました」などとそれぞれに感想を語り合うのですが、自分の感覚をじっくり感じて、それを言語化できることだけでなく、それを誰かと分かち合えることにも、大きな意味があると感じています。この場で明るくなって、残りの1日をポジティブに過ごしてもらえたらと思っています。

(セルフケア講座では、からだをケアすると同時に、瞑想でメンタルもケアする)

社会的な孤立、偏見…
シングルマザーが抱える苦悩の背景にあるもの

(生まれて間もない息子を抱く吉岡さん(写真左)と、現在の息子さんと。「息子は社会人となり家を出ました。今では、仲のいい友達のような関係です」)

──吉岡さんは、産後ケアのNPO法人「マドレボニータ」を立ち上げられましたが、なぜ、シングルマザーに特化した団体を立ち上げられたのでしょうか。

吉岡:
団体を立ち上げる前、最初はマドレボニータでシングルマザーを対象にしたセルフケア講座を開催しました。すると、1週間で100件もの申し込みがあって。シングルマザーを支援する団体はたくさんあるけれど、シングルマザーのからだや心に特化して支援している団体はなく、強いニーズがあるのではないかと思いました。

この時、参加したシングルマザーたちから「セルフケアなんて考えたこともなかった」「自分には贅沢で、関係ないと思っていた」という声を、非常にたくさんいただきました。「自分のことは後回しにして、子どもに尽くさなければいけない」と思い込んでいるシングルマザーの思考の傾向が見えてきて、「自分を大切にする」という感覚が、ひとり親であることが理由で低下していると感じたんです。

一人で子どもを育てるシングルマザーの多くが、子育てと仕事を両立しなければならず、さらに社会的に孤立している。日々の生活の中では、自分を見つめ直したり、自己肯定感を取り戻すきっかけがなかなか得づらい状況があります。シングルマザーに対する偏見も、まだまだあります。

(シングルマザーズシスターフッドも加入している「シングルマザーサポート団体全国協議会」が、衆議院第2議員会館で主催した院内集会「ひとり親家庭の子どもたちを助けてください!養育費が払われない!物価高!コロナによる減収!」に出席し、シングルマザーのエンパワメントについて発言した)

──どのような偏見でしょうか。

吉岡:
二つの種類があると思っています。
一つは、シングルマザーだと伝えると「気の毒だね」とか「変なこと聞いてしまってすみません」のような、腫れ物に触るような扱いを受けること。

もう一つは「離婚したその人に問題がある」「非婚で子どもを産むなんて」といった批判的な偏見です。「あなたに問題があったんじゃないの」とか「いい条件の旦那さんを手放すなんて」という心無い言葉に、傷つく方も少なくありません。

シングルマザーになる経緯はそれぞれですが、中には深刻なDV(家庭内暴力)から逃れるためであることもあります。パートナーから身体的・精神的な暴力を受け、やっとの思いで逃れたのに、「離婚したあなたが悪い」と言われたらどうでしょうか。傷口に塩を塗るような仕打ちですよね。

──確かに。

吉岡:
いずれにしても、日本では「バツ1」とか「バツ2」という言葉に象徴されるように、シングルマザーであるということが、失敗とかネガティブなものとして捉えられることが多い。離婚が「自分らしい新たな人生を歩むために、パートナーシップを解消したんだ。勇気のある選択をしたんだ」という前向きなものとして捉えられていません。

また、最近はシングルマザーがメディアで取り上げられることが増えましたが、「子どもの貧困」という文脈のうえで語られることが多い。でも、シングルマザーが抱える問題は貧困だけではありません。社会からの孤立や精神的な傷つきなど、他にもさまざまな課題があります。それが「貧困」だけに集約されてしまう状況には違和感があります。

今は、家族のあり方も多様化しています。たとえばLGBTQのカップルで、パパふたり、ママふたりで子育てしている、養親で子どもと血はつながっていない…、いろんなかたちがあるし、その中の一つとしてひとり親というあり方もある。そんなふうな捉え方が広がっていけばと思っています。

(全国の支援団体が加入している「シングルマザーサポート団体全国協議会」の仲間と。「ひとり親の背景はさまざま。ひとくくりにはできない豊かな多様性があります」)

「自分を大切にするために、
まずは体力を回復する」

(マドレボニータで産後ケア教室を教えていた頃)

吉岡:
「シングルマザー」という言葉のイメージによって「作られた像」に集約されてしまうと、その向こうにある素顔が見えにくいし、声が聞こえない。これは産後に女性が陥る境遇にも通じるところがあります。

母親であっても、同時に一人の女性であることには変わりないのに、世間からは「○○ちゃん、○○くんのママ」と呼ばれ、「母親になったんだから、自分のことは後回し」と、つらいことやしんどいことも耐えて我慢して、自分の感覚を麻痺させて、どんどん自分を大切にしなくなっていく。この違和感は、マドレボニータで活動していた時から感じていたことでした。

ただ、シングルマザーの場合に一つ大きく異なるのは、産後だけでなく子どもが大きくなってからも、子育てをしながら家計を支え、「自分のことは後回し」という状況が長く続くこと。また、パートナーからの暴力などで、トラウマや人間不信に苦しんでいたり、自己肯定感が著しく低下していたりすることがあります。

「自分を大切にして、自分らしく生きていくために、まずは体力から回復させていこう」という基本のコンセプトは、マドレボニータで活動していた時から全く変わっていません。身体感覚を研ぎ澄ませていないと、自分が本当に感じていることを感じ取り、言葉にして表現することは難しい。自分を大切にして、心身の健康があってこそ、社会とつながり、自己を表現することができるのではないでしょうか。

(セルフケア講座の受講者の声)

仲間の中で自分らしさを磨き、取り戻し、発揮する
「グループリフレクション」

(シングルマザーズシスターフッドでは、セルフケア講座に限らず、マネーリテラシー、ICTスキル、感情の扱い方を学ぶノンバイオレントコミュニケーションなど、学びの機会も提供している)

吉岡:
皆、一人ひとりに力がある。逆境に直面したことでたまたま力が発揮できていない時に、再び自分の力を発揮して、立ち上がり、前に進んでいけるようにサポートするのが、私たちの活動です。

セルフケア講座の次のステップとして、「グループリフレクション」というプログラムを年に数回開催しています。これは3〜4人の小さなグループで、2週間に1度、オンラインで集まり、自分の振り返りを仲間と分かち合うという全5回のプログラムです。
自分を深く掘り下げ、気づいたり感じたりしたことを他の参加者と分かち合ってフィードバックをもらう。それを続けることで自分らしさが磨かれ、自分を取り戻し、より力を発揮できるようになります。それは仲間の存在があってこそ、実現できるものです。

──具体的にどんなことをするのですか。

吉岡:
用意された「リフレクションシート」に沿って、2週間に1度、自分自身を振り返り、一人ひとりが発表します。「この2週間はこれをがんばろうと思う」と皆の前で発表し、取り組んでみる。それによって次に会うまでの2週間がんばれるし、仲間からの質問や称賛、あるいは他の仲間のがんばりに気づきや刺激をもらいながら、意志を持って前に進み、自己肯定感を高めていくプログラムです。

このプログラムには、グループリフレクションの過去の参加者が、「メンター」として一緒に参加します。メンターも皆、最初はセルフケア講座を受講し、そこからアドバンスコースとしてグループリフレクションに参加し、「次は誰かのために」と一つひとつステップを登ってきたシングルマザーたち。

「支援される側」にとどまらず、次は「支援する側」として担い手になり、力を存分に発揮してくれています。

(「グループリフレクション」は、2018年に吉岡さんが参加したJapanese Women’s Leadership Initiativeのアルムナイ(卒業生)が開発したプログラム。現在、さまざまな組織で実施されている)

経験を、ポジティブなエネルギーに変えて

(年に2回の啓発キャンペーンは、別名「表現による自己の回復」プログラムとして、シングルマザーが「表現」を通して自己や他者との関係を編み直す機会となっている)

吉岡:
グループリフレクションのメンター役に限らず、自分の力を取り戻したシングルマザーたちが「自分も助けられたから、自分も誰かの役にたちたい」と思っているのに、なかなかその機会がなく、活躍できずに終わってしまう状況を肌で感じていました。

そんな素敵な人たちが何か力を発揮できる場をと思い、シングルマザーが自分の体験をエッセイにして、ファンドレイジングを行う啓発キャンペーンも実施しています。

「困っているから助けてください」ではなく、有志のシングルマザーが自分の体験をエッセイという作品として発信して、そのストーリーにインスパイアされたらぜひ寄付をお願いします、というキャンペーンです。

毎年、母の日の5月と寄付月間の12月の年2回実施していて、今回が4回目。今後も続けて行く予定です。

自分たちの経験が、決してネガティブなストーリーとしてではなく、ポジティブなものとして受け入れられ、寄付が集まることは、社会への信頼を取り戻すことや、自己肯定感を高めることにもつながります。そしてさらに「自分も過去に寄付の恩恵を受けたから、今度は私も寄付集めという形で、いま困っている人を支援したい」というサイクルを生みます。

セルフケアで、まずは「今が良くなる」。次に主体的な行動で「未来が良くなる」。そして何らかの貢献のアクションで「社会が良くなる」。
助けられるだけの存在ではなく、力を取り戻した方が、その力を使って貢献してくれています。このサイクルをぐるぐると循環させながら、輪がもっともっと広がっていってくれたらと思っています。

(「私たちの支援のあり方は、1.セルフケアで今がよくなる、2.学びで未来がよくなる、3.貢献で社会がよくなること。この循環の輪が広がっていきますように」)

──読者の方に、メッセージをお願いします。

吉岡:
いちばんお伝えしたいことは、「家族の多様性や生き方の多様性を祝福しよう!」ということです。子どもがいれば、どんな家庭も、ひとり親家庭になる可能性はあります。あるいは自分の家族や子ども、友人、大切な人がひとり親になる可能性だってあります。
本当は誰にとっても、他人事ではないんですよね。ひとり親への偏見がなくなって、多様性が祝福される世の中になるといいなと思っています。

活動をしていると、「余裕のある優秀なシングルマザーだけを集めて活動しているんじゃないか」と意地悪なことを言われることがあります。はっきり言って、余裕がある人などみたことがありません。みんな余裕がない中、この活動に情熱を持っているからこそ、工夫して時間を作り出して活動しているんです。

数ヶ月前までシェルターに居た人、パートナーの暴力から逃れて実家に身を寄せている人、子どもの不登校と発達障害に向き合いながら頑張っている人、さまざまな事情を抱えながらも、仲間と励まし合い、前を向いて進んでいこうとしている人たちが集まっています。

優秀な人とそうではない人がいるのではなくて、何らかの原因があって、力を十分に発揮できないという状況や時期が、誰にも起こり得ます。その時に、それを批判したり憐れんだりするのではなく、本人の力を信じて、その後押しができる社会になったらいいなと思います。

(啓発キャンペーンの応援メッセージ。「たくさんの人たちに支えられて活動しています」)

チャリティーは、セルフケア講座開催の資金として活用されます!

(まだセルフケア講座に出会っていない人にも、セルフケアの機会を届けたい)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

吉岡:
シングルマザーは、無料でセルフケア講座に参加できます。
運営の資金は寄付で賄っていて、今回のチャリティーは、このシングルマザー向けのセルフケア講座を継続して開催し、よりたくさんのシングルマザーにリーチするための資金として活用させていただきます。

ぜひ、アイテムで応援していただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(「シングルマザーズシスターフッドの活動を応援してくださっている、東北大学の岡田彩先生の研究室で。岡田彩先生、ナイジェリアからの留学生でシングルマザーズシスターフッドの活動を調査研究してくれているマーガレットさんと」)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

自信はひとりでに湧いてくるものではなく、日々、自分の思考、やり方や考え方、そのクセや欠点など含め向き合う中で、「もっとこうした方がいいかな」「こっちの方が良いかも」と試行錯誤しながら、小さなひとつひとつを乗り越えていくことで生まれていく部分があると思います。でも日々に追われて、なかなか自分と向き合う時間や余裕が持てなかったりする。これは誰にもあることではないでしょうか。

自分のからだとの向き合いは、自分の軸や、感覚、価値観や時間との向き合いでもあります。
シングルマザーズシスターフッドさんの活動を通じて、自分らしく、いきいきと輝く人生が増えていけばと思いました!

・シングルマザーズシスターフッド ホームページはこちらから

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【2022/12/19~25の1週間限定販売】
“Turn lemon into the lemonade”、「人生がレモンを与えたら、それをレモネードにしてしまおう」。

ポジティブなメッセージを、輪切りのレモンをタイヤに前に進むポジティブなイラストで表現しました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

JAMMINは毎週週替わりで様々な団体とコラボしたオリジナルデザインアイテムを販売、1点売り上げるごとに700円をその団体へとチャリティーしています。
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